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漁師の生活
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わたくしは漁師の娘として育つことになりました。
最年長のクリスさんを兄として、わたくしが長女、シンシアが二女という家族構成になりました。
「僕のことは『お兄さん』って呼んでいいよ」
とクリスさんは言ってくれました。
シンシアが妹だなんてどっかの誰かさんとは大違いですこと。
お兄さんができたなんて、なんだか嬉しい。
わたくしはお兄さんが欲しかったんですもの。
そして、家ではいつもポリーさんのお手伝いをしていました。
そうですわ。
平民だから家事は使用人がやってくれる事ではございません。
けれど、実際に家事をやっていると結構楽しいものです。
わたくしは料理の楽しさを覚えました。
わたくしとシンシアは家事に勤しんでいます。
今日は何でもクリスさんが料理を作ってくれるみたいで、わたくしはとても楽しみです。
と、そこに扉が開く音がしました。
ドガッ!!
「戻りました!」
どうやら、クリスさんが漁から戻ったようです。
「ただいま、ポリー」
と、パーシヴァルさん。
「お帰り」
ポリーさんが二人を出迎えました。
日毎に寒くなる中、二人はそれでも漁に出る。
わたくしが貴族令嬢の身分を持っていた時にはいつも当たり前のように食卓に魚がありました。
しかし、クリスさんやパーシヴァルさんのような人がいるからこそ、魚が食べられたんだわ、と思うとありがたい気持ちに満たされました。
「さあ、リンダ、シンシア。クリスと一緒に市場へ魚を売りに行って欲しい」
ポリーさんがそう言うと、クリスさんが
「さあ、行こう!!」
と言いました。
クリスさんのような美青年と行動を共にする。私は胸が高鳴りました。
クリスさんは、かのエイブラハムとは大違いだわ。
身長差はあるけれど、そんなの気にしない、気にしない!
「クリスさん、いつもこうして漁が終わると市場に行っているんですか?」
わたくしは尋ねてみました。
「そうだよ」
クリスさんはニッコリと微笑みました。
やはり、えくぼが何となく気になる。
「何か……変ね」
「シンシア、どうしたの?」
「あのさ。何となく思ったんです」
シンシアが敬語を使い始めた。
「シンシア。どうしたの? 敬語禁止って言わなかったっけ?」
「あのー。クリスさんもどこかの貴族のご子息みたいな感じがしまして……そして私はリンダ様の使用人で」
「あははは。そう言うことだったのか、シンシア。僕は貴族のご令息なんかじゃないよ。しがない漁師の一端さ」
「でも、やはり身分が高そうな風貌で……。あ、でも、お気に触ったならごめんなさい」
シンシアは両手を振って謝る仕草をしました。
「シンシア。よく言われるんだ。多分金髪のストレートヘアだから……だろうね。でも、僕は生まれも育ちもここ、イマロームなんだ」
「そうなんです……ね」
「シンシア。僕も平民さ。敬語なんかいらないよ!!」
「そうよ、シンシア。ここにいる人はみな平民よ」
「あ……ごめんなさい」
シンシアが髪を触りながら謝った。
「いいんだよ、シンシア。リンダも平民の生活を楽しむと良いよ」
と言ってクリスさんがウインクしましたり
「市場ってどこにあるの、クリス」
「ああ。繁華街だよ」
クリスたちの家がある場所も随分と栄えていました。
「結構歩くの?」
シンシアが敬語を解禁したようですわ。
「うん。結構ね」
「今日は大漁だった?」
「うん。大漁だったよ」
街中は人々が忙しなく行き交っている。
時々、小さな子供の泣き声がする。
道端には野良犬や野良猫がいたりする。
途中、食べ物の匂いが鼻を突く。
「これは……」
「シチューの匂いだね」
クリスさんが言った。
「そう。今夜の食事はクリームシチューだよ」
クリスさんが再び微笑んだ。
市場へ着く間、牛車の手綱を握っていたのはクリスさんでした。
そして、わたくしたちは街に着きました。
「さあ、ここだ」
クリスさんは牛車を止めました。
市場は様々な職業の人がいました。
わたくしたちは魚を売るけれど、野菜を売る人や魔法の道具を売る人までいました。
魔法の道具には興味がありました。
わたくしの自慢は魔法ができる事。
学園時代、魔法に於いては右に出る者はいない……まで言われたほど。
しかし、その魔法が出来過ぎてしまった事が仇となってエイブラハム様に婚約破棄をされてしまったわけですが……。
エイブラハム様?
もう、あんなやつに"様"なんてつける必要は無いわ!!
「お兄さん。ここで魚を売るのね?」
「そうだよ」
と言ってお店を広げ始めました。
「お兄ちゃん」
そう呼んだのはシンシア。
「どうしたんだね? シンシア」
「魚をさばく仕事なら私に任せて下さい」
そう。使用人のシンシアは料理が得意。魚をさばくのは朝飯前。
対してわたくしは包丁で魚をさばく事ができません。
でも、できるのは魔法!!
そうです。
魔法で魚をさばくのです。
「お兄さん。わたしは魔法で魚をさばくわね」
「おー!! リンダは魔法ができるんだね」
「えへへ」
何だか照れくさくなりました。
魚を手に取ったシンシアは慣れた手付きで魚をさばいていきました。
クリスさんも同じく、慣れた手付きで魚をさばいていきました。
わたくしは目の前で魚を目にした時!
「ズサラキ!ラーツカ!」
と唱えました。
すると、魚は奇麗に3枚におろせていたのです。
「すっ。凄いな」
クリスさんが驚きました。
「魔法ができるとは驚きだよ。僕は魔法ができる人を尊敬しているんだ」
「どうしてなんですか?」
「その内わかるよ」
と、そこへ見覚えのある人が通りかかりました!!
