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二人の社長
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ガイアモンドが取り出した、一枚の写真。テーブルに無造作に置かれたそれを、ムーンはつまらなさそうに一瞥する。しかし、すぐに興味を惹かれて身を起こした。
そこには、赤いドレスでめかし込んだ女性と、黒っぽいスーツを着た青年が映っていた。何かのパーティーか会食から帰るところなのか、随分と小綺麗な格好をしている。彼らはまるで恋人同士のように密着していたが、ムーンの観察眼は、女の腰を抱く男の腕に必要以上の力がこもっていることを看破した。同時に、女の美しい金髪と整った顔立ちを認め、どこかで見た覚えがあると気が付く。だが、男の方は初めて見る人物であった。
「この男は?」
「セイガ。アメジスト出身の投資家だ。まだ若手だが、その資産額は魔界屈指とも言われている。同時に……黒い噂も絶えない」
指を差して尋ねると、ガイアモンドは手元のタブレットを操作し、何かのニュース記事を提示する。記事の冒頭には男の全身を捉えた肖像が、これみよがしに貼り付けられていた。端正だが冷酷そうな面持ちと、ブルーグレーの瞳が読者の方を見据えている。センターパートに分けられた、青い髪が鮮明に映えていた。
「成功している者が妬まれて、悪評をばら撒かれるのは常だけど……君がわざわざ言うくらいだ。余程のことなんだろう?」
ムーンは彼の顔を凝視しながら、顎に手を当てて考える。問いかけられたガイアモンドは、淡々と静かな声で応じた。
「程度で言えば、真っ黒だな。奴は裏の社会との関わりに何の躊躇いも持っていない。むしろ積極的に繋がりを保って、利益を搾り取っている。殺人、拷問、臓器売買……果てはテロリズムまで。金になるなら手段は問わない。どんな事業への投資でも決して惜しまないそうだ。もちろん、表の商売だって真っ当なものじゃない。少し調べただけで、これだけ出てくる」
再び差し出されたタブレットには、レジーナが作成したらしい、長々とした報告書が表示されていた。ムーンは画面をスクロールして、ざっと全体的に目を通す。そして、記されたセイガなる男の悪辣な所業に、驚きと感心の入り混じった複雑な気持ちを抱いた。
彼はムーンが予想したよりも、遥かに優れた知能と経営手腕を持っている男だった。投資のやり方一つを取っても、まさに法の隙間をつついて嘲笑うような、狡猾な手口を用いている。例えば、狙った会社のパワハラ疑惑を証明して、株価を暴落させ買い叩いたり。反対に、曰く付きの土地や建築物を、嘘で固めて売り付けたり。その仕事ぶりは完全に、場末のゴロツキと変わらない。しかしながら、彼の背後に控える大量の”協力者”のおかげで、大々的な非難や検挙から逃れられているらしかった。
「派手にやったものだね……こんなことをしていたら、普通は魔界府に目を付けられるところだが」
「“スポンサー”の多い男だからな。何をしても無事なんだ。莫大な資金を糧に、ありとあらゆる“自由”を手に入れている。罪を犯す自由でさえも」
要するに、彼は必要悪なのだろう。権力者やその周辺の人物が好き放題をして暮らすための、道具となり得る全てに金銭を提供している。見返りとして、彼自身も勝手をして生きることを容認させているのだ。
「しかし、何のために?」
「メレフだよ」
「ん?」
ガイアモンドの端的な返事を飲み込めず、ムーンはわずかに小首を傾げた。説明不足を悟った彼は、形ばかりの笑みと共に続ける。
「正確には、メレフのような連中というべきだな。言っただろう?セイガはテロリズムへの出資も惜しまない。メレフの傍迷惑な実験や、カルマの懸賞金……あれらの金は全部、セイガが工面していたものだ」
久方ぶりに耳にした懐かしい名前が、ムーンの眠っていた思い出を呼び起こした。瞼の裏に、銀髪を長く伸ばした少女のあどけない笑顔が浮かぶ。
メレフの養女カルマは、現在魔界の首都にある児童養護施設で暮らしていた。あまり頻繁に連絡は取っていないが、それでもクリスマスや誕生日にはカードを送る間柄である。だが、可能なことならこのまま互いを忘れ、平穏に過ごしてほしいとも思っていた。無論、一抹の寂寥は隠しきれないが。
