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推し倒される
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だからこそ間違っている。僕はなぜ押し倒されている・・いやまだ押し倒されていない、踏ん張ってるけど。僕の寮の部屋のベッドの前。あれ?誰かの部屋の場所を聞かれてドアを開けたんだ、それで、その彼はそのまま部屋に入ってきて戸を閉めた。詰め寄る彼に机とベッドしかない部屋では逃げ場がなくベッドに追い込まれて今に至る。
「好きだ、エルフィン」
何を言われたのか分からない。いや、分かっているけど。着ている服はフロスト様の護衛騎士の服だ。灰色の立て襟服に灰色の細身のスラックス、服前面にわたる飾緒と縁取りはこげ茶色。立派な体格でしっかりと着こなしている。かくいう僕は何の変哲もない部屋着なのだけど。
「なぁ、エルフィン」
僕の名前をそんな甘い声で呼ばないで欲しい。観察に没頭していた僕の肩をつかんで僕より頭一つ分高いところにあった顔がこちらを覗き込んでくる。返事ができなくてうつむいたのをうなずいたと思ったのか。距離を詰めてくる、反射的に後ずさったためベッドに足をとられ座り込んでしまった。
ミルクティー色の髪、キラキラしてて綺麗だ。サイドと後ろは刈りこんでいて少しだけ前髪が長い。オシャレな髪型だな。見つめてくる瞳が秋にたなびく麦の穂みたいな色でキラキラしている。あぁ、閉じちゃうんだ。まつげ長っ!!下まつげまで長いって、僕は現実逃避もかねて冷静に彼を観察してしまっている。
彼は僕のあごをとって少し顔を傾けて近づいてくる。綺麗なキス顔だな。キス顔!!えっ。唇は赤くてなまめかしい艶やかさだ。それが僕の口に当たる、当たったーー!あったかくて柔らかいんだ。チュッて音がした。その音がさらに冷静だった頭をかき乱す。キスされた!!耳の奥にカーッと血が上る音がした。今僕は確実に頭のてっぺんまで真っ赤だろう。
「エルフィンはキスするのに目を閉じないタイプなのか?」
からかうようにささやく声は聴いただけで悶絶しそうなほどの低く柔らかい声だ。僕のHPがガンガン削られていく。突っ張っていた手が再度近づく彼の顔から逃れるため支えられなくなって肘をついた。
「あ・・・あの」
近づいて来ようとする唇を目で追いかけながら絞り出すように声を出した。彼は動きを止めてこちらをじっと見ている。
「あの、誰かと間違っていませんか?」
あぁ、僕はバカな質問をしている。彼は僕の名前を呼んだ。そして、ここは僕の部屋だ。でも、もしもがある。だってエルフィンはほかにも10人いるし、僕に言い寄るには上等すぎる相手が悪いんだ。彼は僕の鼻先5センチのところで静止した。その動きを追っていた僕は今たぶん変な寄り目になっている。彼の唇から目が離せない。
それなのに。
愛おしむようなしぐさで僕の頬を撫でながら
「私の心を疑うなんてひどいな、エルフィン。私は今 目の前の君を口説いている」
そして、また彼の顔が近づいてくる。僕は肘を使ってベッドの奥へ奥へと逃げたが行き止まりだ。支えていた肘を離すとシーツにポスリと沈み込んでしまった。悪手だったがもう後がない。追いかけてくる彼にまた、チュッとキスされた。中途半端に乗り上げていた僕の足をベッドにそろえて乗せさせ。彼は僕の顔の横に肘をついて僕を閉じ込めた。さらに太ももを挟むようにまたがりベッドに乗り上げてくる。
手慣れている、なんか悔しい。僕は今までこんな風に囲い込まれたことは一度もない。逆もしかり。アルフィン王子とフロスト様のなら見てみたいけど。
さらにゆっくり近づく彼の顔を見ていられなくてぎゅっと目をつぶるとすぐ唇に柔らかさを感じた。
唇の端・・上唇・・頬、それに鼻や耳・・また、唇に戻ってきて、そのたびにチュッて音が聞こえてくる。下唇を柔らかく噛まれた。驚いて目を開けると彼は楽しそうに目を細めている。色っぽい微笑みにくらくらする。そして、また顔じゅうにキスされている。僕はされるがままになっていた。彼の指は僕の前髪を掻きあげたり。耳を柔らかくもんだりと忙しそうだ。
固まったままになっていると耳の後ろをなぞられた。びっくりして思わず、ひゃっと声が出てしまった。
