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茜さんが好き【蓮視点⑪】
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「蓮君」
驚いたように、こちらを見る茜さん。もう眼鏡はかけていない。
透明感のある知的な美女が、そこにはいた。俺は呼び止めておいて、しばらくその場に棒立ちになってしまった。
改めて見ると……これはすごい。
茜さん、魂の輝きが増している。魔除けによる目くらましが、切れてきているから?
いや、白訪市というパワースポットのせいかもしれない。
霊力が研ぎ澄まされ、なんかこう、匂い立つような艶かしい色気がプンプン──もう、目眩がするほどの引力だった。
見た目が変わったわけではない。クールで落ち着いて見えるのは相変わらずなのに……。
──でもこの人、あの時の声は情熱的に掠れているんだよな……。
うっかり高速道路でのことを思い出し、今さらながらそのギャップにやられてしまう。
わわわわ、まずいぞコレは!
「あれぇえ、藤木君の学生時代のヤバイ友人君じゃないですか!」
茜さんに見とれすぎて二の句が継げず、無言で立ち尽くしているだけのガチにヤバそうな俺に、合コン女子が笑みを浮かべながら擦り寄って来た。
「どうしたんですかぁ? 日下部さんを霊感商法のカモにしたいなら、恋愛成就や縁結びの御守りじゃないと多分買いませんよぉ」
すぐに茜さんが、合コン女子の肩に手を置いて首を振る。彼女のオーラがオレンジ色に揺れた。
「失礼よ。彼、詐欺師じゃないの」
茜さんが庇ってくれた! 俺のためなら怒ってくれるんだ……。
俺は嬉しくて嬉しくてニコニコしてしまったが、たぶんいつも笑っているように見えるから、誰も気づかなかっただろう。
「なぜここに居るの?」
その茜さんから警戒したように聞かれたが、俺にはどうしてそんなことを聞くのか分からなかった。
だって、会いにきたに決まっているじゃないか。
「飯、行きましょう」
気がつけばきっぱりそう言っていた。
すると、バイト君が茜さんの前に立ちふさがった。
「俺が先に誘っていたんだぞ」
黙れ、若僧。
俺が目を細めて彼を見据えると、そいつは急に呆けたような顔になり、回れ右して去っていった。
「は、原科君!? ちょっと!」
合コン女子が慌てて追いかけていく。
「ほら、邪魔者はいなくなった」
子犬の皮を被ったアリゲーターより、アナコンダの皮を被った青大将の方が強い。
しかし茜さんは、さらに警戒したようだった。
「原科君に何をしたの? 前もああなったわ」
「俺の茜さんに、近づかないようにしただけです。大丈夫、危険はないよ」
茜さんは、ほっとしたように息を吐いた。まったく。俺以外の男のこと、考えてほしくないんだけどな。
「あかねさん、夕飯一緒に食べよう」
やや躊躇ったものの、嬉しいことに、茜さんは頷いてくれた。
やっぱり、多少強引にいかないとだめなのか。
その日の食事は行きつけのイタリアンにしようとしたのに、なぜかファミレスに連れていかれた。俺に借りを作らないようにしているつもりらしい。
あげく奢ってくれたし……。女子に奢られたのは初めてだ。やっぱり警戒されているな。
