11 / 30
第4章
アニス、労働する②
しおりを挟む
怒涛の午前を終え、アニスがぐったりと机にうつ伏せていると、血相を変えた社員がひとり飛び込んで来た。
「ハレルヤマーケットの納品手配したの、誰?」
「おれだけど」
ひとりの社員が立ち上がる。
「なんか、Sー2に商品変更したのに違うって」
「変更なんて聞いてねえけど──」
ヒノキを初め、みなの目がいっせいにアニスへ集まる。アニスは、はっと青くなった。
(しまった──変更の電話、受けたんだった!)
「ハレルヤマーケットは、明日がオープンだぞ!」
「在庫は!?」
ヒノキの言葉に、動揺とざわめきがが走る。
「Sー2はここにはねえ。でも旧市街の倉庫にならある!」
「わっ、わたし、取って来ます!」
「あっ、ちょっと待たんか!」
ヒノキが止めるのも聞かず、アニスはゴーグルとマスクをつかむと、弾かれたように工場を飛び出した。
旧市街の倉庫──偽のハイイロウサギに襲われた、あのビルのことだ。
だが外は灰が幾千もの針になり、ブリザードのように吹雪いていた。
しばらく行くと刺すような痛みに襲われ、アニスは思わず立ちすくんだ。ゴーグルをつけていても、ろくに前が見えない。ひどい砂嵐のせいか、出歩く者はおろか、車両さえ見かけなかった。店舗もシャッターを閉め、営業している様子はない。
ふと、灰色の砂塵の中、アニスは店の軒先に小さな人影を見咎めた。
急いで近づくと、ひとりの少年が防具もなしにうずくまっている。うっかり、忘れて出て来たのだろうか。
だが、この天候でそれはない。
少年は、躰のあちこちに傷跡が窺えた。襲われ、防具を奪われたのだと気づき、アニスは血の気が引いた。アオイが言っていた。上等な防具は、狩られてしまう危険性があると。
少年は砂粒で表皮が固められ、息ができているかも怪しい状態だった。
「大変、早くどこかで診てもらわなきゃ……!」
アニスは、少年の頬を覆う細かい粒子を払い、自分のマスクを彼へとつけ替えた。薄く目を開けた少年のかすかな呼吸を確認すると、自分とさほど変わらない背丈を背負い、急いで病院を探し始める。
「待ってて、もう少しがまんしてね」
だが通りをいくらも進まないうちに、アニスは灰で滑って転倒した。はずみで、ゴーグルが飛んでいく。
(……!)
そうなるともう、目を開けていられなかった。
倒れた躰にも容赦なく灰がふきつけ、少年を背負ったまま、立ち上がることもままならない。ふきすさぶ灰が顔にはりつき、自分の呼吸すら危うくなった頃、急停止したサンドバイクから聞いたことのある声が降ってきた。
「こんな天気に出かけるとは、お前もあいつに劣らず馬鹿だな」
涙でぼやけた視界に、迷彩のジャンプスーツを着た完全防備の男が、アニスの腕をつかんでいる。ガスマスクで声がくぐもってはいるが、アカザだとわかった。
アニスは少年をかかえ、アカザに懇願した。
「あの、この子をすぐ病院に!」
「ああ、わかっている──おい!」
バイクの後ろに控えていた車を呼ぶ。社員が運転する車に、無事少年が乗せてもらうのを見ると、アニスは安心して改めてアカザを見上げた。
「あ、あの、すみません……注文変更の電話、わたしのせいです」
アカザはこちらも見ずに、おもしろくなさそうに答える。
「下のヘマはトップの責任だ」
顔が見えないのでわからないが、怒っているようだ。だがアカザは、アニスを風の当たらない建物の軒下へ連れて行くと、淡々と述べた。
「天候の脅威について予め説明しなかったのは、こちらのミスだ。まあ、まさか知らんとは思わなかったがな。ただの台風でも灰都では砂嵐。長時間屋外にいれば、さっきの子のように命にも関わる。倉庫へは車を出すつもりだった」
やがてヒノキを初め、アオイたち社員の乗ったトラックが駆けつけた。
「あっ、みなさん、すみま──」
