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25.新年行事
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1月4日。
我が家は大騒ぎだった。至君のおじいさまの新年行事に参加するからだ。それは両親同士の顔合わせも兼ねている。場所は県内でも有名なホテルだった。母は入学式でしか出さない色留袖を出し。父は会社の勤続何年かの表彰の時にもらったと言う、ブランドのネクタイを出して準備していた。俺と航兄は制服だ。
受付で招待状を出すと、席に案内された。まわりのお客さんは仕立ての良さげなスーツ姿の年配者が多かった。
新年行事は祈祷から始まる。壇上に近い席にはおじいさまたちと至君たち。たぶん、ご両親であろう美人とおじさんが座っていた。俺達家族は部屋のちょうど真ん中の方だった。給仕を受けながらコース料理を頂いた。遠くに見る至君たちはオーラがあってなんだか少し遠く感じた。いつもは身近に感じていたおばあさまも、今日はスーツに身を包み来客に挨拶をされていた。所作が堂に入っていてさすがだ。かっこいい。
至君がこっちを見ていた。小さく手を振ると、嬉しそうに手を振ってくれた。至君は体に合ったスーツをかっちりと着ていた。俺の制服が途端と子供じみたものに感じる。俺はすぐ周りを見てしまった。俺にはマナーとか。場に合わせた身のこなしとかは分からない。急に不安が募る。
「透、お前いらないこと考えてるだろ」
航兄がため息交じりに言ってくる。
「いらない事じゃないよ、なんかちょっと。遠いなって思ってただけだ」
航兄は早々にナイフとフォークをやめて箸でコース料理を食べていた。
「いいか。できないと思うなら学べばいいし、難しそうなら箸を使え」
そう言って、俺にも箸を勧めてきた。両親が二人して俺を見ていた。
「大事なのはこの場を楽しんで、おいしく食べる事だろ」
航兄はそう言っておいしそうに料理を箸で食べていた。
「母さんたちもね、楽しんでるわ。この緑のが美味しいわよ」
「あぁ、透。この緑のやつおいしいよ」
父も母も楽しんでいる。俺も学校で習った俄かのフォークとナイフをやめて箸に替えた。両親の勧める緑のものを食べた。
「ほんとだ、おいしい」
名前の分からない料理はおいしかった。名前なんか知らなくたっておいしいものはおいしい。
背もたれをポンと叩かれ、横を見ると至君が立っていた。見上げると頬を撫でられる。俺の様子が気になったらしく駆けつけたそうだ。家族の前でこういう甘い仕草は恥ずかしくて、いたたまれなくなるが、少しうれしくて頬が緩む。航兄は呆れたようにため息をつくし。両親は口に手を当ててほわほわしている。至君はお辞儀をした後、
「あけましておめでとうございます。楽しまれてますか?」
そういって、俺の肩に手を置いた。
「あけましておめでとう。うん、おいしいよ!」
父がぐっと親指を立てて至君に答えていた。
「会は次の祖父の言葉で締めくくりなので、そのあとまた迎えに来ます」
わざわざ席を離れて俺の様子を見に来てくれる。それだけで自分が一人で頑張るんじゃないんだと教えられた気がした。至君はお辞儀をするとまた自分の席に戻って行った。会の後は両親の顔合わせだった。至君のご両親は正月の間はいろんな会社の新年行事に顔を出す必要があってお忙しく、この新年行事の後しか時間が無かったそうだ。
壇上におじいさまが立つと会場は静かになった。おじいさまは閉会の挨拶を終え。最後は一本締めで散会となった。
すぐに迎えに来た至君の後をついて行き、用意されていた個室に通された。
そこにはすでに至君家族が揃っていた。部屋に入ると視線を一気に集める。おじいさまとおばあさまがにこやかに手を振るのにぎこちなく返した。至君のお父さんは至君くらい背が高く。お母さんは頭一つ小さいが、オーラが一番出ていた。きっとパワフルな人なんだろうと感じる。
俺たち家族は至君ご家族と対面する席に座るように促された。お互い頭を下げながら席に着いた。
「はじめまして、永田透です」
順に両親と航兄も紹介した。
「はじめまして、至の母の千佳子です。こっちが夫の誠二です」
近くで見ると至君のお父さんもしっかり男前だった。頭をもう一度下げた。
「まどろっこしいのは苦手だから端的に言います。失礼だけど透君のことは全部調べました。こちらばかり知っているのもフェアじゃないと思うから、これは我が家の概略です、目を通してください」
そう言ってA4用紙の紙束を目の前にずいと出された。俺たち家族は促されるままその紙をおそるおそるめくる。
「まったく、ちかちゃん。仕事じゃないんだから」
おばあさまはその資料の存在を今知らされたのか呆れた風にたしなめている。至君本人から聞いていることも多かったが素直に目を通した。至君のご両親はお父さんの実家の企業で仕事をしていた。いわゆる大手と言われる、テレビCMでもおなじみの企業だった。お父さんは三男で継ぐわけではないが要職についているそうだ。東京で住んでいる家は都心の庭付き戸建てで。家族4人が全員アルファ性の、要するに上流階級の家だと言うことを知った。うちはといえば父は電機メーカーの工員だし、母は週2で学童で補助員をしている兼業主婦だ。財産と言えばまだ25年ローンが残っているあの家だけ。これだけ見るとほんとに何で俺なんだろうと思う。
