【2章完結】女神にまで「無能」と言われた俺が、異世界で起こす復讐劇

騙道みりあ

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異世界転生編

第3話 無謀なる戦意(1)

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 女神が何かをつぶやくと同時に、俺の視界は暗転した。
 だがそれも一瞬のことで、世界に色が灯ったときには、俺は知らない場所へと移動していた。

───魔法…

 頭に可能性が過る。それは、忌々しいあの女神によって俺が転移させられたということだ。

 それが閃き、遅れて怒りがふつふつと湧いてきた。

「クソッ…!」

 転移された場所は森のようだった。

 日は高く昇っているのか、どちらにせよ木の多さから辺りは薄暗く、時間の指標となるものはなかった。屋敷にいる時は他のことで頭がいっぱいで時間など気にしていなかったし、そもそも時間が分かるものがなかった。

「どこを見ても木……か」

 持ち物はない。制服を着ているだけで、ポケットに入れていたスマホなんかはなかった。あったからといって、ここでネットは使えないだろう。

「とりあえず───」


 ガサッ


「───なんだ?」

 不意に後ろから音がする。
 それは、何かが草にぶつかった音。

 風の音ではない。確実に、”何か”がぶつかった音。


 ”何か”がいる。俺の後ろに、何かが。


 ドクンっと、心の音が高鳴るのを感じた。
 命の危機。
 真後ろにいる"何か"は俺にとって最悪の脅威。
 そんな気がしてならない。


 俺はそっと振り返る。


 そして、”何か”と目があった。

 そこに佇むのは金髪の獣。百獣の王に似ているが、別の生物。
 それが別の生物であるのは、体長が5メートル以上もあることから明らかであった。

 こんなやつが近づいてきて、足音がしないはずがない。
 だが、最初にあたりを見渡した時、コイツはいなかった。

「つまり、音もなく近づくことができる、と」

 簡単に推測できること。だが、俺をより危機的な状況に追い込むには十分な事実。
 獣は俺を虎視眈々と見つめていた。いつ食ってやろうかと、こちらへ訴えているように見える。

 獣にとって、俺は恰好の餌なのだ。
 涎を垂らしながらグルルゥ…と唸り声を上げる様子がそれを雄弁に物語っていた。

「はは……やってられねぇよ……」

 乾いた笑みが溢れる。
 絶対に勝てない上位者を前にして、足も竦《すく》む。

 それでも───

「死にたくは……ないんだよな」

 生きる意志はまだ、残っている。

 あの女神に復讐するまでは、まだ、死ねない。

 だから、走る。

 獣に背を向けスタートダッシュを切り、逃げるように木々の合間を走り抜ける。

「うわああああぁぁぁぁぁぁぁぁ────ッッ!!」

 遅れてきた恐怖に、俺は叫びながら走った。
 全力で、百獣の王に背を向けて走った。

 あんな怪物には勝てない。
 生き残るためには、逃げる必要がある。

 後ろは一切振り返らない。
 がむしゃらに前を向いて走る。

「あっ…」

 人生でこれ以上ないほどの全力疾走だったからか。
 恐怖で足が竦んでいることもあって、木の根に躓いた。
 全力で走っていた俺の足がもつれ、木の根がそれに絡まった。

「うっ!」

 バタンっと勢いよく転び、顔が地面と衝突した。
 激痛が走り、その痛みについ声が漏れる。

 そしてそれと同時、獣が俺に飛びかかった。

 獣が俺の上を物凄い速度で通り過ぎていくのを感じる。
 ただ、転んだことが幸いして偶然避けることができた。

 まさに、奇跡。
 生まれてこの方感じたことがない”死”への危機感と、そして圧倒的な危機感から一瞬でも逃れられたことによる安堵が同時に襲いかかる。

 だが、次はもうない。これ以上、偶然は続かないだろう。

───何か、生き残る手はないのか?

 圧倒的な上位者を前に出る疑問。もちろん、単純に走り回るだけでは生き残れないことは理解している。

───だからこそ、頭を使え。

 俺のステータスの中で唯一高いのはINTだ。これは───頭を使えばどうにか打破できるかもしれない、ということだと信じたい。

「考えろ、考えろ、考えろッ───!」


 走るか?───否。

 隠れるか?───否。


 どちらもとても逃げ切れはしない。
 走るのも早く鼻もいい獣からは、その程度では逃げられない。

 そんなことを考えている間に獣は俺の方に振り向く。
 避けられたことに苛立ちを覚え、目には怒りを宿して。

「これしか───ない」

 地に伏すように倒れている俺は今、木の根に手が触れている。

「<支配ドミネイト>ッ!」

 俺は、俺の能力を信じる。




















><支配ドミネイト>の行使に成功




















 成功した。

 女神に蔑まれた能力が、無能と言われた能力が。まるで天が俺に味方をしたかのように、危機一髪の状況でそれは成功を見せた。

 ならば───最後まで信じよう。

「俺を守れ!木!!」

 木に何ができるというのか。傍から見ればただの悪足掻きでしかない。
 実際、俺からしてもこれは最後の悪足掻き。

 そう、悪足掻きのはずだった。


 が───

 俺の声に合わせて木の枝は動き出し、獣の四肢を絡めとるように巻き付いた。屈強な枝が獣の動きを封じたのだ。

「やれば……できるじゃないか」

 その隙に俺は走る。
 より速く、より遠く。
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