78 / 200
東のガーライドナイト領
始まりの人
しおりを挟む太陽神テュルケットは獣しか住まぬこの大地に、
共に語らい、共に歌う者を欲しました。それは友であり、愛を与え、
与えられる伴侶でありました。
ですが、多くの友が生まれても永きは生きれず死んでしまい、
太陽神は一人きりとなってしまいました。
あまりに寂しく悲しくて、どんなに醜くとも構わないからと、
心を差し出しました。そして生まれた人の子は、強く美しい人の子で
あり、始まりの子でした。その子は大地に生き、そこに住む妖精と
共に生きて子を儲けたのです。
沢山の命に囲まれて、太陽神は喜び天に還りました。
今も世界を見守り、慈愛の光を降り注いで下さるのは、我々が
神の子故なのです。
太陽神 神話 始まりの章
「崩れた世界を戻す術は無い。ならば作り替えるのみだ。」
オルポーツは離宮の結界内から中庭のテュルケット像を中心に置いた
噴水を見つめてほくそ笑んだ。
「首尾はどうだ?」
手足の枷をガシャガシャと言わせて、オルポーツはベットに
倒れ込んだ。
「神殿跡と教会がもうすぐ繋がりますよ。」
「そうか。それは楽しみだ。」
「さて、新世界で生まれる私達の子供はどんな子供だろうな。」
特務隊諜報員の傍受室では、警備を緩める事でオルポーツに何か動きが
あるのでは無いかと、離宮での会話を盗聴、記録していた。
その記録をサリューン、ビクトラ、アガット、サリザンドが
聞いていた。
サリューンは父の言動と話をしている相手の声に愕然としながらも、
父ならばあり得るだろうと項垂れ椅子に腰掛ける。
「 父と叔父上は、次のテュルケットになるつもりなの? 」
思わず言葉が突いて出た。
「「 ‼︎ 」」
「 しかし、陛下。現実的にそんな事が可能なのでしょうか? 」
サリザンドは、画面を見ながら考える。
オルポーツはグレースに子供を産ませたい。何故?
人間種を産ませて何をする?交配?いや、今更そんな必要は
無いだろう。オルポーツが望んでいる物とは、、、。
「父は以前から、この世界はテュルケット様によって整えられた
美しい世界だ、壊す物は誰であっても許さない。そう言っていました。」
「神は消え、世界の美は消え去った。神を取り戻さなければ、
そう譫言の様に呟いていたのを聞いた事もあります。」
神再臨。しかし、テュルケットは淀みに居るとグレース様は言っていた
はず。だが、オルポーツはそれを知らない。オルポーツの知っている
事とは何か?部屋の隅に置かれた魔導板の上にペンを走らせる。
神再臨、調和、人間種、グレース、太陽、神殿、教会、予言、淀み
思い付く物を全て書き出して、サリザンドは線でそれぞれを繋いだり、
消したりして考えをまとめる。
「テュルケットは淀みで、アマルマ初代皇帝といる。」
「世界には調和が必要。」
「人間種は、なんだ?特徴、、魔粒子核を持たない。短命。」
色々書き込みながら考えるサリザンドの後ろから朱雀の声がした。
「獣人の排除」
急に現れた朱雀にサリザンドは驚き目を見開いた。
「獣人の排除、だと?」
「我が思うに、神は人を子供と言いつつも、神の姿絵の様に思ってもいる。獣に関しては自然の一部と捉えているしな。」
「テュルケットが人を生み出した理由は単なる話し相手だろうが、オルポーツはそれを世界は純粋な人間種だけで統べるべき、それが神の意志。とでも考えているのでは無いか?」
サリザンドは魔導版を見つめ考える。
「神の降臨を望んでいるのでは無いのか?」
「それは、結果としてそうなって欲しいと思っているかもしれんがな」
「我はこの世界に来て、神核が無くなる前に繋ぎを見に行った事がある。」
「繋ぎ?」
「教会と天界を繋ぐ門だ。人には見えぬが存在している。」
「都のいた世界を襲った使徒が何やつか探っておった。其奴が天界の者なのか、神力を使える者の攻撃なのかを知らねばと思ったのだ。」
皆が朱雀を取り囲み話を求めた。それから朱雀の考えを聞いた
「しかし、この世界から繋がる天界には誰もおらなんだ。」
「と言う事は、こちらの人間が力を放って都の世界を襲ったと言う事になる。もしやと思うたが、オルポーツの権能なのでは無いか?」