「アニス、外に出たって聞いて心配したんだよ!」
謝罪も言い終わらないうちにアオイに抱きつかれ、アニスは動揺してまわりを見た。ヒノキはやはり睨みを利かせているが、ほっとしたように額をぬぐっている。
「さあ、急いで商品を運ぶぞ」
アカザの一声に、アニスもトラックに同乗し倉庫へ向かった。マーケットへ無事納品が済んだ頃、ヒノキにはくどくどと一時間にわたり説教をされたが、誰もアニスを責める者はいなかった。
場末のこの工場に潔さと正しさを垣間見たアニスは、いつしか仕事への接し方が変わってきた。
「アオイ、こんな重いもの、そんな小さい躰でよく持てるわね」
いつもの灰袋運びで、アニスが感心したように息をつく。今ではアニスも、一日三十袋のノルマをこなせるようになっていた。
「小さい、は余計だよ。これでもアニスとふたつしか変わんないんだからね、ぼく」
アオイが得意げに腕をまくって見せると、きれいに陽灼けした二の腕がしなやかに袖からのびている。
「ここにいると、自然と鍛えられるんだよ。でもぼく、本当は絵を描く仕事につきたいんだ」
そう言うとアオイは、積もった灰をキャンバスに、落ちていた枝でがりがりと線を描いていった。
「見て見て、これアカザさま。それでもってこれがリクドウでえ……こっちがアニス!」
うれしそうに指さした地面には、三人の生き生きとした顔がこちらを見ていた。
偉そうなアカザ、むくれているツバキ、笑顔の自分に、アニスは思わず感嘆の声が出る。
「まあ、そっくり」
アオイの画力は、マツリカ女学院の誰よりも群を抜いていた。
「へえ、あのチビ、上手いもんだな」
改めて紙に描いてもらった似顔絵をわたすと、ツバキはアニスのぶんも病室の壁にピンで留め、興味深げに眺めた。
「こっちはもう、ヒマでしょうがねェよ」
言った後で、失言とばかりに急いで謝る。
「い、いや、すまん。アニス博士ばかり働かせちまって……」
「気にしないで下さい。リクドウさんは命の恩人ですから」
にっこりと笑うアニスに、ツバキはわずかに動揺する。よくよく見れば、仕事明けなのだろう、アニスはそこはかとなく薄汚れていた。
「なんかあんた……こき使われてんじゃねェのか?」
「こき使われてますけど、平気ですよ」
あっけらかんと笑って答えるアニスが、ツバキは不思議でならなかった。
明らかに、コミューンを出た頃のおどおどとした感じが消えている。むしろ灰都に来てからのほうが、はつらつとして見えた。
(男子三日会わざればうんぬん──なんて言うが、女だってそうだ)
青白かった肌は健康的にうっすらと陽に灼け、血色もいい。ふらふらとやせっぽちで頼りなげだった体幹も、今やしっかりと地に足がついている感じがする。
自分が負傷している間に何か置いて行かれた気がして、ツバキは焦りを感じた。
(なんでだ、アニス博士がどう変わろうと、おれには関係ない。おれの仕事は、彼女が王女だと証明すればいいだけだ──)
もんもんと自分に言い聞かせていた口上が、突然当のアニスによって遮断される。
「あっ、もう行かなきゃ。今から会議なんです」
「会議? なんの!?」
「どうやったら商品が売れるかの、作戦会議だそうです。この工場、結構な負債額があるらしくって」
「……な、なんでそんな大事な会議に、アニス博士が出るんだよ」
思いもよらない展開に、頭がついていかない。
「アカザさんが、素人の意見も聞きたいって言うんです。また来ますね、お大事に」
「あの、ちょ……!」
身動きが取れないとはいえ、完全に蚊帳の外である。激しく疎外感を覚え、ツバキは肩を落とした。
アカザが病室のドアの隙間から、ニヤニヤと小馬鹿にした笑みをもらす。ツバキは力任せに、枕を閉じられたドアに投げつけた。
会議はいつもの食堂で行われた。下はアオイから上は七十代の老人まで、あらゆる世代が参加している。
