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19. アリスとジュリア②
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二人のやり取りを黙ってみていたジュリアが呆れたようにいう。
「不敬よ」
「皇太子は親指を下にするなんて下品ね」
「………………」
庭園に風が吹き、アリスは軽く髪の毛を抑える。
「ジュリア、あなたは皇太子が私にほの字だと言うけれど、あなたにも好意は持っているように見えるわよ。まあ男なんて二心三心くらいあるものよ。うちの父親だって愛人いるし」
「うちの父親にはいないわよ。……でも、そうね。オスカーとは信頼関係を築くことはできているとは思うわ」
二人の仲は良好だ。アリスに気持があるとわかっていても良好だ。もやもやしないといえば嘘になるが、オスカーはジュリアに真摯な態度で接してくれる。それに何より……
「オスカーが最も愛しているのは国だしね。自分勝手すぎるあなたが王妃になるイメージがわかないのよね」
オスカーは先程振られたと言っていたが、あそこでアリスがイエスと言っていたらオスカーはアリスに王家の人間としての振る舞いを強要しただろう。しかし、それに従うアリスではない。だから二人がどうこうなることはないと確信できる。オスカーの一番愛する人がどうであれ、皇太子妃、後の王妃の地位につく人間は自分だと自負している。
「もともとカサバイン家は王家に入ることはしないわ。あんな不自由な場所嫌よ」
「そうね。………………いやいや!あなたダイラス国の王子妃になるんでしょ!」
すなわちそれは王家の人間になるということ。
「弱小国の側室腹王子妃なんて特にやることないわよ。バカにされておーしまい、よ」
「……あなた、まだどの王子と結婚するのか決まってないわよね?」
「あら、あちらの国では誰と結婚させるか決まったみたいよ」
「……覗いたわね。それはやっては駄目だと公爵にも言われていたでしょ」
アリスは離れた場所の様子を見ることができた。非常に高度な魔法でカサバイン家の人間もできないものがいるほど。他国の貴族会議を覗くなど危険行為をしたにも関わらず、全く悪びれる様子のないアリスにはーっとため息をつくジュリア。
「……また蔑まれるつもり?で逆に陰で嘲笑うの?」
「うーん、それも良いけど。今度は堂々とやろうかな」
「本人を前にして嘲笑うの?」
「ひ・み・つ」
優雅にお茶を飲むアリスに再びため息をつくジュリア。
「まあ何をしようと構わないけど、やり過ぎないようにね」
「わかってるわよ。あんまりやり過ぎたら国際問題になっちゃうでしょ」
いや、絶対にわかってないでしょ。わかっていてもこれは何かやる気だ。アリスからしたらなんの思い入れもない国。魔法もそんなに発達していないダイラス国。アリス一人で国を滅ぼせるんじゃないかと思うほど。国際問題になる前に捻り潰してしまえば済む。
……じゃあ、問題ないか。ジュリアはそう結論付けた。
「ジュリア」
呼びかけられてアリスに視線を向ける。
「あなたは私のことをよく過剰評価してくれるけれど、私からしたらあなたこそ完璧に近い存在よ。家柄、容姿、人に好かれる性格。何より王妃として国を愛する心、人に寄り添う心を持っているもの。それに、あなたはときに大切なものを守るためなら非情にもなれる。あなた以上にふさわしい王妃はいないと思うわ」
アリスとジュリアの視線が交わる。アリスは立ち上がると片手を胸に、もう片方の手でスカートをつまむと頭を下げる。
「ガルベラ王国皇太子妃ジュリア様。私はガルベラ王国の忠臣であるカサバイン家の者として、そして友としてあなたの力になりましょう。何か困ったこと、悩みがありましたらなんなりと私にお申し付けください。身体は離れていても心は側にいるつもりです。これからいろいろなことに直面するでしょう。けれどジュリア様に幸多からんことをお祈りしております」
ジュリアは思う。
いや、他国の王子妃に相談しないだろう。
いや、心は側にって……遠見をしそうで怖っ。
そして
「アリス……私はまだ皇太子妃じゃないわよ」
そういって照れくさそうに笑った。
「アリス!この国のことは私に任せておきなさい!私は人から好かれることも大事にされることも大好き!チヤホヤさせることが大好き!そのためにはまず誰よりも自分が人を大切にすることが大事!私はこの国を誰よりも大切にすると誓うわ!」
清々しく別れの挨拶?というよりも今後の抱負を宣うジュリアにおー、とアリスは拍手する。
