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デートですね!
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自分史上最速で身支度を整え、アパートの扉を開けると、玄関のすぐ真横の壁に寄りかかって待っていた柳楽君を見つけ、ビクッとなる。
こういうの多くない? 唐突だし、神出鬼没なのよね。
「…………」
「なんですか?」
「なんでもない」
文句を言っても、常識はあまり通じなさそう。
彼は片眉を上げて、不満そうに呟く。
「ほらね。俺が悪い奴だったら、簡単に部屋に押し入られちゃいますよ。不用心なアパートだよね、ほんっと嫌なんだけど」
圭太も似たようなこと言っていたな……。
「だってここ、家賃安いんだもん」
柳楽君は鼻で笑った。通話している時はちょっと可愛いなと思ったけど、やっぱ可愛くない。
「で、どこ行きます?」
「えーと、そうだねぇ」
そこで、なんだかこれまでと、彼の雰囲気が違うなと思った。
「あ、喪服じゃない」
柳楽君は頷く。
「あれは柳楽家の仕事着です。今日は完全にオフにしたので」
「仕事着……」
「浄化や調伏した霊を、弔う意味があるんです」
わー、思ったよりちゃんとしてる。
それにしても……。
私は彼の私服を、しげしげと眺めてしまった。
下はネイビーのデニムパンツ。上は細いストライプの入ったスタンドカラーのシャツで、その上から晩夏らしいチャコールグレイのジョーゼットカーディガンを羽織っている。
度を越してお洒落なわけでもなく、ダサいわけでもなく、無難な……普通の人に見える。
っていうか、爽やかでやっぱり可愛──。
「可愛いですね」
うっかり自分が声に出したのかと思い、ドキマギしてしまった。
「え? 私?」
「そりゃそうでしょ。他に誰かいます? ちなみに神使や霊的なモノは、今はいないですよ」
しれっと言われたけど……私、可愛いってキャラではないけどな。
気恥ずかしくて、俯いてしまう。圭太意外に言われたことがない。
街を歩いていて「俺を叩いてください!」と土下座してきた謎の中年男性がいたから、むしろ真逆に見えるのでは?
柳楽君は、私の服──からし色のタータンチェックの巻きスカート、黒の半袖ニットへと視線を滑らせ、最後に顔を見た。
「今日の茜さん、ガードが緩くなってて好き。隙だらけじゃん。突然訪ねたら、すっぴん見せてくれないかなーっていう俺の目論見、外れなかったね」
確信犯か! 私は狼狽して両手で顔を隠した。日焼け止めしかしていない。
だって人を待たせるのって、そわそわして嫌なんだもん。
「まだ昼までに時間ありますね。映画でも行きますか?」
「そうね、何でも好きな物食べ──え、映画?」
「だって、まだ十時だし」
それって柳楽君が来るの、早すぎたせいだよね?
「ちょうどいい上映時間のあるかな? お昼は映画館で軽食買って、観ながら食べる?」
一緒に済ませられないかと、さりげなく誘導した。しかし──。
「うーん、俺フォアグラ食べたくなってきたんだよね」
「ぐふぅっ」
だ、大丈夫、大丈夫よ、お給料入ったばっかり! それにランチなら安めに済みそうだし。
だいたいね、柳楽君の服装、ドレスコードがありそうなお店は狙ってなさそうだし!
