勇者の曾孫の迷走録

たくみ

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29.エリザさん友達紹介してください⑦

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 子爵邸を出た俺は話しをしようと家に誘ったリカルドと共に我が家に戻った。

 そして現在アレンとリカルドの出迎えの為に居並んでいるデラクシア公爵邸の使用人たちは頭を下げたまま上げられずにいた。

 原因は

「アレン~~~!」

 おいおいと俺にしがみつき泣き叫ぶリカルドのせいだ。

 公爵邸に一歩足を踏み入れた途端泣き出したリカルド。顔を覗き込んだら思いっきり首に抱きつかれた。坊ちゃまが男の友人に抱きつかれ、その友人はボロボロボロボロと泣き叫んでいる。

 使用人たちは見て見ぬふりするために下げた頭をあげられないというわけだ。

 このままでは彼らの腰が心配だ。早急に部屋へ移動せねば。だが重くて動かせない。本人も足を動かす気配はない。

 怪我人でもあるまいし皆の手を借りて担いでいくわけにもいかない。

 というわけで魔法を使い、俺とリカルドは部屋へ移動した。移動した後も男二人っきりで部屋の中で抱きしめ合ったままというわけにはいかないので扉や窓を最大限開き侍女や侍従を部屋に控えさせた。



 それからどれだけ経過しただろうかーーーー。

「落ち着いたか?」

「すまない」

 しょぼーんと気落ちしているのはきっと……

「お前は人が善すぎるだろ。レナベル嬢に酷いこと言っちまったこと気にしてるんだろ?」

「…………………………」

 肯定も否定の言葉もないが目がキョドっている。

「そんなに気にするんだったら言わなきゃ良かったんじゃないのか?別に彼女の告白にはお断りしますって言うだけでも「それだと」」

 うん?遮られた。

「それだと、心置きなく彼女がゾーイさんのところに行けないじゃないか。それにゾーイさんも好いた相手が酷いこと言われたら黙ってないだろ?これできっと、二人はすぐにくっつくさ」

「なんか、うまく利用されて終わった感じだな」

「嫌な言い方するなよ。彼女は俺を騙したわけじゃないんだから。レナベルさんは自分の身と引き換えに子爵家を……好きな人を守ろうとしてただけだろ。政略結婚なんていくらでもある世だしな」

 貴族間で好いた同士で結婚している人は少ない。金銭的な面、領地、商売などそれぞれが家にとってより良くなるような縁を結んでいくものである。

「じゃあ、レナベル嬢と婚約すれば良かったじゃないか」

「……それも考えたけどな」

 リカルドは小さく呟いた。

「でも婚約してそのまま結婚したとして幸せになれるかとか考えちまってさ。俺にとってもレナベル嬢にとっても。いや、なんかさ……これ結婚したら浮気されるんじゃないかとか、逃げられるんじゃないかとか、ゾーイ殿が俺を襲いにくるんじゃないかとか考えちゃって」

「お、おお」

 いや、あり得ないだろ。心で想い続けることはあるかもしれないがレナベル嬢はそんなことをするような女性ではない。それにゾーイ殿が襲いに来るって……いや、別に無理矢理二人を引き離したわけでもないし、リカルドみたいな強者を襲いに来るような無謀なことをするような人には感じなかったが。

「まあでも、リカルドみたいなお人好しにはすぐにいい人が現れるさ。レナベル嬢のことはさっさと忘れてやろうぜ!」

「本当にそう思うか?」

「うん?」

「すぐにいい人現れると思うか?」

「ああ、だって頭良し顔良し精霊獣あり、次の伯爵はお兄さんだから爵位は継げないけど剣術も魔法も将来有望だろ?世の女性がほっとくわけないだろ?」

「そうか、そうか……うん、そうだよな。でも……本当にそう思うか?」

「ああ思うよ」

 ちょっとくどいな。

「そうか、そうか……。じゃあなんで今まで恋人0なんだ?」

「……縁がなかっただけだろ。俺だってエリザっていう婚約者がいなかったらお相手いなかったかもしれないだろ?」

「まあ……その可能性もなくはないけど。本当にすぐ現れると思うか?」

「ああ」

「本当に?」

「ええい、くどい!くどくどくどくどくどくどくどくど、そんなんじゃもてないぞ!?」

 あっ、思わず。

 ヤバ……。

「やっぱり俺はもてないんだ……」

 先程の比ではないほど落ち込むリカルドを見て俺は思った。

 もう放っておこう。

 目の前に置かれたクッキーを摘む俺だった。

 


 後日レナベル嬢は学園を去った。

 学園の者たちは突然の事態に驚きを隠せなかった。彼女が学園を去ったことにではない。彼女がその前に行ったことに対してだ。

 彼女は父親である伯爵の不正を王宮に密告し、伯爵はもちろんのことそれに関わっていた母親や兄たちまで捕まった。アスキン家は爵位剥奪され、レナベルも平民となった。

 平民となった彼女は学園をやめ、トラルーガ領に向かった後婚約はすっ飛ばし子爵子息のゾーイの妻となった。

 学園の者たちからすれば最近リカルドと良い仲になっていたのでは?彼女が困っている魔物をリカルドが退治しに行ってたよな?と不思議顔だった。


 これは……振られたか?とリカルドを同情的な目で見ていた。


 そんな目で見られている当のリカルドはアレンの前で震えていた。


「なあ、たぶんだけど……」

「どうした?なんかリカルドお前震えてないか?」

「レナベル嬢、ゾーイさんとの結婚反対されて彼と結婚するために家族を切り捨てたんじゃ……?」

「たぶんじゃなくてそうだろうな」

 彼女は賢い。家族と縁を切ろうと覚悟さえ決めてしまえば彼らの不正の証拠などいくらでも集められるはず。

「こっえ~~~!レナベル嬢こっえ~~~!やっぱ彼女は俺の運命の相手じゃなかったみたいだわ」

「は?」

「だって喧嘩したときとか何かめちゃくちゃやられそうじゃないか?」

「いや、そんなことないだろ」

 もちろん喧嘩の内容にもよるが、国を裏切るような不正とよくあるような夫婦喧嘩がもたらす身の破滅が同じではないと思うが。

 だが、リカルドが良かった良かったと何やら納得しているようなので俺も彼女とは結ばれなくて良かったと思うことにした。




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