後発オメガの幸せな初恋 You're gonna be fine.

大島Q太

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14.紅葉デート

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気が付けば10月も終わり頃。待ちに待った至君とデートの日だ。
この前別れた駐車場で待ち合わせた。至君はこの前乗せてくれた車の前で俺を待っていてくれた。
恋人になってから久しぶりに会うのにどんな顔をしたらいいのか分からない。自然にふるまおうとすると手と足が同時に前に出そうだ。

俺がぎこちなく近づくと笑顔で手を振ってくれる。助手席のドアを開けてくれた。俺はそのまま乗り込むとシートベルトを締めて、運転席に乗り込む至君に「よろしくお願いします」と頭を下げた。至君が「こちらこそ」とお辞儀をしてなんだかおもしろくなって二人揃って笑った。

紅葉狩りには山の奥の方が綺麗だからと向かうことになった。

「あれ、透、その格好ちょっと寒いかもしれないよ」
そう言われて俺は自分の格好を見る。長袖のシャツに黒のチノパン、グレーのリュックにスニーカー。
首をかしげると。
「ああ、山の上は少し気温が下がるからさ。あっ、良いこと思いついた。お揃いのパーカー買おうよ」

そう言ってしばらく走った後、赤い看板の店に入った。
お揃いの白の裏起毛のフルジップパーカーを買った。XLで同じサイズにしたのに俺にはゆるっとして…けど至君には丁度良くて、なんだかよく似合っている。お金はいつの間にかまとめて至君が払ってくれていた。

「透に似合うね。そのパーカー」
「至君の方が似合ってる。着こなしてるって感じがする」
お互い褒め合ってしまってこういうのをバカップルって言うんだ。

俺達はまた車に乗り込んで山へ向かった。至君の言う通り山は思ったより寒くってパーカーのおかげで冷えずに済んだ。
到着した山間は紅葉が始まっていて、赤や黄色、緑が折り重なるように山を覆っていた。観光用の休憩できる場所が山道を上った先にあるそうなので歩いて向かうことにする。
俺は思い切って手を繋いでみた。至君の手は温かくて俺の手を離さない様に指をからませてくる。恋人つなぎってやつだ。大きくて温かい俺の好きな手。
「透から繋いできたのに、なんでそんなに恥ずかしそうなの?」
口元に笑みを浮かべて俺をみてくる。
「初心者なので…」
俺は至君がいないほうを見る。至君の控えめな笑い声が聞こえてきた。僕は意地になって至君を見ないようにした。手を繋いだまま並んで山道を上ると「ほら見えた」そう言って至君が前方を見るように促すので目をやると山小屋が見えた。山小屋はログハウスで周囲の自然に溶け込むように建てられていた。

俺は甘いカフェモカを、至君はコーヒーを注文して山小屋の奥のテラス席に座った。テラス席側には川があった。水面に浮かぶモミジが川の流れの速さを教えてくれる。ごつごつと並ぶ石や岩の間を器用に滑っていた。様々な色に染まる紅葉はため息が出るほどきれいだった。
「カフェモカってどんな味?」
至君が俺が飲んでいるカフェモカを飲みたそうにして、自分が飲んでいたコーヒーを勧めてくれるので交換することにした。
甘いものを飲んだ後だったので少し苦みが際立ったが香りのいいコーヒーだった。至君は俺がコーヒーを飲むのをじっと見ていた。
「間接キスだね」
至君がイタズラがうまくいったみたいな顔で言う。
「なっ…!」
俺はカフェモカを取り返して一口飲んだ。「また」って言うのでもう無視する。
「やけに揶揄うよね」
俺はカフェモカが残り少なくなったコップを見つめた。至君が慌てた様子で。
「ごめん、すごく浮かれてる。透の反応が可愛くて」
「俺だって楽しいよ、会いにきてくれてありがとう」
「透のそういうとこ好きだよ」
俺はコップの中身を全部飲み干すと至君を見た。
「俺も…好きだよ」
至君は両手を広げたけど、俺と至君の間にはテーブルがある。
俺はその手に手を重ねるだけにした。至君もコーヒーを飲み終えたのでまた山道を上ることにした。

山の空気はすっかりと秋だ。

散策を楽しんでまた車へと戻った。山から吹き降りる冷たい風に至君の腕にしがみついていた。
至君が助手席のドアを開けてくれる。俺はありがとうを言って名残惜しく至君の腕から手を放そうとした。
「やっぱ、紅葉デートで良かった。透との距離が近い」
俺を覗き込むように至君が腕を引いた。見上げるとすごく近いところに至君の顔があって隙を突くようにチュッとキスをされた。驚いた俺はそのまま助手席に乗り込んでしまってリュックを助手席のシートで押しつぶしてしまった。至君は運転席に乗り込んでカーナビをセットしている。我に返って思いだした。

「あっ。カップシフォン!」
俺は慌ててリュックからカップシフォンを出した。ヒナタにアドバイスをもらいながら綺麗にラッピングしたカップシフォンは少しよれてしまった。

「至君に作ってきたんだけど。つぶしちゃった。ごめん」
至君がキラキラした笑顔でカップシフォンを大切そうに受け取ってくれた。しっかり写真を撮った後、ラッピングを解いて一つ取り出すと大きな口でパクリと食べた。

「んっま!透、すごいうまいこれ!ふわふわでシュワシュワだ。えっ、抹茶?俺の好きなものに合わせてくれたんだ」
片手でシフォンを食べながらもう片方の手で俺の頭をわしゃっと撫でてきた。俺はその動きに合わせてコクコクとうなずいた。

すごく喜んでくれている。ぐんっと体温が上がるのを感じた。
ぎゅっと手を握っていると俺の頭を撫でていた手が首の後ろに回る。チョーカーの上を指がなぞってびくりとした。至君を見ると少しだけ開いた口に目がいって顔が赤くなる。頸椎に添えられた手に力がこもって動けなくなった俺に至君がキスをした。
最初は唇に触れるだけだった。ペロッと舐められた反射で口が開いた。少しざらりとした柔らかな舌が口の中に入って来ていろんなところを舐めてくる。どう返して良いか分からなくて、たまにちろっと舌を舐め返してみた。抹茶の味がする。

至君が口を離して俺の肩におでこをのせたまま固まっている。俺も急なことで少し目が潤んだ。

「透が可愛くて、このまま東京に連れて帰りたい」

それは俺にはどうにもできないよ。背中に手をまわしてなだめるようにさするとまた顔を上げてチュッと唇にキスをしてきた。目を閉じるのが間に合わず至君の閉じたまつげがフルフルと震えるのを見つめた。

「ダメ、止まんなくなる。ダメ…」
至君は自分に言い聞かせるようにつぶやくと座りなおしてシートベルトを締めた。俺もあわててシートベルトを締める。

なめらかに走り出した車はお昼ご飯を食べるために道の駅をめざした。
車中ではご機嫌な至君が東京での話をしてくれた。
「渡したいものがあるから帰りにちょっとうちのばあちゃんちにも寄るよ」
至君が爆弾発言をするから俺はおばあちゃんへのお土産を道の駅で買った、確か甘いものが好きだったはずだ。そのあと、併設されたレストランでは同じ定食を食べた。至君は何を食べてもおいしそうな顔をしていた。至君も俺が美味しそうに食べていると目を細める。


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