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第一章 ヒロイン視点 悪役令嬢の断罪
15.ロザリーの言い分 1
しおりを挟む私は、ロザリーが流した噂について、本人に聞いてみた。
ただの嫌がらせなのか。本当に誤解してるのか。
話してないから、そういえば、わからない。
だん!
お父さんが、背を向けて魚を捌くところだった。多分頭を切り落としたんだ。
やけに、大きな音だった。
普通のお客さんだったら、ここでそんな話をした時点で店外に放り出される。
お父さん、我慢してる。
私の黒いどろどろは、少し大人しくなった。
うん、そうだね。ここで、お父さんとお母さんの顔を潰すようなことはできない。
こんなに怒ってくれているんだから。私のどろどろは、そんなに頑張らなくてもいい。
ちょっと落ち着いた。
ロザリーは、ふっと、ニムルスを見た。
少し、眉尻が下がっている気がする。
ニムルスは、私を見ているので気づかない。
下を向いて、きゅっと口を絞り、ロザリーは話し始めた。
「……知りもしないで、申し訳なかったわ。あなたは給仕をしているだけなのね。先程、お父様とお母様にお聞きしたわ。
でも、やっぱり腑に落ちないのよ。私が考案した居酒屋がそばにあって、どうしてここが繁盛し続けているのか」
はぁ。思いっきりため息が出た。
「だから、それは説明したじゃない。客層が違うの。
うちは古くから来てくれる人もいるし、小さなお店でゆっくりしたい人もいるんだよ。
ねえ、なんでそんなにいざかやに拘るの?こうあんした、って何?」
本当に気になる。別にあっちはあっちで勝手にやってればいいのに。
というかロザリー、関係者だったのか。初めて知った。
ロザリーは、ぎゅっと眉間にシワを寄せて俯いた。
ん?何よ。言いたいことがあるなら言ってみなさいよ。
と、思っていたら、隣の煌びやかなおじさんが口を開いた。
「いや、本当に申し訳ない。うちの都合だ。
君たちを信用して話すんだが、ロザリーは、さる高貴なお方から預かっている子でね。
いずれその方の家に戻ることが決まっているんだ。
その前に、商売についても経験させておきたかった。
領地の経営にも、少しは通じるところがあるだろうから」
え、そうなんだ。でも、いざかや、成功してるんじゃ?
「実は、居酒屋には、コストに見合った売り上げがなくてね。メニューに使う斬新な素材が高価で、値段設定に合っていない。
だから、利益にあまりなっていないんだよ。
改善点は沢山あるのに、内情も見ずに、全くこの子は何をしていたのか」
煌びやかなおじさんに、わしっと頭を掴まれるロザリーは、とてもおとなしかった。
されるがままに、俯いている。
自信に溢れるクラスでの振る舞いが嘘みたいだ。
いざかやは、何がなんでも成功しなきゃいけないんだよね?
でも、それがうちにこだわる理由にはならないよね?
どうして?
何か、この金髪縦ロールは、まだ隠してる。
ただ、いじめたかったからいじめた、だけじゃないみたいだね。
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