後発オメガの幸せな初恋 You're gonna be fine.

大島Q太

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26.両家の顔合わせ

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読み終えるタイミングでお母さんが口を開く。
「私、運命とか信じないの」
俺は少し考えた。俺だってそうだ。運命なんてと思っていた、でも。
「俺が好きなのは至君です。運命かどうかは大切じゃない」
お母さんは難しい顔が少し和らいだ。俺はまたもやご家族の前で惚気てしまった。音が出るくらいに頭に血が上ってぷしゅっと煙を出しそうになった。父が慰めるように肩を叩く。
「うちは息子がオメガだと知ったのはついこの前でした。うちの息子はこの通り少しマイペースなところもありますが真面目な子です。至君も良い青年なのは話をして知っています、ご両親が大切に育てられたことでしょう。家格としては釣り合いませんが、二人の仲を認めていただけるとうれしいです」
父がそう言って頭を下げるので、俺ら家族は皆で頭を下げた。
「親バカで恐縮ですが、私たちはこの子の気持ちを守ってあげたい」
俺のために家族が頭を下げてくれることに唇をかんだ。至君は頭をあげるように言う。

おばあさま達はにっこりと微笑んで頭を下げてくれた。
「ほら、ちかちゃん。ちゃんと言わなきゃ。いっくんがいつの間にか好きな子を作ったことが気に入らなかっただけだって」
お母さんはおばあさまに促されてぺこりと頭を下げた。
「私もパパから透君が良い子だって聞いてたの。脅かすようにしてごめんなさい」
さっきまであった威圧感が消え、ぎこちなく笑いかけられてホッとした。おばあさまとおじいさまの娘で至君のお母さんなのだと感じる笑顔だった。
「私達は至から話を聞いた時から透君を我が家に迎えたいと思っていたよ。ね、ちかちゃん…あれ? 至がお婿に行くの?」
お父さんがマイペースに質問してきて小首をかしげた。それにお母さんが笑う。雰囲気が和やかなものに変わった。
「こちらこそ、いっくんはうちの大事な子です。でも、透君ならきっと幸せにしてくれると思うわ。ありがとう、これからもよろしくね」
お母さんは頭を下げて俺に笑いかけてくれた。
「ちかちゃんも気が済んだことだし、そろそろ、手続きをしようか」

お父さんはさっと空気を変えて、机の上に書類を並べつつ鼻をこすった。
「ここまで至の執着がすごいと、どう見たって至の方がべた惚れだって分かってるから」

おじいさまと穣君が噴き出して、至君が嬉しそうににっこりと笑う、俺は苦笑いしか返せなかった。アルファのご家族は匂いで理解していたらしい。うちの家族はハテナを飛ばしている。
「私はうれしいよ。至がちゃんと好きな人を見つけて、私たちに会わせたいって言ってくれたこと」
至君の家族は晴れやかな笑顔だった。


両親同士の顔合わせは和やかに終わった。
俺と至君は婚約する。
そして、2月中に俺のヒートが来て番えば晴れて番登録をする。

それにしても発情期の時期まで把握されて、俺たちやりましたって両家族に宣言しなきゃダメって恥ずかしくてつい顔が赤くなる。初めてのヒートの時だってほんとに恥ずかしかった。でも、もう俺はオメガだ。オメガとして至君に見合う人間でいたい。

「こんなことをお願いするのは図々しいのですが。今日のおばあさまを見てかっこいいって思いました。俺も至君の隣に立てる人になりたいです、だから、勉強させてもらえませんか」

「なんか、感動するわ…透君」

お母さんに思った返事じゃないことを言われて家族を見た。3人は同じタイミングでうなずいていた。俺はもう高校生なのに、いつまでたっても子ども扱いされているように感じ少しむっとした。
「まかせて」とおばあさまが返事をくれた。俺の週末の予定に至君のおばあさまの家に通うと言うのが増えた。至君の両親はこの後もいろんな新年行事に顔を出さないといけないために席を立った。扉の前で見送る俺たちと握手をした。そのあと、おばあさま達とうちの家族が少し話をしてお開きになった。

皆でエレベーターを待っていると、いつの間にか後ろに立っていた至君が俺を抱きしめてくる。熱心に頭にキスしてくるから固まった。
「至君ちょっと」
離れようとするとさらに力を込められて動けない。
「だってもう、透は婚約者だろ?」
俺の頬をつつきながら悪びれることもなく至君が言う。
「はいはい、まだいちゃつかない」
航兄があきれ顔でにらんでいる。至君は気にした様子もなく抱き着いてくる。エレベーターが到着して皆が乗り込む。俺たちも後に続こうとしたが、至君が放してくれなくて動けなかった。なぜか航兄が敬礼のポーズをとっている。皆笑顔で手を振っていてそのまま、無情にも扉が閉まりエレベーターは下降していった。
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