後発オメガの幸せな初恋 You're gonna be fine.

大島Q太

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15.おばあさまのおうち

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宣言通り至君のおばあちゃんちに到着して俺は唖然としていた。これはおばあちゃんちと言うよりおばあさまのお宅だ。車が門に近づくと勝手に門が開いた。そのまま奥の車庫の前に車を止める。
俺が助手席でリュックを抱えて固まっていると、至君はさっさと降りて助手席を開け、手をひいてくれた。
そのまま玄関を開けて応接室に通してくれる。そして、布張りの大きなソファに座らされている。目線の先には見事なくびれの花瓶に生の花が飾ってあって。額装が丁寧な絵も飾ってある。大きな窓からは池がある庭が見えた。俺の中でお金持ちの家にありそうなものビンゴが次々と開いてビンゴーって叫びそうになっていた。


至君はおばあさまを連れて応接室へ帰ってきた。
あぁ、すごく上品で優しそうなおばあさまだった。そして、男の人だ。
僕は立ちあがって頭を下げる。
「へーこの子がいっくんの初彼かー」
思ったより砕けたしゃべり方をされた。
「初めまして、永田透といいま…す、初彼?」
至君が慌てておばあさまをがくがく揺らしていた。年配者にそんなことしちゃだめだ。
「はじめまして、至の祖父?です。あれ、それ…わ!おはぎ?僕おはぎ、すごく好きなんだ。いい子じゃないか!いっくん!」
また、至君ががくがく揺らし始めた。
俺は二人の仲睦まじさに笑いながら、袋からおはぎの入ったパックを出して成り行きを見守った。

ただ、聞き捨てならなかった。
「えっ、至君。初彼?今まで彼女はいたって事?」
「いやいや、正真正銘、初めてできた恋人でしょ?いっくん」
至君を飛ばしておばあさまが答えてくれる。至君は大きなため息をついてうなずく。俺はすごく光栄だった、至君が過去にも嫉妬するって言っていたことを思い出した、俺も少ししていたのかもしれない。
うれしい。慌てる至君を見て笑った、至君が俺をじっと見た。

「透、もうばあちゃんには会ったね、俺の部屋行くよ」

至君はそう言って僕の手からおはぎを受け取り。おばあさまに手渡すとそのまま手を引いた。俺はおばあさまにお辞儀をするとひらひらと手を振られた。

通された部屋は8畳の畳の部屋だった。
部屋の隅に製図デスクとパソコンデスクがあって至君が建築を学んでいると言うのが見て取れる。俺は真ん中に置かれた文机の横にあぐらを崩して座った。至君はパソコンデスクの引き出しから何かを取り出していた。

「至君。これいろいろと悩んだんだけど」
俺はリュックから至君へのプレゼントを取り出した。さんざん悩んで軸が木でできた4色ボールペンと表紙が木でできたノート。それとトートバッグ。どれも実用的なものにした。
「言うのが遅くなってごめん。至君お誕生日おめでとう。よかったら使ってくれると嬉しい」
でもやっぱり大学生にはもっと大人っぽいものをプレゼントした方が良かったのか。少し落ち込んだ。今日だってたぶんパーカーの方がこの用意したプレゼントより高い気がする。
「開けてもいい?」
至君は包みを受け取ると開いて確認した。
「これ、学校でも使えるね、見るたび透を思うよ。すごいうれしい」
至君は嬉しそうに笑ってくれている。ボールペンを4色全部一つずつ出してニヤニヤしていた。ホッとして俺も顔が緩んだ。目が合うと至君は嬉し気におでこにキスをくれた。
「あ、透。俺からのプレゼント」
さっきパソコンデスクから出していたものだ。文机に箱を置いて不織布の袋からぱっと出した。

チョーカーだった。

至君をまじまじと見て、また手元のチョーカーを見た。
「これうちのばあちゃんのおすすめの店のやつで」と言って広げて見せてくれた。うなじに当てるところが幅広になっていて薄くて硬い金属が入っているそうだ。全体的になめらかな黒い布の素材で軽かった。なにより裏地がオレンジだった。至君も俺の好きな色を覚えてくれてたんだ。

