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第1章

しゅっ

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今日、父さんと母さんが帰って来た。

丁度そのタイミングで、あいつが店に顔を出したから、仕方なく紹介してやった。

「はじめまして。リュート・ブロンと申します。王立研究所の研究員をしています。」

まだ、まうちゃんのことを話していなかったから、それも一緒に説明した。
案の定、父さんも母さんもすんなりと、まうちゃんのことを受け入れてくれた。

ひとしきり話も済んだので、2人には、晩ごはんまではゆっくり休んで貰うことにした。
あいつは珍しく、「今日は家族水入らずで過ごした方がいいんじゃないですか?」と言ったけど、父さんが却下した。
「1人でも多い方が食事は楽しいから、君も一緒にどうぞ。」
そう言われて、いつもの嘘臭い笑顔じゃない、笑みを浮かべたあいつに、あれ?っと思った。そんな顔も出来るんだな。

「んじゃ、僕は晩ごはんの下拵えしておくから、取りあえずあんたは姉さん迎えに行ってきてよ。あ、父さんと母さんが帰って来てることは内緒でね!びっくりさせたいから。」

「あ、うん。わかった。」


そう言って出掛けてったけれど、帰って来たのは姉さん1人だけだった。
何やってんだ、あいつは。
 
はっきりしない姉さんと、晩ごはんの支度をしていると


「すみません!戻りました!!」

とそこにあいつが戻ってきた。ゼイゼイと肩で息をしてる。

「迎えに行ったのになにやってんのさ。」

「いやー、なんか、執事に絡まれちゃって。あはは。」

はーっ。そうだった。あの人も姉さんのことこっそり狙ってるって、侍女さん達が言ってたっけ。

「まー、いいや。もうすぐご飯出来るから。」

「すまん。ありがとう。」




ふと、厨房から姉さんが顔半分だけ出してこっちを見ている。なにしてんだ?

「あ、イオンさん。さっきはなんかすみませんでした。」

しゅっ、と隠れちゃった。

「ねぇ、何したの?」

「牽制とアピールと掴み合い?かな。呆れたのかイオンさん先に帰っちゃって…。」

「大人2人が何やってんだか。」

そこに母さん登場!

「なーに、こそこそと面白い話してるの?」

「んー、ちょっとね。」

「ふーん。ま、聞いてたけどね!」

聞いてたんかい。

「ナディアさん、私はイオンさんに好意を持っています。」

おっとー、いきなりのカミングアウト!

「あら、そ。」

え、母さんそれだけ?

「今はまだ、イオンさんにその気はないようですが、私は諦めません。ナディアさん、ジョルジュさんにもイオンさんの相手として認めて貰えるように努力したいと思っています。」

「うん、良いんじゃない。頑張りなさい。ま、イオンは奥手だから大変だと思うけど。」

母さんはニコニコしてる。
あー、そうか。母さん的には合格なんだね。ここ数日、散々やりあったけど悪いやつではないしね。姉さんのこと大切に想ってるのはわかったし、それにあちこちを旅しながら古い伝承を研究している話は面白かった。ちょっと興味が沸いてきたとこなんだよね。


「じゃあ、イオンのことは私に任せなさい。あんた達はジョルジュと座ってて。」




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