【2章完結】女神にまで「無能」と言われた俺が、異世界で起こす復讐劇

騙道みりあ

文字の大きさ
4 / 76
異世界転生編

第4話 無謀なる戦意(2)

しおりを挟む
「はぁっ……はぁっ……!」

 とりあえずここまで来れば大丈夫だろう。<支配ドミネイト>を通して、まだ木の枝が千切られていないことは伝わってくる。

「まずは……ここらへんの木をすべて<支配ドミネイト>する…か」

 時間があるうちにできる限りのことをしておくべきだ。

 周りにある木6本に俺は触れ、<支配ドミネイト>を使っていく。
 特にこれと言った事態も起こらず、スムーズに<支配ドミネイト>は成功していった。

「特にスキルの使用に伴う疲労感は…なしと」

 木に命令をし、俺を包むよう指示する。
 6本の木の枝がにゅるにゅるとその形を変え、俺を中心に半径5メートルほどのドームを作っていく。
 第三者から見れば不可思議な現象だが、生存の為にはとやかく言ってられない。

「枝もそろそろ千切られる」

 はじめに<支配ドミネイト>した木の枝はまもなく千切れるようだった。もう1分と持たないだろう。

「その間に色々と確認をしないとな」

 主に、固有スキル<生殺与奪>について。

 Lvの表記があるということは、レベルが上がることもある、つまりこれから強化される可能性もある。それは自分自身も同様に、だ。

「問題は……レベルアップの方法だよな」

 普通に考えるなら、トレーニングを通すか、魔獣を倒すことで上がる、といったところ。スキルの方は使っていけば上がる可能性も捨てきれない。

 とはいえ、現状では憶測に過ぎないのも事実。
 考え得る方法を一通り試してみないことには分からない。

「とりあえずは──<支配ドミネイト>の方か」

 木のドームの中には光が差し込んでいる。
 上に穴を開けさせ、光が入る状況を作ったのだ。

「花もいける…よな?」

 ドームの中には色とりどりの花が咲いていた。
 それはこの奇妙な森には似合わないほどに苔の生えた緑の地面を彩っている。
 特段花には詳しくないから、目下の花を見ても種類は分からない。そもそも、かつての世界にあった花と同じものなのかどうか、それも分からない。
 俺はその花たちを<支配ドミネイト>し、そして開放していていく。


 <支配ドミネイト>、<支配ドミネイト>、<支配ドミネイト>、<支配ドミネイト>──────

 繰り返すこと30回ほどだろうか。



>固有スキル<生殺与奪>のスキルレベルをLv1からLv2に変更



 予想通り、その瞬間は来た。

 使用に伴う経験値のような概念の蓄積、あるいは何らかの条件によるレベルアップが起こるのだろう。

「そうしたら…ステータス」



 俺はレベルアップした<生殺与奪>の効果を見ていく。

 何か、あの獣に対抗する術があるのか。
 生き残る術があるのか。

 それを漏らさぬよう、丁寧に上から読んでいった。

「…………」

 俺の固有スキル<生殺与奪>は、スキルレベルが2に上がったことにより、<支配ドミネイト>の強化が施された。

 その内容は、触れるだけで<支配ドミネイト>が使えるというもの。
 つまり、今まで短い時間であったが制約されていた<支配ドミネイト>発動までの時間が不要になる。

 <支配ドミネイト>の発動に10秒と要らないのであれば───あの獣でさえ、<支配ドミネイト>できるかもしれない。

「あの獣だけは…確実に殺す」

 生への執着と、死への恐怖。俺の心を支配していたのはこの2つの感情と、そして強者への嫉妬だった。

 ただ、その為には確かめる必要があることは山積みだ。
 例えば、女神の言っていたように、格下しか<支配《ドミネイト》>できないのか、ということだ。

 そもそも”格下”とは何か?

