【完結】あなたと婚約破棄をしたお陰で竜の国の王子に愛されました。あなたはどうぞ浮気相手とお幸せに

hikari

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家族会議 ※クルト視点

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俺様はヴィヴィアンと共に両親のいる応接間にいる。

窓の外は相変わらず雨。

父上は足を組み、葉巻を吸いながらこちらを見ている。

何とも威圧的な態度だ。


俺様は父上が怖い。これは有名な話だ。

弟のソルトもそれを知っている。

昔から勘当されてばかりいたからだ。


俺様は子供の頃はガキ大将だった。

ゆえに、悪ふざけもよくしていて、通行人に悪戯を仕掛けていたことがあった。

その度に、父上から叱責されていた。


やはり、勘当されるのは目に見えてわかる。

俺様は滝に打たれる気持ちで応接間に入った。


「これは一体どういうことだ?」

口火を切ったのは父上だった。

「はい。私はアンジェラと婚約破棄をしました。そして、新たに彼女……ヴィヴィアンと婚約を結びました」

俺様は一人称こそ「俺様」だが、目上の人間に対しては「私」と言っている。

こうも一人称がうまく使い分けでいる器用な俺様は自分が好きだ。

「何?」

父上が三白眼の目で俺様を見てくる。

三白眼は紛れもなく父上似なのだ。


「すみません。私が不甲斐ないばかりに」

「すみませんではないだろう!?」

父上は憤慨した。

まあ無理もない。

アンジェラと婚約破棄をして、新たにヴィヴィアンという父上とは全く面識の無い女性を連れているのだから。


「なぜ婚約破棄をしたんだ? クルト」

「はい……それについてですが……」

怖い。俺様は完全に震えている。

「公爵様。申し訳ありません。私が妊娠してしまったんです。それでアンジェラ様とは婚約破棄をせざるを得ない状態になってしまったんです」

横からヴィヴィアンが声を発した。

「なんだと!!」


完全に鬼の形相で父上は俺様を見てきた。

「妊娠させただと? なぜだ? なぜ結婚もしていないのに、性行為に及んだのだ?」

「公爵様。それも私が誘ったんです」

「いや、違うよヴィヴィアン。ヴィヴィアンは悪くない。俺様が悪いんだ。だって酒に酔った勢いで行為に及んでしまったんだからな」


俺様はあの晩、酒をしこたま飲んだ。

嫌なことがあったのだ。

酒場で大柄な男とトラブルになったのだ。

俺様がぶつかってきたなどと因縁をつけられたのだ。


そうさ。俺様は小柄な体型だから、よく喧嘩を売られる。

酒場には平民も来る上に、その酒場のガラは悪い。

「いいえ。お酒を注いだのはこの私です」

「違うぞヴィヴィアン! 私はイラっときて酒を大量に飲んだ。それまでなんだよ」

「なぜヤケ酒をしたんだ?」

「はい。嫌なことがありまして」

「なぜ嫌なことがあった」

「酒場で男に因縁つけられて殴られたからです」

「殴られた? どこの酒場に行ったんだ?」

「『ホワイトアウト』です」

「そこは平民も集まる上にガラが悪いで有名ではないか。なぜそんな酒場に貴族の、しかも公爵たる人間が行くのだ?」

「安くて美味いんです」

事実だ。

酒なんぞに金をかけたくない。

酒は娯楽。それまでだ。

「安いだと? それで平民のいる酒場に行くのか?」

父上は続ける。

「殴った相手というのは貴族令息なのか?」

「いいえ。平民です」

「何故貴族の集まる酒場に行かない? 自分の身分を弁えているのか?」

「はい。公爵という身分に誇りはもっています。しかし、ケチりたいところはケチりたいんです」

「酒をケチる……かぁ」

父上はソファーの肘掛けに腕を乗せた。

「はい。私は節約するところは節約しますので」

「節約?」

父上は眉を吊り上げた。



俺様は酒などに金を使いたくはない。

飲食店にはよく行くが、飲食にはお金はかけない主義なのだ。

で、俺様が何に金を使うかって?

俺様は服飾品に金を使う。

やはり、貴族として身なりは大切だからだ。


俺様は外見には気を使う。だが、食べ物には気を使わない。

俺様は勿論グルメ通ではない。

食事に金を使ってどうするんだか。


そもそも、飲食店で金を使わないには理由がある。

本来、飲食店など行くものではない。

食べるなら、自宅で食べれば良いのだ。

それをなぜわざわざ外に行って食べるのだ?


だが、酒は違う。

家で酒は飲めないからだ。

飲めるのは特別なこと……例えば家族の祝い事があるときに限ってワインを飲むことができる。

それ以外、酒は出ない。

だから、外に飲みに行くのだ。

それに、酒場は社交辞令の場だ。


俺様は医師見習いだ。

父上は王室の従医で内科医だ。

ちなみにアンジェラの父、カーネギー伯爵も王室の従医で、外科医をしている。

ちなみにアンジェラは許嫁で、俺様が5歳の時に既に婚約が決まっていた。

カーネギー家とオルソン家は互いに王室の従医という共通点で、結婚が決まられた。しかも勝手に。俺様の同意も尊重もなく!!

アンジェラも医師見習いだ。


「はい。私は飲食にはお金をかけない主義です」

「だが! 貴族である以上は貴族御用達の店に行くのが道理だろうが」

父上の怒りは収まらないようだ。


「すみません」

「謝って済むと思うな。しかも、なぜ妊娠させた?」

「酔った勢いで」

「それは今聞いた」

「まさか一夜で身ごもるとは思わなかったんです」

「ほう。しかしな。アンジェラと婚約しておきながら、浮気をするとは許しがたい」


俺様はモテる。

アンジェラと婚約こそしていたものの、よくハーレムになっていた。

なぜか女がつくのだ。


そう。俺様はそこそこイケメン。それに、頭も良いし、運動神経も抜群だ。


「ごめんなさい。私が一方的にクルト様を好きになってしまったんです。元は私の片思いだったんです。でも、クルト様は断りきれずに……」

ヴィヴィアンは泣き出してしまった。

俺様はヴィヴィアンの背中を撫でた。


「クルト! お前は昔から『ノー』が言えないタイプだったな。だから、子供の頃から厄介ごとに巻き込まれていたんだよな」

俺様は「ノー」が言えないタイプだった。

なぜなら、「ノー」を言うと嫌われると思ったからだ。


俺様は嫌われることを極度に恐れた。

だからだろうか、厄介事によく巻き込まれたものだ。


「仕方ない。ヴィヴィアン嬢との結婚を認める。しかし。今度浮気をしたら、家を出ていってもらうぞ」

俺様は「ラッキー」と思った。

そうだ。今の俺様にはヴィヴィアンしかいないのだ。
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