55 / 85
終幕の引き延ばし
しおりを挟む
ビルに設置された大時計の正体は、かなりの容量の魔力を貯蔵出来る魔力電池だった。そこに蓄えられた膨大な魔力を源として、ガイアモンドは会社を守るためのあらゆる魔法をプログラムしていたのだ。例えば今回のように、外との物理的または電子的なアクセスを遮断したり、室内での魔力の行使を封じたり。天井や壁を補強して、建物全体が倒壊しないよう統御することも出来る。一連の魔法は短剣を差し込むと起動し、専用のパスコードとガイアモンドの指紋を認証することによって、手動の操作やプログラムの解除を行える仕組みになっていた。
受付に置かれていたパソコンを大時計と接続し、パスコードを打ち込んだガイアモンドは、自動で展開された魔法を一つずつ確認する。出入り口の封鎖を解けと指示すると、隙間なく閉ざされていたシャッターや、ガラス壁を覆っていた鉄格子がゆっくりと元に戻り始めた。ただし、建物中に展開されている、“室内統御”の魔法は維持させたままだ。でなければ、亀裂の入った瓦礫が崩れて、下にいる者たちを圧死させかねない。
「ふぅ……どうにかなったな」
必要な操作を完了させたガイアモンドが、安堵の息を漏らして床にへたり込む。彼の背後で、セイガたちの潜ったシャッターが上昇を始め、道を再び通行可能にした。後に残されているのはガイアモンドたちと、未だ気を失ったままの部下数人だけである。意識のある者たちは皆、痛む体に鞭を打って主君を追いかけていったらしい。
「無事かしらン、社長?今、自由にしてあげるわヨ」
すかさず寄ってきたネプチューンが、気安い態度でガイアモンドの肩を叩く。
「あぁ、助かるよ。ネプチューン」
ガイアモンドは彼に頷きを返して、戒められた手首を差し出した。敵の誰かから奪い取ったナイフで拘束を解いてやりながら、ネプチューンは感心した調子で呻く。
「それにしても、こんなことが起きるなんて知らなかったわ。あんな針のない時計、ただのオブジェだと思っていたわヨ」
「黙っていたのは謝るよ。だが、これだけの重要な情報を、簡単に話すわけにはいかなかった。さっきそこの彼にも言われたが……おい、大丈夫か?ムーン」
彼の呟きに応えかけて、ガイアモンドは何気なくもう一人の方を見遣った。そこには先程から微動だにせずに、同じ位置に立ち尽くしているムーンの姿がある。
「ガイアモンド……」
意外なことに、彼は負傷している割には健康的な顔色を保っていた。怪我をしている足を庇い不安定な歩みで近付くと、ガイアモンドの黒い瞳を鋭く射抜く。
「何故、彼らを逃した?本当に良かったのか?セイガは君を深く恨んでいる……奴は長い時間をかけて着実に、街の平和を乱してきた。全ては、君に復讐をするために。たった一人の命を奪うためだけに、ここまでのことをしたんだ。奴の流通させた麻薬のせいで、娘の人生まで狂わされるところだった!」
彼はガイアモンドの肩を掴むと、珍しく硬い声音で捲し立てた。だが、無理もないだろう。ムーンはセイガの持つ危険性や残虐性を、最も間近で体験している人物の一人だ。おまけに、大切な家族まで巻き込まれかけて、抑えきれない憤りを感じてもいる。しかし、穏やかな目元にわずかな怒りを滲ませる彼の顔を、ガイアモンドは平然とした面持ちで見返した。
「あぁ、分かっているさ、ムーン。分かっているから、あえて逃したんだ。他に、まともな選択肢はなかったからな……セイガは危険人物だ。特級エージェントの君だって、半殺しにするほどの力を持つ。中途半端な状態で戦っても、勝てる相手じゃない。奴を確実に倒すには、もう少し時間が要る。そう、判断しただけのことだ」
「時間さえかければ、必ずセイガの弱点を突くことが出来ると?」
ガイアモンドは努めて冷静に説得したつもりだったが、生憎ムーンにはあまり効果を示さない。彼は赤い瞳を覗かせて瞬くと、にべもない口調で反論してくる。とはいえ、ガイアモンドも簡単には引き下がらなかった。
「……ムーン、何が言いたいんだ?」
眉を顰めて睨んでくる彼を、ムーンは冷ややかな眼差しで睥睨する。そして、一切の躊躇いを覚えることなく断言した。
