30 / 85
グシオンの思惑
しおりを挟む
「セイガは生まれ故郷アメジストに、また戻ってきたってわけだ。何のためかは知らねぇが、そう長くいるとも思えねぇ。暮らしてた時間で見りゃ、ハデスかヘルヘムのがよっぽど長いんだからな……パーッと暴れて派手に稼いだら、すぐに古巣に帰るんだろ。ここじゃ、どんなに頑張ったって首都に代わるほどの儲けは出ねぇからな~」
グシオンは椅子の背もたれに腕を引っ掛け、大儀そうに呻いて肩を竦める。彼は散々勝手に好きなことを喋った後、唐突に二人に向き直ると早口に付け足した。
「ヘリオス・ラムダもいることだしな」
分かりやすい媚びへつらいに、ムーンは全く反応を返さない。何かを深く考え込んでいる様子の彼に代わり、レジーナが口を開いた。
「セイガは他の街で、どんな連中と関わってきたの?金になるなら手段は問わない、合理的な性格らしいけど」
「合理的っつか、もはや変態だな。超がつくほどのサド侯爵さ」
彼女の言い分では生ぬるいと、グシオンは手を振って否定する。
「奴は裏の社会でも指折りの冷血漢だ。テロ活動、人身売買、臓器売買、麻薬の流通……世に犯罪と憎悪の種を撒くためなら、どんな顧客だって歓迎する。時には多少足が出ても、太っ腹に援助してくれるそうだ。全く、あんたらの社長とは正反対じゃねぇか。奴は皆の先頭に立つ英雄じゃなく、陰に潜む指導者のつもりなんだから。ほら、確か映画でもあったな?ゴッドファーザーとかジョー何とかっていう」
「ゴッドファーザー……」
彼はふざけて例えを用いたが、それこそがムーンの脳に決定的な閃きを与えた。彼は以前にも、その単語を耳にしたことがあると思い出したのだ。あの時、あの男を追い詰めて尋問した時に。
『私には、スポンサーがいた。莫大な金と、情報網で裏の世界を牛耳る……洗礼者のような男がな』
彼は何者かに狙撃される直前、確かにその言葉を使っていた。だが、詳細を確認するよりも早く、飛来した銃弾が全てを葬り去ってしまった。結局、正確なことは何一つ分からず、現在まで謎として記憶の中に残っている。
しかし、グシオンの情報が真実ならば、やはりメレフの背後にいたのはセイガである可能性が高い。もしかしたら、彼はメレフの一件がきっかけで、アメジストに食指を伸ばしたのかも知れなかった。多額の金を注ぎ込んで支援した事業が失敗したために、今度こそは成功に導き、損失を取り戻そうと画策している……
「ということか?」
「だから、そこまでは知らねぇって。俺に聞くなよ」
思わず独り言ちるが、グシオンは憮然としてあしらうだけであった。ムーンは彼の反論には答えず、再び思索の沼へと頭から沈んでいく。仕方なしに、もう一度レジーナが質問を投げかけた。
「あなたの話が嘘ではないという証拠はあるの?」
「ないよ」
冷淡な声音で尋ねてくる彼女を、グシオンはさも当たり前のように見遣る。鼻を鳴らして軽蔑の表情さえ浮かべる彼に、レジーナの頬が苛立ちでひくついた。彼女の気持ちを鋭く察したグシオンは、両方の手で顔を支えながら続ける。
「逆にあると思ったのか?姉ちゃん。俺だって、奴の顔を直接拝んだことはねぇんだぜ?都市伝説みたいなもんだよ。実在するのかも分からねぇ……だからこそ、確かめてみたいと思わないか?実しやかに囁かれる噂話が、本物かどうか」
「オカルトに付き合っている暇はない。その程度の信憑性なら、話を聞くだけ無駄だったようだな。行こう、レジーナ」
軽薄な態度が気に障ったのか、唐突にムーンが口を挟むと、レジーナの腕を取って椅子から立ち上がらせる。
「おい待てよ!!」
