44 / 186
44. 騒動
何が起きたか……いや、何が起きたかは聞いた。だが頭が理解したくないと叫んでいる。混乱の中走っていくと人垣が目に入る。その中の一人が公爵に気づき、声を張り上げる。
「おいっ道を開けろ!公爵様がいらっしゃったぞ!」
その声により開ける場所。公爵は一番近い部屋に飛び込み、ベッドに近づく。
「………………!」
公爵が目にしたのは愛しい妻が口の端から血を流し倒れている姿だった。慌てて近寄り上半身を抱き起こす。恐る恐る口元に手をかざすが、息をしていない。丁寧に再び横たえると公爵は部屋から飛び出し他の部屋も見て回る。
どの部屋に行っても同じ光景が目の前に現れる。ブルブルと震える公爵。その顔は悲しみの色から怒りの色に染まっていく。
「あの女は……?」
「あっ……あの女とはアリス様のことですか?」
「そうだ」
「お泊りになった部屋におられるそうです……」
無言で歩みだす公爵。早足で黙々と歩む。声をかけることもノックもせず、無断で扉を開ける。そこにはゆったりとお茶を嗜むアリスがいた。
「……どういうつもりですか」
静かな声で問いかける公爵。しかし、その声は怒りに震えている。
「あら、挨拶もなしにいきなりですか。が、それも致し方ないかもしれませんね。話しは聞きました。愛人の方々がどなたかに殺害されたとか。お悔やみ申し上げます」
「ふざけるな。お前がやったんだろう!?」
怒り任せに発せられた怒声に怯むことなくアリスは問いかける。
「私がやったという証拠でもあるのですか?」
「何が証拠だ。妻たちにつけてあった者たちが深夜にお前と護衛らしき者にやられたと報告があった。一人、二人からの話ではない。何人からもだ」
妻ね~。どれだけ彼が妻と言おうと側室を持つことができるのは王族のみ。愛人は愛人でしかない。
それに、つけてあった者……ね。護衛とはまた違った響き。愛人の近くに影のように配置された者たち、一体なんのためかしらね。すました顔でアリスは応対する。
「そうですか。ですが、彼らが集団で嘘の報告をしているかもしれませんよ?それに、彼らをのしたのが私達だったとして、どうして愛人殺しまで私達のせいになるのです?私が手をかけた瞬間を見たものがいるのですか?」
「……それはいません。ではなぜあなたはうちの者たちを気絶させたのですか?何のために?答えは一つしかありません。あなたが無関係だとは誰が話しを聞いても思わないと思いますよ」
少し冷静になってきたのか再び敬語に戻った。
「愛する方々が亡くなった公爵の悲しみは私には計り知れぬもの。ですが、非常に不快です。王族たる私にこのような振る舞いをするなど……。早急に帰らせていただきます」
「ここから出られるとお思いですか?」
公爵の言葉に騎士たちが入室してくる。
「出られないとお思いですか?そんなものなんの意味もないのに」
「「「!?」」」
身体が動かない!?騎士たちを見るも同じ状態のようだ。アリスを見ると涼しい顔をしている。とても魔法を使っているようには思えない。が後ろに控えるイリスとフランクも冷たい目をしてこちらを見ているだけ。やはりアリスの魔法。
拘束魔法をかけられる者は少なくないが、複数人に出来る者は少ない。ダイラス国では……だが。アリスはこの程度の魔法をどうにもできない公爵に憐れみの視線を向ける。力無きものが何を得られるというのか。
「……っ…………この化け物が……っ!」
その言葉に見事な微笑みを見せるアリス。化け物……いや、悪魔だ。悪魔の微笑みだ。
「カサバイン家の者としてとても光栄な言葉ですわ」
失礼と言って公爵や騎士の側を通り抜け部屋から出る3人。
「これで終わりではありませんぞ。王にあなたを逮捕してもらうように進言いたします」
「お好きにどうぞ」
愛人たちが全て殺されたのだ。しかも最も怪しいのは王子の妃であるアリス。そりゃあ普通は王に報告する。当たり前のことをそんな恨めしげに言われても……とアリスは呆れる。
それに、そもそも報告してもらわねば困る。
だって、それこそアリスが望むことなのだから。
「おいっ道を開けろ!公爵様がいらっしゃったぞ!」
その声により開ける場所。公爵は一番近い部屋に飛び込み、ベッドに近づく。
「………………!」
公爵が目にしたのは愛しい妻が口の端から血を流し倒れている姿だった。慌てて近寄り上半身を抱き起こす。恐る恐る口元に手をかざすが、息をしていない。丁寧に再び横たえると公爵は部屋から飛び出し他の部屋も見て回る。
どの部屋に行っても同じ光景が目の前に現れる。ブルブルと震える公爵。その顔は悲しみの色から怒りの色に染まっていく。
「あの女は……?」
「あっ……あの女とはアリス様のことですか?」
「そうだ」
「お泊りになった部屋におられるそうです……」