その瞬間を待っていたかのように開いた僕の口に彼の舌が差し込まれた。
今舌を受け入れているのは僕か!?知らない温度が口の中で動いている。戸惑いで顔を動かそうとしたところをがっちりとホールドされた。逃げられない。
彼は無遠慮にれろっと上あごをなめた。僕は背筋にゾワっと感じた。その衝撃から奥に逃げた僕の舌を彼の舌が追いかけてきて舌裏をなめられる。肉同士が触れ合うことにゾワっが増えていく。歯の裏や頬の裏もねっとり舐められ、僕がゾワっとする場所をまんべんなく見つけようとする彼の舌はとても勤勉だ、僕は息も絶え絶えで意識が飛びそうになる。さらに僕の舌先をチロチロと彼の舌先がなぞりだすともう切ない感じに高まってしまった。
思うように息もできなくてぼーっとしてきた、助けを求めて抑え込む彼の腕をタップする。ようやく離れた彼は色気たっぷりの笑みを浮かべていた。
僕の初めてのキスはレモンでもイチゴでもないお互いの唾液まみれの大人のキスになった。なんてことだ。
やっと解放されて勢いよく息を吸い込んだ。口の端からあふれた涎が頬を伝い流れている。彼はお構いなしにまた、頬に、耳にとキスを降らせている。僕はハッハッと犬みたいな息が止まらない。頭の中はぼーっとして夢かと思うが、しっかりと感じる彼の重みや体温がじんわりと僕に現実だと知らせている。
「エルフィンは可愛いなぁ」
そうやってまた顔を傾けた彼が近づいてくる。これ以上の進行は止めなければと彼の腕をタップする。彼はそれに応じて止めてくれた。呼吸が少しずつ整うと思考がクリアになってきた。そして冷静に彼をじっくり観察する。服装は公爵家の護衛騎士の服。よく見かける面々の顔を一人一人思い出す。あぁ、彼はフロスト様の一番近くにいる護衛の人だ。
「そんなに熱心に見つめられると照れるのだが」
照れて良いのは僕の方だ。初めて会話をする相手とこんなことになっているなんて恥ずかしくて爆ぜる。
「あの・・・フロスト様の護衛騎士のヴィクトールさんですよね、なぜこんなことを?」
声が震える。彼の手がまた僕の頭をやさしくなでている。口元に浮かべた笑みが余裕そうでしゃくだ。
「なぜって、君を好きだと言っただろ。君もうなずいたじゃないか。エルフィン」
いやだから、僕みたいな平凡に告白するなんて正気ですか。この学校に入れる護衛なんってどいつもこいつも由緒正しき爵位持ちのエリートでしょうが。しかもフロスト様のとこの護衛騎士なんて将来近衛騎士か文官に就職が決まっているエリート中のエリートじゃないか。間違いなくキラキラ族さんだ。
しっかりと抱き込まれて指が背中をなでている。
これ以上の無体はさせまいと両手で口を押さえた。彼は困ったように眉根を寄せて今度は僕の肩口に顔を埋めると首筋をベロンと舐めた。そのまま僕をがっしりと抱き込むとぐるりと体を反転させ今度は僕が彼の胸に頭を預けて乗り上げる形になってしまった。
「ほら、疑いようもなく緊張しているだろ、私の心臓の音が聞こえるか?」
確かに耳に当たる彼の胸の音、心臓の鼓動がとても早い。緊張しているのは嘘ではなさそうだけど。見上げると彼もこちらを見ていた。すごく甘い笑顔だ。
「エルフィンもドクドク言っている」
彼は嬉しそうに肩をさすってくる。目がそらせなくておどおどしていると彼は腹筋だけで僕ごと座る。いわゆる膝抱っこと言う形だ。さっきから恥ずかしいことしかされてない。
なんで僕はおとなしく彼に抱きこまれているんだろう。
胸を押し目線が合うと彼はさわやかな笑顔を浮かべてこちらを見ていた。
「これ以上くっついていると私が我慢できなくなるからな」
がんばれ理性!!僕はヴィクトールさんの理性を応援した。
僕の応援が通じたのかヴィクトールさんは労わるような優しい手つきで僕の頭をなでた。そして、僕を膝からおろしてベッドサイドに立たせる。心の中でアワアワと大騒ぎするのでいっぱいいっぱいでいると、彼は立ちあがって僕に微笑むと肩に手を置いて唇にキスを落とす。
「じゃあ、おやすみ、私の恋人」
彼は颯爽とドアを開けて帰っていた。嵐みたいだ。
頭の中が大騒ぎして一言も発せぬまま見送った。しかも恋人にされた。返事はしてないように思うのだけど決定事項のように言っていたな。指が自然と唇をなぞる。思い出してぶり返した熱に力が抜けてまたそのままベッドに寝転んだ。
