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去年のハロウィンは悲惨だった……
しおりを挟む怪談は、お好きだろうか?
去年のハロウィンの話だ──自分が不倫していたと知ったのは。
彼氏のアパートでトイレットペーパーを巻き付けて「うっふんミイラよ、水をかけたら溶けるわよ」なんてバカなことをやっていたら、ピンポーン。
トリックオアトリートォオオ、とガチミイラ姿の奥さんが玄関前に立っていたっていうね。
インターホンでノリノリの奥さんを見た彼──だと思っていた人様の夫──は、ガクガク震えだして、私をベランダに放り出した。
「穏便に済ますために、しばらくベランダに隠れていてくれる? 奥さん怒ったらマジで怖いから。本気のミイラになりたくなかったら、命が惜しかったら隠れていて? ね? お願い」
なんだろう、独身だって嘘つかれていた悲しさより、寒空の中トイレットペーパーをまとってベランダで震えている自分が、すごく可哀そうで泣いた。
だって、そのまま中でおっぱじめちゃうしさ……。
そりゃあまだ新婚1年目で転勤だもの。燃え上がるよね、遠距離。
でもさ、それで浮気ってひどくない? あとなんか、奥さんのプレイめっちゃ怖いし。鞭とか蝋燭とか振り回してるし。あんな奥さんと渡り合う勇気、無いからね!?
単身赴任で寂しかったから、なんて理由にならない。不倫男なんて皆死ね!
去年はそれで風邪をひいて高熱を出し、一週間寝込んだんだよなぁ。
今年もハロウィンが近づいてきて、それを思いだすのが苦痛だった。
でも友人からのハロウィンパーティの案内メッセージを見て、にっこり笑う。
今年は飲んで騒いで、楽しんでやる!
気合入れて、コスプレして。去年のことを思い出さないように、ただそれだけのささやかなハロウィン。
そうなるはずだったのに……。
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