婚約破棄されたら、既に婚約者のいる女性と婚約していることが判明しました

hikari

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兄へ アーチュウ視点

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「兄上。サーラとは婚約破棄しました」

実兄であり、国王でもある、ダミアン6世にアーチュウは告げた。

「何!? お前はサーラと婚約破棄だと!?」

「はい。申し訳ございません。サーラとは仲違いしました」

ダミアンは右眉を釣り上げた。

「仲違いだと!?」

「サーラは姉のクロエとは似ても似つかない。俺を裏切った大悪党なんだ」

「なぜだ!? なぜあんなに愛し合っていたのに。今更婚約破棄だと!? 認めない!」

ダミアンは玉座から立ち上がった。そして、紫だった髪をかきあげた。

「しかしです。俺はブリジットと婚約を結びました」

「何だと!?」

ダミアンは小一時間黙り込んでしまった。

「だから、その~、つまり俺はサーラと結婚するのではなく、ブリジットと結婚を…」

ダミアンは口を挟んだ。

「バカ者! これは王室とギーズ家との繋がりだぞ! それをなぜ破るようなマネをするのだ?」

「兄上は恋愛結婚。しかし俺はなぜ生まれながらに許嫁がいるんです? おかしくありませんか?」

ダミアンは恋愛結婚で今の王妃と結婚をした。

しかし、アーチュウは生まれながらにして、ギーズ公爵家のクロエと婚約が決まっていたのだ。理不尽としか思えない。

アーチュウ自身は納得がいかなかった。

――俺だって恋愛結婚したいんだ! 恋愛結婚する権利はあるんだからな!

「しかし、決まりは決まりだ」

「それに……」と言って続けた。「ブリジットにはレニエ家のアドンと既に婚約をしていたのでは!?」

「その事について……ですが、ブリジットは既にアドンと婚約破棄をしていまして」

「婚約者のいる者と婚約を交わすとはお前は恥だ!」

「しかしですよ?」

アーチュウは両腕を組みクルクル回している。

「何がだ?」

「アドンはみるみる太っていっているでは無いですか。ブリジットが嫌気が差すのもわかる気がしますよ」

アーチュウの声は次第にあまったるい声になってきた。

「体型など関係無い! ブリジットとアドンの結婚も我がブルボン王国の王侯貴族が知っている事だ」

「ですが……」

「お前はなぜサーラに嫌気が差した?」

「サーラは私を裏切ったのです」

「どうやって?」

「魔法を頑張ると言いながら、魔法を使いこなせない。私は魔法ができたクロエのような女性と結婚したいと言ったんです」

「魔法ができなければ愛せないのか?」

「はい。ブリジットとは月とスッポンです」

ダミアンは再び玉座に腰を下ろし、長く伸びた顎髭を手ぐしでとかしている。

「それにしてもレニエ家にしてもこの話は問題だな」

「レニエ家もわかっているんじゃないですか? アドンがブリジットに婚約破棄をされた理由が」

アドンがみるみる太っていくのをアーチュウも知っていた。

それに、レニエ家当主も見事な肥満体だ。

やはり、遺伝には敵わない。

レニエ侯爵夫人はどちらかと言えば痩せ型。スラッとしていて背が高い。

アドンは残念ながら母親に似ず、父親に似てしまったのだ。

「レニエ家が肥満だというのは当主を見れば概ねわかるはずだ。ブリジットにも落ち度はある」

「しかし兄上? やはり、急に太ったら誰でも嫌になりますよ」

「じゃあ聞く! ブリジットが太ったら、お前はブリジットと婚約破棄するか?」

「いや。これは硬い絆だ。ブリジットが太っても私はブリジットを愛し続けます」


頭に急に痒みがピーっと走った。

アーチュウは頭を掻いた。

「ブリジットは何より魔法ができる。私の好みの女性は魔法ができる事。体型はその次です」 

アーチュウは再び頭を掻いた。

「それに私はブリジットの笑いが好きなのです。ブリジットが笑った時に見せる八重歯が何よりものチャームポイントだと思いますよ」

「嘘言うな! お前はサーラが笑った時のエクボがチャームポイントだと言ったではないか? それが今度は八重歯か?」

ブリジットが笑う時、チラリと八重歯が見える。ヴァンパイアのような笑顔が何よりも可愛いのだ。

それに比べたら、サーラの笑窪など大した事は無い。

「いや、今はブリジットの八重歯の方が上です」

「レニエ家当主はこの話を知っているのか?」

「わかりません」

「お前は婚約者のいる人から略奪をしたんだぞ? お前自身も婚約者がある身で」

「それは……」

勿論、アーチュウはブリジットに婚約者がいる事は知っていた。

ブリジットの婚約者がレニエ家のご令息という事も知っていた。

しかし、それでもブリジットを愛している。


「勿論承知の上でした。それでもブリジットは私を選んでくれた」

「ブリジットもブリジットだな」

ダミアンは再び立ち上がった。

「被害者はサーラとアドンだな」

「兄上はそれでも私を認めないのですか?」

「私は国王たる身。それにお前とサーラ、アドンとブリジットの結婚は国中が知っている話だ。それを撤回だなんて、なっさけない」

「私もブリジットも恋愛結婚です。それで良いじゃないですか」

「良くない! お前は国中の王侯貴族を裏切るのか!?」

確かに王侯貴族を裏切る事に値する。しかし、撤回は撤回だ。


「撤回は撤回です、兄上!」

「もうよい、下がれ。お前の顔など見たくもない。この王室の面汚しめ!」
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