我が家は大騒ぎだった。至君のおじいさまの新年行事に参加するからだ。それは両親同士の顔合わせも兼ねている。場所は県内でも有名なホテルだった。母は入学式でしか出さない色留袖を出し。父は会社の勤続何年かの表彰の時にもらったと言う、ブランドのネクタイを出して準備していた。俺と航兄は制服だ。
受付で招待状を出すと、席に案内された。まわりのお客さんは仕立ての良さげなスーツ姿の年配者が多かった。
新年行事は祈祷から始まる。壇上に近い席にはおじいさまたちと至君たち。たぶん、ご両親であろう美人とおじさんが座っていた。俺達家族は部屋のちょうど真ん中の方だった。給仕を受けながらコース料理を頂いた。遠くに見る至君たちはオーラがあってなんだか少し遠く感じた。いつもは身近に感じていたおばあさまも、今日はスーツに身を包み来客に挨拶をされていた。所作が堂に入っていてさすがだ。かっこいい。
至君がこっちを見ていた。小さく手を振ると、嬉しそうに手を振ってくれた。至君は体に合ったスーツをかっちりと着ていた。俺の制服が途端と子供じみたものに感じる。俺はすぐ周りを見てしまった。俺にはマナーとか。場に合わせた身のこなしとかは分からない。急に不安が募る。
「透、お前いらないこと考えてるだろ」
航兄がため息交じりに言ってくる。
「いらない事じゃないよ、なんかちょっと。遠いなって思ってただけだ」
航兄は早々にナイフとフォークをやめて箸でコース料理を食べていた。
「いいか。できないと思うなら学べばいいし、難しそうなら箸を使え」
そう言って、俺にも箸を勧めてきた。両親が二人して俺を見ていた。
「大事なのはこの場を楽しんで、おいしく食べる事だろ」
航兄はそう言っておいしそうに料理を箸で食べていた。
「母さんたちもね、楽しんでるわ。この緑のが美味しいわよ」
「あぁ、透。この緑のやつおいしいよ」
父も母も楽しんでいる。俺も学校で習った俄かのフォークとナイフをやめて箸に替えた。両親の勧める緑のものを食べた。
「ほんとだ、おいしい」
名前の分からない料理はおいしかった。名前なんか知らなくたっておいしいものはおいしい。
背もたれをポンと叩かれ、横を見ると至君が立っていた。見上げると頬を撫でられる。俺の様子が気になったらしく駆けつけたそうだ。家族の前でこういう甘い仕草は恥ずかしくて、いたたまれなくなるが、少しうれしくて頬が緩む。航兄は呆れたようにため息をつくし。両親は口に手を当ててほわほわしている。至君はお辞儀をした後、
「あけましておめでとうございます。楽しまれてますか?」
そういって、俺の肩に手を置いた。
「あけましておめでとう。うん、おいしいよ!」
父がぐっと親指を立てて至君に答えていた。
「会は次の祖父の言葉で締めくくりなので、そのあとまた迎えに来ます」
わざわざ席を離れて俺の様子を見に来てくれる。それだけで自分が一人で頑張るんじゃないんだと教えられた気がした。至君はお辞儀をするとまた自分の席に戻って行った。会の後は両親の顔合わせだった。至君のご両親は正月の間はいろんな会社の新年行事に顔を出す必要があってお忙しく、この新年行事の後しか時間が無かったそうだ。
壇上におじいさまが立つと会場は静かになった。おじいさまは閉会の挨拶を終え。最後は一本締めで散会となった。
すぐに迎えに来た至君の後をついて行き、用意されていた個室に通された。
そこにはすでに至君家族が揃っていた。部屋に入ると視線を一気に集める。おじいさまとおばあさまがにこやかに手を振るのにぎこちなく返した。至君のお父さんは至君くらい背が高く。お母さんは頭一つ小さいが、オーラが一番出ていた。きっとパワフルな人なんだろうと感じる。
俺たち家族は至君ご家族と対面する席に座るように促された。お互い頭を下げながら席に着いた。
「はじめまして、永田透です」
順に両親と航兄も紹介した。
「はじめまして、至の母の千佳子です。こっちが夫の誠二です」
近くで見ると至君のお父さんもしっかり男前だった。頭をもう一度下げた。
「まどろっこしいのは苦手だから端的に言います。失礼だけど透君のことは全部調べました。こちらばかり知っているのもフェアじゃないと思うから、これは我が家の概略です、目を通してください」
そう言ってA4用紙の紙束を目の前にずいと出された。俺たち家族は促されるままその紙をおそるおそるめくる。
「まったく、ちかちゃん。仕事じゃないんだから」
おばあさまはその資料の存在を今知らされたのか呆れた風にたしなめている。至君本人から聞いていることも多かったが素直に目を通した。至君のご両親はお父さんの実家の企業で仕事をしていた。いわゆる大手と言われる、テレビCMでもおなじみの企業だった。お父さんは三男で継ぐわけではないが要職についているそうだ。東京で住んでいる家は都心の庭付き戸建てで。家族4人が全員アルファ性の、要するに上流階級の家だと言うことを知った。うちはといえば父は電機メーカーの工員だし、母は週2で学童で補助員をしている兼業主婦だ。財産と言えばまだ25年ローンが残っているあの家だけ。これだけ見るとほんとに何で俺なんだろうと思う。
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