アラサー失恋女子、合コンで年下御曹司(25)にロックオンされる〜タワマン25階住みでも、怪しい壺なんて買いません!〜

世界のボボブラ汁(エロル)

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助けて圭……蓮君

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 自分なりにがんばって、準備万端だったはず。私の部屋は要塞だ。

 それなのに、その日のお風呂あがり、それがまったく無駄だったことを思い知らされた。

 窓から真っ黒な影が入り込んできたところを、この目で目撃してしまったのだから。

 もはや、絶望しかなかった。

 効果なんてまるでないじゃない!

 部屋を飛び出していこうにも、今の私はバスタオル一枚。髪からポタポタ雫を垂らしている。

 それには、部屋に問題があるわけではないと、私はもう知っている。

 狙われているのは、私。

 バスタオルからむき出しになった両方の肩を抱きしめ、私は何もできずただ立ち尽くしていた。

 唐突に、蓮君に魔除けを施された日から、ちょうど一か月経ったことに気づいた。

 そうか、やっぱりあの魔除けの効果は覿面だったんだ。

 蓮君はやっぱりすごい。

 きっちりお金を払って、そして無我の境地になって、術を施してもらっておけば良かった!

 黒い影は狭い部屋の中を漁るように、ゆっくり旋回しだした。

 怖い。

 動物の毛が濡れたような臭い、それからハァハッハァッという生臭い息遣い。

 まるで実体を持たない野犬が、私の周りをうろついているかのよう。

 身構えながら、じりじりとバスルームから部屋の方に移動した。

 黒い影は、目の位置もはっきり分からない。そもそも、目に相当するものがあるのかすら疑わしいのに、それがじっと私の方を見ているような気がした。

 どうしよう……怖い。

 カラカラに乾いた喉。叫び出したくても、きっと声が出ないに違いない。

 私はベッドに近づくと手を伸ばす。

 そこに畳んであった二枚のシャツのうち、一枚を手に取り、サッと羽織った。

 近づいて来ようとしていた、黒い影の動きが止まる。

 躊躇しているように見えた。

 睨み合って思案していた私は、御守りがじゃらじゃら付いたカバンを掴み、間に置いて身を護る。

 あとは、塩でも撒いたらどうかしら。

 キッチンに出したままだった、塩の瓶に目をやった。ちがう、旨味調味料だわ、あれ。

 視界の隅で、黒い影がぐにゃりと歪む。

 まずい!

 ヒッと喉を詰まらせる私に向かって、ついにそれは躍りかかってきたではないか。

 目をつぶって頭を抱え、しゃがみこむ私。こんなことしたって無駄なのに!

 ところがそれは、何もないはずの空間にぶつかった。

 じれたような咆哮があがる。何度も何度も、私のすぐ手前の空間に体当たりしている影。

 何かが、こちらに来るのを防いでいるのだ。目には見えないが、この影を足止めしている壁が存在する。

 しかしそれも、すぐにたわんだ。パリン、空気が割れる音がした。

 聴覚で聞いたものではない。でも、確かに高い破裂音を感じた。

「──っ」

 黒い影は瘴気の触手となってあっさり私を捕らえ、床に抑え込んだ。それから羽織ったシャツの下のバスタオルを容赦なく剥ぐ。

「やだ!」

 死んでしまうっ。これは悪いモノ。悪霊ってやつだわ!

「怖いよ、蓮君!」

 叫んでから、ハッとした。こんな時なのに、圭太じゃなくて、蓮君を呼んだ自分に戸惑った。

 影がシャツも剥ごうとした。

 裸にして、私に何をしようというの!?

 その時、シャツを掴んでいた真っ黒な触手が、凄まじい勢いではじけ飛んだ。黒い獣は、悲鳴をあげる。

 悲鳴と言っても、おそらく私以外には聞こえない断末魔だ。

 逃げようとした黒い瘴気が、次の瞬間豪快にねじれた。大きな手の平でお握りにされていくかのように、小さく、小さく、丸め込まれていく。

「な……なに?」

 呆然と見守っていると、やがてそれは小石となって、足元に転がった。

「まさか……蓮く──」

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