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レオニード王子と共に

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ヴァレンティーナは応接間でレオニードと二人きりになった。

胸が高鳴る。

異性と二人きりになるなど、久しく無かった……。


「ジュリアン……生きていたんだね!」

「わたくしは……ヴァレンティーナ・ワトソンです。ジュリアン様ではございませんわ」

「いや。きみが余りにもジュリアンに似ていたものだから……」

「そう……なんですか?」

「その大きい鼻の穴。そしてはちみつを溶かしたような金髪にスカイブルーの瞳。そうだよ。きみがその面影があるんだ」

「この穴の大きい鼻はわたくしのコンプレックスだったんです! それが大切な人に見えるんですね?」

「そうだ……」

「わたくしは大切な人の代わりなんかになれませんわ。だってわたくしはわたくしただ一人なのですから」

「でも……僕はきみのような人を探していた。もし、彼女がジュリアンだったら……と夜会で女性と会う度に思っていた。ジュリアンはもう戻っては来ない。そうわかってはいたけれど……」

レオニードは泣き出した。

「でも……きみはきみだね」

涙を拭いながら続けた。

「きみは婚約を破棄されてしまった。何と気の毒な」

「はい。婚約破棄をしました」

「よりにも依ってジョージが浮気をしていたとはな」

レオナードは頬杖をついた。

「わたくしはジョージ様に言われたんです。『きみのことを永遠に愛する』と。そして、こうも言っていました。『浮気は絶対にしない』と。まんまと裏切られましたわ!」

半ば興奮気味に言った。

「う~ん。酷い話だね」

「ほんとうですわ」

「浮気で婚約者を失うのもまた辛いものだ。裏切りだからね」

「本当に……辛かったです。だって……一方的でしたから」


共に婚約者を失った者同士。

話が進むものです。


「お茶でも飲むかい?」

「あ……はい」

(せっかくの好意だから甘えちゃえ)

レオニードは指パッチンをしてコーヒカップを出した。

そして、その上に手をかざし、再び指パッチンをした。

すると、コーヒーカップからお茶が湧き上がってきた。


「はい。どうぞ」

「ありがとうございますわ」

「さあ、飲んで!!」

「はい。いただきます」

ヴァレンティーナはコーヒーカップを啜った。

ほんのり微かに甘いミントティー。

ヴァレンティーナはミントティーが好きだった。


「どうだい? 僕が淹れたお茶は」

「とても美味しいです」

「良かった。きみはミントティーが好きかい?」

「はい、そうですが……」

目の前の人間は全てお見通しであるような感じがしてきた。


「僕は好物は何となくわかるんだ。顔に書いてあるからね」

レオニードは続けた。

「きみとはまた会いたい。いつでもいい。王宮に来てくれるかい?」

「殿下が望むのであれば」

「そうだね。じゃあ、お店がお休みの時に来てね」

「はい。必ず」
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