【2章完結】女神にまで「無能」と言われた俺が、異世界で起こす復讐劇

騙道みりあ

文字の大きさ
49 / 76
聖女暗殺編

第49話 久しぶりの聖女

しおりを挟む
 俺は宿屋に戻ってきていた。

 駿河屋光輝スルガヤコウキを殺したことに悔いは無い。
 人を殺すことは疎か、同郷の日本人を殺しても罪悪感を覚えることは無かった。

 むしろ、清々としている。

 散々俺を見下し、殺そうとしていた人間がこのザマだ。

 ただ、同時に力不足も感じていた。

 実戦経験の浅い駿河屋光輝スルガヤコウキでもあの強さだ。女神となれば数倍、数十倍は強いだろう。

 ガーベラの力を借りてギリギリの戦いだった。
 女神と戦えば、確実に惨敗する。

 <支配ドミネイト>の能力の強さが分かってきた反面、その限界にも直面している。

 どれだけ強い人間を支配しようと、俺自身が強くなることはない。
 多少ステータスが引き継がれることがあろうと、それも些細なものだ。

───そういえば魔獣も支配できるんだよな。人より魔獣のほうがステータスの得れる量が多いんじゃないか?

 ふと、そんなことを思いついた。

 現状、自分一人で魔獣を<支配ドミネイト>できる手段が無いからそれは置いておくとして。

 今最優先ですべき事は、スキルレベル4になった固有スキル<生殺与奪>の確認か。

 俺は今となっては慣れた動作で固有スキルの効果を確認していく。


 今回新しく追加されたスキルは、

 <召喚サモン>…<支配ドミネイト>している対象を任意の座標に召喚する。

 というものだった。


 なんとも、また使いどころの難しいスキルだ。

 最悪な状況でガーベラや戦士長を召喚したり、とかか。現状思いつく使い方はそれくらいだ。

 召喚される方の都合も考える必要があるし、実戦での活用は現実的では無い。

 何か閃きがない限りは仕舞っておくことになりそうだ。

 少し残念だが、今は俺のできることをやるべきだろう。
 女神への復讐の手段に、自分を戦力として数えるのは辞めておいたほうが良さそうだ。

 とりあえず、女神の手の者を出来る限り減らしておくべきだろう。

 残りの勇者は、桃原愛美モモハラアミ魔夜中紫怨マヨナカシオン空梅雨茜カラツユアカネ角倉翔スミノクラショウ夢咲叶多ユメサキカナタ夏影陽里ナツカゲヒカリ北条海春ホクジョウミハル
 個人的な恨みで言えば桃原愛美モモハラアミを殺しておきたいところだ。

 流石に駿河屋光輝スルガヤコウキの死に女神は驚いているだろう。
 犯人探しも始まっていると見ている。

 死体は焼却した上、俺がダンジョンに入ったという形跡も残していない。
 枷月葵カサラギアオイのみならず、アオイだということにも辿り着かないだろう。

 運良く辿り着けたとしても”黒ローブ”までか。

 ”黒ローブ”の中がアオイであること、更にはアオイの正体が枷月葵カサラギアオイであることに気付くことはないだろう。

 <支配ドミネイト>の能力を使用した上で、ガーベラや戦士長には俺の身の上を話している。ついでに計画も、だ。

 だが、駿河屋光輝スルガヤコウキの死を防ぐことは出来なかった。

 <支配ドミネイト>は完璧だと見て良さそうだ。

 確認の一手だったが、流石に枷月葵カサラギアオイの正体を明かすのはやりすぎたとは思っている。

───光輝パーティーを倒したとき…レベルが上がらなかったのは何故だ?やはり対人だと獲得経験値が下がるのか?

