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東のガーライドナイト領
マルスと信仰
しおりを挟む鉱山の調査をしてみて分かったのは、異常なまでの白魔粒子の
膨張で、単純に吸収してしまえば良いのでは無いかと帝都神官長
マルスは言ったが、白魔粒子の吸収はグレースや都への負荷が大き
すぎた。白魔粒子単体では色を生み出せず、物体が白魔粒子を吸収、
反射して色を生み出すにはその物体が色を大地に循環させる余力が
無いと出来なかった。
まずは植物や大地の活性化が第一目標となり、活性化に必要な
黒魔粒子の放出が必要だった。故に都は白使いは使わない方向で
調和をする事にした。
「都様、何故白使いをお使いになられないのですか?」
マルスは都の手を取り荒廃した神殿の先を目指した。
「サリザンドから聞く分に、白使いの方々は白魔粒子を分解出来ますが、それと同時に淀みを生むと聞きます。今、地殻は淀みで溢れているのでしょう。黒魔粒子を吸い上げた際、まず最初に淀みが出てきました。淀みを消す方法はありますが、白使いの方に白魔粒子を分解をしてもらうと、大地を枯らす淀みが増える。悪循環です。」
「私が浄化をする、という方法もありますが、、、」
「都様にご負担は無いのでしょうか?」
「あります。ただでさえ、私の神核に楔がはまっているので、
淀みを吸収しすぎれば、神核は壊れるかも知れません。」
「そんな!ではどうすれば。」
「マルスさん、自然界でも淀みは生まれているんです。けれど浄化作用を自然は持っています。今はそれが十分に機能できていないだけなんです。」
「だから、この神殿の地下から森に繋がる泉。これを使います。」
マルスは都を抱き上げ、瓦礫を越え神殿奥へ向かう階段に乗せた。
マルスの肩に手を乗せて都が階段に足を掛けた時、その足場が崩れ
倒れかけた。
「きゃあ!!」
「都様!」
都を庇う様に身体を回転させてマルスが都を庇ったが、都が
マルスの上にのし掛かり、神官服を破いてしまった。
「マルスさん!ごめんなさい、大丈夫ですか?」
「ええ、私は大丈夫です。ご心配無く。」
破れた服の隙間から、胸に大きく斬られた様な痕が見えた。
「あの、これは、、どうなさったのですか?」
「あぁ、これは。30年程まえ、私がまだ神官だった頃ですが、
魔粒子暴走に巻き込まれまして、内臓を損傷致しました。その時の痕です。」
まだ痛々しいケロイドの痕に、都は顔を歪めた。
「お見苦しい物をお見せしました。」
そう言ってマルスはケープで胸元を隠した。
「マルスさん、痛みは?引き攣るような感覚はありますか?」
「ええ、まだ、ありますが神への奉仕になんの支障はございません」
「そう、ですか。あの、不思議なんですが何故、教会と神殿がこの世界には共存しているんですか?」
「あぁ、そうですね。神殿はあくまで神との連絡係の様な物で、教会はエルザード様が民への布教の為にお作りになりました。ですので、我々と教会は同一の活動をしております。神への奉仕を仕事とするのが神殿。民への奉仕をするのが教会です。」
なるほどねー。でも一緒にしてしまったら楽そうだけど。
都は、チラチラと見えるマルスの傷が気になって仕方がなかった。
気持ちを落ち着かせる為にルーナを探す。まだ後方で調査して
いるのか、こちらへくる気配が無かった。
「ルーナ達は遅いですね。まだ入り口の調査をしているのかしら?」
マルスと都は泉前の中庭を歩いて待った。
「マルスさんは、テュルケット神をどう思われていますか?」
会話を繋ぐ為に疑問をぶつけた。
「…その答えを私は今探している所です。」
「野暮な質問でしたね。」
まぁーね。あんな神を信仰していたとか、穴があったら入りたい位
恥ずかしいわな。私なら赤面して絶叫するわ。
都は空を見上げながら、晩御飯やデザートの事を考えていた。
「都様、もし。もし、私が貴方様を信仰すると申し上げてたらご不快でしょうか?」
マルスの言葉に都は驚き振り向いた。
「…そう、ですね。不快などはありませんが、恥ずかしいですね。」
いや、マジ勘弁。うん、そのままテュルケット信じてて!
神官ってなんか真面目すぎて、怖いんだよねー。
「私はあの時、奇跡を見たのです。」
「うーん。それは、権能であって奇跡では無いですし、神はマルスさんが望んだ形で心に宿る物だと思っています。だから、縋る必要は無いんだと思いますよ?」
「私は神では無いですし。マルスさん、神は信者が欲しい訳では無いのだと思いますよ。勿論皆さんの信仰を貶すつもりは毛頭ありませんが、私を信仰するというのは違う気がしますね。」
マルスは寂しそうに都を見つめ、何かを言おうとしていた。
「聞きますよ?言いたい事がお有りなのでしたら。」
「えぇ、、その。正直、テュルケット神への信仰が揺らいでいます。ただ、その揺らぎが神を我々の道具の様に扱っていたからそう思っているのでは無いかと、正直私の存在を私が否定している様な気がして。」
なる程ねー。民に色々してくれる神だから信仰していたのではないか?そう疑ってるんだろうな。自分の事。
「信じたい神がいるなら信じれば良いのでは?マルスさんの心に安寧がもたらされるなら、それで良いと思います。」
「では、都様を信仰したいのです。」
しん、、こう、、ですか。重い!重すぎる!
「信仰ですか。ちょっと重いですね、私には。友達からはどうです?」
「友として、共に戦う仲間として信じる、、位なら私もマルスさんと仲良くしたいですけど、お祈りされたり跪かれたりするのはちょっと。」
ふふふと笑った都にマルスは見惚れて、考えた。
これは信仰なのか。何なのだろう
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