アラサー失恋女子、合コンで年下御曹司(25)にロックオンされる〜タワマン25階住みでも、怪しい壺なんて買いません!〜

世界のボボブラ汁(エロル)

文字の大きさ
38 / 68

降神の儀【蓮視点⑧】

しおりを挟む
 俺は茜さんが、芦屋の新当主に目を奪われていることに気づき、ちょっとムッとした。

 まあ俺ほどじゃないけど、見た目は悪くない。目もパッチリしてるし……。

 ああいうベタなコスプレみたいな装束は、サブカル好きの女性からしたらグッとくるものがあるのかも?

 茜さん、そういうタイプではなさそうだけどな。

 あと、学食でうどん頼むたびに油揚げをサービスされていた俺の方が、平安貴族向きじゃないか?

「あ、ちなみに芦屋家の若君の隣にいる女性は、婚約者ですねー。あそこは違う意味で決まった結婚相手を選びますから……おーい、茜さん?」

 彼女の前で手をヒラヒラさせた。彼には婚約者がいるんだぞ、茜さん。

 しかもあのお嬢さんは、内閣府の大臣を祖父に持つ箱入り娘だ。

 芦屋家に呪殺依頼をした者の正体も、それで知れようというもの。

「可愛らしい方ですねー。どうやらあちらのお嬢さんの一目惚れらしいですよ。ふん、一目惚れなんて引きません? あ、俺もだった。俺たちとは逆の関係なんですね」

 返事がない。

「──?」

 顔を覗き込んだ俺は、驚いて彼女の細い腰を支える。

 言っておくが、どさくさに紛れてのセクハラではない。彼女が今にも崩れ落ちそうだったからだ。

「真っ青ですよ。具合、悪い?」

 まだ夏の気温を保つ東京から来て、冷えたのかもしれない。

 神事の前に身を清める意味で朝風呂に入れたから、湯冷めしたのだろうか。

 違うな。昨夜ちゅぱちゅぱして──そしてそのまま寝かせてしまったせいで、冷えたに違いない。

 祝詞の強化とはいえ、あれが良くなかった……。

「あかねさん、室内に戻──」

 その時、どよめきが広がった。

 降神の儀が始まったのだ。

 地の底から、地響きと共に「神気」がのし上がってくる。こうなると、俺は下手に動くわけにはいかない。

 大蛇オロチには、血筋以外の者を護る義理がない。裏を返せば血筋の者以外には全く興味を示さず、何も影響を及ぼさないはずなんだ。

 たとえ茜さんが、同業者たちに匹敵する霊力を持っていたとしても。

 だが俺は違う。大蛇オロチの気を乱してはいけない。

「すぐ終わるから、俺に寄りかかって」
「どうして──」

 彼女は上の空で呟いた。

「何よ、あの変な恰好。隣の女性は──」
「え?」

 ぽっかりと見開いた、空虚な黒い瞳。意識がどこかに飛んでいるような……。

「圭太、どうして」

 突如、依り代──祖父──に向かっていた大蛇オロチの神気が、台風の進路のように向きを変えた。

「は!?」

 最初は、大蛇オロチが俺に降りようとしているのかと思った。

 大蛇オロチ本体は、大祝おおほうりである宗主にのみ降りてくる。

 それはいにしえから続いてきた、柳楽家との契約更新の儀式。

 俺はまだ宗主じゃないぞ、間違えるな大蛇オロチ

「茜さんっ、ごめん俺から離れて」

 大蛇オロチの注意を引いてしまって神気がこちらに向かえば、感覚の鋭い茜さんは打ちのめされてしまうかもしれない。迂闊だった!

 上ってくる霊圧と神気が体を突き抜ける衝撃に備えたその時、大蛇オロチの気が、自分に向かっていないことに気づく。

「──っ!?」

 気付いた時には、それはあかねさんの体を通り抜け、天に上り、そして──。

「昇神の儀に移る」

 突然のことに呆気に取られ、祝詞の途絶えていた祖父へ、父が注意を促した。

 我に返った祖父は、再び朗々とした声で祝詞を唱え始める。

 大蛇はそのまま天に上り、身を折り返すように降りてきて、再び地中に姿を消した。

「あかねさんっ!?」

 ふらっと倒れかけた彼女を受け止め抱き上げると、俺は大急ぎで室内に運んだ。

 大蛇オロチは古代の神だ。

 血筋の者にしか加護は授けないが、けして悪い気ではない。

 憑かれた者はその体を捧げているようなものだから、祟り神化もしないはずだ。

 だから茜さんは大丈夫だと思った自分が、許せない。

 俺は失念していたのだ。昨日、彼女は大きな蛇を見たと言っていなかったか?