そのまま店を出て行こうとした彼らの背中に、グシオンの大声が浴びせられた。彼はツカツカと革靴を鳴らして追ってくると、ムーンの肩を強く掴み力尽くで振り返らせる。どうやら、信頼を得られなかったことが相当不満だったらしい。
「無理矢理口割らせといて、挙句がこれか?こっちだってリスク負ってんだよ。あんたらみたいな連中にペラペラ喋ったのがバレたら、俺が面倒なことになる」
「だったら尚更信じられないな。奴らの敵になることを恐れて、出まかせの嘘八百を並べ立てたのではないと、どうやって証明する?」
押し殺したような声で主張する彼に、ムーンはゆっくりと、しかし有無を言わさぬ調子で首を振ってみせた。グシオンは腹立たしげに眉を寄せ、今にも怒号を発しそうではあったが、咄嗟に踏み留まって自制する。
「……ペン、貸せ」
彼の要望に、ムーンは応えることが出来なかった。目顔でさりげなく訴えられ、呆れた様子のレジーナが愛用の万年筆をグシオンに渡す。グシオンはすぐさま付近のテーブルから紙ナプキンを一枚取ると、紙面に何やら絵図のようなものを描き始めた。そこにはたちまち、不格好ながらも簡潔で明瞭な地図が表れる。彼は最後に息を吹きかけてインクを乾かすと、ムーンに紙を差し出した。
「アレキサ地区にあるキャサリンってハプバー。看板や店名は出てねぇ。入り口のイルカのネオンが目印だ。バックヤードの奥に地下通路があって、その先にVIPだけが入れる特別室があるんだと。セイガのアジトはそこだ。俺の話が嘘か本当か、そこに行ってみりゃ分かんだろ?」
ムーンは受け取った物をスーツの内ポケットに仕舞うと、彼の瞳を見つめた。
「君は行ったのかい?」
「何度かな。だけど結局、会えず終いさ。あんた、もしセイガに会ったら、後で俺にも教えてくれよ。儲かるビジネスについて、二人で論じるんだから、なっ」
グシオンは馴れ馴れしくムーンの背中を叩くと、先程までの憤りも忘れて、大股に歩いて店を後にする。勘定を払っていかなかったと、レジーナが発見した頃にはもう遅かった。
「全く、本当にどうしようもない男ね……食い逃げだなんて、今度会ったら張り倒してやるわ!」
駅まで歩く道すがら、レジーナが悔しげに自身の拳を掌に打ち付ける。苛烈な反応に苦笑いをこぼしつつ、ムーンは彼女を宥めた。
「まぁまぁ、いいじゃないか。彼のおかげで、貴重な情報が得られた。早速今夜にでも行ってみるよ」
「待ってよ、ムーン。あんな男の言葉を信じるっていうの?」
平然と語るムーンだったが、レジーナはそう簡単には納得しない。彼女は突然彼の前に立ち塞がると、彼を激しく詰問した。ところが、彼女はすぐに反駁されて口ごもってしまう。
「逆に君は、どうして信用しないんだ?」
「どうしてって……」
あまりにも淡々と尋ねられたことに戸惑い、レジーナは少しの間躊躇ってから、根拠となり得る要素を抜き出して捲し立てた。
「私たちが必死で調べても、セイガの情報は見つからなかったのよ!?アメジストに来ていることすら、あなたから聞くまで掴めなかった!それなのに、あんな三下の小悪党が、口が上手いってだけで簡単に辿り着けるものかしら?信頼がどうとか言ってたけど、大体あの男からして、胡散臭さの塊じゃない!」
「君の言い分も分からないでもないけど……僕は、彼の意見にも同意出来るよ」
彼女はすかさず訴えるが、ムーンはあくまで形ばかりの共感しか示さない。彼は不思議そうに首を傾げるレジーナを見下ろし、慎重に説明を加えた。
「裏の世界は、表の世界よりも格段に用心を必要とする。大きな事件や巨額の金が絡む話なら、余計にね。だから、君の情報網にセイガのことが引っかからないのも、当然と言えばその通りなんだ。今日昨日出会ったばかりの他人に、打ち明け話をする者は滅多にいないからね。でも、グシオンはそんな相手の懐に易々と入り込んだ。それだけで、彼の能力の程度は十分理解出来る」
彼ほどに頭が切れて、対人スキルの高い人物はヘリオス・ラムダにも多くはない。ましてや、レジーナでも調べられない情報を握っているというのは、アメジスト全体においても稀なはずであった。その彼にムーンを欺くつもりがあったのなら、もっと強固な証拠なり担保なりを用意している方が自然だろう。疑われる危険を冒してわざわざ下手な嘘をつくというのは、彼の知能と技術に見合わない愚行だった。
「で、でも、適当なことを言ったのではないと、どうやって分かるの?罠かも知れないじゃない」
「……やってみれば分かるさ」
とはいえ、ムーンのほとんど博打じみた考えを、レジーナが諾えないも当たり前のことではある。彼は次第に説得するのも面倒になってきて、適当な返事で議論を切り上げるとスタスタ歩き出した。レジーナは慌てて、彼の後を追いかける。
「待ちなさい!」
ヒールの音が小走りについてくるのを聞く傍ら、ムーンは無意識に懐に手を伸ばし、突然立ち止まる。真後ろに迫っていたレジーナが、止まりきれずに彼の背に衝突する。
「痛っ、何よ!」
「……銃がない」
「えっ!?」
二人は素早く振り返るが、無論そこにグシオンがいるわけはなかった。ただ休日の昼間の、晴れ渡った空と真っ直ぐに伸びた道があるだけだ。忙しなく行き交う人々の狭間に、彼の特徴的な姿が隠れていることもない。
「全く……手癖の悪い猿だ」
「あっ、私も万年筆盗られたわ!!」
恐らく、背中を叩かれた隙にポケットから掠め取られたのだろう。相変わらずの早業に、ムーンは怒りを通り越して感心を覚える。同様に愛用の品を盗まれたレジーナも、憤激の叫びを上げたが今となってはなす術もなかった。
グシオンは椅子の背もたれに腕を引っ掛け、大儀そうに呻いて肩を竦める。彼は散々勝手に好きなことを喋った後、唐突に二人に向き直ると早口に付け足した。
「ヘリオス・ラムダもいることだしな」
分かりやすい媚びへつらいに、ムーンは全く反応を返さない。何かを深く考え込んでいる様子の彼に代わり、レジーナが口を開いた。
「セイガは他の街で、どんな連中と関わってきたの?金になるなら手段は問わない、合理的な性格らしいけど」
「合理的っつか、もはや変態だな。超がつくほどのサド侯爵さ」
彼女の言い分では生ぬるいと、グシオンは手を振って否定する。
「奴は裏の社会でも指折りの冷血漢だ。テロ活動、人身売買、臓器売買、麻薬の流通……世に犯罪と憎悪の種を撒くためなら、どんな顧客だって歓迎する。時には多少足が出ても、太っ腹に援助してくれるそうだ。全く、あんたらの社長とは正反対じゃねぇか。奴は皆の先頭に立つ英雄じゃなく、陰に潜む指導者のつもりなんだから。ほら、確か映画でもあったな?ゴッドファーザーとかジョー何とかっていう」
「ゴッドファーザー……」
彼はふざけて例えを用いたが、それこそがムーンの脳に決定的な閃きを与えた。彼は以前にも、その単語を耳にしたことがあると思い出したのだ。あの時、あの男を追い詰めて尋問した時に。
『私には、スポンサーがいた。莫大な金と、情報網で裏の世界を牛耳る……洗礼者のような男がな』
彼は何者かに狙撃される直前、確かにその言葉を使っていた。だが、詳細を確認するよりも早く、飛来した銃弾が全てを葬り去ってしまった。結局、正確なことは何一つ分からず、現在まで謎として記憶の中に残っている。
