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デートじゃないっての
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寂しいからって、流されるのも、ほだされるのもダメよ。
ロマンス詐欺の可能性だって、捨てていないし。
柳楽君はフイッと視線を外し、低い声でボソッと吐き捨てた。
「いつまでしがみついてるんだか」
「…………っ! しがみついてなんか──もう年下とデートするのは懲り懲りなの!」
「たがが四つ差、年下のうちに入りませんよ。茜さん、精神年齢低いもん」
ムッカァァアア!
「とにかくデートじゃない!」
「……ハイハイ」
先に階段を下りていく彼の背中が少ししょげて見えて、私の胸がズキッと痛んだ。
純粋な好意だとしたら、申し訳ないな。
でも、もう傷つきたくない。
圭太の罪は、振ったことじゃない。気持ちが冷めていく過程を──私に分かるようにしてくれなかったことだ。
あれほど好き好き連呼して、振る直前まで私を抱いて……私には何も言わずに、一人で結論を出してしまった。
『何が駄目だったの? 悪いところがあったら直すから』
あまりに唐突に思えて、縋りついてしまったくらいだ。
省みる時間が欲しかった。束縛が過ぎたのかな、とか、無神経なことを言ったのかな、とか。
何か理由があるはずで、圭太がこんな結論を出すまで、ずっと彼に無理をさせてきたってことだから。
けれど、圭太は困ったように口ごもるだけだった。
そして、ようやく一言。
『だって茜っち、結婚したい思てはるんやろ? 僕はそれ、できひんさかい……』
ほぼヒモ状態の圭太に、三十路前の女は荷が重かったのかな……。
結婚に興味が無いのは分かっていた。だから結婚なんて匂わせたことはなかった。
私だって「いつか出来れば」くらいで、焦っていたわけじゃない。
ただ、野良猫のような圭太が、どこかに行ってしまうんじゃないかって……そんな不安が常にあったから。
分かってる。指輪は、単純にプレゼントとしてくれただけ。
ただ、初めてもらった贈り物だったから……。
圭太が、これからも私とずっと一緒にいてくれるって、勘違いしたんだ。
『パチンコの景品やんか、よろこびすぎやわ』
彼が呆れていたのにも気づかないくらい、嬉しくて嬉しくて、私はそれを左手の薬指に嵌めて──すごくはしゃいでしまったんだ……。
たぶんあれだ。あれが原因なのは分かっている。目が合った時、複雑そうな顔をしていたから。
私は柳楽君の広い背中をぼんやり見つめた。
四つの差なんて、大したことない。でも自由でいたい二十五の男は、やがて勝手に気を遣ったり、警戒したりする。
結局、気軽な気持ちで彼と付き合ったとしても、圭太と同じように突然態度を変えて去っていくのだろう。
もしその時私が、本気で柳楽君を好きになっていたら?
割り切れた付き合いができなくて、彼とずっと一緒にいたいと思うようになっていたら?
私の心に彼への気持ちだけが残る。
第一柳楽君は、付き合いたいわけではないとはっきり言っているわけだし、危険なことはできない。
ばかみたい。
コインパーキングに向かう彼の後ろに続きつつ、必死に牽制している自分に苦笑いを零す。
傷つくのが怖くて何もしないよりは、何度か痛い目を見て慣れた方が、なんぼもマシかもしれない。
今の状態より、ずっと建設的だわ。
私だって本気になるとは限らないしね。
柳楽君が私を振り返り、ついてきているか確認した。
「俺、歩くの速いですか?」
私は慌てて彼を追いかけ、隣に並んだ。でも、狭い歩道でもくっつかないように気をつけた。
やっぱり、もう少し時間がほしい。
圭太が薄れる時間がほしい。
このトラウマが消えないと、私は前に進めないんだもの。
傷つく勇気がないチキンなのだ、私は。
ロマンス詐欺の可能性だって、捨てていないし。
柳楽君はフイッと視線を外し、低い声でボソッと吐き捨てた。
「いつまでしがみついてるんだか」
「…………っ! しがみついてなんか──もう年下とデートするのは懲り懲りなの!」
「たがが四つ差、年下のうちに入りませんよ。茜さん、精神年齢低いもん」
ムッカァァアア!
「とにかくデートじゃない!」
「……ハイハイ」
先に階段を下りていく彼の背中が少ししょげて見えて、私の胸がズキッと痛んだ。
純粋な好意だとしたら、申し訳ないな。
でも、もう傷つきたくない。
圭太の罪は、振ったことじゃない。気持ちが冷めていく過程を──私に分かるようにしてくれなかったことだ。
あれほど好き好き連呼して、振る直前まで私を抱いて……私には何も言わずに、一人で結論を出してしまった。
『何が駄目だったの? 悪いところがあったら直すから』
あまりに唐突に思えて、縋りついてしまったくらいだ。
省みる時間が欲しかった。束縛が過ぎたのかな、とか、無神経なことを言ったのかな、とか。
何か理由があるはずで、圭太がこんな結論を出すまで、ずっと彼に無理をさせてきたってことだから。
けれど、圭太は困ったように口ごもるだけだった。
そして、ようやく一言。
『だって茜っち、結婚したい思てはるんやろ? 僕はそれ、できひんさかい……』
ほぼヒモ状態の圭太に、三十路前の女は荷が重かったのかな……。
結婚に興味が無いのは分かっていた。だから結婚なんて匂わせたことはなかった。
私だって「いつか出来れば」くらいで、焦っていたわけじゃない。
ただ、野良猫のような圭太が、どこかに行ってしまうんじゃないかって……そんな不安が常にあったから。
分かってる。指輪は、単純にプレゼントとしてくれただけ。
ただ、初めてもらった贈り物だったから……。
圭太が、これからも私とずっと一緒にいてくれるって、勘違いしたんだ。
『パチンコの景品やんか、よろこびすぎやわ』
彼が呆れていたのにも気づかないくらい、嬉しくて嬉しくて、私はそれを左手の薬指に嵌めて──すごくはしゃいでしまったんだ……。
たぶんあれだ。あれが原因なのは分かっている。目が合った時、複雑そうな顔をしていたから。
私は柳楽君の広い背中をぼんやり見つめた。
四つの差なんて、大したことない。でも自由でいたい二十五の男は、やがて勝手に気を遣ったり、警戒したりする。
結局、気軽な気持ちで彼と付き合ったとしても、圭太と同じように突然態度を変えて去っていくのだろう。
もしその時私が、本気で柳楽君を好きになっていたら?
割り切れた付き合いができなくて、彼とずっと一緒にいたいと思うようになっていたら?
私の心に彼への気持ちだけが残る。
第一柳楽君は、付き合いたいわけではないとはっきり言っているわけだし、危険なことはできない。
ばかみたい。
コインパーキングに向かう彼の後ろに続きつつ、必死に牽制している自分に苦笑いを零す。
傷つくのが怖くて何もしないよりは、何度か痛い目を見て慣れた方が、なんぼもマシかもしれない。
今の状態より、ずっと建設的だわ。
私だって本気になるとは限らないしね。
柳楽君が私を振り返り、ついてきているか確認した。
「俺、歩くの速いですか?」
私は慌てて彼を追いかけ、隣に並んだ。でも、狭い歩道でもくっつかないように気をつけた。
やっぱり、もう少し時間がほしい。
圭太が薄れる時間がほしい。
このトラウマが消えないと、私は前に進めないんだもの。
傷つく勇気がないチキンなのだ、私は。
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