無言で歩みだす公爵。早足で黙々と歩む。声をかけることもノックもせず、無断で扉を開ける。そこにはゆったりとお茶を嗜むアリスがいた。
「……どういうつもりですか」
静かな声で問いかける公爵。しかし、その声は怒りに震えている。
「あら、挨拶もなしにいきなりですか。が、それも致し方ないかもしれませんね。話しは聞きました。愛人の方々がどなたかに殺害されたとか。お悔やみ申し上げます」
「ふざけるな。お前がやったんだろう!?」
怒り任せに発せられた怒声に怯むことなくアリスは問いかける。
「私がやったという証拠でもあるのですか?」
「何が証拠だ。妻たちにつけてあった者たちが深夜にお前と護衛らしき者にやられたと報告があった。一人、二人からの話ではない。何人からもだ」
妻ね~。どれだけ彼が妻と言おうと側室を持つことができるのは王族のみ。愛人は愛人でしかない。
それに、つけてあった者……ね。護衛とはまた違った響き。愛人の近くに影のように配置された者たち、一体なんのためかしらね。すました顔でアリスは応対する。
「そうですか。ですが、彼らが集団で嘘の報告をしているかもしれませんよ?それに、彼らをのしたのが私達だったとして、どうして愛人殺しまで私達のせいになるのです?私が手をかけた瞬間を見たものがいるのですか?」
「……それはいません。ではなぜあなたはうちの者たちを気絶させたのですか?何のために?答えは一つしかありません。あなたが無関係だとは誰が話しを聞いても思わないと思いますよ」
少し冷静になってきたのか再び敬語に戻った。
「愛する方々が亡くなった公爵の悲しみは私には計り知れぬもの。ですが、非常に不快です。王族たる私にこのような振る舞いをするなど……。早急に帰らせていただきます」
「ここから出られるとお思いですか?」
公爵の言葉に騎士たちが入室してくる。
「出られないとお思いですか?そんなものなんの意味もないのに」
「「「!?」」」
身体が動かない!?騎士たちを見るも同じ状態のようだ。アリスを見ると涼しい顔をしている。とても魔法を使っているようには思えない。が後ろに控えるイリスとフランクも冷たい目をしてこちらを見ているだけ。やはりアリスの魔法。
拘束魔法をかけられる者は少なくないが、複数人に出来る者は少ない。ダイラス国では……だが。アリスはこの程度の魔法をどうにもできない公爵に憐れみの視線を向ける。力無きものが何を得られるというのか。
「……っ…………この化け物が……っ!」
その言葉に見事な微笑みを見せるアリス。化け物……いや、悪魔だ。悪魔の微笑みだ。
「カサバイン家の者としてとても光栄な言葉ですわ」
失礼と言って公爵や騎士の側を通り抜け部屋から出る3人。
「これで終わりではありませんぞ。王にあなたを逮捕してもらうように進言いたします」
「お好きにどうぞ」
愛人たちが全て殺されたのだ。しかも最も怪しいのは王子の妃であるアリス。そりゃあ普通は王に報告する。当たり前のことをそんな恨めしげに言われても……とアリスは呆れる。
それに、そもそも報告してもらわねば困る。
だって、それこそアリスが望むことなのだから。
あなたにおすすめの小説
【完結】なぜ、私に関係あるのかしら?【番外編更新】
シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」
彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。
そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。
「…レオンハルト・トレヴァントだ」
非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。
そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。
「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」
この判断によって、どうなるかなども考えずに…
※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。
※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、
※ 画像はAIにて作成しております
「侍女に薬湯でも持たせろ」——侍医頭が放逐した公爵令嬢の名を、十二日眠れぬ王太子は誰にも問えなかった件
歩人
ファンタジー
