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裸に彼シャツ
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私は信州の某地にいた。
「寒っ」
東京とはやはり空気が違う。お風呂上がりで、しかもシャツ一枚。ひどいよサーヤ、こっちにだって準備ってものが……パンツくらい履く時間ほしかったわ。
でも……。
「サーヤ、すごいわ。やれば出来るじゃない。本当に漫画みたい!」
「無茶させるんじゃないわよ、連続は疲れるんだから」
サーヤはブツブツ言った。
裸足の脚を擦り合わせながら、それでもテレポートした自分の体を触ってみる。
どういう仕組みなんだろう。粒子を別の粒子に転送するとか、量子物理学的な……だめ、考えるだけ無駄だったわ。
とにかく、右京さんや左京さんにはできない高等な技なんだわ。サーヤはそれくらい強い神使ってことよね。
サーヤに連れて来てもらったその高台にある公園からは、湖とそれを囲む市街地が一望できた。
本当ならこの時間は、アルプス山脈に沈みゆく夕日が湖面を照らし、最高の眺望が拝める時間帯だったはず。
現に、犬の散歩の人や親子連れが足を止め、湖を見下ろしている。
ただなぜか、湖はどんよりと濁っていた。しかも、黒々とした煙のような筋が無数に立ち上っていて、一気に気持ちが悪くなった。
胸のムカつきを抑えながら、背の高い神使を振り仰ぐ。
「ねえ……サーヤ、なんか空気おかしくない?」
見れば、サーヤは険しい顔で湖を凝視している。
そちらに目をやると、真っ黒な煙のようなものは、さらに増えていた。
あれって、なんだろう。対岸で火事とか? それとも野焼きでもしているの?
だけど、どう見ても湖面から立ち上っているように見える。
サーヤがちょっと苦しそうに言った。
「すごく濃いわね。これ、感覚の鋭い人だと一般人でも分かるんじゃない?」
言葉通り、散歩中の人たちの何人かが不快そうに顔を背け、公園から立ち去る。
「すごいよね、あれ。火事じゃないの? 湖の色も濁ってる」
「やっぱり、あんたにははっきり見えるのね」
この胸が詰まるような気持ち悪さは、瘴気ってやつなのかな。部屋に入って来た悪霊とは比べ物にならない。
それでも、危険を感じないのはどうしてだろう?
ニュース映像として外国の戦地を見ているような、スクリーン越しにホラー映画を見ているような、妙な安心感があった。
「結界が張ってあるのよ、ドーム状に……分かる?」
サーヤに言われ、目を凝らして湖を見下ろした。
その時遊具の陰に、同じく湖面をじっと見つめている人影を見つけた。
「蓮君!」
私は彼に駆け寄っていた。
「あかねさん!? どうして──」
声に驚いて私を振り返った蓮君は、サーヤに気づき「テレポートか」と呟いた。
直後、強キャラみたいに糸目をカッと開眼させた。
「ちょっと! なんて恰好してるんだよ! 裸足だし、脚が腿までむき出しじゃないですか」
そしてすぐにジャケットを脱いで私に羽織らせてくれる。
「だってサーヤ、いきなりテレポートしたから」
「蓮~私にも優しくして~、大技使ったのよ! この小娘に連続で使わされたの!」
サーヤが私をドンッと押しのけて、蓮君に抱き着く。
それから私を見て勝ち誇ったように笑い、よけいなことを言った。
「茜ちゅわんが、最初に芦屋家の若君を選んだ時は、どうしようかと思ったわよ~う」
「……どういうこと?」
蓮君の声に冷気が籠る。私は唇を噛み、押し黙った。
ところがサーヤの方は、ペラペラとよくしゃべること。
「一瞬だけ病院に寄って、そこからさらにテレポートしてって言われたの。簡単に言うけど大変だったんだから」
ふーん、という顔で私を見つめる蓮君。糸目が開眼しっぱなしなのが怖い。
