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愛故の覚悟
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固く閉ざされた扉の奥で、グシオンが投げた手榴弾が煙を立ちこめさせていた。彼らと分断された空間の中で、アデレードはたった一人でセイガと対立する道を選ぶ。二人のいる廊下は、今までよりも更に緊迫した気配に包まれていた。
「お前のせいだぞ、アデレード……!お前がぐずぐずして、すぐにガイアモンドを殺さなかったからこうなったんだ!」
隠しきれない苛立ちを端正な容貌に宿し、セイガは青髪を乱して呻く。彼の冷徹な瞳で睨まれたアデレードは、しかし動揺を示さずに応じた。
「ごめんなさい……でも、ガイアモンドを殺すことは出来ないわ」
彼女は耳の横の後れ毛をかき上げ、落ち着いた仕草で銃のグリップを握った。細い両腕が音もなく伸び、銃口が真っ直ぐに自身を捉えるのを見て、セイガは眉根を寄せる。
「俺に逆らうつもりか?アデレード」
「えぇ、その通りよ」
怒りを湛えた眼光を、彼女は平然と受け流した。剰え、躊躇いもなく頷きを返されて、セイガは強い戸惑いを抱く。何と言うか、現在目の前に立っているアデレードと、彼の記憶の中にいる彼女とは全くの別人らしく思えたのだ。彼女の纏う雰囲気や迫力は、過去の彼女が持っていたそれと大きく異なっていた。その事実が、セイガの胸を激しく揺さぶっている。
「セイガ、私はもうあなたを愛してはいないの。いいえ、初めから愛したことなどなかったわ。一度も……私はあなたのことが、心底憎くて堪らなかった」
混乱している彼を無感動に眺め、アデレードは淡白な声音で切り出した。ただでさえ、彼女に反抗されるのは稀だというのに、今度はきっぱりと愛していないと断言されセイガは尚も驚愕する。彼に向かって、アデレードは報復とばかりに、軽蔑と嘲りの混じった冷笑を送った。
「だって、当たり前でしょう?私はあなたの父親に、何度も酷い目に遭わされてきたのよ?強姦、拷問、暴力、新しい麻薬の実験台……数え上げればキリがないわ。それくらい沢山、言葉にも出来ない扱いを受けてきた。私の心も身体も、あの男に壊されてしまったの。その恨みがどれほどのものか、あなたなら分かるでしょう?セイガ」
組織の者たちに様々な虐待をされる内、彼女の精神は憎しみの感情に取り憑かれてしまった。心の奥底に巣食った黒い炎は、父親だけで飽き足らず、彼の息子をも飲み込もうと燃え盛り、現在に至っている。
という錯覚を植え付けるべく、アデレードは必死で演技を試みていた。彼女はとにかくガイアモンドを助けたい一心で、自らが囮となる策を考案し、そして今実行に移しているのである。
「ガイアモンドと出会った時は、心が震えたわ。彼は美しくて、華やかで……それだけじゃない、強さを持っていたから。これまでの私とは、全く縁のない相手だった。そんなところに、凄く惹かれたの。一目で彼を好きになって、彼のようになりたいと憧れた。復讐なんて忘れて、ずっと一緒にいたいと、平和な暮らしをしてみたいと思った。私じゃ手に入れられなかった、幸福な人生というものを知りたかった……」
劣悪な環境で生きざるを得なかったアデレードにとって、ガイアモンドはまさしく“本物”の上流階級に属する紳士だった。それも、親から与えられた財産のみを頼りに、威張り散らしている馬鹿共とも違う。度重なる窮地を全て自分の力で切り抜け、富や地位や名声を築いた優秀な青年実業家である。もはや同じ世界の住人かどうかも疑いたくなるほど、図抜けた存在に感じられた。そんな人物がいきなり触れられる距離に出現し、喋って動いて笑いかけてくるのだから、彼女の受けた衝撃は筆舌に尽くし難いものだったと言えよう。
「でも、結局出来なかったわ。どれだけ努力しても、過去の恨みからは逃れられなかった……あなたがそうだったように」
だが、だからこそ、彼女はガイアモンドに対する引け目を感じていた。表社会で成功した彼と異なり、彼女は日の当たらない地下で生きる、卑劣な仕事を請け負う暗殺者。そばにいれば、彼もいずれはアデレードに付き纏う、過去の罪禍に巻き込まれてしまう。あるいは、セイガの抱える憎しみの餌食となって、命を落とすかも知れなかった。故に、彼女は彼を守るため、あえて身を引いたのだ。しかし、その真実をセイガに悟られることだけは、絶対に防がなければならない。アデレードは懸命に表情を取り繕い、復讐に飲まれた哀れな女を演じた。
