白と忘却

臓物さん

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第一章

入学2

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   予想外だった。
   部屋、というんだから四角い部屋にマスクが壁やなんやに掛けて置いてあるのだと思った。まさにイレギュラー。
   真っ白ななにもない空間に無数のマスクが僕を取り囲むように浮いている。
「この中から選ぶのか…」
様々な色、柄があるが同じものは一つとしてない。無分別に統一感なく並べられたマスクはどことなく植物園を想起させる。
そのなかに一際浮いて見えるマスクがあった。
真っ白な、柄も、色もないマスク。つるつるとした光沢をもって、それは輝いている。なんというか、すごく神秘的で美しい気がした。
ふと、『反忘却視力検査』の時に見せられた『女優』らしき人物の写真を思い出した。
これに決めよう。
僕は白いマスクを手に取り、顔に押し付けた。
ゴムも何もついていないマスクは不思議なことに僕の顔に吸い付くようにそこに留まった。さらに不思議なのは、穴も空いていなければ透けているわけでもないのに前が見えることだった。息苦しくもなく初めから僕の体の一部だったかのようにそれはそこに収まった。
   気がつくと僕の周りにマスクはなく、一本の通路とその先にドアがあった。僕は通路を進み、ドアを開けた。
「あっ、出てきたあ!」
扇状に緑色のラインが入ったマスクをつけた少年がこちらを見ていた。間違いない。あいつだ。
「これが『特別国民学生  反忘却機関科』の制服だよ。これを着たらあとはその辺で談笑でもなんでもしてくれていいから。」
グレーのマスクの人に、白いタートルネックと黒いロングコートのような服を渡された。ロングコートの裏地は白だ。きっとマスクと合わせてあるんだろう。
「おぉ…」
今まで一般国民として暮らしてきて『国民指定衣類』しか着たことがなかった僕は受け取った瞬間感動に包まれてしまった。これが自由なのか。
「あれえ?僕のと違うんだねえ。」
緑色のマスクの少年は興味深そうに顔を近付けてきた。
彼の服装は黒いタートルネックに白いローブ。裏地が緑になっている。
「君は『学徒』だからじゃない?」
周りを見ると裏地に違いはあれど、白いローブと黒いロングコートは半々くらいだ。
「そうかもねえ。ところで、君のマスクは『白』でいいのかい?そんな色を選ぶなんて変わり者だねえ。僕は『翡翠』って色だったみたいだよお。翡翠、って呼んでねえ。」
変わり者とはなんだ。失礼な。
「翡翠ね。わかった。僕は白で合ってるよ。白くん、とでも呼びなよ。」
僕を変わり者呼ばわりしたやつに呼び捨てされるのが嫌で少し意地悪に言ってやったつもりだったが、翡翠は気にも止めていないらしい。
「わかったよお、白くん。これからよろしくねえ。」
こちらこそよろしく、と笑いかけるとマスクの向こうで翡翠も笑った気がした。
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