「じゃあ、映画の後、俺の行きつけの店でも行きますか」
柳楽君はそう言って、私に手を差し出した。
い、行きつけの店……。麻布に住まいのある人の行きつけ……。
怖気づいていると、ぎゅっと手を握られた。
「デートですね!」
「あ……」
手の平が、温かい。
『あかねっち、お腹すいたわ~。なんか奢ってぇな。僕、今無一文やねん』
そう言って私の手を引っ張り、おねだりしてきた圭太が重なってしまった。
私は首をぶんぶん横に振ってから、柳楽君の手を振りほどいた。
「こ、これはデートじゃなくて、魔除けのお礼ですから。映画代も払うけど、でも……デートじゃないわ」
こういうの多くない? 唐突だし、神出鬼没なのよね。
「…………」
「なんですか?」
「なんでもない」
文句を言っても、常識はあまり通じなさそう。
彼は片眉を上げて、不満そうに呟く。
「ほらね。俺が悪い奴だったら、簡単に部屋に押し入られちゃいますよ。不用心なアパートだよね、ほんっと嫌なんだけど」
圭太も似たようなこと言っていたな……。
「だってここ、家賃安いんだもん」
柳楽君は鼻で笑った。通話している時はちょっと可愛いなと思ったけど、やっぱ可愛くない。
「で、どこ行きます?」
「えーと、そうだねぇ」
そこで、なんだかこれまでと、彼の雰囲気が違うなと思った。
「あ、喪服じゃない」
柳楽君は頷く。
「あれは柳楽家の仕事着です。今日は完全にオフにしたので」
「仕事着……」
「浄化や調伏した霊を、弔う意味があるんです」
わー、思ったよりちゃんとしてる。
それにしても……。
私は彼の私服を、しげしげと眺めてしまった。
下はネイビーのデニムパンツ。上は細いストライプの入ったスタンドカラーのシャツで、その上から晩夏らしいチャコールグレイのジョーゼットカーディガンを羽織っている。
度を越してお洒落なわけでもなく、ダサいわけでもなく、無難な……普通の人に見える。
っていうか、爽やかでやっぱり可愛──。
「可愛いですね」
うっかり自分が声に出したのかと思い、ドキマギしてしまった。
「え? 私?」
「そりゃそうでしょ。他に誰かいます? ちなみに神使や霊的なモノは、今はいないですよ」
しれっと言われたけど……私、可愛いってキャラではないけどな。
気恥ずかしくて、俯いてしまう。圭太意外に言われたことがない。
街を歩いていて「俺を叩いてください!」と土下座してきた謎の中年男性がいたから、むしろ真逆に見えるのでは?
柳楽君は、私の服──からし色のタータンチェックの巻きスカート、黒の半袖ニットへと視線を滑らせ、最後に顔を見た。
「今日の茜さん、ガードが緩くなってて好き。隙だらけじゃん。突然訪ねたら、すっぴん見せてくれないかなーっていう俺の目論見、外れなかったね」
確信犯か! 私は狼狽して両手で顔を隠した。日焼け止めしかしていない。
だって人を待たせるのって、そわそわして嫌なんだもん。
「まだ昼までに時間ありますね。映画でも行きますか?」
「そうね、何でも好きな物食べ──え、映画?」
「だって、まだ十時だし」
それって柳楽君が来るの、早すぎたせいだよね?
「ちょうどいい上映時間のあるかな? お昼は映画館で軽食買って、観ながら食べる?」
一緒に済ませられないかと、さりげなく誘導した。しかし──。
「うーん、俺フォアグラ食べたくなってきたんだよね」
「ぐふぅっ」
だ、大丈夫、大丈夫よ、お給料入ったばっかり! それにランチなら安めに済みそうだし。
だいたいね、柳楽君の服装、ドレスコードがありそうなお店は狙ってなさそうだし!
「じゃあ、映画の後、俺の行きつけの店でも行きますか」
柳楽君はそう言って、私に手を差し出した。
い、行きつけの店……。麻布に住まいのある人の行きつけ……。
怖気づいていると、ぎゅっと手を握られた。
「デートですね!」
「あ……」
手の平が、温かい。
『あかねっち、お腹すいたわ~。なんか奢ってぇな。僕、今無一文やねん』
そう言って私の手を引っ張り、おねだりしてきた圭太が重なってしまった。
私は首をぶんぶん横に振ってから、柳楽君の手を振りほどいた。
「こ、これはデートじゃなくて、魔除けのお礼ですから。映画代も払うけど、でも……デートじゃないわ」
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