「さて、知っての通りウチは今、危機的状況にある。この現状を打破しないことには、工場に未来はない。そこで、みなの意見を募る」
議長を務めるアカザが、食べ終わったキャンディの棒をぽいと投げ捨て、立ち上がる。
「ブレインストーミングといこうじゃないか。なんでも発言してくれ」
「はい! この石けん、すぐ溶けちゃって使いにくいんだ」
早々に手を挙げたアオイの意見を、書記役のカシが太い指で黙々と打ち込む。躰が大きいので、普通のノートパソコンが単行本のようだ。すぐにひとりの社員も挙手した。
「おれ、匂いがあまり好きじゃないんスよね。廃油そのままで油くさいっていうか」
「フロ用じゃねーんだよな、台所用で」
別の作業員も賛同してくる。ヒノキがサンプルの石けんのひとつを取って、くんくんと鼻に近づけた。
「スタンダードのHSはともかく、Sー2タイプはいちおう香料を入れてるが」
「Sー2は安っぽい香水でカラダ洗ってる感じだよ。この桃みてえな匂いがあまったるくてなあ、もっと一般受けする匂いのほうがいいんじゃねえかな」
「む……だが高価な香料は使えんぞ」
ヒノキの指摘に、一同はしばらく考え込んだ。
アニスも思案を巡らせる。
安価で大衆性のある香りは限られているうえ、アロマオイルは大量には使えない。
そのときふと、コミューンのサービスエリアでツバキが買ってくれた、ソフトクリームを思い出した。
「あの、この辺、オレンジが特産だって聞いたんですけど」
「ああ、緋ノ島で採れるミニオレンジね。小さいけど、あまみがあってうまいんだよ」
ヒノキがおやつカゴの中から、ひとつを取ってわたす。アニスは卵ほどの小ぶりのオレンジをしげしげと見つめ、独り言のようにつぶやいた。
「これなら……」
「ハレルヤマーケットの納品手配したの、誰?」
「おれだけど」
ひとりの社員が立ち上がる。
「なんか、Sー2に商品変更したのに違うって」
「変更なんて聞いてねえけど──」
ヒノキを初め、みなの目がいっせいにアニスへ集まる。アニスは、はっと青くなった。
(しまった──変更の電話、受けたんだった!)
「ハレルヤマーケットは、明日がオープンだぞ!」
「在庫は!?」
ヒノキの言葉に、動揺とざわめきがが走る。
「Sー2はここにはねえ。でも旧市街の倉庫にならある!」
「わっ、わたし、取って来ます!」
「あっ、ちょっと待たんか!」
ヒノキが止めるのも聞かず、アニスはゴーグルとマスクをつかむと、弾かれたように工場を飛び出した。
旧市街の倉庫──偽のハイイロウサギに襲われた、あのビルのことだ。
だが外は灰が幾千もの針になり、ブリザードのように吹雪いていた。
しばらく行くと刺すような痛みに襲われ、アニスは思わず立ちすくんだ。ゴーグルをつけていても、ろくに前が見えない。ひどい砂嵐のせいか、出歩く者はおろか、車両さえ見かけなかった。店舗もシャッターを閉め、営業している様子はない。
ふと、灰色の砂塵の中、アニスは店の軒先に小さな人影を見咎めた。
急いで近づくと、ひとりの少年が防具もなしにうずくまっている。うっかり、忘れて出て来たのだろうか。
だが、この天候でそれはない。
少年は、躰のあちこちに傷跡が窺えた。襲われ、防具を奪われたのだと気づき、アニスは血の気が引いた。アオイが言っていた。上等な防具は、狩られてしまう危険性があると。
少年は砂粒で表皮が固められ、息ができているかも怪しい状態だった。
「大変、早くどこかで診てもらわなきゃ……!」
アニスは、少年の頬を覆う細かい粒子を払い、自分のマスクを彼へとつけ替えた。薄く目を開けた少年のかすかな呼吸を確認すると、自分とさほど変わらない背丈を背負い、急いで病院を探し始める。
「待ってて、もう少しがまんしてね」
だが通りをいくらも進まないうちに、アニスは灰で滑って転倒した。はずみで、ゴーグルが飛んでいく。
(……!)