彼女のことはさておき、父親を務めていたメレフは紛れもない危険人物だった。音楽家としての仮面の裏で、世界の滅亡なる荒唐無稽な計画を企て、熱心に活動していたピアニスト。そして、彼の支援をしていたのが、写真に映るセイガという男らしい。セイガは複数の名義を用いて、メレフの口座に途方もない額の資金を提供していた。レジーナたちが突き止めた情報が真実なら、同じ方法で他の多くの者たちにも、“協力”してやっているとのことだ。
「なるほどね。だけど何故、顧客たちは彼を止めなかった?いくら便利で金を持っているとしても、世界を滅ぼそうだなんてことに手を貸す狂人を、信用する者はいまい。いつか、自分たちが足を掬われるかも知れないんだから」
ムーンは得心して首を縦に振りつつ、ガイアモンドに質問を投げかけた。彼の疑問も当然だと言いたげに、社長は頷き首筋に手を当てる。
「その辺りは鋭意調査中だが、大方上手く丸め込まれたか、弱みでも握られているんだろう。協力してくれるなら、あなたたちだけは助けるとか何とか……そんなことを言われて尚、反対する高徳な悪魔は稀だ」
「アメジストが、魔界の主要都市の一つが失われるとしても?」
「それこそ望んだ出来事だろう」
尋ね返すと、ガイアモンドはいつになく捨て鉢に、笑い声を響かせ鼻を鳴らした。明らかに辛辣な皮肉った笑みを湛えた彼に、ムーンは怪訝そうな眼差しを向ける。彼の意見は酷く冷たかったが、確かに的を射てもいた。
「彼らにとって、ここは魔界じゃないのさ。自分たちの権力が及ばないからな……僕個人が所有する領土、僕の独裁する小国家みたいに思っているだろう。当然、わざわざ守るべきものにも含めていない。むしろ、誰かに潰されてくれれば上々、勝手に潰れれば万々歳とさえ考えるはずだ」
彼らの生きるこの魔界は、究極の実力主義社会である。魔力を多く持つ者は自在に出世をし、地位や財産を得ることが出来るが、反対に遺伝子で弱者と決まれば、ほとんど何も成し遂げられない。ところが、そんな理不尽な世界に、一筋の光が差した。ガイアモンド率いる<オメガ・クリスタル・コーポレーション>と、彼らが生み出すゲーム。一般的な家庭なら十分購入可能な値段で手に入る娯楽は、すぐに市民を虜にした。生産者には自然に羨望や憧れ、信頼が集まり、会社は一躍話題となった。インペラトルたちにとっては、何より疎ましい状況の完成だ。魔力が多いというだけで、勝ち組と謗られ反感を買われがちな自分たちの前に、弱者にも優しい庶民の味方が現れたのだから。その他の権力者は頻繁に彼と比べられ、余計に非難されることとなった。
このままガイアモンドが力を増していけば、いつか革命が発生するかも知れない。インペラトルたちの間を嫉妬や恐怖、憤激が吹き荒れる一方で、経済を回すオメガ社に表立って文句をつけることも能わなかった。誰かが彼をこっそりと消し去ってくれるのなら、どんな手段を使っても構わない。たとえ多少景気や社会の気運が停滞したとしても、不穏分子が闊歩しているよりは格段にマシだ。そんな考えが、賢く優秀なインペラトルの頭に湧かないはずはなかった。
「僕は別に、正義や英雄主義を信じているわけじゃない。ただ彼らと、馴れ合いたくないだけだ。連中は口先ばかり立派で、世界の導き手を自負しながら、実際には特権の上にふんぞり返ることしかしない。奴らのために働くくらいなら、恨みを買うのを承知してでも、自由にやった方が楽だろうさ」
ガイアモンドもまた、本来の才気を使おうとせず、内輪で群れているだけのインペラトルを嫌悪し、軽蔑さえ抱いていた。彼らの仲間と目されるくらいなら、“契約”も何も結ばず、独力でやっていく方が何倍も快適だった。
「だから、僕は負けられないんだ。奴らの思い通りになって、この会社と社員の住む場所を奪われるわけには……自分の身は、自分で守るしかない」
断固とした口調で語る彼を、ムーンは無言で眺める。そして、思案した。
恐らく、社会への反発しんとプレッシャーが彼を追い詰める一因になっているのは間違いないだろう。とはいえ、彼の声音に滲む戦意や気迫は、既に何年も継続して保たれているものであった。今更、倒れるほどの負担に変化したというのは些か理解し難い。もっと他に、決定打となった出来事があるのではないか。例えば。
「そうやって君を狙う連中の中に、元カノの今カレがいたのがそんなにショックだった?」
「違う!話を聞いてたか?ムーン」
「でも、未練があるんだろう?もらったプレゼント、後生大事に取ってあるじゃないか。万年筆は、そこの机の一番上の引き出しに入れてあるし。他には」
「おい、まさか見たのか?鍵がかかってるんだぞ!?」
「あぁ、あれか。多分壊れてるんだよ。ちょっと強めに引っ張れば開くからね」