でも、ぎこちないながらも、あかねさんは俺とちゃんと会話してくれた。だから収穫もあった。
茜さんは、爬虫類は大丈夫だということ。どちらかというと、虫全般が駄目なんだとか。
可愛いなぁ。
じゃあ大蛇の家に嫁いでも大丈夫だね。もちろん、嫁がなくてもいいんだけどさ。俺が茜さんに嫁ぐから。
「あの、このままホテルをとってもいいんですけど、あかねさんの家にしますか?」
そろそろ前の魔除けからひと月経つ。祝詞を上書きしたい。あとキスマークも消えてるし……。
「今日はダメよ。ごめんなさい」
「いや、茜さんの都合に合わせますよ。まだ効いてますから」
真面目な話、魔除けを施す日くらいは、きちんと決めておかないといけない。
「いつにしますか?」
茜さんは長いまつ毛を伏せて、気まずそうにしている。……可愛い。
たぶん、俺とのことをいろいろ思い出しているに違いない。
俺は彼女が困らないように、そのことについて触れるのはやめた。
相性ピッタリでしたね! なんて言おうもんなら、きっといたたまれなくなって、二度と会ってくれなくなるだろう。
「大丈夫、変なことはしません」
まあ……そりゃあ、できれば抱きたい。
今度は、そのままで。
いや、誤解しないでくれたまえ、諸君。
前にも言ったように、神力を体内に直接流し込み循環させることが、一番効果的な魔除けとなるからなんだ。
茜さんを狙っている霊的なもの──悪霊や、それが凝り固まってできた鬼や妖は「死の穢れ」の象徴。
それに対して「生と命」の象徴である、神力の込められた聖水を、注ぎこもうとしているだけのこと。
陰陽和合の理念のようなものだ。
彼女の内側から張りめぐされた生の源は、穢れを拒む結界になる。
それに聖水に変化したそれに、妊娠の心配はない。
……前回は、長期の魔除けとしては不完全だったのだ。
彼女を護るためにも──今度は、ちゃんとしたい。
まあ、単に茜さんが好きで、抱きたくてたまらないという、下心もあるんだけど。
でもほら、一石二鳥ってわけだろ? ……ね?
「空いている日を連絡するわね」
声が沈んでいる。あまり元気が無いのが、オーラでも分かった。
それでもその日は、とりあえず彼女を送っていくしかなかった。
茜さんには、無理強いしたくないから。
出来れば今度は、好きになってもらってからが良かったから。
彼女は俺にとってのアマテラス。
早く岩戸から出てきて、俺の前にすべてをさらけ出してほしい。
俺を受け入れて、茜さん。
驚いたように、こちらを見る茜さん。もう眼鏡はかけていない。
透明感のある知的な美女が、そこにはいた。俺は呼び止めておいて、しばらくその場に棒立ちになってしまった。
改めて見ると……これはすごい。
茜さん、魂の輝きが増している。魔除けによる目くらましが、切れてきているから?
いや、白訪市というパワースポットのせいかもしれない。
霊力が研ぎ澄まされ、なんかこう、匂い立つような艶かしい色気がプンプン──もう、目眩がするほどの引力だった。
見た目が変わったわけではない。クールで落ち着いて見えるのは相変わらずなのに……。
──でもこの人、あの時の声は情熱的に掠れているんだよな……。
うっかり高速道路でのことを思い出し、今さらながらそのギャップにやられてしまう。
わわわわ、まずいぞコレは!
「あれぇえ、藤木君の学生時代のヤバイ友人君じゃないですか!」
茜さんに見とれすぎて二の句が継げず、無言で立ち尽くしているだけのガチにヤバそうな俺に、合コン女子が笑みを浮かべながら擦り寄って来た。
「どうしたんですかぁ? 日下部さんを霊感商法のカモにしたいなら、恋愛成就や縁結びの御守りじゃないと多分買いませんよぉ」
すぐに茜さんが、合コン女子の肩に手を置いて首を振る。彼女のオーラがオレンジ色に揺れた。
「失礼よ。彼、詐欺師じゃないの」
茜さんが庇ってくれた! 俺のためなら怒ってくれるんだ……。
俺は嬉しくて嬉しくてニコニコしてしまったが、たぶんいつも笑っているように見えるから、誰も気づかなかっただろう。
「なぜここに居るの?」
その茜さんから警戒したように聞かれたが、俺にはどうしてそんなことを聞くのか分からなかった。
だって、会いにきたに決まっているじゃないか。
「飯、行きましょう」
気がつけばきっぱりそう言っていた。
すると、バイト君が茜さんの前に立ちふさがった。
「俺が先に誘っていたんだぞ」
黙れ、若僧。
俺が目を細めて彼を見据えると、そいつは急に呆けたような顔になり、回れ右して去っていった。
「は、原科君!? ちょっと!」
合コン女子が慌てて追いかけていく。
「ほら、邪魔者はいなくなった」
子犬の皮を被ったアリゲーターより、アナコンダの皮を被った青大将の方が強い。
しかし茜さんは、さらに警戒したようだった。
「原科君に何をしたの? 前もああなったわ」
「俺の茜さんに、近づかないようにしただけです。大丈夫、危険はないよ」
茜さんは、ほっとしたように息を吐いた。まったく。俺以外の男のこと、考えてほしくないんだけどな。
「あかねさん、夕飯一緒に食べよう」
やや躊躇ったものの、嬉しいことに、茜さんは頷いてくれた。
やっぱり、多少強引にいかないとだめなのか。
その日の食事は行きつけのイタリアンにしようとしたのに、なぜかファミレスに連れていかれた。俺に借りを作らないようにしているつもりらしい。
あげく奢ってくれたし……。女子に奢られたのは初めてだ。やっぱり警戒されているな。
でも、ぎこちないながらも、あかねさんは俺とちゃんと会話してくれた。だから収穫もあった。
茜さんは、爬虫類は大丈夫だということ。どちらかというと、虫全般が駄目なんだとか。
可愛いなぁ。
じゃあ大蛇の家に嫁いでも大丈夫だね。もちろん、嫁がなくてもいいんだけどさ。俺が茜さんに嫁ぐから。
「あの、このままホテルをとってもいいんですけど、あかねさんの家にしますか?」
そろそろ前の魔除けからひと月経つ。祝詞を上書きしたい。あとキスマークも消えてるし……。
「今日はダメよ。ごめんなさい」
「いや、茜さんの都合に合わせますよ。まだ効いてますから」
真面目な話、魔除けを施す日くらいは、きちんと決めておかないといけない。
「いつにしますか?」
茜さんは長いまつ毛を伏せて、気まずそうにしている。……可愛い。
たぶん、俺とのことをいろいろ思い出しているに違いない。
俺は彼女が困らないように、そのことについて触れるのはやめた。
相性ピッタリでしたね! なんて言おうもんなら、きっといたたまれなくなって、二度と会ってくれなくなるだろう。
「大丈夫、変なことはしません」
まあ……そりゃあ、できれば抱きたい。
今度は、そのままで。
いや、誤解しないでくれたまえ、諸君。
前にも言ったように、神力を体内に直接流し込み循環させることが、一番効果的な魔除けとなるからなんだ。
茜さんを狙っている霊的なもの──悪霊や、それが凝り固まってできた鬼や妖は「死の穢れ」の象徴。
それに対して「生と命」の象徴である、神力の込められた聖水を、注ぎこもうとしているだけのこと。
陰陽和合の理念のようなものだ。
彼女の内側から張りめぐされた生の源は、穢れを拒む結界になる。
それに聖水に変化したそれに、妊娠の心配はない。
……前回は、長期の魔除けとしては不完全だったのだ。
彼女を護るためにも──今度は、ちゃんとしたい。
まあ、単に茜さんが好きで、抱きたくてたまらないという、下心もあるんだけど。
でもほら、一石二鳥ってわけだろ? ……ね?
「空いている日を連絡するわね」
声が沈んでいる。あまり元気が無いのが、オーラでも分かった。
それでもその日は、とりあえず彼女を送っていくしかなかった。
茜さんには、無理強いしたくないから。
出来れば今度は、好きになってもらってからが良かったから。
彼女は俺にとってのアマテラス。
早く岩戸から出てきて、俺の前にすべてをさらけ出してほしい。
俺を受け入れて、茜さん。
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