そうなるともう、目を開けていられなかった。
倒れた躰にも容赦なく灰がふきつけ、少年を背負ったまま、立ち上がることもままならない。ふきすさぶ灰が顔にはりつき、自分の呼吸すら危うくなった頃、急停止したサンドバイクから聞いたことのある声が降ってきた。
「こんな天気に出かけるとは、お前もあいつに劣らず馬鹿だな」
涙でぼやけた視界に、迷彩のジャンプスーツを着た完全防備の男が、アニスの腕をつかんでいる。ガスマスクで声がくぐもってはいるが、アカザだとわかった。
アニスは少年をかかえ、アカザに懇願した。
「あの、この子をすぐ病院に!」
「ああ、わかっている──おい!」
バイクの後ろに控えていた車を呼ぶ。社員が運転する車に、無事少年が乗せてもらうのを見ると、アニスは安心して改めてアカザを見上げた。
「あ、あの、すみません……注文変更の電話、わたしのせいです」
アカザはこちらも見ずに、おもしろくなさそうに答える。
「下のヘマはトップの責任だ」
顔が見えないのでわからないが、怒っているようだ。だがアカザは、アニスを風の当たらない建物の軒下へ連れて行くと、淡々と述べた。
「天候の脅威について予め説明しなかったのは、こちらのミスだ。まあ、まさか知らんとは思わなかったがな。ただの台風でも灰都では砂嵐。長時間屋外にいれば、さっきの子のように命にも関わる。倉庫へは車を出すつもりだった」
やがてヒノキを初め、アオイたち社員の乗ったトラックが駆けつけた。
「あっ、みなさん、すみま──」
「アニス、外に出たって聞いて心配したんだよ!」
謝罪も言い終わらないうちにアオイに抱きつかれ、アニスは動揺してまわりを見た。ヒノキはやはり睨みを利かせているが、ほっとしたように額をぬぐっている。
「さあ、急いで商品を運ぶぞ」
アカザの一声に、アニスもトラックに同乗し倉庫へ向かった。マーケットへ無事納品が済んだ頃、ヒノキにはくどくどと一時間にわたり説教をされたが、誰もアニスを責める者はいなかった。
場末のこの工場に潔さと正しさを垣間見たアニスは、いつしか仕事への接し方が変わってきた。
「アオイ、こんな重いもの、そんな小さい躰でよく持てるわね」
いつもの灰袋運びで、アニスが感心したように息をつく。今ではアニスも、一日三十袋のノルマをこなせるようになっていた。
「小さい、は余計だよ。これでもアニスとふたつしか変わんないんだからね、ぼく」
アオイが得意げに腕をまくって見せると、きれいに陽灼けした二の腕がしなやかに袖からのびている。
「ここにいると、自然と鍛えられるんだよ。でもぼく、本当は絵を描く仕事につきたいんだ」
そう言うとアオイは、積もった灰をキャンバスに、落ちていた枝でがりがりと線を描いていった。
「見て見て、これアカザさま。それでもってこれがリクドウでえ……こっちがアニス!」
うれしそうに指さした地面には、三人の生き生きとした顔がこちらを見ていた。
偉そうなアカザ、むくれているツバキ、笑顔の自分に、アニスは思わず感嘆の声が出る。
「まあ、そっくり」
アオイの画力は、マツリカ女学院の誰よりも群を抜いていた。
「へえ、あのチビ、上手いもんだな」
改めて紙に描いてもらった似顔絵をわたすと、ツバキはアニスのぶんも病室の壁にピンで留め、興味深げに眺めた。
「こっちはもう、ヒマでしょうがねェよ」
言った後で、失言とばかりに急いで謝る。
「い、いや、すまん。アニス博士ばかり働かせちまって……」
「気にしないで下さい。リクドウさんは命の恩人ですから」
にっこりと笑うアニスに、ツバキはわずかに動揺する。よくよく見れば、仕事明けなのだろう、アニスはそこはかとなく薄汚れていた。
「なんかあんた……こき使われてんじゃねェのか?」
「こき使われてますけど、平気ですよ」
あっけらかんと笑って答えるアニスが、ツバキは不思議でならなかった。
