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心の痛みから目を逸らすための言い訳を、冷徹に剥がし取るような言葉だった。
言い返せない私は、ただ蓮君を睨み返す。
ところが、彼のその目の中には、嫉妬の色が見え隠れしている。
戸惑いと同時に危険なものを感じ、彼の肩を押して遠ざけようとした。
ピクリともしない!
「茜さんはさ、彼にとって都合のいい女だったんですよ。芦屋家を出奔中に、住む場所を与えてくれて、金出して、飯作って、体の相性が良かっただけ」
「──っ!」
私は手を振り上げていた。
ひどい言葉を投げつけられる謂れはない。
まさか一日に二回も男を殴りたくなると思わなかった。自分にこんな凶暴性があるなんて。
しかしその手首はあっさり掴まれ、引きずり寄せられる。
「そう簡単に、殴らせると思うなよ」
さらに低くなった声で、脅すように言われた。
「あんたがあいつに抱かれてる姿が浮かんできて、俺もイラついてんだからさ」
そう言うと、そのまま抱きすくめられ、唇を奪われていた。
一瞬、乱暴されるのではないかと思い、身構えた。雰囲気が一変したから。
けれど、彼のついばむような口づけには、そんな意図は毛頭ないように感じられた。
唇から労わるような想いが溢れ、私の中に流れ込んでくる。
最初は抵抗していた私の力が緩んだ。
あんな剣幕だったのに──なんと彼、慰めてくれているのだ。
入ってきた舌を噛むこともできた。
だけど、あまりに優しいキスだったから、私はそうしないで、逆に夢中で啜っていた。
本当は、キスに──人との接触に飢えていた。
もう頭の中がぐちゃぐちゃで、誰でもいいから慰めてもらいたくなっていた。
圭太はまだ長野にいる。でも私は東京に向かう車の中。彼のいる場所から、どんどん離れている。
自分の意志で。
怖い。もう本当にダメなんだ。
私は目の前の男にむしゃぶりついていた。寂しさを払拭するように。
湿った口づけの音が車内に響き渡っているのに、運転手──神使を気にする余裕はもうなかった。
唇を離し、血を吐くように叫んでいた。
「寂しいっ!」
「……うん」
蓮君はその言葉を受け止め、耳の後ろや首筋にキスを落としていく。
「私、ただ寂しいだけなのよ?」
泣きじゃくりながら訴える。バカバカバカ圭太のバカ、話してよ! 二人で考えたらよかったじゃん。
「身代わりにしているだけよ!? いいの!?」
私は酷い。蓮君を利用しようとしている。
蓮君は藁だ。失恋して、もがいている私が掴んだ一本の藁。
「いいよ」
「踏み台なのよ!?」
「大丈夫。俺、丈夫だから」
車内は暗くて、蓮君の表情は見えない。彼がどう思っているか分からなかった。
でも、その言葉に心が折れた。
「ごめん、抱いて」
ダメって分かっているのに、寂しくて、悲しくて……。
涙でシートが冷たくなる。
「いいんだってば。茜さんが楽になるなら、もうそれでいいや」
彼はそう囁くと、私を抱きよせる。
「橘さん、自動運転モード」
「承知しました」
高速道路なのに、運転手の気配が消えた。バックシートが限界まで倒れ、フラットになる。窓にスモークが下りた。
「誰にも見せたくないからね」
優しい声に、私は泣きながら身を預けた。
「お願い、忘れさせて。思い出せないくらい、めちゃくちゃにして……」
蓮君は、飢えたような目で囁いた。
「その言葉、忘れないでよ?」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
※R15なのでここまでです🙏💦
言い返せない私は、ただ蓮君を睨み返す。
ところが、彼のその目の中には、嫉妬の色が見え隠れしている。
戸惑いと同時に危険なものを感じ、彼の肩を押して遠ざけようとした。
ピクリともしない!
「茜さんはさ、彼にとって都合のいい女だったんですよ。芦屋家を出奔中に、住む場所を与えてくれて、金出して、飯作って、体の相性が良かっただけ」
「──っ!」
私は手を振り上げていた。
ひどい言葉を投げつけられる謂れはない。
まさか一日に二回も男を殴りたくなると思わなかった。自分にこんな凶暴性があるなんて。
しかしその手首はあっさり掴まれ、引きずり寄せられる。
「そう簡単に、殴らせると思うなよ」
さらに低くなった声で、脅すように言われた。
「あんたがあいつに抱かれてる姿が浮かんできて、俺もイラついてんだからさ」
そう言うと、そのまま抱きすくめられ、唇を奪われていた。
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けれど、彼のついばむような口づけには、そんな意図は毛頭ないように感じられた。
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最初は抵抗していた私の力が緩んだ。
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だけど、あまりに優しいキスだったから、私はそうしないで、逆に夢中で啜っていた。
本当は、キスに──人との接触に飢えていた。
もう頭の中がぐちゃぐちゃで、誰でもいいから慰めてもらいたくなっていた。
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自分の意志で。
怖い。もう本当にダメなんだ。
私は目の前の男にむしゃぶりついていた。寂しさを払拭するように。
湿った口づけの音が車内に響き渡っているのに、運転手──神使を気にする余裕はもうなかった。
唇を離し、血を吐くように叫んでいた。
「寂しいっ!」
「……うん」
蓮君はその言葉を受け止め、耳の後ろや首筋にキスを落としていく。
「私、ただ寂しいだけなのよ?」
泣きじゃくりながら訴える。バカバカバカ圭太のバカ、話してよ! 二人で考えたらよかったじゃん。
「身代わりにしているだけよ!? いいの!?」
私は酷い。蓮君を利用しようとしている。
蓮君は藁だ。失恋して、もがいている私が掴んだ一本の藁。
「いいよ」
「踏み台なのよ!?」
「大丈夫。俺、丈夫だから」
車内は暗くて、蓮君の表情は見えない。彼がどう思っているか分からなかった。
でも、その言葉に心が折れた。
「ごめん、抱いて」
ダメって分かっているのに、寂しくて、悲しくて……。
涙でシートが冷たくなる。
「いいんだってば。茜さんが楽になるなら、もうそれでいいや」
彼はそう囁くと、私を抱きよせる。
「橘さん、自動運転モード」
「承知しました」
高速道路なのに、運転手の気配が消えた。バックシートが限界まで倒れ、フラットになる。窓にスモークが下りた。
「誰にも見せたくないからね」
優しい声に、私は泣きながら身を預けた。
「お願い、忘れさせて。思い出せないくらい、めちゃくちゃにして……」
蓮君は、飢えたような目で囁いた。
「その言葉、忘れないでよ?」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
※R15なのでここまでです🙏💦
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