背中に硬いものが当たった。
もぞもぞとそれを探して手に取るとご丁寧に名前入りの高級そうな万年筆だった。柄の部分には金の箔押しでヴィクトールと書いてある。
あぁ、これは返しに行かなきゃいけないやつだ。
今日はもしかしたら悶々として眠れないかもしれない。
「好きだ、エルフィン」
何を言われたのか分からない。いや、分かっているけど。着ている服はフロスト様の護衛騎士の服だ。灰色の立て襟服に灰色の細身のスラックス、服前面にわたる飾緒と縁取りはこげ茶色。立派な体格でしっかりと着こなしている。かくいう僕は何の変哲もない部屋着なのだけど。
「なぁ、エルフィン」
僕の名前をそんな甘い声で呼ばないで欲しい。観察に没頭していた僕の肩をつかんで僕より頭一つ分高いところにあった顔がこちらを覗き込んでくる。返事ができなくてうつむいたのをうなずいたと思ったのか。距離を詰めてくる、反射的に後ずさったためベッドに足をとられ座り込んでしまった。
ミルクティー色の髪、キラキラしてて綺麗だ。サイドと後ろは刈りこんでいて少しだけ前髪が長い。オシャレな髪型だな。見つめてくる瞳が秋にたなびく麦の穂みたいな色でキラキラしている。あぁ、閉じちゃうんだ。まつげ長っ!!下まつげまで長いって、僕は現実逃避もかねて冷静に彼を観察してしまっている。
彼は僕のあごをとって少し顔を傾けて近づいてくる。綺麗なキス顔だな。キス顔!!えっ。唇は赤くてなまめかしい艶やかさだ。それが僕の口に当たる、当たったーー!あったかくて柔らかいんだ。チュッて音がした。その音がさらに冷静だった頭をかき乱す。キスされた!!耳の奥にカーッと血が上る音がした。今僕は確実に頭のてっぺんまで真っ赤だろう。
「エルフィンはキスするのに目を閉じないタイプなのか?」
からかうようにささやく声は聴いただけで悶絶しそうなほどの低く柔らかい声だ。僕のHPがガンガン削られていく。突っ張っていた手が再度近づく彼の顔から逃れるため支えられなくなって肘をついた。
「あ・・・あの」
近づいて来ようとする唇を目で追いかけながら絞り出すように声を出した。彼は動きを止めてこちらをじっと見ている。
「あの、誰かと間違っていませんか?」
あぁ、僕はバカな質問をしている。彼は僕の名前を呼んだ。そして、ここは僕の部屋だ。でも、もしもがある。だってエルフィンはほかにも10人いるし、僕に言い寄るには上等すぎる相手が悪いんだ。彼は僕の鼻先5センチのところで静止した。その動きを追っていた僕は今たぶん変な寄り目になっている。彼の唇から目が離せない。
それなのに。
愛おしむようなしぐさで僕の頬を撫でながら
「私の心を疑うなんてひどいな、エルフィン。私は今 目の前の君を口説いている」
そして、また彼の顔が近づいてくる。僕は肘を使ってベッドの奥へ奥へと逃げたが行き止まりだ。支えていた肘を離すとシーツにポスリと沈み込んでしまった。悪手だったがもう後がない。追いかけてくる彼にまた、チュッとキスされた。中途半端に乗り上げていた僕の足をベッドにそろえて乗せさせ。彼は僕の顔の横に肘をついて僕を閉じ込めた。さらに太ももを挟むようにまたがりベッドに乗り上げてくる。
手慣れている、なんか悔しい。僕は今までこんな風に囲い込まれたことは一度もない。逆もしかり。アルフィン王子とフロスト様のなら見てみたいけど。
さらにゆっくり近づく彼の顔を見ていられなくてぎゅっと目をつぶるとすぐ唇に柔らかさを感じた。
唇の端・・上唇・・頬、それに鼻や耳・・また、唇に戻ってきて、そのたびにチュッて音が聞こえてくる。下唇を柔らかく噛まれた。驚いて目を開けると彼は楽しそうに目を細めている。色っぽい微笑みにくらくらする。そして、また顔じゅうにキスされている。僕はされるがままになっていた。彼の指は僕の前髪を掻きあげたり。耳を柔らかくもんだりと忙しそうだ。
固まったままになっていると耳の後ろをなぞられた。びっくりして思わず、ひゃっと声が出てしまった。
その瞬間を待っていたかのように開いた僕の口に彼の舌が差し込まれた。
今舌を受け入れているのは僕か!?知らない温度が口の中で動いている。戸惑いで顔を動かそうとしたところをがっちりとホールドされた。逃げられない。