明らかに、コミューンを出た頃のおどおどとした感じが消えている。むしろ灰都に来てからのほうが、はつらつとして見えた。
(男子三日会わざればうんぬん──なんて言うが、女だってそうだ)
青白かった肌は健康的にうっすらと陽に灼け、血色もいい。ふらふらとやせっぽちで頼りなげだった体幹も、今やしっかりと地に足がついている感じがする。
自分が負傷している間に何か置いて行かれた気がして、ツバキは焦りを感じた。
(なんでだ、アニス博士がどう変わろうと、おれには関係ない。おれの仕事は、彼女が王女だと証明すればいいだけだ──)
もんもんと自分に言い聞かせていた口上が、突然当のアニスによって遮断される。
「あっ、もう行かなきゃ。今から会議なんです」
「会議? なんの!?」
「どうやったら商品が売れるかの、作戦会議だそうです。この工場、結構な負債額があるらしくって」
「……な、なんでそんな大事な会議に、アニス博士が出るんだよ」
思いもよらない展開に、頭がついていかない。
「アカザさんが、素人の意見も聞きたいって言うんです。また来ますね、お大事に」
「あの、ちょ……!」
身動きが取れないとはいえ、完全に蚊帳の外である。激しく疎外感を覚え、ツバキは肩を落とした。
アカザが病室のドアの隙間から、ニヤニヤと小馬鹿にした笑みをもらす。ツバキは力任せに、枕を閉じられたドアに投げつけた。
会議はいつもの食堂で行われた。下はアオイから上は七十代の老人まで、あらゆる世代が参加している。
「さて、知っての通りウチは今、危機的状況にある。この現状を打破しないことには、工場に未来はない。そこで、みなの意見を募る」
議長を務めるアカザが、食べ終わったキャンディの棒をぽいと投げ捨て、立ち上がる。
「ブレインストーミングといこうじゃないか。なんでも発言してくれ」
「はい! この石けん、すぐ溶けちゃって使いにくいんだ」
早々に手を挙げたアオイの意見を、書記役のカシが太い指で黙々と打ち込む。躰が大きいので、普通のノートパソコンが単行本のようだ。すぐにひとりの社員も挙手した。
「おれ、匂いがあまり好きじゃないんスよね。廃油そのままで油くさいっていうか」
「フロ用じゃねーんだよな、台所用で」
別の作業員も賛同してくる。ヒノキがサンプルの石けんのひとつを取って、くんくんと鼻に近づけた。
「スタンダードのHSはともかく、Sー2タイプはいちおう香料を入れてるが」
「Sー2は安っぽい香水でカラダ洗ってる感じだよ。この桃みてえな匂いがあまったるくてなあ、もっと一般受けする匂いのほうがいいんじゃねえかな」
「む……だが高価な香料は使えんぞ」
ヒノキの指摘に、一同はしばらく考え込んだ。
アニスも思案を巡らせる。
安価で大衆性のある香りは限られているうえ、アロマオイルは大量には使えない。
そのときふと、コミューンのサービスエリアでツバキが買ってくれた、ソフトクリームを思い出した。
「あの、この辺、オレンジが特産だって聞いたんですけど」
「ああ、緋ノ島で採れるミニオレンジね。小さいけど、あまみがあってうまいんだよ」
ヒノキがおやつカゴの中から、ひとつを取ってわたす。アニスは卵ほどの小ぶりのオレンジをしげしげと見つめ、独り言のようにつぶやいた。
「これなら……」
0
あなたにおすすめの小説
俺と結婚してくれ〜若き御曹司の真実の愛
ラヴ KAZU
恋愛
村藤潤一郎
潤一郎は村藤コーポレーションの社長を就任したばかりの二十五歳。
大学卒業後、海外に留学した。
過去の恋愛にトラウマを抱えていた。
そんな時、気になる女性社員と巡り会う。
八神あやか
村藤コーポレーション社員の四十歳。
過去の恋愛にトラウマを抱えて、男性の言葉を信じられない。
恋人に騙されて借金を払う生活を送っていた。
そんな時、バッグを取られ、怪我をして潤一郎のマンションでお世話になる羽目に......
