アラサー失恋女子、合コンで年下御曹司(25)にロックオンされる〜タワマン25階住みでも、怪しい壺なんて買いません!〜

世界のボボブラ汁(エロル)

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ロックオンされてる?

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『茜さん、飲みに行きましょうよ』

 そのメッセージを見て、私はスマホを落としそうになった。

『あ、俺ですよ、オレオレ』

 アカウント名は「神」

 それで詐欺ではなく、あの霊能者だと察した。少し前の私なら、両者の違いは分からなかったけれど。

 いつの間に……ID交換したっけ?

 残業続きだったが、うちの管理室のいいところは、基本土日休みのところだ。

 だから今日は朝ごはんも食べずに、十時近くまでゴロゴロしていた。

 例によって、女々しくも圭太のシャツを羽織ったまま……。

 うつ伏せで画面を眺めしばらく思案した後、私はおもむろに文字を打ち込む。

『先日は魔除けをしていただき、ありがとうございました。おかげさまでぐっすり眠れました。飲みのお誘いですが、しばらくお酒は控えようと思っています』

 あくまでも、事務的に。

 だって、思い出しただけでも頭を抱えたくなるもの。

 もうっ! やっぱりあのやり方はおかしいわよ! 私ったら、なんてことを……。

 でも、彼のあの魔除けが「本物」なのは間違いない。

 だって、あれから夢も見ずぐっすり眠れるようになったもの。体がすごく軽かった。

 すぐに、ポンッとメッセージが上がった。

『なるほど、だったら旅行にいきましょうよ』

 そっちの方がハードル高くない!?

 なんでよく知らない人と、旅行しなきゃならないの。

『無理です』
『分かりました。ところで、すごく美味しい蕎麦屋があるんです。あー、蕎麦食べたいな』
『どうぞどうぞ』

 ポンと、キツネが泣いているスタンプが飛んできた。

 あ、キツネに似ているっていう、自覚はあるんだ……。

 ちょっと可愛いなと思ってしまい、ふふっと笑い声が漏れた。

 しばらく沈黙が続き、お、諦めたかな? と思った頃……あちらからまたメッセージが飛んできた。

『そうだ、じゃあご馳走してくださいよ』

 ご馳走……あっ、そうかぁ。

 畳んだまま窓際に置いてある、柳楽君のシャツをじっと眺めた。

 あの御守り、貸しにされているんだった。

 魔除けはサービスという話だったけど、お礼はしなきゃよね。

 でも……。

 ムクムクと警戒心が頭をもたげてしまう。

 今度デートしてください、ってあの言葉……え? まさか体を要求されないでしょうね。

 そう思ってから、自意識過剰っぷりにで恥ずかしくなった。

 孤独死女子とかアイアンパンツとか言われているアラサーの私を、イケメンの年下君が必死に口説く理由はないよね。

 胡散臭いとはいえ彼はお金持ちなわけだし、例の商売を隠せば、遊び相手はそれなりにいそう……。

 ハンガーにひっかけて窓際に吊るしていた、昨夜のワンピースに目をやった。

 タグが全て取り払われていたけど、よく見たらとんでもないブランド物だった。

 下着もフランス製のセレブ使用のやつ……上品でありながら、やけに官能的な感じの。

「これも頂いちゃったけど、逆に高くついたのかな?」

 ドキドキしてきた。体の要求は無いにしろ、やっぱり例の壺とか、水晶とか売られるの? 

無料タダより高い物は無いというのは、本当だった?

『壺なら買いませんからね』

 私は慌ててメッセージを送った。

 直後、電話がかかってきた。

 ビクッと肩が大きく波打ち、またスマホを取り落としそうになる。

 反射的に通話を押した私の耳に、やや焦ったような柳楽君の声。

『ちょっと! 俺をなんだと思ってるんですか』
「なんだとって……霊能者?」
『その通りですけど……。うん。まあ、そうですね』

 声であちらが怯んだのが分かった。

 吹き出すのを堪えた私に、柳楽君は真剣な声で言った。

『でも勧誘はしないし、霊感グッズも買わせませんから。単純にデートしてください』

 デート……かぁ。

 私は指で頬を掻いて考え込む。謝礼の一環として、すべきなのよね?

 なにせ、サービスで二回も魔除けをさせてしまっているわけだし……いや、もちろん名刺の住所宛てに、お礼の品は贈るつもりではあったけどさ。

 お祓いなんかを生業としている相手に対し、さすがに甘えすぎだと思った私は、警戒しながらも承知していた。

『そうね、こちらかお誘いすべきだったわね。お蕎麦でいいの? 焼肉でもぜんぜん大丈夫。ご馳走させてください』

 幸い、お給料は入ったばかりだ。食べ放題に連れ込めば、それほど痛くない。

 柳楽君は変な仕事をしているわりに、ガリもやしではない。だけど、かといってマッスルでもないのよね。

 圭太と似たような細マッチョ風。これなら運動部男子でもあるまいし、私が破産するまで食べないはず。

『やった!』

 スマホの向こうから微かに聞こえた声は、弾んでいた。拳を握りしめる年相応の姿が目に浮かんで、ちょっとこちらも華やいでしまう。

 その瞬間、昨夜のことをまた思い出してしまったわけ。

 詳細に。

 舐め舐めされた感触まで浮かんできて、下腹部がきゅっとなった。

 だから、あれは魔除けよ! 魔除け以外であんなことさせないもんっ。

『ではあかねさん、今日これから行きましょう!』

 いや、早いな! 確かに今日はお休みだけどさ。

 うーん、と私は悩んだ。魔除けが切れる頃じゃ駄目かしら?

『この前の祓詞、ちゃんと効いてるか確認したいんです。茜さん、やけに悶えるから歪んだかもしれない』

 くすぐったかったからよ!

 ……よし、さっさと済ませるか、お礼。お金のあるうちに。

『分かったわ、何時にする?』
『今、あなたの家の前にいます。ちょうど近くを通ったので』

 メリーさんか!

 私はベッドから跳び起きて、こけつまろびつ洗面所に向かった。
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