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茜さんが好き好きすきすきスキスキススス【蓮視点⑫】
しおりを挟むそうこうするうちに一週間が経った。その間も、俺は毎日メッセージを送り続けた。
茜さんのほうから連絡してくることはない。けれど律儀に返信はくれる。
ただ、正直に言えば──俺のがんばりだけで、なんとか接点をつなぎ止めている状態だった。
俺から連絡を取らなければ、この関係はすっと消えてしまいそうだ。
まあ、消えさせる気なんて毛頭ないけどね?
週末になり、俺はついに痺れを切らした。
『茜さん、一度俺の家に来てもらえませんか? 迎えに行きます。あ、茜さんの家でも大丈夫です!』
送ってしばらくしてから、返事が来た。
『魔除けよね?』
『そうですとも』
……まったく。俺を狼かなにかと勘違いしていないか? 無害なアナコンダだよ。
家に招いたからと言って、茜さんをムシャムシャ貪り食べようなんて、そんなこと考えているわけ──ない……と思う。
あれ? 返事が来ないぞ?
ははーん。つまり俺にペロペロされるのは嫌、ということか。
だったらもうアレだ。例の和合しかない。体内に神気たっぷりの聖水を循環させる、完璧な魔除けにしよう。
『茜さん、今日一発ドカンとやりましょう。格安コースと合わせれば、しばらくどんな悪霊も寄りつきませんから。あ、何発でも無料です』
──そんな内容をスマホに打ち込み、送信寸前で我に返った。
あっぶね……完全に逃げられるところだった! なんで俺は彼女に対してこうも変態なんだ。
散々考えた末、無難なメッセージを送った。
『筆とペロペロ、どちらがいいですか?』
……これならセーフだろう。ブロックされまい。
しかし返事はなかなか来ない。
やっぱり和合のほうが良かったのか? まあ、流れ的に最終的にはそうなると思うんだが……。
ピコン、と通知音。俺はスマホに飛びついた。
『ごめん、蓮君。やっぱり魔除けはしないでいい。自分でどうにかしてみる』
……意味が分からない。
『ツテを当たってみる』
連続でメッセージが来るのは嬉しい。だが、内容はますます分からない。
茜さんは本物の霊能者に会ったことなんてないはずだ。そもそも本物はひと握りしかいない。
俺に頼るしかないことは分かっているはず。
まさか圭介さんが、また性懲りもなく近づいているわけでは……?
いや、別の霊能者? いやいや、それもない。詐欺師ならまだ分かるが。
俺は怪訝に思いながら通話ボタンを押した。
「茜さん、ちょっと意味が分からなくて。あの、体調はどうです? もうすぐ一か月だし心配で」
『蓮君……大丈夫よ。御守りとか御札とか買って、備えているの』
声が弱い。
疲れているのか? もしかして霊障が出始めている?
ぞっとした。右京と左京を交代で護衛につけているが、あいつらはたまにサボる。
とはいえ、俺の魔除けはまだ破られていない。それは分かるが、魔除けは本人の体調や気持ちにも左右されるのだ。
茜さんの気が弱って、施術が薄くなっている可能性は十分あった。
触れられなくても、夢に潜り込む悪霊くらいなら現れるかもしれない。
本気で心配になってきた。
茜さん、もしかしてずっと眠れていないのかな?
俺の結界を越えてくるレベルなら、それはもう鬼や妖怪の類だが……。
けれど──こういう時って、俺にもチャンスだと思うんだ。
宗教の人って、弱っている時にスッと現れるだろ? あれと同じ。きっと俺を頼りたくなる。
「聞いてください、茜さん。御守りや御札なんて気休め程度です。茜さんは用心深いから、変な霊感商法には引っかからないと思いますけど……俺なら確実に解決できます。もちろん無償で。だから会ってほしい」
『……そう……ね』
「たくさん話したいんです。俺のこと、もっと知ってもらいたい。その機会をください」
暗示で強引に連れて行くのは避けたい。
茜さんが納得した上で……自分の意思で、俺のものになってほしいんだ。
それにしても、彼女の声はなんて素敵なんだろう。
高すぎず、しっとり落ち着いていて、黒蜜みたいに甘くて……エロい。
会いたいよ、茜さん。
しかし俺の思いに反して、茜さんの声は重かった。
『私……ずっとね、考えていたの。いろんなことで、あなたを利用している──それが苦しいの。少し、時間をくれる?』
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