神々にもてあそばれて転生したら神様扱いされました。

咲狛洋々

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神話編

誰が為の嘘なのか

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 ビクトラがガーライドナイト男爵の領邸に戻ると、グレース達が領邸を出る準備を終えてお茶を飲んでいた。

「おい!今すぐ西へ向かう、アガット、リャーレは本隊合流後西へ来い!グレース達は俺とすぐ西へ向かうぞ!」

雷電を纏うビクトラの姿に皆何事かと席を立って近づいた。

「都が西へ一人で向かった!しかも俺との隷属を切りやがった!」

「西へ向かう事は俺達も了承してる。魂はこの身体に残ってるから何かあってもこの身体に戻れる。心配要らないよ?それにしても、何で隷属なんて切らせたんだよ。会話は聞けなかったけど、都は相当キレてたぞ?」

「そんな事俺も知りてぇよ!俺は側に居ろと言ったんだ!なのに、グレースに吸収されてやるから行かせろと勝手に隷属切っちまった!」

皆、その言葉に顔を見合わせ驚いた。

グレースはまた何でこんな食い違いが起きているのかと、考えた。

都は調査に向かうが戻ると言っていたし、ビクトラ達三名とは深い

関わりを望んでいないと言っていた。本心では望んでいたとしても、

それよりも不和を嫌っていたから、そんな事を都がするのだろうか?

いや、都はビクトラを想って決断したんだろうな。俺ならそうする。


——— 我が話そう。表に出てもよいか?


「ラファエラ?珍しいな。いいよ?ラファエラと代わるぞ!」

グレースは皆に告げラファエラと交代した。


「ビクトラ、それは其方を西に戻さぬ為だ。」
「我はラファエラ、都の使徒である。」


「ラファエラ殿?西に戻さぬ為…とは。」

ビクトラは訝しげにグレースの身体を使うラファエラを見た。

「あの地にはテュルケット神の残した結界がある。その結界に白虎の神核を持つ其方ら一族が入り込めばこの世界と淀みの世界が反転される。グレースが行った調和と同じ水脈を辿り淀みが流れ込むだろう。」

「な!そんな話俺が知らないだと?」

「当たり前だ。この事実を知れば其方ら一族の中より謀反する者がおれば利用するであろう。故に秘匿されておった。」

「エルザードのトラップがもうすぐ発動する。」

「そんな場所に今のお主が戻ればお主の神核が奪われる。それはお主の死を意味するから都は行かせたく無かったのだ」

「隷属を切ったのはお主への気持ちを清算する為と、真名のすり替えをしておるから、其方が死ねばこの身体も神核も魂も消える故だ。」

その言葉にビクトラ、リャーレは顔を見合わせ俯いた。

「だから!なんでいつもそういう事を一人で決めるんだ。」

ビクトラはラファエラに詰め寄り肩を掴み揺すった。

「話す前にお主らが抱いたからであろう?かといってグレースでは説明も出来なんだろうし、暴走するからと都が出たのだ。それに一人で外に出たがっておったしな。」

——— おい!それってどういう事だよ!消えたいって望んでんのかよ?

「消えたいと望んではおるが、それは単に精神が疲労しておるからだろう」

「其方らは帝都に戻り本教会の神体を壊せ。」

「神体?何だそれは!テュルケット神の神体があるのか!?」

「本教会の祈りの間の泉に沈んでおる。西の泉と繋がってしまったからな、神域結界が破られれば淀みから邪神がその身体を取り込むぞ。あの地の結界を閉じるのが都の目的だ。」

「結界を閉じる?」

「あぁ。ここで行った調和により一部結界が開いた。元々は白虎の神核が結界維持の役割を担っておったが、其方一族は子がおらぬであろう?故に結界が弱まっておる。」

「子供の有無がどう結界に繋がる!」

「其方らの神核は大量の魔粒子を消費する。」

「それは結界に繋がっておるからだが、魔粒子核は年をとるごとに消耗し小さくなる。故に100歳を越える前に子を成す必要がある。」

「だがテュルケットはそれを阻む為に、子を成さぬ身体を作る婚姻を其方ら一族にさせた。西の一族は子に恵まれ難かろう?」

ビクトラはふと、家族や親戚の事を思い出した。

「確かに…俺も兄貴も育成帯を持っていない。兄貴は精巣も無い…一族で子供を持てたのは親父だけだ。」

「都は精神体だろ?何ができるって言うんだ」

サリザンドが苦々しく吐き捨てる様に疑問をぶつけた。

「調査してから決めると言っておったが、大した事はできんはずだ。」

「最終的にはこの身体に宿る権能で蓋をする。だから慌てずとも良い。」

——— 嘘だな。お前嘘ついたな?まさか都を囮にする様な事する気じゃねーだろうな?

——— 我とて都を失っては困る。主人無くして我の意味が無い。安心しろ。将来子が欲しいのだろう?故に行かせた。

——— あ?どーゆーこった!くそっ、後でちゃんと説明しろよ?

「……我は神核に戻るとする。話は終わりだ」

サリザンドとルーナはラファエラにしがみつき答えを求めた。

「待ってくれ!西の神域結界はどこにある!」

「西の外れモルトゥーレだ。しかし、あそこは結界で不可視だ。探せぬぞ。」

「都は行けるのか?」

「我が権能を使っておるから問題ない」

「頼む、都を守ってくれ!」

ルーナは己の無力さにラファエラを掴む手を震わせ、サリザンドは

確証の無い作戦に苛立ちながらも、ラファエラに縋るしか無いと声を

振り絞った。

それぞれが納得も安心も出来ぬまま、ラファエラの指示に従いガーライ

ドナイト領を後にした。
















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