しかし、グシオンの情報が真実ならば、やはりメレフの背後にいたのはセイガである可能性が高い。もしかしたら、彼はメレフの一件がきっかけで、アメジストに食指を伸ばしたのかも知れなかった。多額の金を注ぎ込んで支援した事業が失敗したために、今度こそは成功に導き、損失を取り戻そうと画策している……
「ということか?」
「だから、そこまでは知らねぇって。俺に聞くなよ」
思わず独り言ちるが、グシオンは憮然としてあしらうだけであった。ムーンは彼の反論には答えず、再び思索の沼へと頭から沈んでいく。仕方なしに、もう一度レジーナが質問を投げかけた。
「あなたの話が嘘ではないという証拠はあるの?」
「ないよ」
冷淡な声音で尋ねてくる彼女を、グシオンはさも当たり前のように見遣る。鼻を鳴らして軽蔑の表情さえ浮かべる彼に、レジーナの頬が苛立ちでひくついた。彼女の気持ちを鋭く察したグシオンは、両方の手で顔を支えながら続ける。
「逆にあると思ったのか?姉ちゃん。俺だって、奴の顔を直接拝んだことはねぇんだぜ?都市伝説みたいなもんだよ。実在するのかも分からねぇ……だからこそ、確かめてみたいと思わないか?実しやかに囁かれる噂話が、本物かどうか」
「オカルトに付き合っている暇はない。その程度の信憑性なら、話を聞くだけ無駄だったようだな。行こう、レジーナ」
軽薄な態度が気に障ったのか、唐突にムーンが口を挟むと、レジーナの腕を取って椅子から立ち上がらせる。
「おい待てよ!!」
そのまま店を出て行こうとした彼らの背中に、グシオンの大声が浴びせられた。彼はツカツカと革靴を鳴らして追ってくると、ムーンの肩を強く掴み力尽くで振り返らせる。どうやら、信頼を得られなかったことが相当不満だったらしい。
「無理矢理口割らせといて、挙句がこれか?こっちだってリスク負ってんだよ。あんたらみたいな連中にペラペラ喋ったのがバレたら、俺が面倒なことになる」
「だったら尚更信じられないな。奴らの敵になることを恐れて、出まかせの嘘八百を並べ立てたのではないと、どうやって証明する?」
押し殺したような声で主張する彼に、ムーンはゆっくりと、しかし有無を言わさぬ調子で首を振ってみせた。グシオンは腹立たしげに眉を寄せ、今にも怒号を発しそうではあったが、咄嗟に踏み留まって自制する。
「……ペン、貸せ」
彼の要望に、ムーンは応えることが出来なかった。目顔でさりげなく訴えられ、呆れた様子のレジーナが愛用の万年筆をグシオンに渡す。グシオンはすぐさま付近のテーブルから紙ナプキンを一枚取ると、紙面に何やら絵図のようなものを描き始めた。そこにはたちまち、不格好ながらも簡潔で明瞭な地図が表れる。彼は最後に息を吹きかけてインクを乾かすと、ムーンに紙を差し出した。
「アレキサ地区にあるキャサリンってハプバー。看板や店名は出てねぇ。入り口のイルカのネオンが目印だ。バックヤードの奥に地下通路があって、その先にVIPだけが入れる特別室があるんだと。セイガのアジトはそこだ。俺の話が嘘か本当か、そこに行ってみりゃ分かんだろ?」
ムーンは受け取った物をスーツの内ポケットに仕舞うと、彼の瞳を見つめた。
「君は行ったのかい?」
「何度かな。だけど結局、会えず終いさ。あんた、もしセイガに会ったら、後で俺にも教えてくれよ。儲かるビジネスについて、二人で論じるんだから、なっ」
グシオンは馴れ馴れしくムーンの背中を叩くと、先程までの憤りも忘れて、大股に歩いて店を後にする。勘定を払っていかなかったと、レジーナが発見した頃にはもう遅かった。
