アラサー失恋女子、合コンで年下御曹司(25)にロックオンされる〜タワマン25階住みでも、怪しい壺なんて買いません!〜

世界のボボブラ汁(エロル)

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引導を渡す【蓮視点⑯】

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 湖のモノと対峙する日、俺は市内の病院に寄った。

 集中治療室ICUの待合室では、茜さんと同じくらいの年齢の女性が、さめざめと泣いていた。

 圭介さんの婚約者──ダースーの孫、須田絹子さんだ。

 確か「陰陽師などという怪しい職業の奴に、大事な娘を嫁がせるか!」と反対した父親に──いや、お前の父親が呪術合戦依頼したんだけどな──ハンストまでして、圭介さんとの結婚を認めさせたツワモノらしい。

 ……ん? 泣き声の合間にギシギシ音が聞こえる。これ、泣き声? 歯ぎしり?

「大丈夫ですか? たぶん婚約者だと言えば、中に入れてもらえますよ」
「ギシッ……祖父の名を告げたら入れてくれたけど、ギシギシッ……圭たん、目を覚まさないんです」

 予断を許さない状況ってやつかもしれない。

 俺も柳楽家の権力で、集中治療室の中に入れてもらった。

 確かにげっそりと頬がこけ、顔色は悪い。衰弱は激しそうだ。

「でも……圭介さん、起きてるんだろ?」

 青白い顔をした恋敵ライバルが、重たい瞼を開けた。

「バ……レた……か」
「絹子嬢、可愛いじゃないですか。祭祀の時の着物姿とガラリと違って、ロリータ風ファッションなのも似合っていたし。なんであの人じゃダメなの?」

 圭介さんは酸素マスク越しに何か言った。俺は耳を近づける。

「あかん……わけやない……嫁にもろうんは……もう決まってるさかい」

 苦痛の色がその瞳に宿っている。

「代わりには……ならへん。……絹子さんにも、茜っちにも……失礼やしな」
「ならきっぱり、茜さんへの未練を絶ち切れよ」

 俺はイライラした。代わりにならない? そんなの当たり前だろ。

 俺が茜っちに、圭介さんの代わりにしてもいいって言ったのは、圭介さんの代わりで終わる器じゃないことを知らしめるためだ。

 俺の方がいい男だって、気づいてほしい。結果的に、俺を選んでほしい。

 自分が選ぶ立場でいるつもりの圭介さんが、俺には許せなかった。

「あんたは、芦屋の本家を取ったんだからな」
「そや……な。でも……蓮かて……許可は出ぇへんやろ?」
「俺は圭介さんと違う。許可が出ないなら家を出る」
「弟に……押しつける気ぃか?」
「いや、大蛇オロチの力なんて、消えていくならそれで構わない」

 圭介さんは、点滴の管がついた腕をゆっくり持ち上げ、目元を覆った。

「僕かて……そない……思てたさ。でも父は──」

 俺は、自分が残酷なことを言った自覚がある。

 生きている人に我儘を言うのは、簡単だ。

 先代があんな死に方をしなければ、圭介さんだって実家を捨てることを躊躇しなかったかもしれない。

 でも相手が死んでしまっては、言いたいことも言えない。

 ましてや彼は一人息子なのに、ずっと逃げていた。圭介さんが切り捨てれば、雁助の名は彼の代で途絶える。彼の父親が必死で守ろうとしたものが……。

「悪いけど」

 それを踏まえた上で、それでも俺にははっきり言えた。

「どう考えても、俺には茜さんを諦めるという選択肢が出てこない」

 圭介さんは弱々しく苦笑し、酸素マスクをずらした。

「付き合うてへんのに……?」

 うるさいな、ショートカットだ。もうプロポーズしてんだよ!

 俺はより不機嫌になってICUを出た。

 腹いせに、外のソファで待っていた絹子さんに、晴れやかに告げる。

「目を覚ましていましたよ。お嬢さんに会いたくて仕方ないそうです。行ってあげて」

 ぱぁああああっと婚約者の顔が輝く。

 ちょっと狂気じみた血走った目は、生霊になる女の特徴と被るが……。

 あと認めたくはないが、この圭介さんの許嫁、なんか俺に似ている。

 他人とは思えないくらい、思い込みが激しい。

 まあ知ったことか。がんばれ圭介さん、あとは俺に任せて先に逝け。

 ……ん? これは死亡フラグじゃないよな?

 俺は、ロリータファッションの絹子嬢を見送り「健闘を祈る」と小さく呟いて、親指を立てた。

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