「デルバールが死んだと聞いた日から、私の苦しみはより強くなったわ。だって、この手でトドメを刺せなかったんですもの。自分たちが鍛えた殺し屋に、命を奪われる屈辱と惨めさを味わわせてやりたかったのに。勝手に死んでしまったせいで、それも出来なくなった。だから、あなたのところにいて、機会を窺うことにしたのよ」
セイガをここまで歪めてしまった原因は、紛れもなく彼女にある。両親の殺害を依頼し、幼かった彼の拠り所を奪ったのは、彼女自身なのだから。同時に、愛した男のことも度重なる危険に晒してしまった。彼女のせいで、無関係だったはずの彼が選ばれ、セイガの怒りの矛先となったのである。ずっと認めることを避けてきたが、もう黙認は出来ない。見て見ぬふりを止め、己の行動の結果を受け入れて、自己が犯した罪を償う時が来ていた。ガイアモンドの言葉を借りるならば、“義務”を果たさなければならない。
「そして、今日がその時だわ。安心して、セイガ。私が責任を持って、あなたを殺してあげる。今、ここで」
刻一刻と迫る瞬間を覚悟して、アデレードは銃把を握り直した。かすかに震える指を、躍起になって抑えつける。
本当は、怖くて堪らなかった。決して現実を直視したがらなかった彼女が、初めて向き合う光景がこれとは。否、これまで長い間目を逸らし続けていたからこそ、現在の状況に陥っているのだろう。つまりは、彼女の怠慢と逃避が導いた、完全なる自業自得。分かってはいるのだが、やはり泣きたい気持ちと、両手を挙げて降参したい衝動はかき消せない。即座に踵を返して走り出したい欲望と戦いながら、アデレードは掠れた声音を発した。
「セイガ、そろそろお互いを解放しましょう。あなたと、私と、ガイアモンド社長を……あなたの暴走を止めて、私が楽にしてあげるわ。弾丸と、死によって」
彼女はゆっくりとした動きで指を曲げ、安全装置を外す。カチッという金属音は、彼女の決意の重さと比べて、随分軽快に響いた。
「アデレード……!!」
何と引き換えにしても、たとえ自分自身の命を犠牲にすることになっても、彼を殺す。彼女の思いが、強い光として瞳に表れているのを悟ったのだろう。セイガも呼応するように、憤怒に駆られた雄叫びを迸らせる。彼が再び作った氷が花開くのと、アデレードが引き金を引いたのは、ほとんど同じタイミングだった。
* * *
「アデル!おい、アデレード!返事をしてくれ!!今の音は何だ!?」
一分の隙もなく閉じたドアを叩き、ガイアモンドが問いかけを繰り返す。何度もしつこく殴打したことによって、彼の掌は赤く染まり、痛みも生まれていた。それでも、彼は諦めずに呼びかけを続ける。
「行こうぜ、社長さん。ここにいたら見つかっちまうよ」
無意な試みを止めない彼に業を煮やしたのか、グシオンがうんざりした調子で話しかけた。だがガイアモンドは、肩に触れた彼の手を素早く振り払ってしまう。
「駄目だ!アデルを、彼女を置いてはいけない!グシオン、扉を開けろ」
彼はあたかも雑事を頼むかのように、平然と簡素な指示を投げた。その時、銃声に似た乾いた物音が響き、彼の胸を不安で満たす。もしやアデレードが撃たれたのではないかと、最悪な想像が脳裏を過った。
「まさかあんた、引き返すつもりか?」
しかし、彼とは異なり理性の残っているグシオンは、胡乱げな眼差しをガイアモンドに注ぐ。もちろん、彼の頼みを聞くこともなかった。
「当たり前だろう!!アデルは僕の婚約者だ!どんなことがあっても、見捨てるわけにはいかない!!」
ガイアモンドは彼の両腕を掴んで、大声で捲し立てる。たちまち肩の傷口が引き攣れ、グシオンはわずかに眉を顰めたものの、すぐに誤魔化して反論した。
「止せよ。あんた、分かんねぇのか?せっかく逃げられたってのに、ここで戻ってちゃ、姉ちゃんの覚悟を踏み躙ることに」
「うるさいっ!!いいから早く寄越せ!!」
ところが、グシオンの主張を途中で遮り、ガイアモンドは絶叫する。彼はパニックに突き動かされるまま、専横的な態度でグシオンを突き飛ばし、無理矢理ポケットを漁る。やがて目当ての品を発見すると、勢いよくカードリーダーに叩き付けた。認証を済ませ、自動で開いていく扉を待ちかねて、狭間に体を滑り込ませた直後。突如噴出した白い靄が、彼とグシオンの身体を包み込んだ。
