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第一章 オレが社長に・・・?

訪問

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残念な事に、この事件から「彼女」はコンビニに姿を現さなくなった。
多分嫌な思いをしたからだろう。
「彼女」に逢えなくなったことが、「彼女」の姿を見られなくなったことが、思いのほか自分にとってショックだった事に気付いて、オレはちょっと落ち込んでいた。

それから、一週間ほどが過ぎたある日の事だ。

真昼間。
オレはパンツ一丁で惰眠をむさぼっていた。
もっとも、朝までコンビニで働いていたという言い訳はある。
コツコツ、とノックの音がして、オレは目を覚ました。
インターホンなんて気の利いた物は、オレの安アパートにはついていない。
宅急便か?
郵便か?
それとも訪問販売か何かか?
「は~い」
あくびしながらドアを開けると、「彼女」がそこにいた。

オレはびっくりして、とりあえずドアを閉めた。

「ちょ、ちょっと待って下さい!」

シャツを着て、短パンを履き、万年床をたたむ。
改めて、ドアを開けた。

「お待たせしました」

彼女は表情を変えずに、「いえ」と言った。

今日の彼女は、私服ではなかった。
紺のスーツを着ている。
失礼とは思いつつも、短いスカートから見える白くて長い脚から、目を離せなかった。

「何か、御用ですか?」

尋ねると、彼女は「大切な話がありまして」と言う。

「まあ、立ち話も何ですから・・・よろしければどうぞ。汚い所ですが、お入り下さい」

本当に狭くて汚い部屋だ。
とりあえずゴミだけはしっかり出しているのが救いだった。
やましいDVDがそのへんに散らかっていない事を横目で確認しつつ、オレは彼女を部屋に入れた。
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