神々にもてあそばれて転生したら神様扱いされました。

咲狛洋々

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神話編

ある人の子

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【 建国神話神殿手記 】
 

 創世神アマルマは天界で生まれた時より伴侶がいた。

その伴侶は魂を分かつ権能を司る神テュルケットであり、その神核で

二人は神々を生み出し、生み出された神々に星を創らせた。

その星こそがタイレーン。

人を造らず獣のみが生き、自然を父母とした。

 アマルマ神とテュルケット神は天界で最も仲の良い夫婦であったが、

その関係はある時期より不和へと変わる。

天界の天帝が代替わりして1万年を過ぎた頃、天帝が人の子を正妃に

迎えた。その人の子の産む神は神力も核も強く、代々の天帝はこの

一族より排出される程、正妃の魂は子々孫々に影響を与えている。

その影響は悪くも働いた。正妃は見目麗しく、優しき魂は神々を

魅了する為、天界に住まう神々はこぞって人の子の魂を欲したので

ある。魂を求める神々により、人の子の魂の争奪行為は過激になり、

人から上仙する者がこの時期は一際多かった。



 テュルケット神は天界での皇嗣誕生の宴の席で、天帝正妃に魅了

されてしまった。あろうことに第三子の出産後の療養地にて正妃を

拐かし神核を穢た上に破壊するという行為にまで至った。

天界ではテュルケット討伐の命を受けた使徒達と事実を知らぬ

アマルマによる戦いとなったが、正妃自らが天帝との離別を望み

テュルケットと共にタイレーンへと降下した。

正妃はテュルケットが人界より奪った人体に魂を縛られ、大地で生きる

事となる。愛欲に溺れ、半身のアマルマを切り離し淀みへと堕とした

テュルケット神は、我が子である二柱の神の神力でこの星を天界より

隠し、正妃と夫婦となる。

だが神核を持たぬ正妃と神が番えども子は出来ず、人の子を欲した

テュルケット神は大地に生きる最も強き獣と正妃を番わせた。

それにより生まれたのが獣人の祖である。

獣人の繁殖力は強く、瞬く間に世界に広がり、それを統べる為に

正妃カイリを初代皇帝に据えて、タイレーン帝国繁栄の礎を築いた。

 初代皇帝カイリ•タイレーンは神と獣を従えて、この地に蔓延る

魔獣を討伐し、幾度なく支配を嫌う獣人の襲撃を躱してはその力と

知恵により彼等を説き伏せ服従させた。

また彼女は、生活、風習、文化、法律、経済の基礎を作り上げた女傑で

あり、獣人の生活は大いに向上したという。しかし、彼女を最後に女と

いう性別はこの世界には存在していない。そんな彼女は130歳という

若さでこの世を去ったと伝えられている。

神に愛にされ、神に翻弄された波瀾万丈な人生は、獣人世界で幕を

下ろした。



 西の領地に入った都は、魔粒子化しライディ家の禁書庫にソレスと

入り込んでいた。石碑があると聞いていたのに、石碑は見当たらず

書庫に入ってみたが、禁書庫に特段、神や結界について記載された物は

無かった。しかし、ソレスは禁書庫奥の本棚下に結界の残滓を確認した

と言い、都がその結界があったであろう場所に触れた時、壁の中に別の

書庫が現れた。

「わぉ!隠し通路。埃も凄いし多分これライディ家の人は知らないだろうなぁこんな場所に書庫があるなんて。」

書庫には、神話や領地の歴史などが記載された本が並んでおり、都は

『建国神話神殿手記』というタイトルの本を手に取り読んでみる事にした。

「まさか…カイリ…って日本人?」

「それに、初代皇帝はアマルマなはずだ。」

「ソレス、グレースが淀みで起きた事を共有したい。伝心してもいいか?」

「んだ。構わねよ?」

淀みでの記憶をソレスと共有した都はソレスに考えを聞いた。

「ただな、アマルマ様の記憶の混濁は酷そうだで、どこまでをすんずてええのかわかんねだな。」

確かに。淀みに堕ちて何百年も経ってる、記憶が改竄されてても

おかしくはないな。けど建国したのはアマルマだと帝都の教科書にも

記載されてある。どちらが正しいんだろうか?それに、カイリの名前は

帝都では全く聞かなかった。テュルケットがカイリを溺愛していたの

なら、カイリの名前が残っていない方が不自然だ。

「このカイリって皇帝は、なんでまたずぶんから天帝と別れたんだ?テュルケット様を憎んでてもおかすくねぇど?」

「さぁな。穢されたまま天帝の側に居たく無かったのかもな。それに側に居て復讐したかったのかもね。まぁ、その内に情が湧いたとか?」

「都様だったら情が湧くか?」

「え?俺は湧かないと思う。獣と番わされるんだろ?どんなプレイだよ」

「オラとも嫌だか?」

まさかの発言!えっ、ソレスと?いや、うーん。ペット枠だし、

フォルムがねぇ。

「う、うーん。姿がねぇ、龍だし。ごめん無理かも…」

シュンと髭は項垂れ、尻尾を股下に隠したソレスが可愛らしくて

都はソレスを抱きしめた。

「ごめん、ごめん。でも、大好きなのは変わらないからね?」

「んだども、オラも男だ。オラも朱雀殿みたいに都と番てーだ。」

「え⁉︎ だって、依代じゃ無理だろ!いや、依代が問題じゃないけど、いや問題かな?うん、ごめんよ。」

「朱雀は羽はあるけど人体だしね?」

「人体だったらえーだか?」

グイグイくるな!男の姿が想像できん。なんかドワーフみたいなむさ

苦しい姿だったらどうしよう…。けど、この世界厳つい顔の人は多い

けど、基本美形だからなぁ。ソレスの本体が人体だったらイケメン

かも?いやいや、龍の純血って言ってたし。ないない!

「オラ、ペットじゃねーだ。オラも一人前の男だ。」

「う、うん。そだね、ま、今はそれどころじゃないからさ、帝都に帰ったらまた話そうか?」

なんだよこの地雷!これがトラップか⁉︎勘弁してくれよ。

うー。本に集中出来ない…。

ソレスは都の言葉に返事もせず、本を眺めて提案した。

「オラさ村行くだ。村の方が詳しい話を知っとるジジがおるだで」

「そうなの?分かった。行ってみよう」

「そんだらさ、都様、村に着いたらオラの事考えてくんねぇか」

「え、本気だったの?あ、あぁ、村についたらな。」

なんかまた面倒事になりそうだなぁ。

ソレスとどうこうなる姿なんて想像もしたくないんですけど!

くそぉ!俺の可愛いペットが欲情している姿とか見たく無かった。

村かぁ。行きたくねーー!
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