「時間ばかりを使ったって、何も解決しないと言っているんだ。むしろ、セイガにも態勢を立て直す猶予を与えることになる。その前に、今度こそ止めなければ。どんな代償を支払ったとしても」
「代償だと?一体何を犠牲にするつもりだ?ムーン。まさか、自分の命と引き換えに、彼を殺すというんじゃないだろうな?」
しかし、ガイアモンドもまた間髪を容れずに抗議する。図星を突かれたムーンは、かすかに視線を泳がすことで真意を表明した。途端に、呆れ果てた様子の声がガイアモンドから飛んでくる。
「いい加減にしてくれ、ムーン!忘れたのか?僕に説教をしたのは、他ならぬ君じゃないか!いくらエージェントでも、自殺志願者は守れない。同様に、君たちエージェントの仕事だって、自分を粗末に扱う者には務まらないはずだ!請け負った任務を、途中で投げ出すことになるんだからな」
心底腹立ちに駆られている彼は、ムーンの周りをぐるぐると回り大袈裟に嘆いた。だが、どれほど頑張ってみても相手の心が変化することはない。
「……だから?」
ムーンはただ肩を竦めて、淡々と吐き捨てた。その振る舞いからは、何としてでもセイガを排除するという、固い決意が伝わってくる。仕方なく、ガイアモンドも強硬手段に出ることにした。
「ムーン、これは命令だ。君が、君自身を蔑ろにすることは絶対に許さない。雇い主で、護衛対象の僕の要求だぞ。守り通すんだ。いいな?」
特級エージェントの存在は、あの程度の男一人の命で贖えるものではない。自らが捨て石になりさえすればいいという考えは絶対に止めろと、ガイアモンドは何度も指を突き付け、厳しく命じた。彼の凛とした表情を、ムーンは黙り込んでしばしの間凝視する。決して外見には表れない、静かで苛烈な争いを繰り広げる二人を、ネプチューンが固唾を飲んで見守っていた。
「……分かったよ、ガイア」
やがて、ムーンが先に視線を逸らし降参を宣言する。それはいかに無謀で知られる彼であっても、忠誠を誓うと決めた人物に、本気で逆らえるほど愚かではないという証拠だった。納得のいかない条件や指示を下されても、彼はいつも最終的には受け入れ、全力を尽くしてくれる。結果としては、従順な性格なのだ。
彼の性格を熟知しているからこそ、ガイアモンドは今度も無事に要望を通すことが出来たと、ホッと胸を撫でた。もちろん、ムーンに絶大な信頼を置いている彼の脳内には、裏切られる可能性など微塵も浮かんでいなかったのだが。
「おーいっ!」
その時、開放された正面エントランスから、社員たちや救急隊、ニュースに飢えたマスコミ共が雪崩を打って入ってきた。人混みの中に一人紛れ込んでいた、見覚えのあるシルエットがガイアモンドたちに合図を送ってくる。
「グシオン?」
ムーンが気付いた直後、男は他の者たちの影に隠れ姿をくらましてしまう。かと思うと、いつの間にか素早い動きで彼らのもとに辿り着いていた。ひょこりと覗いた浅黒い顔には、はっきりと暴力の痕が刻まれ、腕から鮮血が滴っている。
「君は……?何故、彼がここに?」
「あんた、どこ行ってたのヨ!?怪我してるじゃない!」
事情を知らないガイアモンドが、困惑げに首を捻った。しかし、そんな彼を押し退けて、ネプチューンが前に進み出る。勝手にいなくなったグシオンに叱責を浴びせつつも、速やかに止血の処置に取りかかった。
「あぁ?こんなん大したことねぇよ。掠り傷だ、イッテェ!!やめろ!!平気だって言ってんだろ!?」
「静かにしなサイ!大体、あんた止血下手くそ過ぎるのヨ!これじゃ何の処置にもなってないわ!ってこれ、銃で撃たれた傷じゃないの!あんたホントに、一体何やってたのヨ!?」
頑なに意地を張るグシオンを、ネプチューンは強引に押さえ付けて手当てする。傷口を凄まじい力で圧迫されて、グシオンはつい痛みに喚いた。同時に、ネプチューンの疑問にユーモアを交えて答えることも忘れない。
「いやな?な~んか、隣のビルから妙な気配を感じてよ。こっそり様子見に行ったんだ。そしたら女が一人、馬鹿でかいライフル抱えて、ここを狙っててさ。あんたらが撃たれちゃ困ると思って、阻止してやったんだよ。ま、ちょっとばかし殴られたけど」
「……アデルだ」
「何だ、知り合いなのか?」
締まりのない笑顔で告げられた事情を聞き、ガイアモンドはほとんど直感的に独り言つ。意外な反応に驚いたグシオンは、金の瞳を見開いて尋ねた。しかし、ガイアモンドは聞いていなかったようで、むすっとした不満げな目付きで佇んでいる。無視をされたグシオンは、大して気に留めた風でもなく、のんびりと喋り続けていた。
「随分美人な姉ちゃんだったぜ~。セイガの野郎に弄ばれて、散々な目に遭わされてるらしい。それでも、離れる気はねぇんだと……そんなに惚れちまってるのかねぇ、あの男に」
彼の意見を聞くなり、ガイアモンドの全身を慄然とした気持ちが駆け巡る。常に涼しげに澄まし返っていた彼が、凄まじい形相を浮かべていると看破し、グシオンもまた驚愕を抱いた。
受付に置かれていたパソコンを大時計と接続し、パスコードを打ち込んだガイアモンドは、自動で展開された魔法を一つずつ確認する。出入り口の封鎖を解けと指示すると、隙間なく閉ざされていたシャッターや、ガラス壁を覆っていた鉄格子がゆっくりと元に戻り始めた。ただし、建物中に展開されている、“室内統御”の魔法は維持させたままだ。でなければ、亀裂の入った瓦礫が崩れて、下にいる者たちを圧死させかねない。
「ふぅ……どうにかなったな」
必要な操作を完了させたガイアモンドが、安堵の息を漏らして床にへたり込む。彼の背後で、セイガたちの潜ったシャッターが上昇を始め、道を再び通行可能にした。後に残されているのはガイアモンドたちと、未だ気を失ったままの部下数人だけである。意識のある者たちは皆、痛む体に鞭を打って主君を追いかけていったらしい。
「無事かしらン、社長?今、自由にしてあげるわヨ」
すかさず寄ってきたネプチューンが、気安い態度でガイアモンドの肩を叩く。
「あぁ、助かるよ。ネプチューン」
ガイアモンドは彼に頷きを返して、戒められた手首を差し出した。敵の誰かから奪い取ったナイフで拘束を解いてやりながら、ネプチューンは感心した調子で呻く。
「それにしても、こんなことが起きるなんて知らなかったわ。あんな針のない時計、ただのオブジェだと思っていたわヨ」
「黙っていたのは謝るよ。だが、これだけの重要な情報を、簡単に話すわけにはいかなかった。さっきそこの彼にも言われたが……おい、大丈夫か?ムーン」
彼の呟きに応えかけて、ガイアモンドは何気なくもう一人の方を見遣った。そこには先程から微動だにせずに、同じ位置に立ち尽くしているムーンの姿がある。
「ガイアモンド……」
意外なことに、彼は負傷している割には健康的な顔色を保っていた。怪我をしている足を庇い不安定な歩みで近付くと、ガイアモンドの黒い瞳を鋭く射抜く。
「何故、彼らを逃した?本当に良かったのか?セイガは君を深く恨んでいる……奴は長い時間をかけて着実に、街の平和を乱してきた。全ては、君に復讐をするために。たった一人の命を奪うためだけに、ここまでのことをしたんだ。奴の流通させた麻薬のせいで、娘の人生まで狂わされるところだった!」
彼はガイアモンドの肩を掴むと、珍しく硬い声音で捲し立てた。だが、無理もないだろう。ムーンはセイガの持つ危険性や残虐性を、最も間近で体験している人物の一人だ。おまけに、大切な家族まで巻き込まれかけて、抑えきれない憤りを感じてもいる。しかし、穏やかな目元にわずかな怒りを滲ませる彼の顔を、ガイアモンドは平然とした面持ちで見返した。
「あぁ、分かっているさ、ムーン。分かっているから、あえて逃したんだ。他に、まともな選択肢はなかったからな……セイガは危険人物だ。特級エージェントの君だって、半殺しにするほどの力を持つ。中途半端な状態で戦っても、勝てる相手じゃない。奴を確実に倒すには、もう少し時間が要る。そう、判断しただけのことだ」
「時間さえかければ、必ずセイガの弱点を突くことが出来ると?」
ガイアモンドは努めて冷静に説得したつもりだったが、生憎ムーンにはあまり効果を示さない。彼は赤い瞳を覗かせて瞬くと、にべもない口調で反論してくる。とはいえ、ガイアモンドも簡単には引き下がらなかった。
「……ムーン、何が言いたいんだ?」
眉を顰めて睨んでくる彼を、ムーンは冷ややかな眼差しで睥睨する。そして、一切の躊躇いを覚えることなく断言した。
「時間ばかりを使ったって、何も解決しないと言っているんだ。むしろ、セイガにも態勢を立て直す猶予を与えることになる。その前に、今度こそ止めなければ。どんな代償を支払ったとしても」