「透、後ろ向いて」
俺はコクリとうなずくと至君に背を向けた。
「これさ。バイタルを測る機能がついてて、朝と晩にスマホにデータが送られてくるから。あとで登録の仕方教えるね」
俺は至君に背中を見せてさっさと学校支給のチョーカーを外した。
至君がごくりとのどを鳴らした。そうか、よく考えればオメガがアルファの前でチョーカーを外すなんて無防備にもほどがあった。手でうなじを隠すと、至君が手の上から音を立ててキスをした。
俺が驚いて手を退けると至君がそこにキスした、全身を痺れが走る。オメガの弱点はうなじだとまざまざと感じた。
俺がびっくりしてる間に至君はチョーカーを付けてくれた。鍵は右側についているそうだ。
チョーカーを付け終わると至君が後ろからお腹に手をまわして肩に頭をのせてきた。むせかえるような至君の匂いが全身を包む。

「透、無防備すぎるよ。俺勘違いするよ?このまま押し倒しちゃうよ?」
「お…おした…っ」

俺が小さくなると、お腹に回された手にぎゅっと力を込められて至君の足の間に閉じ込められた。

「透はベータだった時間の方が長かったから分かってないよね。でも、やっぱチョーカー無いとすごかった」
「ご…ごめん」

俺は至君の匂いに包まれている今がすごいのです。
至君はそのまま僕の肩にあごをのせて、チョーカーのアプリのダウンロードを手伝ってくれた。スマホの計測ボタンを押すと今現在の体温とフェロモン値がスマホに送られてくる。
数値はちょっと高かった。恥ずかしい。

「遠くにいても俺は至君に守られてるって意味なんだよね」
俺はチョーカーを撫でてうつむいて笑った。

「うん、いや…俺、透の近くにいたいから。4月からこっちの大学に通うことにした」
至君がしゃべると息が耳に掛かってくすぐったい。だがそれどころじゃない、びっくりして至君を振り返って見る。

「来年はもう4年だからあとは就職だけなんだけど、俺はもう決まってるし。だったら透の近くにいたい。あのゼミ覚えてる?俺そこでバースに特化した住宅の勉強しようと思って。もう、試験も受けて大学側からの許可も来たよ」

至君がすごく優秀なことは分かった。褒めてって目でキラキラ見てくる。どうしようと思って頭を撫でてみた。

「透に褒められた。うれしい…でも…」
至君は俺の唇を親指でなぞる。
「こっちのほうがもっと嬉しいかな」

俺はまじまじと至君をみつめた。徐々に顔に熱が集まってくる。だけど、俺のために頑張ったと言ってくれたんだからと覚悟を決めた。

俺は至君の頬に手を当てて目をつむってチュッとしてみた。失敗して唇に当たらなくて、もう一度チュッとする。今度は惜しかった、唇の上に当たった。
今度はギリギリまで見てようと薄目でチュッとして見た。ちゃんと唇に当たった。
嬉しくて至君を見るとすごく優しい顔で見ていた。また、子供っぽいところを見せてしまった。
俺はまた至君の足の間に座った。
「ごめん、俺へたくそだ」
「いやすごく幸せだ。透がやっぱ大好きだって思った」
お腹に回る手にぎゅっと力がこもって俺も幸せな気持ちになった。

「今日はありがとう。すごく楽しかった。次はクリスマス?くらいかな」

俺を抱きしめる至君の手を優しくなでた。

「ちゃんと毎日連絡する」

俺はコクコクとうなずいて、この前ツバサと話していた時のことを思い出していた。
俺も至君が好きだ…至君の近くにいたいって思う。
俺が至君のためにできる事って何だろう。

そこからはお互い近況報告をして夕方、寮へ送ってもらった。

部屋でパーカーを脱ぐとフードからモミジが一枚落ちた。俺は失くさない様に英和辞典の間に挟んだ。
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