だ、だって圭太が昏睡状態って聞いて、心配だったんだもん。
「寒っ」
東京とはやはり空気が違う。お風呂上がりで、しかもシャツ一枚。ひどいよサーヤ、こっちにだって準備ってものが……パンツくらい履く時間ほしかったわ。
でも……。
「サーヤ、すごいわ。やれば出来るじゃない。本当に漫画みたい!」
「無茶させるんじゃないわよ、連続は疲れるんだから」
サーヤはブツブツ言った。
裸足の脚を擦り合わせながら、それでもテレポートした自分の体を触ってみる。
どういう仕組みなんだろう。粒子を別の粒子に転送するとか、量子物理学的な……だめ、考えるだけ無駄だったわ。
とにかく、右京さんや左京さんにはできない高等な技なんだわ。サーヤはそれくらい強い神使ってことよね。
サーヤに連れて来てもらったその高台にある公園からは、湖とそれを囲む市街地が一望できた。
本当ならこの時間は、アルプス山脈に沈みゆく夕日が湖面を照らし、最高の眺望が拝める時間帯だったはず。
現に、犬の散歩の人や親子連れが足を止め、湖を見下ろしている。
ただなぜか、湖はどんよりと濁っていた。しかも、黒々とした煙のような筋が無数に立ち上っていて、一気に気持ちが悪くなった。
胸のムカつきを抑えながら、背の高い神使を振り仰ぐ。
「ねえ……サーヤ、なんか空気おかしくない?」
見れば、サーヤは険しい顔で湖を凝視している。
そちらに目をやると、真っ黒な煙のようなものは、さらに増えていた。
あれって、なんだろう。対岸で火事とか? それとも野焼きでもしているの?
だけど、どう見ても湖面から立ち上っているように見える。
サーヤがちょっと苦しそうに言った。
「すごく濃いわね。これ、感覚の鋭い人だと一般人でも分かるんじゃない?」
言葉通り、散歩中の人たちの何人かが不快そうに顔を背け、公園から立ち去る。
「すごいよね、あれ。火事じゃないの? 湖の色も濁ってる」
「やっぱり、あんたにははっきり見えるのね」
この胸が詰まるような気持ち悪さは、瘴気ってやつなのかな。部屋に入って来た悪霊とは比べ物にならない。
それでも、危険を感じないのはどうしてだろう?
ニュース映像として外国の戦地を見ているような、スクリーン越しにホラー映画を見ているような、妙な安心感があった。
「結界が張ってあるのよ、ドーム状に……分かる?」
サーヤに言われ、目を凝らして湖を見下ろした。
その時遊具の陰に、同じく湖面をじっと見つめている人影を見つけた。
「蓮君!」
私は彼に駆け寄っていた。
「あかねさん!? どうして──」
声に驚いて私を振り返った蓮君は、サーヤに気づき「テレポートか」と呟いた。
直後、強キャラみたいに糸目をカッと開眼させた。
「ちょっと! なんて恰好してるんだよ! 裸足だし、脚が腿までむき出しじゃないですか」
そしてすぐにジャケットを脱いで私に羽織らせてくれる。
「だってサーヤ、いきなりテレポートしたから」
「蓮~私にも優しくして~、大技使ったのよ! この小娘に連続で使わされたの!」
サーヤが私をドンッと押しのけて、蓮君に抱き着く。
それから私を見て勝ち誇ったように笑い、よけいなことを言った。
「茜ちゅわんが、最初に芦屋家の若君を選んだ時は、どうしようかと思ったわよ~う」
「……どういうこと?」
蓮君の声に冷気が籠る。私は唇を噛み、押し黙った。
ところがサーヤの方は、ペラペラとよくしゃべること。
「一瞬だけ病院に寄って、そこからさらにテレポートしてって言われたの。簡単に言うけど大変だったんだから」
ふーん、という顔で私を見つめる蓮君。糸目が開眼しっぱなしなのが怖い。
だ、だって圭太が昏睡状態って聞いて、心配だったんだもん。
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