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第四章 ハンカチ屋の様子見
4.魔法の授業 1
しおりを挟む「さぁ、今日は火を出す魔法を練習します。これがあれば、火打ち石もいらずいつでもどこでも火を出せます。上達すれば、わずかな炭だけで暖を取れる優れものです」
白髪をさらりと肩まで伸ばした司祭様が、ヒゲを撫でながら手に取るのは、魔石。
王都の近くに発生する、そんなに強くないホーンラビットや、リスのような魔物エキュルなどから取れる、小さいものだ。
採れた時は何らかの属性の魔力を含んでいるけれど、司祭様が持っているのは魔力はもう使い尽くしているもの。それに、魔力を込めてまたつかえるようにするのが、魔法の授業の課題だ。
本当に、教会内で火を吹いたら危ないからね。
そんなレベルで魔法を使えるのは、お貴族様か相当な経験を積んだ冒険者だけなんだけど。
図書室で、魔法に関する資料は何度も探した。でも、それだけはどこにもないんだ。非力な私は、強くなりたかった。もう、諦めかけているけれど。
だって、周りの様子を見ても、平民で強力な魔法を使える人は、いないんだもの。
様子見は、得意だ。私には無理。これは決定だった。
だから、配られた魔石を、諦めかけながら握っていた。できない子は、いつもそうして時間を過ごす。
私も同じように呆然としていた。
だって、コツなんてものはない、と、司祭様に聞いてもばっさり切り捨てられるんだもの。
要は、才能の問題なんだ。
できる子は、小さい頃から既に才能を開花させている。そういう子はすぐに課題を達成して司祭様に渡して、後は自由時間だ。
うちのクラスでできるのは、リーナとニムルスくらい。
どうせできないから、と。みんなぼうっと魔石を見ていた。
ぶつぶつぶつ。少し遠くで、何かが聞こえる。
「……我が命ずる、火の力よ、ここに顕現せよ……だめか……万物に宿りし火の精霊よ、我に力を与え給え……うーん違う……ちが、あれ?」
厨二病か!
ロザリーだ絶対!!
ちょっとあなたそういう系統の方だったの!?
はぁ。頼れたらなと思ったけど。
やっぱりもう少し様子見を
……え?
ロザリーが、ぼうっと赤く光る。手に持った魔石が、透明から少しずつ、赤に変わっていく。
「……できた!できたわ!リーナ!できたわよ!!」
ロザリーは、司祭様より先にリーナに見せにいく。なんで。
「あー、よかったねー。火魔法は苦手だったもんね。よかったよかった」
軽っ!!
「ああ、これでわたくしも、野宿するときに寒さで死ぬことはなくなりましたわ!素晴らしい成果で……あ、あつ!熱いわ!!え、これ、どうしたら」
……野宿する予定が?あ、没落後の準備?
そっか、やっぱり、わかってるんだ。
ぼうっ!ロザリーの魔石から、火が噴き出した。
その高さは一メートルを超え、めらめらと燃え続ける。
「あー……。ロザリー、なんかしゃべりながら練習した?」
ぽりぽりと頬を掻きながら、ニムルスが魔石に手を添えて炎を抑える。ていうかニムルス何者。
呆然とするロザリーに、みんなは殺到した。
もちろん、周りの様子を見ていた私も参戦した。
私は目立つのも構わず、少しだけ前の方に、出た。
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