彼は無遠慮にれろっと上あごをなめた。僕は背筋にゾワっと感じた。その衝撃から奥に逃げた僕の舌を彼の舌が追いかけてきて舌裏をなめられる。肉同士が触れ合うことにゾワっが増えていく。歯の裏や頬の裏もねっとり舐められ、僕がゾワっとする場所をまんべんなく見つけようとする彼の舌はとても勤勉だ、僕は息も絶え絶えで意識が飛びそうになる。さらに僕の舌先をチロチロと彼の舌先がなぞりだすともう切ない感じに高まってしまった。
思うように息もできなくてぼーっとしてきた、助けを求めて抑え込む彼の腕をタップする。ようやく離れた彼は色気たっぷりの笑みを浮かべていた。
僕の初めてのキスはレモンでもイチゴでもないお互いの唾液まみれの大人のキスになった。なんてことだ。
やっと解放されて勢いよく息を吸い込んだ。口の端からあふれた涎が頬を伝い流れている。彼はお構いなしにまた、頬に、耳にとキスを降らせている。僕はハッハッと犬みたいな息が止まらない。頭の中はぼーっとして夢かと思うが、しっかりと感じる彼の重みや体温がじんわりと僕に現実だと知らせている。
「エルフィンは可愛いなぁ」
そうやってまた顔を傾けた彼が近づいてくる。これ以上の進行は止めなければと彼の腕をタップする。彼はそれに応じて止めてくれた。呼吸が少しずつ整うと思考がクリアになってきた。そして冷静に彼をじっくり観察する。服装は公爵家の護衛騎士の服。よく見かける面々の顔を一人一人思い出す。あぁ、彼はフロスト様の一番近くにいる護衛の人だ。
「そんなに熱心に見つめられると照れるのだが」
照れて良いのは僕の方だ。初めて会話をする相手とこんなことになっているなんて恥ずかしくて爆ぜる。
「あの・・・フロスト様の護衛騎士のヴィクトールさんですよね、なぜこんなことを?」
声が震える。彼の手がまた僕の頭をやさしくなでている。口元に浮かべた笑みが余裕そうでしゃくだ。
「なぜって、君を好きだと言っただろ。君もうなずいたじゃないか。エルフィン」
いやだから、僕みたいな平凡に告白するなんて正気ですか。この学校に入れる護衛なんってどいつもこいつも由緒正しき爵位持ちのエリートでしょうが。しかもフロスト様のとこの護衛騎士なんて将来近衛騎士か文官に就職が決まっているエリート中のエリートじゃないか。間違いなくキラキラ族さんだ。
しっかりと抱き込まれて指が背中をなでている。
これ以上の無体はさせまいと両手で口を押さえた。彼は困ったように眉根を寄せて今度は僕の肩口に顔を埋めると首筋をベロンと舐めた。そのまま僕をがっしりと抱き込むとぐるりと体を反転させ今度は僕が彼の胸に頭を預けて乗り上げる形になってしまった。
「ほら、疑いようもなく緊張しているだろ、私の心臓の音が聞こえるか?」
確かに耳に当たる彼の胸の音、心臓の鼓動がとても早い。緊張しているのは嘘ではなさそうだけど。見上げると彼もこちらを見ていた。すごく甘い笑顔だ。
「エルフィンもドクドク言っている」
彼は嬉しそうに肩をさすってくる。目がそらせなくておどおどしていると彼は腹筋だけで僕ごと座る。いわゆる膝抱っこと言う形だ。さっきから恥ずかしいことしかされてない。
なんで僕はおとなしく彼に抱きこまれているんだろう。
胸を押し目線が合うと彼はさわやかな笑顔を浮かべてこちらを見ていた。
「これ以上くっついていると私が我慢できなくなるからな」
がんばれ理性!!僕はヴィクトールさんの理性を応援した。
僕の応援が通じたのかヴィクトールさんは労わるような優しい手つきで僕の頭をなでた。そして、僕を膝からおろしてベッドサイドに立たせる。心の中でアワアワと大騒ぎするのでいっぱいいっぱいでいると、彼は立ちあがって僕に微笑むと肩に手を置いて唇にキスを落とす。
「じゃあ、おやすみ、私の恋人」
彼は颯爽とドアを開けて帰っていた。嵐みたいだ。
頭の中が大騒ぎして一言も発せぬまま見送った。しかも恋人にされた。返事はしてないように思うのだけど決定事項のように言っていたな。指が自然と唇をなぞる。思い出してぶり返した熱に力が抜けてまたそのままベッドに寝転んだ。
背中に硬いものが当たった。
もぞもぞとそれを探して手に取るとご丁寧に名前入りの高級そうな万年筆だった。柄の部分には金の箔押しでヴィクトールと書いてある。
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