 あれが、俺の未来の嫁に対する興味ではなく、茜さん自身に惹かれて姿を現したのだとしたら……。

 茜さんの身に纏う甘さは、大蛇オロチにとってもたまらなく魅力的だったに違いない。

「あかねさん、しっかり!」
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

【完結】クズ男と決別した私の未来は輝いている。

カシスサワー
恋愛
五年間、幸は彼を信じ、支え続けてきた。 「会社が成功したら、祖父に紹介するつもりだ。それまで俺を支えて待っていてほしい。必ず幸と結婚するから」 そう、圭吾は約束した。 けれど――すべてが順調に進んでいるはずの今、幸が目にしたのは、圭吾の婚約の報せ。 問い詰めた幸に、圭吾は冷たく言い放つ。 「結婚相手は、それなりの家柄じゃないと祖父が納得しない。だから幸とは結婚できない。でも……愛人としてなら、そばに置いてやってもいい」 その瞬間、幸の中で、なにかがプチッと切れた。

ハメられ婚〜最低な元彼とでき婚しますか?〜

鳴宮鶉子
恋愛
久しぶりに会った元彼のアイツと一夜の過ちで赤ちゃんができてしまった。どうしよう……。

【完結】身代わりとなります

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
レイチェルは素行不良の令嬢として悪名を轟かせている。しかし、それはレイチェルが無知ゆえにいつも失態をしていたためで本人には悪意はなかった。 レイチェルは家族に顧みられず誰からも貴族のルールを教えてもらわずに育ったのだ。 そんなレイチェルに婚約者ができた。 侯爵令息のダニエルだ。 彼は誠実でレイチェルの置かれている状況を知り、マナー講師を招いたり、ドレスを作ってくれたりした。 はじめは貴族然としている婚約者に反発していたレイチェルだったがいつのまにか彼の優しさに惹かれるようになった。 彼のレイチェルへの想いが同情であっても。 彼がレイチェルではない人を愛していても。 そんな時、彼の想い人である隣国の伯爵令嬢フィオラの国で革命が起き、彼女は隣国の貴族として処刑されることが決まった。 そして、さまざまな思惑が交錯する中、レイチェルは一つの決断を下し・・・ *過去と未来が行ったり来たりしながら進行する書き方にチャレンジしてみました。 読みにくいかもしれませんがご了承ください。

苦手な冷徹専務が義兄になったかと思ったら極あま顔で迫ってくるんですが、なんででしょう?~偽家族恋愛~

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「こちら、再婚相手の息子の仁さん」 母に紹介され、なにかの間違いだと思った。 だってそこにいたのは、私が敵視している専務だったから。 それだけでもかなりな不安案件なのに。 私の住んでいるマンションに下着泥が出た話題から、さらに。 「そうだ、仁のマンションに引っ越せばいい」 なーんて義父になる人が言い出して。 結局、反対できないまま専務と同居する羽目に。 前途多難な同居生活。 相変わらず専務はなに考えているかわからない。 ……かと思えば。 「兄妹ならするだろ、これくらい」 当たり前のように落とされる、額へのキス。 いったい、どうなってんのー!? 三ツ森涼夏  24歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』営業戦略部勤務 背が低く、振り返ったら忘れられるくらい、特徴のない顔がコンプレックス。 小1の時に両親が離婚して以来、母親を支えてきた頑張り屋さん。 たまにその頑張りが空回りすることも? 恋愛、苦手というより、嫌い。 淋しい、をちゃんと言えずにきた人。 × 八雲仁 30歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』専務 背が高く、眼鏡のイケメン。 ただし、いつも無表情。 集中すると周りが見えなくなる。 そのことで周囲には誤解を与えがちだが、弁明する気はない。 小さい頃に母親が他界し、それ以来、ひとりで淋しさを抱えてきた人。 ふたりはちゃんと義兄妹になれるのか、それとも……!? ***** 千里専務のその後→『絶対零度の、ハーフ御曹司の愛ブルーの瞳をゲーヲタの私に溶かせとか言っています?……』 ***** 表紙画像 湯弐様 pixiv ID3989101