 きっと天職やレベルのことではない。
 存在としての格の違い、個としての強さの違いを表しているように思える。

 木や花が格下か格上か、それはハッキリしない。だが、あの獣が格上なことは確実だ。実験するとしてもリスクなしとは言えない。

「アイツより弱く、俺より強いヤツを探すか?」

 あの獣で実験をするかどうかは重要な判断となる。獣から逃げながら、別の対象を見つけるのも一つの手だろう。

 だが、どこにいるかも分からない格上より、あの獣の方が相手にしやすい。一度動きも姿も見ているし、木でしばらく拘束できることは確認済みだからだ。

 それに、別の格上を相手にしている時にあの獣に追いつかれでもしたら、それこそどうしようもない状況だ。

 上手くその2体が喧嘩になれば良いのだが、女神の説明を聞く限りあの獣は魔獣。別の格上も魔獣だった場合、敵対する保証はない。

「次アイツがここに来た時、確実に殺す」

 だから、俺はこの実験をあの獣ですることに決めた。

 それでも、こちらから打って出ることはしない。
 支配している木が多くあるこの地帯に誘い込まなければ、俺の勝機はないと言って良いからだ。

 逆に、数本の木を支配しているここならば、十分に勝機はある。5メートルもある獣に対し、10メートル級の木が6本もあるのだから。

「これからの為に武器もほしいところだな…レベルも上げておく必要がありそうだ」

 殺生したくないという気持ちには不思議とならない。

「女神のおかげ…か」

 皮肉なことに、女神の精神平衡の魔法のおかげでパニックにならず、生き残ることができた。

 生物を<支配ドミネイト>することも、傷つけることも、殺すことも、少しも抵抗はない。


 ガサッ


「来たか…」

 そんなことを考えていると、またあの時と同じ音がした。
 獣だから、匂いに敏感なのだろう。俺の匂いを辿り、もうここまで来たということだ。

 足音もなく、木の葉にぶつかった音だけが響いた。やはり、音なく走ることができるのだ。

「盾になれ」

 俺はドームから出て、木を守るような形に変形する。6本の木は枝を巧みに使い、俺を獣から守るよう、四方からの攻撃にも対応できる形を取る。

 ステータスも低く、レベルも1のままだ。
 しかし、恐怖で足が竦んで、逃げるしかなかったあの時とは違う。

 今ならば、コイツを殺せる。
 そんな根拠のない自信が、心の奥底から湯水のように湧き上がる。

「さぁ」

 リベンジマッチの始まりだ。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

文字変換の勇者 ~ステータス改竄して生き残ります~

カタナヅキ
ファンタジー
高校の受験を間近に迫った少年「霧崎レア」彼は学校の帰宅の最中、車の衝突事故に巻き込まれそうになる。そんな彼を救い出そうと通りがかった4人の高校生が駆けつけるが、唐突に彼等の足元に「魔法陣」が誕生し、謎の光に飲み込まれてしまう。 気付いたときには5人は見知らぬ中世風の城の中に存在し、彼等の目の前には老人の集団が居た。老人達の話によると現在の彼等が存在する場所は「異世界」であり、元の世界に戻るためには自分達に協力し、世界征服を狙う「魔人族」と呼ばれる存在を倒すように協力を願われる。 だが、世界を救う勇者として召喚されたはずの人間には特別な能力が授かっているはずなのだが、伝承では勇者の人数は「4人」のはずであり、1人だけ他の人間と比べると能力が低かったレアは召喚に巻き込まれた一般人だと判断されて城から追放されてしまう―― ――しかし、追い出されたレアの持っていた能力こそが彼等を上回る性能を誇り、彼は自分の力を利用してステータスを改竄し、名前を変化させる事で物体を変化させ、空想上の武器や物語のキャラクターを作り出せる事に気付く。

S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました

白崎なまず
ファンタジー
この世界の人間の多くは生まれてきたときにスキルを持っている。スキルの力は強大で、強力なスキルを持つ者が貧弱なスキルしか持たない者を支配する。 そんな世界に生まれた主人公アレスは大昔の英雄が所持していたとされるSランク『剣聖』を持っていたことが明らかになり一気に成り上がっていく。 王族になり、裕福な暮らしをし、将来は王女との結婚も約束され盤石な人生を歩むアレス。 しかし物事がうまくいっている時こそ人生の落とし穴には気付けないものだ。 突如現れた謎の老人に剣聖のスキルを奪われてしまったアレス。 スキルのおかげで手に入れた立場は当然スキルがなければ維持することが出来ない。 王族から下民へと落ちたアレスはこの世に絶望し、生きる気力を失いかけてしまう。 そんなアレスに手を差し伸べたのはとある教会のシスターだった。 Sランクスキルを失い、この世はスキルが全てじゃないと知ったアレス。 スキルがない自分でも前向きに生きていこうと冒険者の道へ進むことになったアレスだったのだが―― なんと、そんなアレスの元に剣聖のスキルが舞い戻ってきたのだ。 スキルを奪われたと王族から追放されたアレスが剣聖のスキルが戻ったことを隠しながら冒険者になるために学園に通う。 スキルの優劣がものを言う世界でのアレスと仲間たちの学園ファンタジー物語。 この作品は小説家になろうに投稿されている作品の重複投稿になります

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。

SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない? その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。 ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。 せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。 こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...