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★アトポスの皮 ※ラニーニャ視線
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ラニーニャは鏡を見た。
最近、顔が傷だらけになってきている。
「ラニーニャ。最近顔が酷いけどどうした?」
「わからないわ。痒いの。それも全身」
頭の中も痒い。
体中ジュクジュクして痛い。
と、そこへドアをノックする音が聞こえた。
「カルロス様、ラニーニャ様。パン様がお呼びです」
ラニーニャはカルロスと共に応接間に呼ばれた。
何でもカルロスが盗みを働き、捕まったという。
カルロス……馬鹿な男。
カルロスは釈放されたが、条件があった。
それは爵位剥奪だった。
「ラニーニャ。きみが来てからわがストーム家の財産が根こそぎ奪われている」
ストーム公爵当主のパン。
「待って下さい。わたくしは『欲しい』と言っただけで、入手したのはカルロスなんです。カルロスの自己責任ではないですか?」
「カルロスもカルロスだ。なぜ盗みを働いたんだ」
「それはもう……財産が無くなったからです。それに、アトポス退治の賞金もすべて父上が持っていったではないですか」
「そうですわ。アトポスを退治させたのはカルロスなのだから、カルロスに受け取る権利がありますわ」
そうなのだ。
アトポス退治をしたのは紛れもなくカルロスなのだ。
そして、カルロスが自分の側近の騎士たちにアトポス対策の術を教え、アトポス退治に挑んだ。
「いいや。あれは我がストーム家全体の手柄。アトポス退治の賞金は我々がもらったのだ」
「それにラニーニャさん。あなたはアトポスの皮を手にしたではありませんか。アトポスが欲しくて賞金が欲しかったわけではないでしょう?」
ラニーニャは悔しかった。
賞金とアトポスの皮、両方欲しかった。両方が手に入れば一石二鳥。
「アトポスはわたくしのものですわ」
「もういいよ、ラニーニャ。大人しく出ていこう」
きー!!
悔しいわ!!
勝ち気のラニーニャが負けを認めた瞬間だった。
◇◆◇◆
二人は囚人の服を着せられ、市井へと投げ出された。
そして、ドレスも宝石も毛皮も取り上げられてしまった。
しかし、「何かしら財産はあった方が良いだろう」という事で、アトポスのバッグだけは持たされた。
しかし、ラニーニャは痒みの原因がアトポスにあるのではないか? と思っていた。
「ねぇ、カルロス。アトポス売らない?」
「そうだな。金は必要だ」
二人は街なかをさまよい、アトポスの買い手を見つけた。
『貴重品高価買い取りします』という看板を見つけた。
二人はハイタッチをし、店内へ入った。
「これ、売りたいんですが」
「わかった」
ラニーニャは店主にバッグを手渡した。
店主は品定めをするなり、難しい表情を見せた。
「うーん。申し訳ないがこれは値がつかないね」
「値がつかないということはそれだけ高価なんですか?」
「逆だよ」
「「え!?」」
「これ、アトポスの皮なんですよ?」
しかし、
「アトポスだからこそ、値がつかないんだ」
「アトポスの価値がわからないなんて可哀想な人だわ! 別のお店に行くから良いですわ」
ラニーニャはそう言って店を出た。
アトポスの皮に値がつけられない?
安物?
そんなわけがない!!
また、別なお店に入ったが、やはり結果は同じ。
「えへん。それにしても痒いわ。パイプも吸いたいけれど、パイプは没収されてしまったし。ああ苦しいわ」
「そうだな。ラニーニャ、すまない」
「すまないじゃないわよ。あなたが馬鹿をするからでしょ?」
それにしても痒い。全身が痒い。
特に頭が痒かった。
頭を洗えども、洗えども痒い。
「あー、痒い、痒い、痒い、痒い、痒い、痒い……。それに、顔が痒いから、化粧もできなくなった」
「ごめんな、ラニーニャ」
「うるさいわね。もう離婚よ」
「離婚しても、お前はもう嫁に行けねぇよ」
「何でそんなことあんたにわかるわけ!?」
「お前が強欲だと言うことは王侯貴族では有名だからな」
「何よ!」
「俺の方こそお前など願い下げだね」
「そういや、あんたも顔に傷があるわよ」
「アトポスの仕業だな」
「痒い、痒い、痒い、痒い、痒い……」
かくして、二人は形上の離婚をした。
「俺は盗っ人として行きていた。かくなる上は盗っ人として生きることにした」
ラニーニャはパン屋の前に来た。
パン屋なら、アトポスの皮を喜んでくれるはず?
「これとパン交換してもらえます?」
「申し訳ありませんが、うちは現金のみのお取り引きなんですよね」
「これ、アトポスの皮でできたバッグなんですよ。貴重品なんですよ」
「いいえ。それでも現金でないとダメです」
「アトポスの価値がわからないんですね?」
「いいえ。それにアトポスの皮は痒くなるで有名です」
「なんですって!?」
市井の人がアトポスが痒くなる事を知っている……。
だから、中古品屋は買い取ってくれなかったのか!!
「痒くなる……は誤解ですわよ」
「申し上げにくいですが、あなたの顔、傷だらけですよ」
きー!! なんですって!?