「代償だと?一体何を犠牲にするつもりだ?ムーン。まさか、自分の命と引き換えに、彼を殺すというんじゃないだろうな?」
しかし、ガイアモンドもまた間髪を容れずに抗議する。図星を突かれたムーンは、かすかに視線を泳がすことで真意を表明した。途端に、呆れ果てた様子の声がガイアモンドから飛んでくる。
「いい加減にしてくれ、ムーン!忘れたのか?僕に説教をしたのは、他ならぬ君じゃないか!いくらエージェントでも、自殺志願者は守れない。同様に、君たちエージェントの仕事だって、自分を粗末に扱う者には務まらないはずだ!請け負った任務を、途中で投げ出すことになるんだからな」
心底腹立ちに駆られている彼は、ムーンの周りをぐるぐると回り大袈裟に嘆いた。だが、どれほど頑張ってみても相手の心が変化することはない。
「……だから?」
ムーンはただ肩を竦めて、淡々と吐き捨てた。その振る舞いからは、何としてでもセイガを排除するという、固い決意が伝わってくる。仕方なく、ガイアモンドも強硬手段に出ることにした。
「ムーン、これは命令だ。君が、君自身を蔑ろにすることは絶対に許さない。雇い主で、護衛対象の僕の要求だぞ。守り通すんだ。いいな?」
特級エージェントの存在は、あの程度の男一人の命で贖えるものではない。自らが捨て石になりさえすればいいという考えは絶対に止めろと、ガイアモンドは何度も指を突き付け、厳しく命じた。彼の凛とした表情を、ムーンは黙り込んでしばしの間凝視する。決して外見には表れない、静かで苛烈な争いを繰り広げる二人を、ネプチューンが固唾を飲んで見守っていた。
「……分かったよ、ガイア」
やがて、ムーンが先に視線を逸らし降参を宣言する。それはいかに無謀で知られる彼であっても、忠誠を誓うと決めた人物に、本気で逆らえるほど愚かではないという証拠だった。納得のいかない条件や指示を下されても、彼はいつも最終的には受け入れ、全力を尽くしてくれる。結果としては、従順な性格なのだ。
彼の性格を熟知しているからこそ、ガイアモンドは今度も無事に要望を通すことが出来たと、ホッと胸を撫でた。もちろん、ムーンに絶大な信頼を置いている彼の脳内には、裏切られる可能性など微塵も浮かんでいなかったのだが。
「おーいっ!」
その時、開放された正面エントランスから、社員たちや救急隊、ニュースに飢えたマスコミ共が雪崩を打って入ってきた。人混みの中に一人紛れ込んでいた、見覚えのあるシルエットがガイアモンドたちに合図を送ってくる。
「グシオン?」
ムーンが気付いた直後、男は他の者たちの影に隠れ姿をくらましてしまう。かと思うと、いつの間にか素早い動きで彼らのもとに辿り着いていた。ひょこりと覗いた浅黒い顔には、はっきりと暴力の痕が刻まれ、腕から鮮血が滴っている。
「君は……?何故、彼がここに?」
「あんた、どこ行ってたのヨ!?怪我してるじゃない!」
事情を知らないガイアモンドが、困惑げに首を捻った。しかし、そんな彼を押し退けて、ネプチューンが前に進み出る。勝手にいなくなったグシオンに叱責を浴びせつつも、速やかに止血の処置に取りかかった。
「あぁ?こんなん大したことねぇよ。掠り傷だ、イッテェ!!やめろ!!平気だって言ってんだろ!?」
「静かにしなサイ!大体、あんた止血下手くそ過ぎるのヨ!これじゃ何の処置にもなってないわ!ってこれ、銃で撃たれた傷じゃないの!あんたホントに、一体何やってたのヨ!?」
頑なに意地を張るグシオンを、ネプチューンは強引に押さえ付けて手当てする。傷口を凄まじい力で圧迫されて、グシオンはつい痛みに喚いた。同時に、ネプチューンの疑問にユーモアを交えて答えることも忘れない。
「いやな?な~んか、隣のビルから妙な気配を感じてよ。こっそり様子見に行ったんだ。そしたら女が一人、馬鹿でかいライフル抱えて、ここを狙っててさ。あんたらが撃たれちゃ困ると思って、阻止してやったんだよ。ま、ちょっとばかし殴られたけど」
「……アデルだ」
「何だ、知り合いなのか?」