 僅かながら、経験値の割合が増加していることは確認できた。およそ20%ほどだった為、レベルアップにはならなかった。

 彼らのレベルや実力を考えれば、もう少し経験値が入っても良さそうだ。
 光輝自身のレベルは1桁だろうが、周りの仲間はどれくらいだったのだろうか。

───やはり人が相手だと経験値は下がると考えて良さそうだな。

 尤も、レベルが上がったとて俺のステータス上昇は期待できるものじゃない。
 勇者ならば劇的な成長を遂げるのかもしれないが、天職”ムラビト”は伊達ではない。


 閑話休題。

 女神が黒ローブに辿り着くのも時間の問題かもしれない。
 警戒される前に、次の一人を殺すべきだ。

───誰にすべきか…。やっぱり桃原愛美モモハラアミが良いが、光輝以外の情報は少ないんだよな。

 得れば良い話なのだが、戦士長やガーベラも修行後の詳しい行き先までは知らないとか。

 既に国外に行っているならば厄介だが、光輝を見る感じ勇者は別行動をしているようだし、何人かは王都に残っているか。

 女神の屋敷に居候しているなんてことはないだろう。

───そんなことより…夕食の時間だな。

 腹が減っては戦が出来ぬとも言う。
 考えるのは、夕飯を食べ終わってからでも遅くないだろう。




・     ・     ・




 部屋を出て、食堂がある場所へと向かっていく。

 向かうと言っても部屋から1分もかからないのだが、階段があるために少々長く感じてしまう。

「おう、小僧。待ってたぞ」

 食堂に入った瞬間、宿屋のおっさんに声をかけられた。

 なんだろうとそちらを向けば、おっさんの前にはラテラが立っていた。

 久しぶりに見たが、今日のラテラは以前のように聖女然とした姿ではなく、冒険者のような、少しみすぼらしい服装をしていた。

 聖女をやめたとかではなく、聖女だとチヤホヤされるのが面倒だったのだろう。

「こんばんは」
「こんばんは、ユウキさん。お待ちしておりました」

───”お待ちしておりました”?

 こちらからラテラに会いに行こうと思って何度か教会に行っていたため、ラテラから会いに来てくれるのはありがたい。

 とは言え、彼女と何かを話さねばならないようなことを行っていない。
 まさかとは思うが──黒ローブの中身がアオイだとバレたのか。

「どうしてラテラさんがここへ?」

 俺は恐る恐る問いかけた。

「王都の近郊で魔族が勇者を殺したようですので、一応注意をしにきました。残念ながら、勇者である駿河屋光輝スルガヤコウキ様が王都の近郊にあるダンジョン内で魔族に殺されてしまったようです。その魔族が王都に潜伏している可能性があるため、気をつけてほしいと思っています」
「勇者が…魔族に?」
「はい。教会にいつもいらっしゃる勇者様──桃原愛美モモハラアミ様が女神様より授かった内容です」

───俺の仕業であるどころか、”黒フード”の存在すらバレていない?

 本当にあの女神が何も調査せず、魔族のせいにして終わらせるだろうか。
 まさか推測で言っているわけではあるまい。

───何が目的だ?魔族のせいにすることで、民衆の魔族に対するヘイトを高めた?だとしたら実際は裏で調査をしている?

 女神側の事情が分からない以上、どの考えも推測止まりだ。

 ただ、最悪の場合は想定しておくべきだろう。

 女神は”黒ローブ”の存在を知っていながら、魔族のせいにしていると考えておくべきか。

 今の話から得れた情報はそれだけではない。

 桃原愛美モモハラアミがまだ、王都の中に居るということだ。

 それも、教会にいるとのこと。
 であれば、次のターゲットは桃原愛美モモハラアミか。

「ラテラさん、ありがとうございます。気を付けようと思います」
「はい。それなら良いんです」

 ホッとしたような顔をするラテラ。
 やはりこの聖女はどこかお節介だ。

「そういえば、私に会いに来てくれて居たと聞きました。忙しかったゆえにお会いできなくて申し訳ありません」
「いえいえ。こちらこそ忙しい時期に申し訳なかったです。何かあったのですか?」
「えぇ、行方不明の女の子を探していまして」