オスカーともジュリアともなんとも言えない別れの挨拶をしたアリスだった。
「不敬よ」
「皇太子は親指を下にするなんて下品ね」
「………………」
庭園に風が吹き、アリスは軽く髪の毛を抑える。
「ジュリア、あなたは皇太子が私にほの字だと言うけれど、あなたにも好意は持っているように見えるわよ。まあ男なんて二心三心くらいあるものよ。うちの父親だって愛人いるし」
「うちの父親にはいないわよ。……でも、そうね。オスカーとは信頼関係を築くことはできているとは思うわ」
二人の仲は良好だ。アリスに気持があるとわかっていても良好だ。もやもやしないといえば嘘になるが、オスカーはジュリアに真摯な態度で接してくれる。それに何より……
「オスカーが最も愛しているのは国だしね。自分勝手すぎるあなたが王妃になるイメージがわかないのよね」
オスカーは先程振られたと言っていたが、あそこでアリスがイエスと言っていたらオスカーはアリスに王家の人間としての振る舞いを強要しただろう。しかし、それに従うアリスではない。だから二人がどうこうなることはないと確信できる。オスカーの一番愛する人がどうであれ、皇太子妃、後の王妃の地位につく人間は自分だと自負している。
「もともとカサバイン家は王家に入ることはしないわ。あんな不自由な場所嫌よ」
「そうね。………………いやいや!あなたダイラス国の王子妃になるんでしょ!」
すなわちそれは王家の人間になるということ。
「弱小国の側室腹王子妃なんて特にやることないわよ。バカにされておーしまい、よ」
「……あなた、まだどの王子と結婚するのか決まってないわよね?」
「あら、あちらの国では誰と結婚させるか決まったみたいよ」
「……覗いたわね。それはやっては駄目だと公爵にも言われていたでしょ」
アリスは離れた場所の様子を見ることができた。非常に高度な魔法でカサバイン家の人間もできないものがいるほど。他国の貴族会議を覗くなど危険行為をしたにも関わらず、全く悪びれる様子のないアリスにはーっとため息をつくジュリア。
「……また蔑まれるつもり?で逆に陰で嘲笑うの?」
「うーん、それも良いけど。今度は堂々とやろうかな」
「本人を前にして嘲笑うの?」
「ひ・み・つ」
優雅にお茶を飲むアリスに再びため息をつくジュリア。
「まあ何をしようと構わないけど、やり過ぎないようにね」
「わかってるわよ。あんまりやり過ぎたら国際問題になっちゃうでしょ」
いや、絶対にわかってないでしょ。わかっていてもこれは何かやる気だ。アリスからしたらなんの思い入れもない国。魔法もそんなに発達していないダイラス国。アリス一人で国を滅ぼせるんじゃないかと思うほど。国際問題になる前に捻り潰してしまえば済む。
……じゃあ、問題ないか。ジュリアはそう結論付けた。
「ジュリア」
呼びかけられてアリスに視線を向ける。
「あなたは私のことをよく過剰評価してくれるけれど、私からしたらあなたこそ完璧に近い存在よ。家柄、容姿、人に好かれる性格。何より王妃として国を愛する心、人に寄り添う心を持っているもの。それに、あなたはときに大切なものを守るためなら非情にもなれる。あなた以上にふさわしい王妃はいないと思うわ」
アリスとジュリアの視線が交わる。アリスは立ち上がると片手を胸に、もう片方の手でスカートをつまむと頭を下げる。
「ガルベラ王国皇太子妃ジュリア様。私はガルベラ王国の忠臣であるカサバイン家の者として、そして友としてあなたの力になりましょう。何か困ったこと、悩みがありましたらなんなりと私にお申し付けください。身体は離れていても心は側にいるつもりです。これからいろいろなことに直面するでしょう。けれどジュリア様に幸多からんことをお祈りしております」
ジュリアは思う。
いや、他国の王子妃に相談しないだろう。
いや、心は側にって……遠見をしそうで怖っ。
そして
「アリス……私はまだ皇太子妃じゃないわよ」
そういって照れくさそうに笑った。
「アリス!この国のことは私に任せておきなさい!私は人から好かれることも大事にされることも大好き!チヤホヤさせることが大好き!そのためにはまず誰よりも自分が人を大切にすることが大事!私はこの国を誰よりも大切にすると誓うわ!」
清々しく別れの挨拶?というよりも今後の抱負を宣うジュリアにおー、とアリスは拍手する。
オスカーともジュリアともなんとも言えない別れの挨拶をしたアリスだった。
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