最年長のクリスさんを兄として、わたくしが長女、シンシアが二女という家族構成になりました。
「僕のことは『お兄さん』って呼んでいいよ」
とクリスさんは言ってくれました。
シンシアが妹だなんてどっかの誰かさんとは大違いですこと。
お兄さんができたなんて、なんだか嬉しい。
わたくしはお兄さんが欲しかったんですもの。
そして、家ではいつもポリーさんのお手伝いをしていました。
そうですわ。
平民だから家事は使用人がやってくれる事ではございません。
けれど、実際に家事をやっていると結構楽しいものです。
わたくしは料理の楽しさを覚えました。
わたくしとシンシアは家事に勤しんでいます。
今日は何でもクリスさんが料理を作ってくれるみたいで、わたくしはとても楽しみです。
と、そこに扉が開く音がしました。
ドガッ!!
「戻りました!」
どうやら、クリスさんが漁から戻ったようです。
「ただいま、ポリー」
と、パーシヴァルさん。
「お帰り」
ポリーさんが二人を出迎えました。
日毎に寒くなる中、二人はそれでも漁に出る。
わたくしが貴族令嬢の身分を持っていた時にはいつも当たり前のように食卓に魚がありました。
しかし、クリスさんやパーシヴァルさんのような人がいるからこそ、魚が食べられたんだわ、と思うとありがたい気持ちに満たされました。
「さあ、リンダ、シンシア。クリスと一緒に市場へ魚を売りに行って欲しい」
ポリーさんがそう言うと、クリスさんが
「さあ、行こう!!」
と言いました。
クリスさんのような美青年と行動を共にする。私は胸が高鳴りました。
クリスさんは、かのエイブラハムとは大違いだわ。
身長差はあるけれど、そんなの気にしない、気にしない!
「クリスさん、いつもこうして漁が終わると市場に行っているんですか?」
わたくしは尋ねてみました。
「そうだよ」
クリスさんはニッコリと微笑みました。
やはり、えくぼが何となく気になる。
「何か……変ね」
「シンシア、どうしたの?」
「あのさ。何となく思ったんです」
シンシアが敬語を使い始めた。
「シンシア。どうしたの? 敬語禁止って言わなかったっけ?」
「あのー。クリスさんもどこかの貴族のご子息みたいな感じがしまして……そして私はリンダ様の使用人で」
「あははは。そう言うことだったのか、シンシア。僕は貴族のご令息なんかじゃないよ。しがない漁師の一端さ」
「でも、やはり身分が高そうな風貌で……。あ、でも、お気に触ったならごめんなさい」
シンシアは両手を振って謝る仕草をしました。
「シンシア。よく言われるんだ。多分金髪のストレートヘアだから……だろうね。でも、僕は生まれも育ちもここ、イマロームなんだ」
「そうなんです……ね」
「シンシア。僕も平民さ。敬語なんかいらないよ!!」
「そうよ、シンシア。ここにいる人はみな平民よ」
「あ……ごめんなさい」
シンシアが髪を触りながら謝った。
「いいんだよ、シンシア。リンダも平民の生活を楽しむと良いよ」
と言ってクリスさんがウインクしましたり
「市場ってどこにあるの、クリス」
「ああ。繁華街だよ」
クリスたちの家がある場所も随分と栄えていました。
「結構歩くの?」
シンシアが敬語を解禁したようですわ。
「うん。結構ね」
「今日は大漁だった?」
「うん。大漁だったよ」
街中は人々が忙しなく行き交っている。
時々、小さな子供の泣き声がする。
道端には野良犬や野良猫がいたりする。
途中、食べ物の匂いが鼻を突く。
「これは……」
「シチューの匂いだね」
クリスさんが言った。
「そう。今夜の食事はクリームシチューだよ」
クリスさんが再び微笑んだ。
市場へ着く間、牛車の手綱を握っていたのはクリスさんでした。
そして、わたくしたちは街に着きました。
「さあ、ここだ」
クリスさんは牛車を止めました。
市場は様々な職業の人がいました。
わたくしたちは魚を売るけれど、野菜を売る人や魔法の道具を売る人までいました。
魔法の道具には興味がありました。
わたくしの自慢は魔法ができる事。
学園時代、魔法に於いては右に出る者はいない……まで言われたほど。
しかし、その魔法が出来過ぎてしまった事が仇となってエイブラハム様に婚約破棄をされてしまったわけですが……。
エイブラハム様?
もう、あんなやつに"様"なんてつける必要は無いわ!!
「お兄さん。ここで魚を売るのね?」
「そうだよ」
と言ってお店を広げ始めました。
「お兄ちゃん」
そう呼んだのはシンシア。
「どうしたんだね? シンシア」
「魚をさばく仕事なら私に任せて下さい」
そう。使用人のシンシアは料理が得意。魚をさばくのは朝飯前。
対してわたくしは包丁で魚をさばく事ができません。
でも、できるのは魔法!!
そうです。
魔法で魚をさばくのです。
「お兄さん。わたしは魔法で魚をさばくわね」
「おー!! リンダは魔法ができるんだね」
「えへへ」
何だか照れくさくなりました。
魚を手に取ったシンシアは慣れた手付きで魚をさばいていきました。
クリスさんも同じく、慣れた手付きで魚をさばいていきました。
わたくしは目の前で魚を目にした時!
「ズサラキ!ラーツカ!」
と唱えました。
すると、魚は奇麗に3枚におろせていたのです。
「すっ。凄いな」
クリスさんが驚きました。
「魔法ができるとは驚きだよ。僕は魔法ができる人を尊敬しているんだ」
「どうしてなんですか?」
「その内わかるよ」
と、そこへ見覚えのある人が通りかかりました!!
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