「壊したって言うんだ、それは!!」
「……未練があるのは否定しないのかい?」
「ムーンっ!!!」
ニヤニヤと揶揄いの笑みを注ぐムーンに、ガイアモンドは頬を真っ赤に染めて叱責を飛ばした。
そこには、赤いドレスでめかし込んだ女性と、黒っぽいスーツを着た青年が映っていた。何かのパーティーか会食から帰るところなのか、随分と小綺麗な格好をしている。彼らはまるで恋人同士のように密着していたが、ムーンの観察眼は、女の腰を抱く男の腕に必要以上の力がこもっていることを看破した。同時に、女の美しい金髪と整った顔立ちを認め、どこかで見た覚えがあると気が付く。だが、男の方は初めて見る人物であった。
「この男は?」
「セイガ。アメジスト出身の投資家だ。まだ若手だが、その資産額は魔界屈指とも言われている。同時に……黒い噂も絶えない」
指を差して尋ねると、ガイアモンドは手元のタブレットを操作し、何かのニュース記事を提示する。記事の冒頭には男の全身を捉えた肖像が、これみよがしに貼り付けられていた。端正だが冷酷そうな面持ちと、ブルーグレーの瞳が読者の方を見据えている。センターパートに分けられた、青い髪が鮮明に映えていた。
「成功している者が妬まれて、悪評をばら撒かれるのは常だけど……君がわざわざ言うくらいだ。余程のことなんだろう?」
ムーンは彼の顔を凝視しながら、顎に手を当てて考える。問いかけられたガイアモンドは、淡々と静かな声で応じた。
「程度で言えば、真っ黒だな。奴は裏の社会との関わりに何の躊躇いも持っていない。むしろ積極的に繋がりを保って、利益を搾り取っている。殺人、拷問、臓器売買……果てはテロリズムまで。金になるなら手段は問わない。どんな事業への投資でも決して惜しまないそうだ。もちろん、表の商売だって真っ当なものじゃない。少し調べただけで、これだけ出てくる」
再び差し出されたタブレットには、レジーナが作成したらしい、長々とした報告書が表示されていた。ムーンは画面をスクロールして、ざっと全体的に目を通す。そして、記されたセイガなる男の悪辣な所業に、驚きと感心の入り混じった複雑な気持ちを抱いた。
彼はムーンが予想したよりも、遥かに優れた知能と経営手腕を持っている男だった。投資のやり方一つを取っても、まさに法の隙間をつついて嘲笑うような、狡猾な手口を用いている。例えば、狙った会社のパワハラ疑惑を証明して、株価を暴落させ買い叩いたり。反対に、曰く付きの土地や建築物を、嘘で固めて売り付けたり。その仕事ぶりは完全に、場末のゴロツキと変わらない。しかしながら、彼の背後に控える大量の”協力者”のおかげで、大々的な非難や検挙から逃れられているらしかった。
「派手にやったものだね……こんなことをしていたら、普通は魔界府に目を付けられるところだが」
「“スポンサー”の多い男だからな。何をしても無事なんだ。莫大な資金を糧に、ありとあらゆる“自由”を手に入れている。罪を犯す自由でさえも」
要するに、彼は必要悪なのだろう。権力者やその周辺の人物が好き放題をして暮らすための、道具となり得る全てに金銭を提供している。見返りとして、彼自身も勝手をして生きることを容認させているのだ。
「しかし、何のために?」
「メレフだよ」
「ん?」
ガイアモンドの端的な返事を飲み込めず、ムーンはわずかに小首を傾げた。説明不足を悟った彼は、形ばかりの笑みと共に続ける。
「正確には、メレフのような連中というべきだな。言っただろう?セイガはテロリズムへの出資も惜しまない。メレフの傍迷惑な実験や、カルマの懸賞金……あれらの金は全部、セイガが工面していたものだ」
久方ぶりに耳にした懐かしい名前が、ムーンの眠っていた思い出を呼び起こした。瞼の裏に、銀髪を長く伸ばした少女のあどけない笑顔が浮かぶ。
メレフの養女カルマは、現在魔界の首都にある児童養護施設で暮らしていた。あまり頻繁に連絡は取っていないが、それでもクリスマスや誕生日にはカードを送る間柄である。だが、可能なことならこのまま互いを忘れ、平穏に過ごしてほしいとも思っていた。無論、一抹の寂寥は隠しきれないが。
彼女のことはさておき、父親を務めていたメレフは紛れもない危険人物だった。音楽家としての仮面の裏で、世界の滅亡なる荒唐無稽な計画を企て、熱心に活動していたピアニスト。そして、彼の支援をしていたのが、写真に映るセイガという男らしい。セイガは複数の名義を用いて、メレフの口座に途方もない額の資金を提供していた。レジーナたちが突き止めた情報が真実なら、同じ方法で他の多くの者たちにも、“協力”してやっているとのことだ。
