【2章完結】女神にまで「無能」と言われた俺が、異世界で起こす復讐劇

騙道みりあ

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聖女暗殺編

第48話 教皇と勇者

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 教皇の部屋だと言われ、礼拝堂の奥にある1つの部屋に案内された桃原愛美モモハラアミ

 ラテラは部屋に入ることは許されないらしく、ここからは桃原愛美モモハラアミ一人で行ってほしいとのことだった。

 それは全然構わないため、ラテラに礼を述べ、桃原愛美モモハラアミは部屋の扉へと手をかける。

 ドアノブを回し、扉を開け、そのまま部屋の中へと入った。

「お待ちしておりました。桃原愛美モモハラアミさん」

 そこに居たのは、一人の男。
 優しそうな印象を与える穏やかな顔立ちをした、金髪の男だ。
 身に纏う白と金で織られた祭服は重厚なもので、見るだけで相当な価値の付くものであることが分かる。それのみならず、強力な装備として機能しているに違いない。

 印象通り、物腰も穏やかだ。
 それが教皇としての仮面なのかはともかく。
 話に聞いていた”ヘアシャー”の教皇であることは、間違い無かった。

「お呼び下さりありがとうございます、教皇様」

 聖女としての仮面を被る桃原愛美モモハラアミ
 彼女もまた、一人の聖職者として相応しい態度を見せていた。

「とりあえず掛けてください」

 教皇に言われるまま、桃原愛美モモハラアミは向かいの席に座ることにする。
 一人用の椅子ではあるが、幅は広く、ふかふかとしたソファのような座り心地だ。
 さすが教会の最高権力者なだけあり、財力に果てはないのだろう。

「ご足労感謝します、桃原愛美《モモハラアミ》さん。本日はお日柄も良く…と言いたいところですが、異世界人は形式を好まないご様子。早速本題に入らせていただこうかと思うのですが、よろしいですか?」
「はい。是非お願いします」

 面倒な形式が無いだけ、桃原愛美モモハラアミから見た彼の評価は既に高い。
 異世界人についての常識を身に着けて来ているところ、彼の性格の周到さが見られる。

「女神様よりお話は聞いているかもしれませんが──民を導き、打倒魔王への意識を高めなくてはなりません」
「はい、聞いております」

 駿河屋光輝スルガヤコウキの死に対するカバーである、と認識している。

「具体的には──スピーチです。民衆の前でスピーチをして頂きたいのです」
「ヘイトスピーチですね。かしこまりました」

 あまりにも察しが良すぎる桃原愛美モモハラアミと、それに驚く教皇。
 ヘイトスピーチを請け負いそうな印象が無かっため、色々と用意していたのだが…、その全ては杞憂で終わりそうだ。

「えー、と。他には何かありましたか?」
「あ、いえ…。後は一応顔合わせだけしておけとの事でして…」

 なぜか会話のペースを握る勇者。
 気の弱いヘアシャーが原因であるが、それはともかく。

 桃原愛美モモハラアミにとって、スピーチというのは得意分野であった。
 なにせ、学級委員という仕事を続けてきた身だったのだ。
 クラスメイトの様々な意見をまとめあげ、一つの方向へと向かせる。
 それは彼女にとっては慣れたことであり、それがクラスメイトなのか異世界人なのかの差でしかなかった。

 ゆえに、躊躇することもなかったのだが。
 それがかえって不気味に見えたのかもしれない。
 心の中で反省する。

「顔合わせと言っても特にすることがありませんから……。スピーチの方は女神様より聞いていますし、内容も概ね考えてありますのでご安心を」
「え、えぇ。さすがは勇者様です……」

───あれ?仕事ができるのって優秀な印象じゃないの?

 と、桃原愛美モモハラアミの内心はそんなところ。
 想像していた反応が得られず、少し失敗を感じる。
 もしかしたら彼が変なのかもしれない。
 実際、家族も友達も先生も、桃原愛美モモハラアミの手際の良さに嫌な顔をする人はいなかったわけだ。

 まぁいいか、と割り切る。
 ここで彼を諌めることもできないし、勝手にこっちで解釈しておけば良いだろうということだ。

 もっと話すことがある気もするが、桃原愛美モモハラアミは彼女の目的にしか興味はない。
 あまり関わっても利益が降ってきそうな人物ではないし、今のところは女神で十分。
 だったら早く自由な時間がほしいという本音まである。

───早く帰りたいんだよねー。

 そんな気持ちが教皇にも通じたのか、ちょっとずつ退室ムーブを見せてるように思えた。


 が。
 その時。
 本当に、何の脈絡もなく。


 ドゴォォォンッ


 と、けたたましい轟音が響いた。
 腹に直接響き渡るような音のせいで、脳が揺れているような錯覚を覚える。

───な……、に?

 何か事件が起こったことは理解できた。
 教会付近では無さそうだ。
 音はどこか遠い感じがする。

 ふと目の前の教皇を見れば、険しい顔をしていた。

桃原愛美モモハラアミ様、心当たりは?」
「残念ながらありません。どうされますか?」

 彼も何かの計画だと思いたかったのだろう。
 だが、桃原愛美モモハラアミとてそれは同じ。
 無情にも首を横に振り、すぐに否定してしまった。

「現場に向かってみますか?」

 教皇の提案。
 現場までは──およそ3分もあれば着くだろうか。

 ただ、今この部屋を出ることは正しいのか。

 何が起きているのかは分からないが、何者かによる襲撃──少なくとも悪意が絡んでいることは間違いない。
 先日の駿河屋光輝スルガヤコウキの暗殺もある。
 とても無関係だとは思えないのが正直な考えだ。

 であれば、狙いは勇者かもしれない。
 そんな中、自分がのこのこと姿を表すのは──あまりにも危険すぎる。
 むしろ、ある程度の安全──数多の聖職者によって守られている──があるこの場に留まり続けるのが最適だろう。

 これが、桃原愛美モモハラアミの出した答えであった。

「いえ、留まりましょう。目的は勇者かもしれません。光輝くんの件もありますので…」

 そう言えば、教皇もすぐに納得したようで、

「分かりました。ではしばらく待ってみましょうか」

 と、返事をしてくれた。

 状況が確認できれば、誰かしらは知らせにくるだろう。

 教会の、特に教皇がいる部屋は防音性も高いはずなのだが、それを貫通するほどの音とは何なのだろうか。

 そんな疑問もすぐに解決することになる。

 部屋のドアが忙しなくノックされ、報告に来た神官は言った。

 「始まりの獣ラストビーストの襲撃です…!」と。
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