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第一章 ヒロイン視点 悪役令嬢の断罪
1.私の朝は、夕方に始まる
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私の朝は、夕方に始まる。
部屋が西側だからじゃない。うちが、酒場だからだ。
コペランディ王国、首都、ハーツィラム。
この街は、いつも冒険者や商人で溢れている。
大通りにはいつも沢山の人が行き交い、ダンジョンを攻略した後の祝勝会や、大口の取引が決まった祝いの席など、外食のきっかけには事欠かない。
でも、うちは。
ここは、冒険者だった父と母が、常連だった店を受け継いで営んでいる。大通りから一本路地を入った、目立たないところにあるお店。
丸い木のテーブルが10。カウンターには、席が15程。内装は古い。
落ち着くといえば聞こえはいいけど、椅子はギシギシするしテーブルの傷もひどい。
それに今時、入り口の扉が腰の高さの板だけなんて、あんまりないよ。
うち、古いんだ。
大通りの華やかな新しい、いざかや、とか、ばー、とかいうものに、そういった華やかな催しは流れていく。
店内はそんなに広くはないのに、みんな少ない注文で長話をしていく。
父さんや母さんは楽しそうに笑っているけど、これでいいのか。そのうち、お客さん全員大通りにとられちゃうんじゃないのか。
二階の洗面所で顔を洗って、髪を濡らす。
お母さんが絞ったオリーブの油に混ぜ物をした洗い液で、髪の根元を指で擦るように洗う。
そのあと魔法の少し暖かい風で、櫛で梳きながら乾かす。
鏡の中で、お父さん譲りの大きな緑色の瞳が私を見つめる。
お母さん譲りの、癖のないピンクベージュの髪が、さらさらと揺れる。
毎日洗っているので、髪はきれいなものだ。つやつやして、なかなか結いにくいくらい。
それからお水をつけて布巾を濡らし、絞って自分の部屋に持って行き体を拭く。
これは、お父さんとお母さんにきつく言われている習慣だ。きゃくしょうばい、だから、せいけつにするのは当然のこと、なんだそうだ。
毎日顔や髪を洗って体を拭くなんて、お貴族様みたいね、とは、学校のみんなのお話。
10才の平民の子供は、13才になるまで教会に設置された学校に入れられる。読み書きや計算、国の歴史や簡単な魔法を学ぶ。
今の国王様が新しくきめたことで、私もこの秋から通い始めた。
お貴族様には遠く及ばないけど、私たちにも小さな火をおこしたり、飲み物を冷やしたりする魔法は少しだけ使えるようになったりする。
そうするととてもべんりだから、一生懸命に練習するんだ。
冒険者になりたい子は特に真剣。
居残りで受けなきゃいけない特別授業の剣術も、男の子ならみんな受ける。女の子も少しだけいる。
私はそれがとても羨ましい。だって、家の手伝いをしなきゃいけないから。
私だって、剣術の授業を受けてみたい。
小さい頃から鍛えられている自分の腕を、試してみたい。
酒場の手伝いなんてしてたら、ずっとここにいることになる。
10才の今は見習い以下だからまだいい。でもそれは、結婚してないまっとうな娘の仕事じゃない。
みんなの。噂になってるんだ。
うちが、そういうおきゃく、をとっているって。
うちに、女の子はお母さんと私しかいない。
つまり、私がそういうおしごとをしている、という、ひどい噂が流れ始めた。
そんなことないのに。いやなやつなんか来ないし、来たって元冒険者のお父さんやお母さん、店の常連さんがやっつけてくれる。
悔しい。何度言っても。みんなくすくすわらうばかりで、何も言ってこないんだ。
ぐるぐるぐる。黒いきもちが渦巻いている。
いけない、わたしの朝は、今、始まるんだ。
ばしっと頬を叩いて、一階のお店に降りて行った。
部屋が西側だからじゃない。うちが、酒場だからだ。
コペランディ王国、首都、ハーツィラム。
この街は、いつも冒険者や商人で溢れている。
大通りにはいつも沢山の人が行き交い、ダンジョンを攻略した後の祝勝会や、大口の取引が決まった祝いの席など、外食のきっかけには事欠かない。
でも、うちは。
ここは、冒険者だった父と母が、常連だった店を受け継いで営んでいる。大通りから一本路地を入った、目立たないところにあるお店。
丸い木のテーブルが10。カウンターには、席が15程。内装は古い。
落ち着くといえば聞こえはいいけど、椅子はギシギシするしテーブルの傷もひどい。
それに今時、入り口の扉が腰の高さの板だけなんて、あんまりないよ。
うち、古いんだ。
大通りの華やかな新しい、いざかや、とか、ばー、とかいうものに、そういった華やかな催しは流れていく。
店内はそんなに広くはないのに、みんな少ない注文で長話をしていく。
父さんや母さんは楽しそうに笑っているけど、これでいいのか。そのうち、お客さん全員大通りにとられちゃうんじゃないのか。
二階の洗面所で顔を洗って、髪を濡らす。
お母さんが絞ったオリーブの油に混ぜ物をした洗い液で、髪の根元を指で擦るように洗う。
そのあと魔法の少し暖かい風で、櫛で梳きながら乾かす。
鏡の中で、お父さん譲りの大きな緑色の瞳が私を見つめる。
お母さん譲りの、癖のないピンクベージュの髪が、さらさらと揺れる。
毎日洗っているので、髪はきれいなものだ。つやつやして、なかなか結いにくいくらい。
それからお水をつけて布巾を濡らし、絞って自分の部屋に持って行き体を拭く。
これは、お父さんとお母さんにきつく言われている習慣だ。きゃくしょうばい、だから、せいけつにするのは当然のこと、なんだそうだ。
毎日顔や髪を洗って体を拭くなんて、お貴族様みたいね、とは、学校のみんなのお話。
10才の平民の子供は、13才になるまで教会に設置された学校に入れられる。読み書きや計算、国の歴史や簡単な魔法を学ぶ。
今の国王様が新しくきめたことで、私もこの秋から通い始めた。
お貴族様には遠く及ばないけど、私たちにも小さな火をおこしたり、飲み物を冷やしたりする魔法は少しだけ使えるようになったりする。
そうするととてもべんりだから、一生懸命に練習するんだ。
冒険者になりたい子は特に真剣。
居残りで受けなきゃいけない特別授業の剣術も、男の子ならみんな受ける。女の子も少しだけいる。
私はそれがとても羨ましい。だって、家の手伝いをしなきゃいけないから。
私だって、剣術の授業を受けてみたい。
小さい頃から鍛えられている自分の腕を、試してみたい。
酒場の手伝いなんてしてたら、ずっとここにいることになる。
10才の今は見習い以下だからまだいい。でもそれは、結婚してないまっとうな娘の仕事じゃない。
みんなの。噂になってるんだ。
うちが、そういうおきゃく、をとっているって。
うちに、女の子はお母さんと私しかいない。
つまり、私がそういうおしごとをしている、という、ひどい噂が流れ始めた。
そんなことないのに。いやなやつなんか来ないし、来たって元冒険者のお父さんやお母さん、店の常連さんがやっつけてくれる。
悔しい。何度言っても。みんなくすくすわらうばかりで、何も言ってこないんだ。
ぐるぐるぐる。黒いきもちが渦巻いている。
いけない、わたしの朝は、今、始まるんだ。
ばしっと頬を叩いて、一階のお店に降りて行った。
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