締まりのない笑顔で告げられた事情を聞き、ガイアモンドはほとんど直感的に独り言つ。意外な反応に驚いたグシオンは、金の瞳を見開いて尋ねた。しかし、ガイアモンドは聞いていなかったようで、むすっとした不満げな目付きで佇んでいる。無視をされたグシオンは、大して気に留めた風でもなく、のんびりと喋り続けていた。
「随分美人な姉ちゃんだったぜ~。セイガの野郎に弄ばれて、散々な目に遭わされてるらしい。それでも、離れる気はねぇんだと……そんなに惚れちまってるのかねぇ、あの男に」
彼の意見を聞くなり、ガイアモンドの全身を慄然とした気持ちが駆け巡る。常に涼しげに澄まし返っていた彼が、凄まじい形相を浮かべていると看破し、グシオンもまた驚愕を抱いた。
0
あなたにおすすめの小説
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
香死妃(かしひ)は香りに埋もれて謎を解く
液体猫
キャラ文芸
第8回キャラ文芸大賞にて奨励賞受賞しました(^_^)/
香を操り、死者の想いを知る一族がいる。そう囁かれたのは、ずっと昔の話だった。今ではその一族の生き残りすら見ず、誰もが彼ら、彼女たちの存在を忘れてしまっていた。
ある日のこと、一人の侍女が急死した。原因は不明で、解決されないまま月日が流れていき……
その事件を解決するために一人の青年が動き出す。その過程で出会った少女──香 麗然《コウ レイラン》──は、忘れ去られた一族の者だったと知った。
香 麗然《コウ レイラン》が後宮に現れた瞬間、事態は動いていく。
彼女は香りに秘められた事件を解決。ついでに、ぶっきらぼうな青年兵、幼い妃など。数多の人々を無自覚に誑かしていった。
テンパると田舎娘丸出しになる香 麗然《コウ レイラン》と謎だらけの青年兵がダッグを組み、数々の事件に挑んでいく。
後宮の闇、そして人々の想いを描く、後宮恋愛ミステリーです。
シリアス成分が少し多めとなっています。
明治かんなぎ少女の冥契 五百年の時を超えて、あなたに愛を
花籠しずく
キャラ文芸
――ですが、わたくしは生まれました。あなたに会うために。
月のものが来るようになってから、琥珀は不思議な夢を見る。誰かに探されている夢。きっと大切な人だったことは分かるのに、目が覚めると朧気で何も思い出せない。婚約者である志貴の言いなりの人形になる生活をし、生家とは会うと脅され、心が疲弊していたある日、家からひとり抜け出すと、妖魔のようなものに出会う。呪術師である志貴に、一時祓ってもらいはしたが、不思議と心が痛む。夢に美しい男が現れ、声に導かれるようにして、ある山のふもとの、廃れた神社の中に入ると、そこには苦しそうに蹲るあの妖魔がいた。琥珀はそれが夢に現れた、蘿月という男だと直感する。全身が黒い靄で包まれた彼の、靄を払う方法を、どうしてか琥珀は知っていた。口づけをし、息を吹き込むように、生きて、と願った。
帰ってすぐに志貴に殴られ、月のものがはじまっていたことが志貴にばれる。琥珀を穢そうとする志貴の様子に恐ろしさを覚えて、助けてと叫んだその瞬間、闇を裂くようにして、蘿月が現れた。
「琥珀は、俺が五百年待ち望んだ花嫁だ」
これは、時を超えて紡がれる愛の物語。そして虐げられた少女が、愛を知り、愛のために生きる自由を選ぶ物語。
※R-15っぽいゆるい性描写があります。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
炎華繚乱 ~偽妃は後宮に咲く~
悠井すみれ
キャラ文芸
昊耀国は、天より賜った《力》を持つ者たちが統べる国。後宮である天遊林では名家から選りすぐった姫たちが競い合い、皇子に選ばれるのを待っている。
強い《遠見》の力を持つ朱華は、とある家の姫の身代わりとして天遊林に入る。そしてめでたく第四皇子・炎俊の妃に選ばれるが、皇子は彼女が偽物だと見抜いていた。しかし炎俊は咎めることなく、自身の秘密を打ち明けてきた。「皇子」を名乗って帝位を狙う「彼」は、実は「女」なのだと。
お互いに秘密を握り合う仮初の「夫婦」は、次第に信頼を深めながら陰謀渦巻く後宮を生き抜いていく。
表紙は同人誌表紙メーカーで作成しました。
第6回キャラ文芸大賞応募作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる