アラサー失恋女子、合コンで年下御曹司(25)にロックオンされる〜タワマン25階住みでも、怪しい壺なんて買いません!〜

世界のボボブラ汁(エロル)

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茜さんが好き【蓮視点⑪】

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「蓮君」

 驚いたように、こちらを見る茜さん。もう眼鏡はかけていない。

 透明感のある知的な美女が、そこにはいた。俺は呼び止めておいて、しばらくその場に棒立ちになってしまった。

 改めて見ると……これはすごい。

 茜さん、魂の輝きが増している。魔除けによる目くらましが、切れてきているから?

 いや、白訪市というパワースポットのせいかもしれない。

 霊力が研ぎ澄まされ、なんかこう、匂い立つような艶かしい色気がプンプン──もう、目眩がするほどの引力だった。

 見た目が変わったわけではない。クールで落ち着いて見えるのは相変わらずなのに……。

 ──でもこの人、あの時の声は情熱的に掠れているんだよな……。

 うっかり高速道路でのことを思い出し、今さらながらそのギャップにやられてしまう。

 わわわわ、まずいぞコレは!
 
「あれぇえ、藤木君の学生時代のヤバイ友人君じゃないですか!」

 茜さんに見とれすぎて二の句が継げず、無言で立ち尽くしているだけのガチにヤバそうな俺に、合コン女子が笑みを浮かべながら擦り寄って来た。

「どうしたんですかぁ? 日下部さんを霊感商法のカモにしたいなら、恋愛成就や縁結びの御守りじゃないと多分買いませんよぉ」

 すぐに茜さんが、合コン女子の肩に手を置いて首を振る。彼女のオーラがオレンジ色に揺れた。

「失礼よ。彼、詐欺師じゃないの」

 茜さんが庇ってくれた! 俺のためなら怒ってくれるんだ……。

 俺は嬉しくて嬉しくてニコニコしてしまったが、たぶんいつも笑っているように見えるから、誰も気づかなかっただろう。

「なぜここに居るの?」

 その茜さんから警戒したように聞かれたが、俺にはどうしてそんなことを聞くのか分からなかった。

 だって、会いにきたに決まっているじゃないか。

「飯、行きましょう」

 気がつけばきっぱりそう言っていた。

 すると、バイト君が茜さんの前に立ちふさがった。

「俺が先に誘っていたんだぞ」

 黙れ、若僧。

 俺が目を細めて彼を見据えると、そいつは急に呆けたような顔になり、回れ右して去っていった。

「は、原科君!? ちょっと!」

 合コン女子が慌てて追いかけていく。

「ほら、邪魔者はいなくなった」

 子犬の皮を被ったアリゲーターより、アナコンダの皮を被った青大将の方が強い。 

 しかし茜さんは、さらに警戒したようだった。

「原科君に何をしたの? 前もああなったわ」
「俺の茜さんに、近づかないようにしただけです。大丈夫、危険はないよ」

 茜さんは、ほっとしたように息を吐いた。まったく。俺以外の男のこと、考えてほしくないんだけどな。

「あかねさん、夕飯一緒に食べよう」

 やや躊躇ったものの、嬉しいことに、茜さんは頷いてくれた。

 やっぱり、多少強引にいかないとだめなのか。

 その日の食事は行きつけのイタリアンにしようとしたのに、なぜかファミレスに連れていかれた。俺に借りを作らないようにしているつもりらしい。

 あげく奢ってくれたし……。女子に奢られたのは初めてだ。やっぱり警戒されているな。

 でも、ぎこちないながらも、あかねさんは俺とちゃんと会話してくれた。だから収穫もあった。

 茜さんは、爬虫類は大丈夫だということ。どちらかというと、虫全般が駄目なんだとか。

 可愛いなぁ。

 じゃあ大蛇オロチの家に嫁いでも大丈夫だね。もちろん、嫁がなくてもいいんだけどさ。俺が茜さんに嫁ぐから。

「あの、このままホテルをとってもいいんですけど、あかねさんの家にしますか?」

 そろそろ前の魔除けからひと月経つ。祝詞を上書きしたい。あとキスマークも消えてるし……。

「今日はダメよ。ごめんなさい」
「いや、茜さんの都合に合わせますよ。まだ効いてますから」

 真面目な話、魔除けを施す日くらいは、きちんと決めておかないといけない。

「いつにしますか?」

 茜さんは長いまつ毛を伏せて、気まずそうにしている。……可愛い。

 たぶん、俺とのことをいろいろ思い出しているに違いない。

 俺は彼女が困らないように、そのことについて触れるのはやめた。

 相性ピッタリでしたね! なんて言おうもんなら、きっといたたまれなくなって、二度と会ってくれなくなるだろう。

「大丈夫、変なことはしません」

 まあ……そりゃあ、できれば抱きたい。

 今度は、そのままで。

 いや、誤解しないでくれたまえ、諸君。

 前にも言ったように、神力を体内に直接流し込み循環させることが、一番効果的な魔除けとなるからなんだ。

 茜さんを狙っている霊的なもの──悪霊や、それが凝り固まってできた鬼や妖は「死の穢れ」の象徴。
  
 それに対して「生と命」の象徴である、神力の込められた聖水を、注ぎこもうとしているだけのこと。

 陰陽和合の理念のようなものだ。
  
 彼女の内側から張りめぐされた生の源は、穢れを拒む結界になる。

 それに聖水に変化したそれに、妊娠の心配はない。

 ……前回は、長期の魔除けとしては不完全だったのだ。  

 彼女を護るためにも──今度は、ちゃんとしたい。 

 まあ、単に茜さんが好きで、抱きたくてたまらないという、下心もあるんだけど。

 でもほら、一石二鳥ってわけだろ? ……ね?

「空いている日を連絡するわね」

 声が沈んでいる。あまり元気が無いのが、オーラでも分かった。

 それでもその日は、とりあえず彼女を送っていくしかなかった。

 茜さんには、無理強いしたくないから。

 出来れば今度は、好きになってもらってからが良かったから。

 彼女は俺にとってのアマテラス。

 早く岩戸から出てきて、俺の前にすべてをさらけ出してほしい。

 俺を受け入れて、茜さん。

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