アラサー失恋女子、合コンで年下御曹司(25)にロックオンされる〜タワマン25階住みでも、怪しい壺なんて買いません!〜

世界のボボブラ汁(エロル)

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ストーカー【蓮視点⑩】

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 俺は、茜さんが働く商業施設と駅の間にある広場のベンチに座り、半眼を閉じていた。

 いや、半眼なのはいつものことだが、今日はさらに瞼を伏せている。つまり、ほとんど目を閉じているってことだ。

 目の前を、足早に帰宅する人々が通り過ぎていく。ラッシュの時間帯で、雑踏の中を鳩が踏まれそうになりながら行ったり来たりしている。

 そんな混雑の中でも、彼女が近づいてくるのが分かる。犬並みの嗅覚があるわけじゃないが、気配を感じるのだ。

 どんな人混みの中でも、彼女だけは見分けられる。──金色の光を振りまいているからね。

 案の定、改札に向かって歩く茜さんの姿を肉眼で確認し、俺はベンチから立ち上がった。

 陶然とした。頭がおかしくなるかと思った。

 パンツスーツに包まれた長い脚、細い腰、可愛いお尻。華奢な体でさっそうと歩く姿を、男どもが振り返って見ていることに気づいていない。……茜さんのバカ、無防備すぎるんだよ。

 圭介さんが、男除けの術でも施していたのだろう。

 初めて会ったとき、彼女の姿にはその名残が残っていて、微かに幕がかかり、水の中にいるように歪んで見えた。

 まあ、そのおかげで霊からも男からも護られていたんだろうけどね。

 俺は、奇声を上げて飛びつかないように感情を押さえつけ、落ち着いた声で呼びかけた。

「……茜さ──」
「日下部さぁあああんっ!」

 俺より先に、若い男が駆け寄っていった。ポカンとした。なんだあいつ、馴れ馴れしい。呪い殺していいか?

「原科君、お疲れ様。夜勤じゃないの?」
「今日は休みなので、早番だったんです」
「苦学生、がんばるね」

 俺は唇を噛んだ。

 制服ではなかったから気づかなかったが、茜さんをいやらしい目で舐め回すように見ていたのは、あのバイトの警備員だった。

 子犬の皮を被ったアリゲーターめ。

 俺は歯をギリギリと鳴らしながら、二人の後をつけた。

 ──我ながら怪しい。

「日下部さんが定時なんて珍しいっ。今から飲みに行きましょう!」

 断れ、茜さん!

「ごめんね。あんまり、そんな気分じゃなくて」

 よしよし。

 ひとまず、俺が嫌われてるわけじゃないと分かった。

 もし、俺とは会ってくれないのに他の男とはデートするなら──そのときはどうしていたか分からない。

 筆で俺の名前を全身に書きなぐって、茜さんが参ったというまでペロペロして、こんこんと説教していたかもしれない。

 茜さんが俺の物だって、分かってくれるまで。

 ……俺は咳払いした。

 我ながら思考が危険になっていることに気づいたからだ。

 俺って、こんな変態だったのか。

 深呼吸し、心を落ち着ける。

 これも全部、茜さんに会えなかったストレスからに違いない。

「原科君」

 改札に入ろうとした二人を追おうとした時、別の女性の声が引き止めた。

「真奈美ちゃん?」

 茜さんが振り返る。俺は咄嗟に背を向け、顔を見られないようにした。

 ……コソコソと、何やってんだ俺。

「原科君さ、日下部さんと飲みに行かないなら、私と行かない?」

 ああ、あの合コンの時の……。同じ職場なんだな。

 バイト警備員は、物欲しげに茜さんに目をやり、躊躇した。

「いや、でも──」
「K大の大学院生なんでしょ? 私との方が年齢が合ってるじゃない。日下部さんと付き合うことになったら大変よ。アラサーだから、それなりに責任が伴うもの」

 ……なんか、ずけずけモノを言う後輩だな。

「あ~ごめん。俺、日下部さんがいいんだ」

 バイト警備員もしつこいな。目がハート型になってやがる。えぐり出してやろうか。

 合コン女子はふてくされる。

「おばさんは、おごってくれるもんね」

 ……は? おばさん? 誰のこと? 

 茜さんが苦笑いしている。

「そんな! そんな風に思ってないよ! 日下部さん、俺が奢ります!」

 焦るバイトに、合コン女子は面白くなさそうだ。

「へー、原科くん熟女スキーなんだ。でも日下部女史は、すぐにでも結婚退職したいお局様よ。原科君と遊んでる時間はないの。だから私と行こう」 

 引き離してくれるのはナイスだ。ナイスだけど、なんだろう……嫌な奴だな。

 年齢なんて関係ないだろ、だって茜さんだぞ?

 神使なんて、年上の方がマウントを取ってくるくらいなのに……。

 茜さんがぜんぜん気を悪くしていないのが、オーラで分かったが、俺の方が腹が立ってきた。

 礼儀のなってない社会人め。先輩への口の利き方を教えてやろうか。そのあざといメイクが剥がれるまで、顔面で柳楽本家の長い廊下を拭いてやる。

「分かってないな。日下部さんはさ、なんかこう……エロいんだよ!」

 バイト警備員がうっかり言ってしまい、俺は思わず頷きそうになってしまった。

 分かってるな!

 しかし茜さんからじっとりした目で睨まれた彼を見て……ちょっとだけ、あのバイトに同情した。素直なバカは嫌いじゃない。

 ──相手が茜さんじゃなければな。

「茜さん」

 うざい二人から引き離したくて、ついうっかり声をかけてしまった。


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