「お前のせいだぞ、アデレード……!お前がぐずぐずして、すぐにガイアモンドを殺さなかったからこうなったんだ!」
隠しきれない苛立ちを端正な容貌に宿し、セイガは青髪を乱して呻く。彼の冷徹な瞳で睨まれたアデレードは、しかし動揺を示さずに応じた。
「ごめんなさい……でも、ガイアモンドを殺すことは出来ないわ」
彼女は耳の横の後れ毛をかき上げ、落ち着いた仕草で銃のグリップを握った。細い両腕が音もなく伸び、銃口が真っ直ぐに自身を捉えるのを見て、セイガは眉根を寄せる。
「俺に逆らうつもりか?アデレード」
「えぇ、その通りよ」
怒りを湛えた眼光を、彼女は平然と受け流した。剰え、躊躇いもなく頷きを返されて、セイガは強い戸惑いを抱く。何と言うか、現在目の前に立っているアデレードと、彼の記憶の中にいる彼女とは全くの別人らしく思えたのだ。彼女の纏う雰囲気や迫力は、過去の彼女が持っていたそれと大きく異なっていた。その事実が、セイガの胸を激しく揺さぶっている。
「セイガ、私はもうあなたを愛してはいないの。いいえ、初めから愛したことなどなかったわ。一度も……私はあなたのことが、心底憎くて堪らなかった」
混乱している彼を無感動に眺め、アデレードは淡白な声音で切り出した。ただでさえ、彼女に反抗されるのは稀だというのに、今度はきっぱりと愛していないと断言されセイガは尚も驚愕する。彼に向かって、アデレードは報復とばかりに、軽蔑と嘲りの混じった冷笑を送った。
「だって、当たり前でしょう?私はあなたの父親に、何度も酷い目に遭わされてきたのよ?強姦、拷問、暴力、新しい麻薬の実験台……数え上げればキリがないわ。それくらい沢山、言葉にも出来ない扱いを受けてきた。私の心も身体も、あの男に壊されてしまったの。その恨みがどれほどのものか、あなたなら分かるでしょう?セイガ」
組織の者たちに様々な虐待をされる内、彼女の精神は憎しみの感情に取り憑かれてしまった。心の奥底に巣食った黒い炎は、父親だけで飽き足らず、彼の息子をも飲み込もうと燃え盛り、現在に至っている。
という錯覚を植え付けるべく、アデレードは必死で演技を試みていた。彼女はとにかくガイアモンドを助けたい一心で、自らが囮となる策を考案し、そして今実行に移しているのである。
「ガイアモンドと出会った時は、心が震えたわ。彼は美しくて、華やかで……それだけじゃない、強さを持っていたから。これまでの私とは、全く縁のない相手だった。そんなところに、凄く惹かれたの。一目で彼を好きになって、彼のようになりたいと憧れた。復讐なんて忘れて、ずっと一緒にいたいと、平和な暮らしをしてみたいと思った。私じゃ手に入れられなかった、幸福な人生というものを知りたかった……」
劣悪な環境で生きざるを得なかったアデレードにとって、ガイアモンドはまさしく“本物”の上流階級に属する紳士だった。それも、親から与えられた財産のみを頼りに、威張り散らしている馬鹿共とも違う。度重なる窮地を全て自分の力で切り抜け、富や地位や名声を築いた優秀な青年実業家である。もはや同じ世界の住人かどうかも疑いたくなるほど、図抜けた存在に感じられた。そんな人物がいきなり触れられる距離に出現し、喋って動いて笑いかけてくるのだから、彼女の受けた衝撃は筆舌に尽くし難いものだったと言えよう。
「でも、結局出来なかったわ。どれだけ努力しても、過去の恨みからは逃れられなかった……あなたがそうだったように」
だが、だからこそ、彼女はガイアモンドに対する引け目を感じていた。表社会で成功した彼と異なり、彼女は日の当たらない地下で生きる、卑劣な仕事を請け負う暗殺者。そばにいれば、彼もいずれはアデレードに付き纏う、過去の罪禍に巻き込まれてしまう。あるいは、セイガの抱える憎しみの餌食となって、命を落とすかも知れなかった。故に、彼女は彼を守るため、あえて身を引いたのだ。しかし、その真実をセイガに悟られることだけは、絶対に防がなければならない。アデレードは懸命に表情を取り繕い、復讐に飲まれた哀れな女を演じた。
