神々にもてあそばれて転生したら神様扱いされました。

咲狛洋々

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王都編

虎は自ら首輪を着ける(1)

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 始まりは予言だった。

華月初日、800万の天災を身に宿し予言を終わらせる。

曖昧にも程があるこんな予言に、なんで俺らが駆り出されるのか。
身体中の魔粒子がグルグルと渦を巻くのが分かるほどイライラしていたあの日、俺は俺の矜持、誇り、責任そんな物を全て捨てる事を決めた運命に出会った。予言は正しかったのかもしれない。

見るもの全てを惹きつけ、何もかもを奪っていく。
正に天災。

彼の方は、俺の前に突然現れた。
全身から七色の光を放ち、その美しい漆黒の瞳は彼の方が放つ自身の光を映してか、キラキラと煌めいていた。身体を見えない力で押さえつけられた様に動けなかった。身体中の魔粒子が彼の方へと向かうのが分かる。奪われたい、捧げたい、奪いたい、食らい付きたい。そんな灼熱に焦がされる様なジリジリとした痛みと欲望が渦巻いている。

俺は幻を見ているのでは無いだろうか?
こんなにも全てが奪われる感覚は初めてで、何が起きたのか自身でも分からなかった。
人では無いと獣の感が叫ぶ。
彼の方は俺の真の主だ。そう、人としての感が教える。

彼の方は我が国の唯一神、テュルケット様だ。教会の神像とは全く違う御姿だったが、きっとそうだ。信仰心など無かった俺だが、この日神の僕となる事を誓った。

 彼の方との邂逅の後、部隊全員が魂を抜かれた様に立ちすくむ姿に呆れよりも、焦りを覚えた。後を追わねば!

「皇帝宮への報告、周辺調査を行え!終了後帰投しろ!」

そして、霧散し始めたテュルケット様の光の導を、何とか辿り御姿を探した。夜が明けてきて、光は消えてしまい焦りが感覚を鈍らせる。焦ってはならない、何か、手掛かりを探せ!そう自身に言い聞かせてながら、鼻腔に残るテュルケット様の瑞々しい果実の様な香りを探す。

川上から香りが流れ、喜びが身体中から溢れる。
やっとお会い出来る!
換装した姿で川沿いを駈け、岩場にたどり着くと炎を纏った神鳥がいた。テュルケット様を守る様にその焔の翼で私との間に立っている。
換装を解いて膝を着き、首を垂れ口上を述べた。


「私は魔道騎士隊大隊長 ビクトラ•ライディ。御方様をお迎えに参いりました。」

汗が吹き出す。
なんとか信頼して頂けるよう心を砕いた。

「御方様は其方においでか?」

神鳥は羽をたたむと話しかけてきた。

「白虎の末裔よ。何故我等を追う。」

本心を見透かされた気分になった。いや、見抜いているんだろう。
体裁を整える事も考えた。しかし、引けぬと獣が叫ぶ。

「御方様こそが我が主人故。どこまでもお供したく存じます。」

神鳥は「はっ!」と吐き捨てるように笑った。

「其方の様な下僕は要らぬ。我のみで事足りる。去れ。」

やはり俺ではお側に置いては頂けないのか。
握りしめた手のひらに、爪が食い込み血がにじむ。

「其方知っておるか?この方は我にふぅあーすときすとやらを下さったのだ!其方など不要!何度でも言う、去れ!」

な、なんだと…羨ましい!ファーストキスだと!?
それよりも、こいつファーストキスの意味分かってんのか?なんだよ、ふぅあーすときすって!どこの田舎もんだ!
不敬極まりないこの鳥、焼き鳥にしてやる。俺を煽った責任を取らせてやんねぇとな。下手に出てりゃつけ上がって。
氷のヴェイカ。ヴェイカはグラスに注ぐだけでも炎が上がる酒。その名で揶揄われる程にビクトラは好戦的で火がつきやすかった。

ビクトラは全身に魔粒子を流し換装すると、普段よりも換装を大きくし朱雀とほぼ同じ大きさになった。
氷、風、雷を操るビクトラは咆哮すると朱雀の周りの魔粒子で竜巻を起こす。その竜巻の中では何千もの帯電した氷の刃が朱雀に牙を剥く。
朱雀もその中で、氷の刃を交わしながら灼熱の焔で氷を溶かした。

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