結婚直後にとある理由で離婚を申し出ましたが、 別れてくれないどころか次期社長の同期に執着されて愛されています

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「結婚したらこっちのもんだ。 絶対に離婚届に判なんて押さないからな」 既婚マウントにキレて勢いで同期の紘希と結婚した純華。 まあ、悪い人ではないし、などと脳天気にかまえていたが。 紘希が我が社の御曹司だと知って、事態は一転! 純華の誰にも言えない事情で、紘希は絶対に結婚してはいけない相手だった。 離婚を申し出るが、紘希は取り合ってくれない。 それどころか紘希に溺愛され、惹かれていく。 このままでは紘希の弱点になる。 わかっているけれど……。 瑞木純華 みずきすみか 28 イベントデザイン部係長 姉御肌で面倒見がいいのが、長所であり弱点 おかげで、いつも多数の仕事を抱えがち 後輩女子からは慕われるが、男性とは縁がない 恋に関しては夢見がち × 矢崎紘希 やざきひろき 28 営業部課長 一般社員に擬態してるが、会長は母方の祖父で次期社長 サバサバした爽やかくん 実体は押しが強くて粘着質 秘密を抱えたまま、あなたを好きになっていいですか……?

押しつけられた身代わり婚のはずが、最上級の溺愛生活が待っていました

cheeery
恋愛
名家・御堂家の次女・澪は、一卵性双生の双子の姉・零と常に比較され、冷遇されて育った。社交界で華やかに振る舞う姉とは対照的に、澪は人前に出されることもなく、ひっそりと生きてきた。 そんなある日、姉の零のもとに日本有数の財閥・凰条一真との縁談が舞い込む。しかし凰条一真の悪いウワサを聞きつけた零は、「ブサイクとの結婚なんて嫌」と当日に逃亡。 双子の妹、澪に縁談を押し付ける。 両親はこんな機会を逃すわけにはいかないと、顔が同じ澪に姉の代わりになるよう言って送り出す。 「はじめまして」 そうして出会った凰条一真は、冷徹で金に汚いという噂とは異なり、端正な顔立ちで品位のある落ち着いた物腰の男性だった。 なんてカッコイイ人なの……。 戸惑いながらも、澪は姉の零として振る舞うが……澪は一真を好きになってしまって──。 「澪、キミを探していたんだ」 「キミ以外はいらない」

叱られた冷淡御曹司は甘々御曹司へと成長する

花里 美佐
恋愛
冷淡財閥御曹司VS失業中の華道家 結婚に興味のない財閥御曹司は見合いを断り続けてきた。ある日、祖母の師匠である華道家の孫娘を紹介された。面と向かって彼の失礼な態度を指摘した彼女に興味を抱いた彼は、自分の財閥で花を活ける仕事を紹介する。 愛を知った財閥御曹司は彼女のために冷淡さをかなぐり捨て、甘く変貌していく。

【完結】あなた専属になります―借金OLは副社長の「専属」にされた―

七転び八起き
恋愛
『借金を返済する為に働いていたラウンジに現れたのは、勤務先の副社長だった。 彼から出された取引、それは『専属』になる事だった。』 実家の借金返済のため、昼は会社員、夜はラウンジ嬢として働く優美。 ある夜、一人でグラスを傾ける謎めいた男性客に指名される。 口数は少ないけれど、なぜか心に残る人だった。 「また来る」 そう言い残して去った彼。 しかし翌日、会社に現れたのは、なんと店に来た彼で、勤務先の副社長の河内だった。 「俺専属の嬢になって欲しい」 ラウンジで働いている事を秘密にする代わりに出された取引。 突然の取引提案に戸惑う優美。 しかし借金に追われる現状では、断る選択肢はなかった。 恋愛経験ゼロの優美と、完璧に見えて不器用な副社長。 立場も境遇も違う二人が紡ぐラブストーリー。

処理中です...