推しの護衛の推しが僕

大島Q太

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推しが尊い

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あぁなんて麗しい光景だろう。


この国の王子アルフィン王子と貴族では高位である公爵家の次男、僕の最推しフロスト様が校舎裏にある薔薇の庭園で見つめあっているのだ。人の少ないこの場所は彼らのお気に入りの場所だ。


アルフィン王子がフロスト様の首筋に手をやって親指で優しく頬を撫でている。秋薔薇の可憐な花を背景にしている二人の立ち姿はいつ見ても絵になる。



アルフィン王子は黒髪で横の髪を少し伸ばして青いひもで耳の横に流している。あの青いひもはフロスト様からのプレゼントだ。青色はフロスト様の目の色だから。黒い立襟の上着、細身のストレートパンツ。鍛錬を怠らない体躯はしっかりと筋肉が付き男らしい印象だ。

そして、フロスト様は長めのシルバーブロンドの髪を黒の光沢あるリボンでひとつにまとめ後ろに流している。もちろんこの黒のリボンはアルフィン王子からプレゼントされたリボンだ。フロスト様は華奢な体型でその肌は白く輝いて見える。ごく薄い灰色の詰襟の軍服でフロスト様の生家の仕立てだ。縁取りはこげ茶。その凛とされた姿は薄い膜がかかったかのように発光して見え天使かと思うほどに現実味のない美しさだ。ふたりの黒と白、対のようなたたずまいは眼福だ。


この学園に通えてよかった。二人を遠巻きに見守りながら僕はホゥっとため息をつく。



僕の通う王立の学園は全寮制の由緒正しき学園である。国中から貴族の子息が集められ13歳から成人する16歳までの3年間を勉学と鍛錬に励む。学友たちと寝食を共にし、苦楽を乗り切ることで深めた親交はそれぞれが領地に帰った後も続くことが多く。

また、優秀な人材はそのまま王都で雇用されたり、縁があれば婚姻を結ぶこともある。


かく言う僕の兄さまもこの学園で伴侶を見つけて帰ってきた。兄さまの伴侶、ヨシュア様は本当に素敵な人だ。学園きっての武闘派で名を馳せ、剣の腕は在学中も優秀と評判だったそうだ。今でも丸太なら両肩に1本ずつ乗せて運ぶことだってできる美丈夫だ。尊敬してやまない。



僕の家は家族総出で領地経営をしている。ただやっていることはまるっきり農家だ、現金収入はもっぱら山賊討伐や傭兵稼業で稼いでいる。それでも小さな領地を拝領する男爵家だ。つまり、一応貴族。そのおかげでこの学園に通うことができた。最初こそ家族と離れて暮らすことに涙を流したものだが、ここには田舎では見かけることのないキラキラした子息たちがたくさんいた。その様々な恋や友情を見かけるにつれ僕はそれを夢中で追うようになった。



特にフロスト様は僕史上最も美しい。彼は天使控えめに言って現人神だ、最高だ。成績は優秀で学年順位はいつも上位、飛び級を勧められるほどの秀才だ。人付き合いは苦手そうだが心根は優しく公爵家なのにおごったところもない人格者だ。そのフロスト様が心を寄せる相手であるアルフィン王子はこの国の6番目の王子様だ。勉強もできるが剣術の腕が同級生から抜きんでている、ひとえに日々鍛錬を怠らずにいる努力家だからだ。その明るい性格から級友に囲まれていることも多いが、なによりフロスト様への慈愛に満ちたまなざしなどは僕まで赤面してしまうほど甘い。そんな二人の逢瀬は心も空気もきれいにする効果がある気さえする。一家に一台僕の推し!



だからこそ、二人が二人の世界を作るために僕ら平凡にはやるべきことがある。観察対象の邪魔をしないのが絶対のルールだ。そのため邪魔者の排除をすることも僕らの仕事だ。平凡がうっかり水を差すなんてもってのほかだ。平凡には平凡の秩序があるのだ。僕はそれを犯そうとしているヤツを見つければ確実に殲滅する。制裁はきついほど良い。ひどいと言われるが観察対象のつかの間の逢瀬を邪魔するやつはそうなって当然だと思っている。


あっ!!アルフィン王子の背後の植え込みにいるヤツが怪しい動きをしている、このままでは二人に気づかれる。すぐさま移動してその怪しいヤツの背後に回る。不届きモノの腕をとり足払いをしてみぞおちに一発入れる。

平凡は風景になり見守るのが鉄則だろうが。

植え込みにそいつを隠したらまた観察を始める。実家での山賊討伐に比べれば楽勝だ。同じように駆けつけた仲間がお疲れ様ですと声をかけてくれた。



あぁ、一秒でも長くこの光景を見守りたい。

おぉおお!!!アルフィン王子がフロスト様にキスをした。フロスト様がアルフィン王子の背中に手をまわして顔を胸にうずめ表情を隠すしぐさがたまらない!申し訳ないと思いつつも良いものが見られたなぁ。


そうして、楽しい放課後が終わっていく。




ただ断わっておく。僕は見学専門だ。というのも僕はこの国で一番多い茶色の髪に華のない糸目と低い鼻、そして頬に散らばるそばかすというよくいるタイプの顔だ。級友にもお前の顔は線で描けると言われ。似顔絵を描く授業では大人気だ。悔しくなんてない。身長も高くなく低くなく同級生と並ぶと埋もれるくらい平均というか周囲に溶け込みやすいタイプ。この学園ではしっかりと埋没されているほどに目立つことはない。だから、こんな僕のモダモダなんて絵にならない。面白くない。僕なら推さない。まぁ、今のところ誰にも相手にされないけど需要が無いんだから良いのだ。


それに名前も当時生誕1周年を祝われていた王子のアルフィン様にあやかって。1文字変えたエルフィンと名付けられた。この名前はこの年のブームで同じ名前が同級生に10人はいる。



とにかく平凡とか平均とかを体現しているのが僕だ。父さまたちには申し訳ないけど僕には兄さまみたいに素敵な伴侶をつれて帰ることはできそうもありません。せめて素敵な方々を見て勉強して帰ります。
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