───行方不明の女の子、か。

 そういえば、俺の人生で一度だけ、大きく日常からかけ離れた出来事があった。

 ちょうど3年ほど前の夏、俺の妹が行方不明になったのだ。

 当時中学生の妹だ。友達と出かけてくると行ったきり、二度と帰ることは無かった。

 その時のことはよく覚えている。なんというか、虚しい気持ちだった。

 悲しいとか、後悔とか、そういう気持ちよりも前に虚しさが来たのだ。

 ”人が死ぬ”ということへの責任感というか、自覚が足りなかったんだと思う。

 はじめはどうせすぐ帰ってくるだろうと思っていた。

 電話をかけても繋がらなかったとき、少し焦りを覚え始めた。

 とうとう3日が経ち、気づけば1週間が経ち──どれだけ夏の暑さが増そうと、俺の妹が家に帰ることは無かった。

 そうして初めて焦りを覚え始めたのだ。

 両親は泣き崩れていた。
 大の大人が大泣きする姿を見たことがない俺は、釣られて大泣きしたのを覚えている。

 仲が良い兄妹だったというわけではない。

 ただ、彼女の声が聞こえなくなった家は……3年経った今でも寂しいものに感じるくらいだ。


 と、行方不明の家族のことを語ったが、よく考えれば俺も今は行方不明なのだろう。

 両親は本当に気の毒だと思う。子供を2人とも行方不明にしてしまうなど、世界中のどの夫婦よりも不幸なのではないだろうか。

 ───案外妹も俺のように異世界に召喚されてたり…。

 そんな冗談を考える。

「見つかったのですか?」
「はい。見つかりましたよ」

 行方不明者の捜索は騎士の仕事だとばかり思っていたが、何か事情があったのだろうか。

 そんなことはどうでも良いのだが。

 とにかく、無事に見つかって良かった。

 関係ない俺だが、何故か心の中でホッとしていた。

「それは本当に良かったです」

 心の底から、良かったと思う。

 人が行方不明になれば、必ず悲しむ人は居るものだ。

 そんなことを考える俺を見て、ラテラは何を思ったか口を開いた。

「アオイさんは…優しいんですね」

 どこか含みのある言い方だった。

 俺がよほど行方不明という言葉に反応しているように見えたのだろう。
 実際、過剰な反応を見せてしまったかと反省している。

 俺と行方不明に何か関係があると思ったのか。親族や友人を行方不明にしていると考えたのかもしれない。

 それ故に聞きにくかったのだろう。

「そういえばラテラさん」
「どうされました?」
「ラテラさんがこの王都から出ることってあるんですか?例えば帝国に行ったり、とか」

 そういえば、と、気になっていたことを質問する。

 桃原愛美モモハラアミを処理した後、特にこの国に在住する理由はなくなる。

 ラテラがこの国から出ることが無いのならば、次会うのは随分先になるだろう。

「基本的にはありませんが…時折、と言ったところでしょうか」
「そうなんですね。それは良かったです」

 何が良かったのか、自分でも分からない。
 更には、これ以上会話が発展することもなく。

 その後、俺とラテラは少しばかり、くだらない雑談を楽しんだ。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

文字変換の勇者 ~ステータス改竄して生き残ります~

カタナヅキ
ファンタジー
高校の受験を間近に迫った少年「霧崎レア」彼は学校の帰宅の最中、車の衝突事故に巻き込まれそうになる。そんな彼を救い出そうと通りがかった4人の高校生が駆けつけるが、唐突に彼等の足元に「魔法陣」が誕生し、謎の光に飲み込まれてしまう。 気付いたときには5人は見知らぬ中世風の城の中に存在し、彼等の目の前には老人の集団が居た。老人達の話によると現在の彼等が存在する場所は「異世界」であり、元の世界に戻るためには自分達に協力し、世界征服を狙う「魔人族」と呼ばれる存在を倒すように協力を願われる。 だが、世界を救う勇者として召喚されたはずの人間には特別な能力が授かっているはずなのだが、伝承では勇者の人数は「4人」のはずであり、1人だけ他の人間と比べると能力が低かったレアは召喚に巻き込まれた一般人だと判断されて城から追放されてしまう―― ――しかし、追い出されたレアの持っていた能力こそが彼等を上回る性能を誇り、彼は自分の力を利用してステータスを改竄し、名前を変化させる事で物体を変化させ、空想上の武器や物語のキャラクターを作り出せる事に気付く。

S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました

白崎なまず
ファンタジー
この世界の人間の多くは生まれてきたときにスキルを持っている。スキルの力は強大で、強力なスキルを持つ者が貧弱なスキルしか持たない者を支配する。 そんな世界に生まれた主人公アレスは大昔の英雄が所持していたとされるSランク『剣聖』を持っていたことが明らかになり一気に成り上がっていく。 王族になり、裕福な暮らしをし、将来は王女との結婚も約束され盤石な人生を歩むアレス。 しかし物事がうまくいっている時こそ人生の落とし穴には気付けないものだ。 突如現れた謎の老人に剣聖のスキルを奪われてしまったアレス。 スキルのおかげで手に入れた立場は当然スキルがなければ維持することが出来ない。 王族から下民へと落ちたアレスはこの世に絶望し、生きる気力を失いかけてしまう。 そんなアレスに手を差し伸べたのはとある教会のシスターだった。 Sランクスキルを失い、この世はスキルが全てじゃないと知ったアレス。 スキルがない自分でも前向きに生きていこうと冒険者の道へ進むことになったアレスだったのだが―― なんと、そんなアレスの元に剣聖のスキルが舞い戻ってきたのだ。 スキルを奪われたと王族から追放されたアレスが剣聖のスキルが戻ったことを隠しながら冒険者になるために学園に通う。 スキルの優劣がものを言う世界でのアレスと仲間たちの学園ファンタジー物語。 この作品は小説家になろうに投稿されている作品の重複投稿になります

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。

SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない? その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。 ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。 せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。 こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。

スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~

みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった! 無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。 追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。

処理中です...