「全く、本当にどうしようもない男ね……食い逃げだなんて、今度会ったら張り倒してやるわ!」
駅まで歩く道すがら、レジーナが悔しげに自身の拳を掌に打ち付ける。苛烈な反応に苦笑いをこぼしつつ、ムーンは彼女を宥めた。
「まぁまぁ、いいじゃないか。彼のおかげで、貴重な情報が得られた。早速今夜にでも行ってみるよ」
「待ってよ、ムーン。あんな男の言葉を信じるっていうの?」
平然と語るムーンだったが、レジーナはそう簡単には納得しない。彼女は突然彼の前に立ち塞がると、彼を激しく詰問した。ところが、彼女はすぐに反駁されて口ごもってしまう。
「逆に君は、どうして信用しないんだ?」
「どうしてって……」
あまりにも淡々と尋ねられたことに戸惑い、レジーナは少しの間躊躇ってから、根拠となり得る要素を抜き出して捲し立てた。
「私たちが必死で調べても、セイガの情報は見つからなかったのよ!?アメジストに来ていることすら、あなたから聞くまで掴めなかった!それなのに、あんな三下の小悪党が、口が上手いってだけで簡単に辿り着けるものかしら?信頼がどうとか言ってたけど、大体あの男からして、胡散臭さの塊じゃない!」
「君の言い分も分からないでもないけど……僕は、彼の意見にも同意出来るよ」
彼女はすかさず訴えるが、ムーンはあくまで形ばかりの共感しか示さない。彼は不思議そうに首を傾げるレジーナを見下ろし、慎重に説明を加えた。
「裏の世界は、表の世界よりも格段に用心を必要とする。大きな事件や巨額の金が絡む話なら、余計にね。だから、君の情報網にセイガのことが引っかからないのも、当然と言えばその通りなんだ。今日昨日出会ったばかりの他人に、打ち明け話をする者は滅多にいないからね。でも、グシオンはそんな相手の懐に易々と入り込んだ。それだけで、彼の能力の程度は十分理解出来る」
彼ほどに頭が切れて、対人スキルの高い人物はヘリオス・ラムダにも多くはない。ましてや、レジーナでも調べられない情報を握っているというのは、アメジスト全体においても稀なはずであった。その彼にムーンを欺くつもりがあったのなら、もっと強固な証拠なり担保なりを用意している方が自然だろう。疑われる危険を冒してわざわざ下手な嘘をつくというのは、彼の知能と技術に見合わない愚行だった。
「で、でも、適当なことを言ったのではないと、どうやって分かるの?罠かも知れないじゃない」
「……やってみれば分かるさ」
とはいえ、ムーンのほとんど博打じみた考えを、レジーナが諾えないも当たり前のことではある。彼は次第に説得するのも面倒になってきて、適当な返事で議論を切り上げるとスタスタ歩き出した。レジーナは慌てて、彼の後を追いかける。
「待ちなさい!」
ヒールの音が小走りについてくるのを聞く傍ら、ムーンは無意識に懐に手を伸ばし、突然立ち止まる。真後ろに迫っていたレジーナが、止まりきれずに彼の背に衝突する。
「痛っ、何よ!」
「……銃がない」
「えっ!?」
二人は素早く振り返るが、無論そこにグシオンがいるわけはなかった。ただ休日の昼間の、晴れ渡った空と真っ直ぐに伸びた道があるだけだ。忙しなく行き交う人々の狭間に、彼の特徴的な姿が隠れていることもない。
「全く……手癖の悪い猿だ」
「あっ、私も万年筆盗られたわ!!」
恐らく、背中を叩かれた隙にポケットから掠め取られたのだろう。相変わらずの早業に、ムーンは怒りを通り越して感心を覚える。同様に愛用の品を盗まれたレジーナも、憤激の叫びを上げたが今となってはなす術もなかった。
0
あなたにおすすめの小説