それにしてもお腹すいた……。
ラニーニャは仕方なく、店をあとにした。
お腹が鳴っている。
「このままじゃ餓死してしまう……」
ラニーニャは明日のこともわからないような生活を送る羽目になった。
最近、顔が傷だらけになってきている。
「ラニーニャ。最近顔が酷いけどどうした?」
「わからないわ。痒いの。それも全身」
頭の中も痒い。
体中ジュクジュクして痛い。
と、そこへドアをノックする音が聞こえた。
「カルロス様、ラニーニャ様。パン様がお呼びです」
ラニーニャはカルロスと共に応接間に呼ばれた。
何でもカルロスが盗みを働き、捕まったという。
カルロス……馬鹿な男。
カルロスは釈放されたが、条件があった。
それは爵位剥奪だった。
「ラニーニャ。きみが来てからわがストーム家の財産が根こそぎ奪われている」
ストーム公爵当主のパン。
「待って下さい。わたくしは『欲しい』と言っただけで、入手したのはカルロスなんです。カルロスの自己責任ではないですか?」
「カルロスもカルロスだ。なぜ盗みを働いたんだ」
「それはもう……財産が無くなったからです。それに、アトポス退治の賞金もすべて父上が持っていったではないですか」
「そうですわ。アトポスを退治させたのはカルロスなのだから、カルロスに受け取る権利がありますわ」
そうなのだ。
アトポス退治をしたのは紛れもなくカルロスなのだ。
そして、カルロスが自分の側近の騎士たちにアトポス対策の術を教え、アトポス退治に挑んだ。
「いいや。あれは我がストーム家全体の手柄。アトポス退治の賞金は我々がもらったのだ」
「それにラニーニャさん。あなたはアトポスの皮を手にしたではありませんか。アトポスが欲しくて賞金が欲しかったわけではないでしょう?」
ラニーニャは悔しかった。
賞金とアトポスの皮、両方欲しかった。両方が手に入れば一石二鳥。
「アトポスはわたくしのものですわ」
「もういいよ、ラニーニャ。大人しく出ていこう」
きー!!
悔しいわ!!
勝ち気のラニーニャが負けを認めた瞬間だった。
◇◆◇◆
二人は囚人の服を着せられ、市井へと投げ出された。
そして、ドレスも宝石も毛皮も取り上げられてしまった。
しかし、「何かしら財産はあった方が良いだろう」という事で、アトポスのバッグだけは持たされた。
しかし、ラニーニャは痒みの原因がアトポスにあるのではないか? と思っていた。
「ねぇ、カルロス。アトポス売らない?」
「そうだな。金は必要だ」
二人は街なかをさまよい、アトポスの買い手を見つけた。
『貴重品高価買い取りします』という看板を見つけた。
二人はハイタッチをし、店内へ入った。
「これ、売りたいんですが」
「わかった」
ラニーニャは店主にバッグを手渡した。
店主は品定めをするなり、難しい表情を見せた。
「うーん。申し訳ないがこれは値がつかないね」
「値がつかないということはそれだけ高価なんですか?」
「逆だよ」
「「え!?」」
「これ、アトポスの皮なんですよ?」
しかし、
「アトポスだからこそ、値がつかないんだ」
「アトポスの価値がわからないなんて可哀想な人だわ! 別のお店に行くから良いですわ」
ラニーニャはそう言って店を出た。
アトポスの皮に値がつけられない?
安物?
そんなわけがない!!
また、別なお店に入ったが、やはり結果は同じ。
「えへん。それにしても痒いわ。パイプも吸いたいけれど、パイプは没収されてしまったし。ああ苦しいわ」
「そうだな。ラニーニャ、すまない」
「すまないじゃないわよ。あなたが馬鹿をするからでしょ?」
それにしても痒い。全身が痒い。
特に頭が痒かった。
頭を洗えども、洗えども痒い。
「あー、痒い、痒い、痒い、痒い、痒い、痒い……。それに、顔が痒いから、化粧もできなくなった」
「ごめんな、ラニーニャ」
「うるさいわね。もう離婚よ」
「離婚しても、お前はもう嫁に行けねぇよ」
「何でそんなことあんたにわかるわけ!?」
「お前が強欲だと言うことは王侯貴族では有名だからな」
「何よ!」
「俺の方こそお前など願い下げだね」
「そういや、あんたも顔に傷があるわよ」
「アトポスの仕業だな」
「痒い、痒い、痒い、痒い、痒い……」
かくして、二人は形上の離婚をした。
「俺は盗っ人として行きていた。かくなる上は盗っ人として生きることにした」
ラニーニャはパン屋の前に来た。
パン屋なら、アトポスの皮を喜んでくれるはず?
「これとパン交換してもらえます?」
「申し訳ありませんが、うちは現金のみのお取り引きなんですよね」
「これ、アトポスの皮でできたバッグなんですよ。貴重品なんですよ」
「いいえ。それでも現金でないとダメです」
「アトポスの価値がわからないんですね?」
「いいえ。それにアトポスの皮は痒くなるで有名です」
「なんですって!?」
市井の人がアトポスが痒くなる事を知っている……。
だから、中古品屋は買い取ってくれなかったのか!!
「痒くなる……は誤解ですわよ」
「申し上げにくいですが、あなたの顔、傷だらけですよ」
きー!! なんですって!?
それにしてもお腹すいた……。
ラニーニャは仕方なく、店をあとにした。
お腹が鳴っている。
「このままじゃ餓死してしまう……」
ラニーニャは明日のこともわからないような生活を送る羽目になった。
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