「デルバールが死んだと聞いた日から、私の苦しみはより強くなったわ。だって、この手でトドメを刺せなかったんですもの。自分たちが鍛えた殺し屋に、命を奪われる屈辱と惨めさを味わわせてやりたかったのに。勝手に死んでしまったせいで、それも出来なくなった。だから、あなたのところにいて、機会を窺うことにしたのよ」
セイガをここまで歪めてしまった原因は、紛れもなく彼女にある。両親の殺害を依頼し、幼かった彼の拠り所を奪ったのは、彼女自身なのだから。同時に、愛した男のことも度重なる危険に晒してしまった。彼女のせいで、無関係だったはずの彼が選ばれ、セイガの怒りの矛先となったのである。ずっと認めることを避けてきたが、もう黙認は出来ない。見て見ぬふりを止め、己の行動の結果を受け入れて、自己が犯した罪を償う時が来ていた。ガイアモンドの言葉を借りるならば、“義務”を果たさなければならない。
「そして、今日がその時だわ。安心して、セイガ。私が責任を持って、あなたを殺してあげる。今、ここで」
刻一刻と迫る瞬間を覚悟して、アデレードは銃把を握り直した。かすかに震える指を、躍起になって抑えつける。
本当は、怖くて堪らなかった。決して現実を直視したがらなかった彼女が、初めて向き合う光景がこれとは。否、これまで長い間目を逸らし続けていたからこそ、現在の状況に陥っているのだろう。つまりは、彼女の怠慢と逃避が導いた、完全なる自業自得。分かってはいるのだが、やはり泣きたい気持ちと、両手を挙げて降参したい衝動はかき消せない。即座に踵を返して走り出したい欲望と戦いながら、アデレードは掠れた声音を発した。
「セイガ、そろそろお互いを解放しましょう。あなたと、私と、ガイアモンド社長を……あなたの暴走を止めて、私が楽にしてあげるわ。弾丸と、死によって」
彼女はゆっくりとした動きで指を曲げ、安全装置を外す。カチッという金属音は、彼女の決意の重さと比べて、随分軽快に響いた。
「アデレード……!!」
何と引き換えにしても、たとえ自分自身の命を犠牲にすることになっても、彼を殺す。彼女の思いが、強い光として瞳に表れているのを悟ったのだろう。セイガも呼応するように、憤怒に駆られた雄叫びを迸らせる。彼が再び作った氷が花開くのと、アデレードが引き金を引いたのは、ほとんど同じタイミングだった。
* * *
「アデル!おい、アデレード!返事をしてくれ!!今の音は何だ!?」
一分の隙もなく閉じたドアを叩き、ガイアモンドが問いかけを繰り返す。何度もしつこく殴打したことによって、彼の掌は赤く染まり、痛みも生まれていた。それでも、彼は諦めずに呼びかけを続ける。
「行こうぜ、社長さん。ここにいたら見つかっちまうよ」
無意な試みを止めない彼に業を煮やしたのか、グシオンがうんざりした調子で話しかけた。だがガイアモンドは、肩に触れた彼の手を素早く振り払ってしまう。
「駄目だ!アデルを、彼女を置いてはいけない!グシオン、扉を開けろ」
彼はあたかも雑事を頼むかのように、平然と簡素な指示を投げた。その時、銃声に似た乾いた物音が響き、彼の胸を不安で満たす。もしやアデレードが撃たれたのではないかと、最悪な想像が脳裏を過った。
「まさかあんた、引き返すつもりか?」
しかし、彼とは異なり理性の残っているグシオンは、胡乱げな眼差しをガイアモンドに注ぐ。もちろん、彼の頼みを聞くこともなかった。
「当たり前だろう!!アデルは僕の婚約者だ!どんなことがあっても、見捨てるわけにはいかない!!」
ガイアモンドは彼の両腕を掴んで、大声で捲し立てる。たちまち肩の傷口が引き攣れ、グシオンはわずかに眉を顰めたものの、すぐに誤魔化して反論した。
「止せよ。あんた、分かんねぇのか?せっかく逃げられたってのに、ここで戻ってちゃ、姉ちゃんの覚悟を踏み躙ることに」
「うるさいっ!!いいから早く寄越せ!!」
ところが、グシオンの主張を途中で遮り、ガイアモンドは絶叫する。彼はパニックに突き動かされるまま、専横的な態度でグシオンを突き飛ばし、無理矢理ポケットを漁る。やがて目当ての品を発見すると、勢いよくカードリーダーに叩き付けた。認証を済ませ、自動で開いていく扉を待ちかねて、狭間に体を滑り込ませた直後。突如噴出した白い靄が、彼とグシオンの身体を包み込んだ。
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