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第二章 悪役令嬢視点 断罪は終わらない
5.一応公爵令嬢なんですけども
しおりを挟む休む暇もなく、動き続ける。お客さんの様子もちゃんと見て、対応しなきゃいけない。
リーナは本当に、これを毎日全部やってきたのか。
この店で扱う道具の一つ一つが、すごく重い。最初はお皿ひとつ持ち上げるのにも苦労した。
何これ。お皿の重さとは思えなかった。
リーナはにやにやしながらそれを見ている。
あれぇ、そんなこともできないんだ。いざかやって、お皿は使わないんだっけ?
……ちょいちょい嫌味がひどいんだよヒロイン!!
ぐっと口に力がこもる。なんか10才にして、口の周りにシワでもできそうだ。
いや、私が悪い。がまん、がまん。
私は公爵令嬢。王の血族である侯爵に次ぐ高位の貴族家の人間だ。
父は今現在、政争の真っ只中。少しの失敗も許されない立場にあるらしい。
子供の私の些細な粗相も許されない。
本当にどうしたのお父様。
外国に遊学しているということにして、私は取引先の商人の家に預けられた。
私は一人娘だ。病気がちだなどと言って引きこもれば、公爵家の存続が危ぶまれる。
もっと子を持った方がなどと言われ、敵対派閥の侯爵あたりから第二夫人でも送り込まれたら、非常にまずいそうだ。
だから時期が来るまで、平民の学校に送り込まれた。
なるほど、そういう設定だったのね。ゲームではそこまで語られなかった。
だから、ここでする全ての作業は、この体になってから初めてすることだ。
居酒屋は考えただけ。メニューも、日本のものを参考にしたレシピを料理人に教えただけ。
いらっしゃいませこんばんは、注文入りました、はい喜んでー!と、とにかく元気よく挨拶して店員から雰囲気を作るよう、責任者に指導をお願いしたくらいしか手出ししていない。
作業なんかしてないよ。
うんごめん。一応公爵令嬢なんだよ私。
リーナは知らないと思うけど。
それにしてもここの備品の重さは異常だと思う。これって平民じゃ普通なの?
箒やバケツなんかの掃除道具、布巾までなんか重いっておかしくない?私が非力なの?
大体ご飯を食べに来るお客さんが落ち着いて、お酒中心に注文が入るようになるくらいになるとお店も忙しくなくなってくる。
その頃ちょうど、預かり先の家から馬車が到着して、私のバイトはやっと終わる。
お父さん役をやってくれているロダンさんは、少し困った顔をしながら毎日馬車に乗って迎えに来る。
そして、ディアスさんやエレナさんに頭を下げて私を引き取っていく。
その頃にはもうへろへろで、帰るときには私はぺこりと頭を下げるのが精一杯。
家に帰るとばったりとそのまま眠ってしまう。
学校に行っても、体がギシギシと悲鳴を上げていてうまく動けない。授業中の眠気もひどい。
どんどん痩せていく私の鬼気迫る雰囲気が伝わるのか、クラスの子は私に話しかけて来なくなった。
なぜか、いじめっぽい動きも収まり、悪口も言われなくなった。ただ、放っておかれる。
それが、いいのか悪いのか。
毎日の仕事をこなすのに必死で、周りを気にしなくなった。
何か悪口を言われているのかもしれないけど、へろへろで眠くてそれどころじゃない。
たまに、にやにやしているリーナとニムルスが、視界に映る。
どこまで続くんだろう、この償いは。
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