「なるほどね。だけど何故、顧客たちは彼を止めなかった?いくら便利で金を持っているとしても、世界を滅ぼそうだなんてことに手を貸す狂人を、信用する者はいまい。いつか、自分たちが足を掬われるかも知れないんだから」
ムーンは得心して首を縦に振りつつ、ガイアモンドに質問を投げかけた。彼の疑問も当然だと言いたげに、社長は頷き首筋に手を当てる。
「その辺りは鋭意調査中だが、大方上手く丸め込まれたか、弱みでも握られているんだろう。協力してくれるなら、あなたたちだけは助けるとか何とか……そんなことを言われて尚、反対する高徳な悪魔は稀だ」
「アメジストが、魔界の主要都市の一つが失われるとしても?」
「それこそ望んだ出来事だろう」
尋ね返すと、ガイアモンドはいつになく捨て鉢に、笑い声を響かせ鼻を鳴らした。明らかに辛辣な皮肉った笑みを湛えた彼に、ムーンは怪訝そうな眼差しを向ける。彼の意見は酷く冷たかったが、確かに的を射てもいた。
「彼らにとって、ここは魔界じゃないのさ。自分たちの権力が及ばないからな……僕個人が所有する領土、僕の独裁する小国家みたいに思っているだろう。当然、わざわざ守るべきものにも含めていない。むしろ、誰かに潰されてくれれば上々、勝手に潰れれば万々歳とさえ考えるはずだ」
彼らの生きるこの魔界は、究極の実力主義社会である。魔力を多く持つ者は自在に出世をし、地位や財産を得ることが出来るが、反対に遺伝子で弱者と決まれば、ほとんど何も成し遂げられない。ところが、そんな理不尽な世界に、一筋の光が差した。ガイアモンド率いる<オメガ・クリスタル・コーポレーション>と、彼らが生み出すゲーム。一般的な家庭なら十分購入可能な値段で手に入る娯楽は、すぐに市民を虜にした。生産者には自然に羨望や憧れ、信頼が集まり、会社は一躍話題となった。インペラトルたちにとっては、何より疎ましい状況の完成だ。魔力が多いというだけで、勝ち組と謗られ反感を買われがちな自分たちの前に、弱者にも優しい庶民の味方が現れたのだから。その他の権力者は頻繁に彼と比べられ、余計に非難されることとなった。
このままガイアモンドが力を増していけば、いつか革命が発生するかも知れない。インペラトルたちの間を嫉妬や恐怖、憤激が吹き荒れる一方で、経済を回すオメガ社に表立って文句をつけることも能わなかった。誰かが彼をこっそりと消し去ってくれるのなら、どんな手段を使っても構わない。たとえ多少景気や社会の気運が停滞したとしても、不穏分子が闊歩しているよりは格段にマシだ。そんな考えが、賢く優秀なインペラトルの頭に湧かないはずはなかった。
「僕は別に、正義や英雄主義を信じているわけじゃない。ただ彼らと、馴れ合いたくないだけだ。連中は口先ばかり立派で、世界の導き手を自負しながら、実際には特権の上にふんぞり返ることしかしない。奴らのために働くくらいなら、恨みを買うのを承知してでも、自由にやった方が楽だろうさ」
ガイアモンドもまた、本来の才気を使おうとせず、内輪で群れているだけのインペラトルを嫌悪し、軽蔑さえ抱いていた。彼らの仲間と目されるくらいなら、“契約”も何も結ばず、独力でやっていく方が何倍も快適だった。
「だから、僕は負けられないんだ。奴らの思い通りになって、この会社と社員の住む場所を奪われるわけには……自分の身は、自分で守るしかない」
断固とした口調で語る彼を、ムーンは無言で眺める。そして、思案した。
恐らく、社会への反発しんとプレッシャーが彼を追い詰める一因になっているのは間違いないだろう。とはいえ、彼の声音に滲む戦意や気迫は、既に何年も継続して保たれているものであった。今更、倒れるほどの負担に変化したというのは些か理解し難い。もっと他に、決定打となった出来事があるのではないか。例えば。
「そうやって君を狙う連中の中に、元カノの今カレがいたのがそんなにショックだった?」
「違う!話を聞いてたか?ムーン」
「でも、未練があるんだろう?もらったプレゼント、後生大事に取ってあるじゃないか。万年筆は、そこの机の一番上の引き出しに入れてあるし。他には」
「おい、まさか見たのか?鍵がかかってるんだぞ!?」
「あぁ、あれか。多分壊れてるんだよ。ちょっと強めに引っ張れば開くからね」
「壊したって言うんだ、それは!!」
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