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ゴミ

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春めいた陽気。しかし、風がまだ少し冷たい。

シャルロッテは侍女のフロリーナを連れて街へと繰り出した。


あんなの詭弁に決まっている。何が『無機物と会話できる』『えくぼより八重歯の方が可愛い』『女子力がある』だ。


無機物と会話できる……にはいくばくか疑問があった。

無機物が本当に話すのか?


確かに物も持ち主を選びたいという気持ちはあるかもしれない。

しかし、本当に書斎の本に嫌われていたり、ティーカップに嫌われていたりするものなのだろうか?


でっち上げに決まっている!!




街中は人々が行き交っている。

ここ、タイプーン街は商業で栄えている。

一度、竜巻で甚大な被害が出た街だが、時間はかかったものの、見事に復興を遂げた。



シャルロッテは邪魔になった結婚指輪と婚約指輪を売りに来た。

結婚指輪は黄金で作られている。


「カルロスに裏切られたわ!」

「本当ですね。私もあっさりと解雇されましたわ」

フロリーナにしてみれば、ストーム家を解雇されたようなもの。


「フロリーナはなぜストーム家に仕えることになったの?」

「本当は王宮に仕えたかったんだけど、カルロス様からお声がかかって……」

「そうだったんだ。王宮は良いよね?」

「はい。私……」

「どうしたの、フロリーナ。顔が赤くなったわよ」

「ランスロット王子殿下に憧れていて」


「ランスロット王子殿下は確かに素敵な方よね」


シャルロッテはランスロット王子を知っていた。

しかし、ランスロット王子ほどの人物だとすると、既に婚約者が、許嫁がいたのではないかと思っている。


「シャルロッテ様はランスロット王子殿下に憧れませんでした?」

「ええ。憧れたわ。でも……既に婚約者はいるはずだよ」

「そうですか」

「それに、カルロスとは学園時代からの知り合いで」

「カルロス様とは学園時代に出会ったんですね?」

「そう。同じ王立学園にいた時のクラスメイトだったの。席は離れていたのに、なぜか話しかけてきて」

「やはり、シャルロッテ様が魅力的だからですよ」

「魅力的……っていうか……。カルロスは『私のえくぼが可愛い』『ダンスがうまくて素敵』だなんて言ってきて。でも、それが嘘なのか本当なのかわからないわ」


「嘘と言えば……ラニーニャ様の『無機物と話せる』なんですが」

「あれ、作り話なのかしら?」


「私も懐疑的です」

「だよね。本当の話だったら、かなり怖いわ」


やはり、フロリーナもラニーニャの“スキル”を疑っている。


植物や昆虫と話せるならまだわかる。

しかし、無機物が話しかけてきたりするものなのか?




二人は突き当りを右に曲がった。

レンガ造りの建物が広がる。


「やはり、嘘っぽいですわ。あの人、虚言癖がありそうです」


確かに……。

そんな“スキル”があるわけがない。


だとしたら、ラニーニャの毛皮はラニーニャを嫌うはずだ。

領内の絶滅寸前の動物から取る皮だ。

嫌がるに決まっている。


勿論、異常なほどの厚化粧をするのだから、化粧道具も鏡もラニーニャを嫌うはずだ。

「ラニーニャは嘘をついている。私もそう思うわ」

「ですよね」

「フロリーナ」

「はい?」

「ラニーニャの事は呼び捨てで良いわ。あんな最低な女に“様”など必要ないわ」

ラニーニャに“様”などいらない。

人の夫を奪い、財産も欲しいままにしている。

あんな女は呼び捨てで十分!


それに、フロリーナはもうストーム家に仕えていないのだから。


「ラニーニャ様。いえ、ラニーニャは今後どうなると思いますか?」

「あの二人、再婚したは良いけれど、そのうちギクシャクし始めると思うわ」

あれほどの金遣いの荒い女。

何を欲しがるかわからない。


しまいにはアトポスを退治してしまう。


アトポスを退治するにも少なからず費用はかかっている。


アトポスを退治したのも、ラニーニャがアトポスの皮が欲しいから……に決まっている。


そして、アトポスの皮を加工するにもまた費用がかかる。


ラニーニャは次に何を欲しがるか?


「そうですね。きっととんでもない末路をたどりそうですわ」

「そんな事になっても私達には関係ないわね」


二人は顔を見つめ合い笑った。


本当に悲惨な末路が待っているかも知れない。


そもそも、略奪婚をした事自体、罰当たりだ。


「シャルロッテ様の人生を狂わせた人ですわ。きっと神様は見ていますよ」

「そうね」



と、そこへ『貴重品買い取りします』という看板を見つけた。


「ここが質屋ね」

二人は店の中に入った。


「はい」

中から出てきたのは中年の恰幅の良い男性だった。


「これ、売りたいんですが」

「あいよ」

男性は結婚指輪と婚約指輪を受け取った。


「そう……だな」


男性は品定めを始めた。

「買い取るよ! よっしゃ! 3万ソトだ」


「ありがとうございます」


二人はお金を受け取り、店を出た、ら

「売れたー」

シャルロッテは両手を挙げた。


「良かったですね」

「ええ、良かったわ」

スッキリした。

これでカルロスの事を忘れられる。
 

シャルロッテは小腹がすいていた。


「何か食べない? お腹……すいちゃって。おごるわよ」

「いいですわ」


二人はお菓子屋に入った。
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