「侍女に薬湯でも持たせろ。公爵令嬢殿は、もう不要だ」――王宮侍医頭グレゴールの一言で、公爵令嬢クラリッサは静かに薬研を片付けた。王太子レオンハルトは、その場で頷いた。彼女の名前を呼ぶこともなく。十年間、毎晩王太子の枕元に置かれていた湯気の立つ陶器の碗。王太子は、それを「侍女が運んでくる温い水」だと思っていた。放逐から十二日。眠れぬ夜の三日目に、王太子は枕の下から束ねた処方箋を見つける。十年分。三千六百通。すべての処方箋に、差出人の名前が――書かれていなかった。「これを書いたのは、誰だ」王太子の問いに、侍医頭は「クラリッサ様で」と答えた。――その名を、王太子は一度も口にしたことがなかった。居並ぶ誰一人として、彼女を本名で呼んだ者はいなかった。
名前すら呼ばれなかった妻は、最強の竜騎士でした〜ようやく気づいても、もう遅いです〜」
まさき
ファンタジー
屋敷を襲った魔物。
三年間、夫に名前すら呼ばれず冷遇され続けた私は、隠された力を解放する――。
「下がってください――」たった一言で戦況は一変。
魔法と剣技を駆使して魔物を一瞬で撃退し、夫も周囲も愕然とする。
私の正体――最強の竜騎士――は、誰も予想できなかった。
冷遇されていた日々はもう終わり。
これからは、私が世界を切り開く――戦闘と魔法で。
妹に奪われた婚約者は、私を壊す災厄でした
あう
恋愛
伯爵家の長女セレナは、侯爵令息の婚約者として家を支え、妹のわがままにも耐え続けてきた。
しかし妹ミレイユは、“可哀想な妹”を演じて姉の婚約者を奪い、ついに婚約破棄へ持ち込んでしまう。
すべてを奪われた――そう思われたセレナだったが、伯爵家を離れたことで見えてきたのは、自分を縛っていた歪な家族と婚約の真実だった。
そして、奪ったはずの妹のほうもまた、望んだ未来とは違う現実へ追い詰められていく。
奪い返さない。縋らない。
静かに手放した令嬢が、自分の人生を取り戻していくざまぁ恋愛譚。
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
【完結】家族に売られてたどり着いた先は、王女様の侍女でした。 ――掃除だけは誰にも負けません。
月城 蓮桜音
ファンタジー
家族に売られ、行き着いた先は王城だった。
男爵令嬢リーナは、掃除係ではなく王女付きの侍女として雇われるが、その王女は「我がまま」「癇癪持ち」と噂され、侍女が次々と辞めている人物だった。
任された最初の仕事は、王女の部屋を整えること。
リーナは応接室ではなく、寝室や書斎といった生活の核となる場所から手を付け、風・水・火の魔法を使って、静かに、丁寧に掃除を進めていく。
だが最後に残った広間で王女と鉢合わせ、事情を知らぬ王女は彼女を叱責する。
それでも反論せず頭を下げたリーナの仕事は、夜になってから王女自身の目に留まり、少しずつ評価を変えていく。
これは、掃除という仕事を通して、静かに信頼を得ていく侍女の物語。
【完結】破棄されたのは、婚約だけではありませんでした
しばゎんゎん
ファンタジー
「私、ヴァルディア伯爵家次男、レオン・ヴァルディアはエリシアとの婚約を破棄する」
それは、一方的な婚約破棄だった。
公衆の面前で告げられた言葉と、エリシアに向けられる嘲笑。
だがエリシア・ラングレイは、それを静かに受け入れる。
断罪される側として…。
なぜなら、彼女は知っていたからだ。
この栄華を、誰が支え、誰が築き上げてきたのかを。
愚かな選択は、やがて当然の帰結をもたらす。
時が来たとき、真に断罪される者が明確に示される。
残酷な結果。
支えを外し、高みを目指した結果、真っ逆さまに転落する男、レオン。
利用価値がなくなった男〘レオン〙を容赦なく切り捨てる女、アルシェ侯爵家令嬢のミレイユ。
そう、真の勝者は彼らではない…
真の勝者はすべてを見通し、手中に収めたエリシアだった。
これは、静かにすべてを制する才女と、
自ら破滅を選んだ愚かな者たちの物語。
※毎日2話ずつ公開予定です(午前/午後 各1話を順次予約投稿予定)。
※16話で完結しました
婚約破棄されたので竜を100匹飼いましたが、気付けば領地が最強になっていました
霧原いと
ファンタジー
婚約破棄されたので、竜を100匹飼いました。
ええ、本当にそのままの意味です。
王太子エドガーに婚約破棄された公爵令嬢シルビアは、昔からの夢だった竜を飼う生活を始めることにした。
闇市で手に入れたのは――竜の卵百個。
普通なら一匹生まれるかどうかと言われる竜の卵だったが、なぜか全部孵化。
気付けば裏山は竜だらけになってしまう。
しかし竜たちは働き者だった。
地竜は畑を耕し、
風竜は荷物を運び、
火竜は鍛冶屋の炉を助け、
水竜は土地を潤す。
さらに竜の素材を売った結果、領地の収入は爆増。
荒れていた領地は瞬く間に発展し――
気付けば領地は王国屈指の最強領になっていた。
そんなある日、王都に魔物の大群が現れて……?
婚約破棄から始まる、竜100匹との領地発展コメディ。
※この作品は別サイトにも投稿させて頂きます