八神あやかは元恋人に騙されて借金を払う生活を送っていた。そんな矢先あやかの勤める村藤コーポレーション社長村藤潤一郎と巡り会う。ある日あやかはバッグを取られ、怪我をする。あやかを放っておけない潤一郎は自分のマンションへ誘った。あやかは優しい潤一郎に惹かれて行くが、会社が倒産の危機にあり、合併先のお嬢さんと婚約すると知る。潤一郎はあやかへの愛を貫こうとするが、あやかは潤一郎の前から姿を消すのであった。
あなたがいなくなった後 〜シングルマザーになった途端、義弟から愛され始めました〜
瀬崎由美
恋愛
石橋優香は夫大輝との子供を出産したばかりの二十七歳の専業主婦。三歳歳上の大輝とは大学時代のサークルの先輩後輩で、卒業後に再会したのがキッカケで付き合い始めて結婚した。
まだ生後一か月の息子を手探りで育てて、寝不足の日々。朝、いつもと同じように仕事へと送り出した夫は職場での事故で帰らぬ人となる。乳児を抱えシングルマザーとなってしまった優香のことを支えてくれたのは、夫の弟である宏樹だった。二歳年上で公認会計士である宏樹は優香に変わって葬儀やその他を取り仕切ってくれ、事あるごとに家の様子を見にきて、二人のことを気に掛けてくれていた。
息子の為にと自立を考えた優香は、働きに出ることを考える。それを知った宏樹は自分の経営する会計事務所に勤めることを勧めてくれる。陽太が保育園に入れることができる月齢になって義弟のオフィスで働き始めてしばらく、宏樹の不在時に彼の元カノだと名乗る女性が訪れて来、宏樹へと復縁を迫ってくる。宏樹から断られて逆切れした元カノによって、彼が優香のことをずっと想い続けていたことを暴露されてしまう。
あっさりと認めた宏樹は、「今は兄貴の代役でもいい」そういって、優香の傍にいたいと願った。
夫とは真逆のタイプの宏樹だったが、優しく支えてくれるところは同じで……
夫のことを想い続けるも、義弟のことも完全には拒絶することができない優香。
王太子妃専属侍女の結婚事情
蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。
未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。
相手は王太子の側近セドリック。
ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。
そんな二人の行く末は......。
☆恋愛色は薄めです。
☆完結、予約投稿済み。
新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。
ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。
そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。
よろしくお願いいたします。
【完結】公爵令嬢は勇者への恩返しを試みる〜サブヒロインとして頑張ります〜
マロン株式
恋愛
公爵令嬢ユウフェには、ひとつだけ秘密がある。
――この世界が“小説の中”だと知っていること。
ユウフェはただの“サブヒロイン”で、物語の結末では魔王のもとへ嫁ぐ運命にある……はずだった。
けれどーー
勇者の仲間、聖女、そして魔王が現れ、〝物語どおり〟には進まない恋の三角関係(いや、四角関係?)が動き出す。
サブヒロインの恩返しから始まる、ほのぼの甘くて、少し切ない恋愛ファンタジー。
◇◇◇
※注意事項※
・序盤ほのぼのめ
・勇者 ✖ サブヒロイン ✖ 魔王 ✖ 巫女(?)の恋愛模様
・基本はザマァなし
・過去作のため、気になる部分あればすみません
・他サイトと並行改稿中のため、内容に差異が出る可能性があります
・設定ゆるめ
・恋愛 × ファンタジー
枯れ専令嬢、喜び勇んで老紳士に後妻として嫁いだら、待っていたのは二十歳の青年でした。なんでだ~⁉
狭山ひびき
恋愛
ある日、イアナ・アントネッラは父親に言われた。
「来月、フェルナンド・ステファーニ公爵に嫁いでもらう」と。
フェルナンド・ステファーニ公爵は御年六十二歳。息子が一人いるが三十年ほど前に妻を亡くしてからは独り身だ。
対してイアナは二十歳。さすがに年齢が離れすぎているが、父はもっともらしい顔で続けた。