権能。持っているとは知らせていても、何の権能なのかは秘匿して
当然の代物。皇帝選定の時であってもそれを公にはしない。
「私にも分かりませんが、神の権能には何があるんでしょう。」
サリューンが朱雀に問うが、朱雀は興味なさげに扉へ向かった。
「この世界の神の事は分からん。八百万の神と似た権能ならば、力の複製、そういった物もあった気がする。もしかしたらそれでテュルケットの力を複製して攻撃してきたのかもしれんな。」
「では我はグレースの元に帰る。」
「朱雀。お前、何しに来たんだ?」
ビクトラが溜息混じりに聞くと、ふむ。と考えて朱雀は言う。
「知らんがグレースが行けと言ったからだ。」
朱雀らしいと皆笑い出した。
0
あなたにおすすめの小説
BLゲームの脇役に転生したはずなのに
れい
BL
腐男子である牧野ひろは、ある日コンビニ帰りの事故で命を落としてしまう。
しかし次に目を覚ますと――そこは、生前夢中になっていた学園BLゲームの世界。
転生した先は、主人公の“最初の友達”として登場する脇役キャラ・アリエス。
恋愛の当事者ではなく安全圏のはず……だったのに、なぜか攻略対象たちの視線は主人公ではなく自分に向かっていて――。
脇役であるはずの彼が、気づけば物語の中心に巻き込まれていく。
これは、予定外の転生から始まる波乱万丈な学園生活の物語。
⸻
脇役くん総受け作品。
地雷の方はご注意ください。
随時更新中。
この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜
COCO
BL
「ミミルがいないの……?」
涙目でそうつぶやいた僕を見て、
騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。
前世は政治家の家に生まれたけど、
愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。
最後はストーカーの担任に殺された。
でも今世では……
「ルカは、僕らの宝物だよ」
目を覚ました僕は、
最強の父と美しい母に全力で愛されていた。
全員190cm超えの“男しかいない世界”で、
小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。
魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは──
「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」
これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
平凡なぼくが男子校でイケメンたちに囲まれています
七瀬
BL
あらすじ
春の空の下、名門私立蒼嶺(そうれい)学園に入学した柊凛音(ひいらぎ りおん)。全寮制男子校という新しい環境で、彼の無自覚な美しさと天然な魅力が、周囲の男たちを次々と虜にしていく——。
政治家や実業家の子息が通う格式高い学園で、凛音は完璧な兄・蒼真(そうま)への憧れを胸に、新たな青春を歩み始める。しかし、彼の純粋で愛らしい存在は、学園の秩序を静かに揺るがしていく。
****
初投稿なので優しい目で見守ってくださると助かります‼️ご指摘などございましたら、気軽にコメントよろしくお願いしますm(_ _)m
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。
悪役令息物語~呪われた悪役令息は、追放先でスパダリたちに愛欲を注がれる~
トモモト ヨシユキ
BL
魔法を使い魔力が少なくなると発情しちゃう呪いをかけられた僕は、聖者を誘惑した罪で婚約破棄されたうえ辺境へ追放される。
しかし、もと婚約者である王女の企みによって山賊に襲われる。
貞操の危機を救ってくれたのは、若き辺境伯だった。
虚弱体質の呪われた深窓の令息をめぐり対立する聖者と辺境伯。
そこに呪いをかけた邪神も加わり恋の鞘当てが繰り広げられる?
エブリスタにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる