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結婚ラッシュ

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妹のローズ・マリーとジョシュア兵士長がついに結婚することになった。

ローズ・マリーはジョシュア兵士長の事がとても気になっていた。この日をどの位待ち望んだ事でしょう。


晴れ渡る秋の空。

まだまだ蒸し暑いけれど、確実に秋は迫っていた。


「ローズ、おめでとう」

「ありがとう」

「ローズ、おめでとうな」

レイン・ボーも来ていた。


と、同時に侍女のフロリーナと近衛兵であり、これからシャルロッテの護衛を務める事になるアッシュの結婚式も同時に行われた。


シャルロッテはランスロットの婚約者として式に臨んだ。


「おめでとうございますわ、ローズ・マリー様」

「あら、フロリーナ。あなたこそおめでとう」


四人を祝福するかのように、鳥たちが空を舞っていた。


「ジョシュア兵士長様。ローズを宜しくお願いしますわ」

「はい。シャルロッテ様。大切な妹さん、しかと預かりました」

流石は兵士長。歯切れのよい話し方をする。


「さあ、シャルロッテ。式はこれからだ」

「はい、ランスロット王子殿下」


シャルロッテはランスロットの元へと行った。

シャルロッテの左手には指輪が光っている。


ローズ・マリーとフロリーナが結婚とは我が事のように嬉しかった。


結婚式は王室主催で行われた。

ジョシュア兵士長はコノート侯爵として、アッシュはレンスター子爵家としてそれぞれ出ている。

フロリーナは平民だった。

アッシュと結婚する事によって貴族社会へと入ることになる。

しかし、ストーム家シュペルリンク家に仕えていたため、貴族の裏の顔まで知り尽くしている。

なかでも、ストーム家に仕えていたときは、カルロスという男からパワハラを受けていたのだから。

フロリーナは素直な子だった。

カルロスからいくら理不尽な要求をされても、耐えていた。


「フロリーナ。あなたはストーム家にいたときから私に付き添ってくれたよね。本当にありがとうね」

「はい、シャルロッテ様。私はいつまでもシャルロッテ様にお仕い申し上げます」

次は王室でシャルロッテに仕えることが決まっている。

「王宮に仕えるの、夢見ていたんです」

それもそのはず。

王宮に仕える事が許されるのは貴族の出自だけだからだ。

「フロリーナ。あなたはもう貴族夫人なのよ」

「はい」

「これでフロリーナも貴族の仲間入りね。貴族社会は晩餐会や舞踏会などの夜会があるわ。あなたと一緒に参加できることをどんなに待ち望んだ事か」

「はい。シャルロッテ様。私も貴族の仲間入りするなんて思ってもみませんでしたわ」

「そうそう。フロリーナは貴族夫人としてのドレスを持っていなかったわね?」

「そう言えば……」

「私がフロリーナのためにドレスを選んであげるわ。でも、今日のウエディングドレスは素敵よ」

貴族しか袖を通すことが許されない宝石が散りばめられたウエディングドレス。

そして、銀のティアラ。

宝石でできたネックレスや指輪。

すべてが似合っていた。

これまで彼女が平民だったという事を忘れさせるかのように。


「フロリーナさん。似合っているよ」

と、ランスロット。

「ありがとうございます、ランスロット王子殿下」

そして、その横ではローズ・マリーがジョシュア兵士長と一緒にいる。


「ジョシュア。きみの晴れ舞台が見られるなんて夢のようだ」

「ありがとうございます。ランスロット王子殿下」


ジョシュア兵士長はタキシード姿だった。


「ジョシュア兵士長。素敵ですわ」

「はい。シャルロッテ様」

「……様? あれ? 私は伯爵令嬢ですわ。ジョシュア様は候爵ではございませんか?」

「様」には違和感を覚えた。なぜなら、ジョシュアとはまだ主従関係を結んでいないのだから。

「いいえ。ランスロット王子殿下と婚約した手前、わたくしはシャルロッテ様にも仕えることになります」

「確かに私はランスロット王子殿下と婚約していますが……まだシャルロッテでよろしいですわ」


「じゃあ、シャルロッテ・フォン・シュペルリンク」

「はい」

フルネームで呼んでもらえてなんだか嬉しかった。



この結婚式にはストーム公爵とその夫人も呼ばれていた。


ふと、辺りを見回すとストーム公爵のパンとその夫人サラダがいた。


「ねぇ、フロリーナ」

「どうしたんですか?」


「パンとサラダ様がいらっしゃいますわ」

「まあ。カルロスの両親ですわね」



とそこへ、サラダと目が合った。

サラダはこちらへとやってきた。

サラダに罪は無いとはわかっているが、緊張してしまう。


「あらあら。シャルロッテとフロリーナではありませんこと」

「あ……はい。サラダ様」

「この度は息子の勝手な振る舞いを心から謝罪しますわ」


シャルロッテからすれば離婚、フロリーナからすれば解雇。

「いいえ。お義母様……いえ、サラダ様には何の責任はありませんわ」

「私はラニーニャ。あの女に騙されたのよ。礼儀正しくして猫をかぶっていたわ。でも、不自然な厚化粧、香水の匂い。わずかながらの拒否反応はあったんだけどねぇ」

「で、カルロス様とはその後会ったんですか?」


「カルロスは今、牢屋に囚えられていて、面会もできないわ」

牢屋の囚人は面会ができないと聞いている。


「サラダ様」

「どうしたんですの?」

「私はランスロット王子殿下と婚約したのです」


「それはおめでとう」

「ありがとうございます」

「カルロスに酷い目にあわされた分、大切にしてあげて下さいね。ランスロット王子殿下」

「はい!!」



そして、四人の結婚式は厳かに執り行われた。
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