「ジョルジアナが慰謝料を請求された。ステファーニ公爵に嫁げば支度金としてまとまった金が入る。これは当主である私の決定だ」
聞けば、妹のジョルジアナは既婚者と不倫して相手の妻から巨額の慰謝料を請求されたらしい。
「お前のような年頃の娘らしくない人間にはちょうどいい縁談だろう。向こうはどうやらステファーニ公爵の介護要員が欲しいようだからな。お前にはぴったりだ」
そう言って父はステファーニ公爵の肖像画を差し出した。この縁談は公爵自身ではなく息子が持ちかけてきたものらしい。
イオナはその肖像画を見た瞬間、ぴしゃーんと雷に打たれたような衝撃を受けた。
ロマンスグレーの老紳士。なんて素敵なのかしら‼
そう、前世で六十歳まで生きたイオナにとって、若い男は眼中にない。イオナは枯れ専なのだ!
イオナは傷つくと思っていた両親たちの思惑とは裏腹に、喜び勇んでステファーニ公爵家に向かった。
しかし……。
「え? ロマンスグレーの紳士はどこ⁉」
そこでイオナを待ち受けていたのは、どこからどう見ても二十歳くらいにしか見えない年若い紳士だったのだ。
不器用な大富豪社長は、闇オクで買った花嫁を寵愛する
獅月@体調不良
恋愛
「 御前を幸せにする為に、俺は買ったんだ 」
〜 闇オク花嫁 〜
毒親である母親の為だけに生きてきた彼女は、
借金を得た母の言葉を聞き、
闇オークションへ売られる事になった。
どんな形にしろ借金は返済出来るし、
母の今後の生活面も確保出来る。
そう、彼女自身が生きていなくとも…。
生きる希望を無くし、
闇オークションに出品された彼女は
100億で落札された。
人食を好む大富豪か、
それとも肉体を求めてか…。
どちらにしろ、借金返済に、
安堵した彼女だが…。
いざ、落札した大富豪に引き渡されると、
その容姿端麗の美しい男は、
タワマンの最上階から5階部分、全てが自宅であり、
毎日30万のお小遣いですら渡し、
一流シェフによる三食デザート付きの食事、
なにより、彼のいない時間は好きにしていいという自由時間を言い渡した。
何一つ手を出して来ない男に疑問と不満を抱く日々……だが……?
表紙 ニジジャーニーから作成
エブリスタ同時公開
冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない
くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、
軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。
言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。
――そして初めて、夫は気づく。
自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。
一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、
「必要とされる存在」として歩き始めていた。
去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。
これは、失ってから愛に気づいた男と、
二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。
――今さら、遅いのです。
「25歳OL、異世界で年上公爵の甘々保護対象に!? 〜女神ルミエール様の悪戯〜」
透子(とおるこ)
恋愛
25歳OL・佐神ミレイは、仕事も恋も完璧にこなす美人女子。しかし本当は、年上の男性に甘やかされたい願望を密かに抱いていた。
そんな彼女の前に現れたのは、気まぐれな女神ルミエール。理由も告げず、ミレイを異世界アルデリア王国の公爵家へ転移させる。そこには恐ろしく気難しいと評判の45歳独身公爵・アレクセイが待っていた。
最初は恐怖を覚えるミレイだったが、公爵の手厚い保護に触れ、次第に心を許す。やがて彼女は甘く溺愛される日々に――。
仕事も恋も頑張るOLが、異世界で年上公爵にゴロニャン♡ 甘くて胸キュンなラブストーリー、開幕!
---
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる