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第二章 悪役令嬢視点 断罪は終わらない
10.続く断罪と、異変
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そうしてまた、バイトに明け暮れる日々が始まった。
半年近く働いてると、さすがにここの備品の重さにも慣れてきた。
お皿を下げる時に一枚ずつしか運べなかったのが、今は三枚くらまで重ねられるようになった。
クラスの子たちは、親を連れてちょっとずつやってきた。アリスは、穏やかそうな両親と小さな妹、弟を連れて最初に来てくれた。
最初は緊張してガチガチだった。
リーナが後ろでからかう声が聞こえる。
くう、屈辱。
くすっと、アリスが笑った。
そうやってると、私たちとおんなじみたいね、って、言われた。
そっか、やっぱり違うって、思われてたんだ。
そうだよね。喋り方とか、全然違うもんね。
ほんと、今になるまでよくいじめられてないな私。
ありがとう、アリス。
その後も、クラスの子達は順番に、殆どの子がやってきた。
うん、慣れるとなんともなくなってきた。
ただ、すごく気恥ずかしかった。
なんだかみんなにやにやしている。なんで。
そんなにおかしい?あ、おかしいのかそうなのか。
これも、私への罰だ。黙って受け入れよう。
よりによって、大好きだったヒロインに。
ヒロインの、机に。
私はひどいことを、したんだから。
そういえば、カイルはたまに開店前の掃除を手伝うようになった。
ちょっと赤い顔をしながら。そうだよね、気まずいよね。
まあそれはどうでもいい。
わんわ……カイルだし。うん、カイルだから。
ある日、カラムがなかなか帰らない日があった。
忙しい時間にも、カウンターに陣取って動かない。
とても珍しいことだ。いつもなら、ごはんを食べたらさっと帰るのに。
ディアスさんとエリサさんも、なんだか雰囲気が変だ。
リーナはいつも通りだった。ただ、私に一切接客をさせないでカウンター内の用事をひっきりなしに言いつける。
しまいには、忙しいのに厨房の床磨きを命じられた。
いやそれ今やること?会計待ってる人も並んでるし運ぶ料理も溜まってるよ?
かたんと、何かをエリサさんがお店の外に置いた。
忙しい時間帯なのに、お客さんの入り方が止まった。
しばらくするとお客さんはみんな帰って、ちょうど私の帰宅時間になった。
カラムだけはまだ店にいる。
ニムルスが、店に来た。
「親父が帰らないから、言われてたことやってきたけど、よかったのか?」
「ああ、正解だ。よくやった」
がしがしとカラムはニムルスの頭を撫で回す。ニムルスは、逃げようともがく。
リーナにかっこ悪いところ見せたくないんだろうな。
久しぶりに間近で見るニムルス。ちょっと嬉しかった。
たまに彼の姿を少し見られる。うん、これだけで、いい。私には過ぎた贅沢だ。
その時、彼らが何を話しているのかなんて疑問は、嬉しさで私の頭から抜けてしまっていた。
半年近く働いてると、さすがにここの備品の重さにも慣れてきた。
お皿を下げる時に一枚ずつしか運べなかったのが、今は三枚くらまで重ねられるようになった。
クラスの子たちは、親を連れてちょっとずつやってきた。アリスは、穏やかそうな両親と小さな妹、弟を連れて最初に来てくれた。
最初は緊張してガチガチだった。
リーナが後ろでからかう声が聞こえる。
くう、屈辱。
くすっと、アリスが笑った。
そうやってると、私たちとおんなじみたいね、って、言われた。
そっか、やっぱり違うって、思われてたんだ。
そうだよね。喋り方とか、全然違うもんね。
ほんと、今になるまでよくいじめられてないな私。
ありがとう、アリス。
その後も、クラスの子達は順番に、殆どの子がやってきた。
うん、慣れるとなんともなくなってきた。
ただ、すごく気恥ずかしかった。
なんだかみんなにやにやしている。なんで。
そんなにおかしい?あ、おかしいのかそうなのか。
これも、私への罰だ。黙って受け入れよう。
よりによって、大好きだったヒロインに。
ヒロインの、机に。
私はひどいことを、したんだから。
そういえば、カイルはたまに開店前の掃除を手伝うようになった。
ちょっと赤い顔をしながら。そうだよね、気まずいよね。
まあそれはどうでもいい。
わんわ……カイルだし。うん、カイルだから。
ある日、カラムがなかなか帰らない日があった。
忙しい時間にも、カウンターに陣取って動かない。
とても珍しいことだ。いつもなら、ごはんを食べたらさっと帰るのに。
ディアスさんとエリサさんも、なんだか雰囲気が変だ。
リーナはいつも通りだった。ただ、私に一切接客をさせないでカウンター内の用事をひっきりなしに言いつける。
しまいには、忙しいのに厨房の床磨きを命じられた。
いやそれ今やること?会計待ってる人も並んでるし運ぶ料理も溜まってるよ?
かたんと、何かをエリサさんがお店の外に置いた。
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しばらくするとお客さんはみんな帰って、ちょうど私の帰宅時間になった。
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「親父が帰らないから、言われてたことやってきたけど、よかったのか?」
「ああ、正解だ。よくやった」
がしがしとカラムはニムルスの頭を撫で回す。ニムルスは、逃げようともがく。
リーナにかっこ悪いところ見せたくないんだろうな。
久しぶりに間近で見るニムルス。ちょっと嬉しかった。
たまに彼の姿を少し見られる。うん、これだけで、いい。私には過ぎた贅沢だ。
その時、彼らが何を話しているのかなんて疑問は、嬉しさで私の頭から抜けてしまっていた。
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