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
香死妃(かしひ)は香りに埋もれて謎を解く
液体猫
キャラ文芸
第8回キャラ文芸大賞にて奨励賞受賞しました(^_^)/
香を操り、死者の想いを知る一族がいる。そう囁かれたのは、ずっと昔の話だった。今ではその一族の生き残りすら見ず、誰もが彼ら、彼女たちの存在を忘れてしまっていた。
ある日のこと、一人の侍女が急死した。原因は不明で、解決されないまま月日が流れていき……
その事件を解決するために一人の青年が動き出す。その過程で出会った少女──香 麗然《コウ レイラン》──は、忘れ去られた一族の者だったと知った。
香 麗然《コウ レイラン》が後宮に現れた瞬間、事態は動いていく。
彼女は香りに秘められた事件を解決。ついでに、ぶっきらぼうな青年兵、幼い妃など。数多の人々を無自覚に誑かしていった。
テンパると田舎娘丸出しになる香 麗然《コウ レイラン》と謎だらけの青年兵がダッグを組み、数々の事件に挑んでいく。
後宮の闇、そして人々の想いを描く、後宮恋愛ミステリーです。
シリアス成分が少し多めとなっています。
明治かんなぎ少女の冥契 五百年の時を超えて、あなたに愛を
花籠しずく
キャラ文芸
――ですが、わたくしは生まれました。あなたに会うために。
月のものが来るようになってから、琥珀は不思議な夢を見る。誰かに探されている夢。きっと大切な人だったことは分かるのに、目が覚めると朧気で何も思い出せない。婚約者である志貴の言いなりの人形になる生活をし、生家とは会うと脅され、心が疲弊していたある日、家からひとり抜け出すと、妖魔のようなものに出会う。呪術師である志貴に、一時祓ってもらいはしたが、不思議と心が痛む。夢に美しい男が現れ、声に導かれるようにして、ある山のふもとの、廃れた神社の中に入ると、そこには苦しそうに蹲るあの妖魔がいた。琥珀はそれが夢に現れた、蘿月という男だと直感する。全身が黒い靄で包まれた彼の、靄を払う方法を、どうしてか琥珀は知っていた。口づけをし、息を吹き込むように、生きて、と願った。
帰ってすぐに志貴に殴られ、月のものがはじまっていたことが志貴にばれる。琥珀を穢そうとする志貴の様子に恐ろしさを覚えて、助けてと叫んだその瞬間、闇を裂くようにして、蘿月が現れた。
「琥珀は、俺が五百年待ち望んだ花嫁だ」
これは、時を超えて紡がれる愛の物語。そして虐げられた少女が、愛を知り、愛のために生きる自由を選ぶ物語。
※R-15っぽいゆるい性描写があります。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
炎華繚乱 ~偽妃は後宮に咲く~
悠井すみれ
キャラ文芸
昊耀国は、天より賜った《力》を持つ者たちが統べる国。後宮である天遊林では名家から選りすぐった姫たちが競い合い、皇子に選ばれるのを待っている。
強い《遠見》の力を持つ朱華は、とある家の姫の身代わりとして天遊林に入る。そしてめでたく第四皇子・炎俊の妃に選ばれるが、皇子は彼女が偽物だと見抜いていた。しかし炎俊は咎めることなく、自身の秘密を打ち明けてきた。「皇子」を名乗って帝位を狙う「彼」は、実は「女」なのだと。
お互いに秘密を握り合う仮初の「夫婦」は、次第に信頼を深めながら陰謀渦巻く後宮を生き抜いていく。
表紙は同人誌表紙メーカーで作成しました。
第6回キャラ文芸大賞応募作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる